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#36 魔石
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「ちょっと何処いくんだよ!!」
「いいから!早くしないと!!」
手を引き、走るアンバーグリス。
そして、何かの商会の前にたどり着く2人。
「ここは?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・久しぶりに走ったら死にそう・・・レンくんはよく大丈夫だね・・・」
「アンバーグリスの体力がなさ過ぎなんだよ。もっと運動したほうがいいよ?ところでここは?」
「ちょっと待って・・・ふぅぅ・・・やっと落ち着いた・・・ここは魔石屋さんだよ。」
「魔石屋?」
「うん!」
「ここに何の用があるの?」
「うん!とりあえず入ろ!」
二人は魔石屋の中に入る。
「いらっしゃーい。って、お嬢ちゃん。また懲りずに来たな。」
お店の中には五十代くらいのおじさんがカウンターの奥に座っていた。
「今日こそは当てるんだから!」
「は?」
「お、今日は彼氏と来たのか!」
「彼氏じゃなくて婚約者!」
「いや、違います。」
「違くないよ!」
「違います。」
「どっちだよ!!」
「で、当てるって何?」
「実はね、ここで今〈飛空石〉が当たるくじをやってるの!それを当てたくて毎日来てるんだけど、全然当たらなくて・・・レンくんもいるから今日はやめようと思ったんだけど、誰かに当てられちゃうんじゃないかと不安で・・・」
だからソワソワしてたのか。
「お嬢ちゃん今日もやるのかい?」
「勿論だよ!今日こそ当てるんだから!!」
「当たるといいねえ。(にやにや)」
ん?なんかにやにやしてんな。
本当に当たりが入ってんのか?
「じゃあ今日も5回!!」
「はいよーまいどありー!じゃあどうぞー。」
店主はくじが入っている箱を持ってくる。
「先ずは一回目!!」
ガサゴソとくじを引き、1つ目のくじを開ける。
〈火の魔石〉
「うわあん!!ハズレだー!!」
あ、火の魔石はハズレなんだな。
「あはは、残念だったね!次こそ当たるといいねえ。(にやにや)」
やっぱり怪しいな。
「因みにその飛空石以外に当たりは?」
「他には〈通信石〉とか〈映像石〉が当たりかな?遠くの人と話せたり、映像を記憶出来たりするんだよ!どれも欲しいけど一番は飛空石が欲しいの!」
「へえ、通信石と映像石かぁ・・・それがあればあれが作れるな。」
「あれが作れるって!?何か面白いものが作れるの!?」
「多分?」
「それなら全部当てないと!おじさん!もう一回行くよ!」
「おう!さあ当たるかな?」
アンバーグリスは再度ガサゴソとくじを引く。
〈水の魔石〉
「うわぁぁん!またハズレだぁ!!」
「ホントにお嬢ちゃんは運がないなあ。(にやにや)」
またにやにやしやがって・・・
「うう、もう一回!!」
「ちょっと待って。」
「へ?」
「おじさん、これ本当に当たり入ってるの?」
「なっ、当たり前だろ!」
「じゃあ俺がこのくじ全部引いても大丈夫なんだよね?」
「当然だ!まあでもこのくじは一人5回までだからな。全部は引けねえよ?」
「ふうん。」
レンはさり気なく、くじが入ってる箱を鑑定する。
〈魔石屋のくじ箱〉
魔石屋が作ったくじが入った箱
殆どハズレだが当たりもちゃんと入っている
確かに当たりは入ってるのか・・・
じゃあ単にアンバーグリスの運が悪いのか?
このくじに当たりは入っていた。
が、しかし魔石屋の店主は当たりくじを取られないように箱のフタ部分に貼り付けていたのであった。
(くっくっくっ・・・絶対に当たらねえよ・・・そう簡単に貴重な石を渡せるかよ。ふふっこのくじでボロ儲けだぜ!)
「アンバーグリス、残りのくじ俺が引いていいか?」
「え!?別にいいけど・・・」
「お、兄ちゃんが引くのか?いいぜ、当てて彼女にかっこいいとこ見せてやんな!」
(当たるわけねえけどな。)
そう言ってくじ箱を持ってレンの前に出す。
そしてレンがくじを引こうとした時だった。
「ちょっとごめんよ!」
大柄でふくよかな、多分奥さんであろう人が店主の後ろを通ろうとしたが、体が大きいせいか店主にぶつかってしまう。
ドンッ!!
「うわ!」
店主はその拍子にくじ箱を落としてしまう。
「なにすんだよ!!落としちまったじゃねえか!」
「ああ!?アンタが邪魔なのが悪いんだろうが!!」
「ごめんなさい。」
どの世界でも奥さんのほうが強いんだな。
さっきの威勢はなくなり、静かにくじ箱を拾う店主。
「悪かったな。じゃあ引いてくれ。」
「あ、はい。」
レンはくじ箱に手を入れてくじを引く。
これでいいかな?
くじを一枚取り、開けると・・・
〈通信石〉
と書かれていた。
「ええええええ!?!?」
驚く店主。
「わあ!!当たりだぁ!!すごぉぉい!!」
おお!流石幸運値Max!!
やっぱりアンバーグリスのくじ運が悪いだけか!
(な、なぜだ!?当たりは引けないはずなのに!!)
「じゃあ次行きますよ?」
「あ、ああ。」
(たまたまだ!他の2つは絶対に引けねえ!!)
レンは更にくじを引く。
〈映像石〉
「何ぃぃぃぃぃ!?」
「わあ!!連続で当たったぁ!!」
(馬鹿な!!何故当たるぅぅぅ!!!??)
「最後行きます。」
(せめて飛空石だけは死守を!!)
レンが最後のくじを引き、それを開くと・・・
〈飛空石〉
「なんでだぁぁぁ!!!??」
「やったぁぁぁぁ!!!念願の飛空石!!」
ふっ、久しぶりに強運パワーが炸裂したな!
「おい!ズルしてんじゃねえのか!当たりが3連続なんておかしいだろ!!」
「ズル?それはどういったことですか?」
「当たりが書いてあるくじをあらかじめ書いておいて中から取ったフリしたんだろ!!」
「レンくんがそんなことするわけないじゃん!!」
「いーや、絶対におかしい!!」
「じゃあ中のくじ全部確認したらどうですか?」
「わかった。待ってろよ!直ぐに確認してやる。ズルだとわかったらお前ら牢屋にぶち込んでやるからな!!」
そう言って店主は本来くじがあった場所を確認する。
「あれ・・・?」
しかし、上に貼り付けてあったくじは何もなかった。
「どうしたんですか?全部開けてみてくださいよ。」
「ない・・・取られないように上に貼り付けて置いた当たりくじが・・・ない!!」
「は?どういうことですか?」
「はっ!しまったァァァ!!」
「ちょっとそれどういうこと!?おじさんのほうがズルしてるじゃん!!」
「ううっ!!でもどうして・・・」
店主は気づいていなかった。
先程くじ箱を落とした拍子に張り付いていたくじが剥がれてしまったことを・・・
「当たりくじを取られないように上に貼っておくなんて詐欺ですよね?商人ギルドに言ったら牢屋行きですね。」
「ううっ・・・すまねえ!!ほんの出来心なんだ!!もうしねえし、魔石も渡すから許してくれ!!」
そう言って3つの魔石を出す店主。
が、それを見た店主の奥さんは・・・
「おや、魔石売れたのかい!?良かった、これで借金が返せるねえ!!」
上機嫌のおばちゃん。
しかし・・・
「へ?これはくじで当たったんだよ?」
「はあ?くじ?アンタ!どういうことだい!!?くじってなんだい!?」
どうやら奥さんにナイショでやっていたみたいだ。
「ううっ!!すまねえ!!この魔石をエサにくじ引きで儲けようと思ったんだけど、全部取られちまったんだ!!」
「はぁぁぁ!?!?この魔石が幾らすると思ってんだい!!この3つが売れれば借金どころか大金持ちになれるんだよ!!」
「え!?そうなの!?」
「うん。飛空石は一つ1000万リルドするよ?」
「1000万!?この石が!?」
「だから毎日くじ引きしたんだよ?一回500リルドで、もしかしたら高くて買えない魔石が手に入るんだから!」
「そりゃ皆食いつくよな。まあ、くじの景品にしたほうが悪いし、これは貰っていこう。」
「ええ!?それは困るよ!!」
「困ると言われても、くじで当てたんだし仕方ないですよね?」
「ずっと欲しかったんだぁ!これで何作ろうかなぁ!」
ワクワクしているアンバーグリス。
が、
「た、頼むよ!!それがなくなったらうちは破産しちまうよ!!この通りだよ!!」
そう言って奥さんは土下座をする。
「でも・・・」
アンバーグリスは諦めきれないでいる。
店主の方をみるとオロオロしているだけであった。
全く・・・関係ない奥さんが俺達みたいな子供に土下座までしているのに・・・
「お願いだよぉ!!持っていかないでおくれよぉぉ!!」
「うう・・・」
アンバーグリスも困ってるな。
「わかりました。」
「え!?」
「魔石は諦めます。」
「えええええ!?」
その言葉に驚くアンバーグリス。
「本当かい!?」
「まじかよ!悪いな!!」
バッと明るい顔で嬉しそうにいう店主。
それを見たレンは・・・
「はあ?悪いな?おじさん、奥さんが俺達みたいな子供に土下座までしてるのに貴方は何なんですか?ただオロオロしてただけのくせに出てきた言葉がそれですか?」
「いや、その・・・」
その言葉に狼狽える店主。
「やっぱりこれは持ち帰ります。」
「ええ!?ちょっと!!アンタ!!この子達が情けをかけてくれてんだ!!頭を下げて礼を言うのが筋ってもんだろ!!」
「うう・・・」
「じゃあ頂きますね。」
魔石を持って去ろうとすると・・・
「ま、待ってくれ!!」
店主がレンの前までやってきて土下座の体制に入る。
「俺が悪かった!これからは真っ当な商売をする!だから俺にチャンスをくれないか!!頼む!!」
そう言って土下座をする店主。
「わかりました。頭を上げてください。お二方には土下座なんてさせてしまって申し訳ありませんでした。コレはお返しします。その代わり、今までアンバーグリスが支払った代金は返却してください。お願いします。」
そう言って頭を下げるレン。
「も、勿論だ!全額返す!お嬢ちゃん、本当に済まなかった!!」
店主はアンバーグリスが使った代金を返却する。
「じゃあ帰ろうか!」
「う、うん・・・」
「ありがとよ、私もこれがちゃんと仕事するように見張っとくからね。」
「はい…これからも頑張ってくださいね!」
そう言って二人は店を後にする。
「うう・・・欲しかったなぁ・・・」
そう言ってしょんぼりするアンバーグリス。
「へ?何言ってんの?」
「へ?」
「タダで貴重な魔石が手に入ったじゃん。」
「レンくんこそ何言ってんの!?魔石は返しちゃったじゃん!!」
「うーん、ここは人が多いしなぁ・・・アンバーグリス、あそこの路地に行くよ。」
「え!?」
レンに連れられ人気のない路地に到着するアンバーグリス。
「ま、まさかここでエッチなことを・・・?・・・レンくんなら・・・いいよ?」
そう言って目を瞑ってレンからのキスを待つアンバーグリス。
「いや、違うし。」
したいけど。
「違うの!?じゃあなんでここに?」
「まあ見てて。」
《召喚!飛空石!!》
レンが召喚魔法を唱えるとレンの手に飛空石が現れる。
「えええええ!!飛空石!?」
目の前に現れた飛空石に驚くアンバーグリス。
「さっき見たからな。ほら。」
飛空石をアンバーグリスに渡すレン。
「あ!!そうだった!!やったあ!飛空石だぁ!!」
とても嬉しそうなアンバーグリス。
「そっか、このスキルがあるから返したんだね!」
「ああ。おばちゃんにあそこまで頼まれちゃね・・・でも、おっさんだけだったらあれも持って帰ったけどな。まあ、お金も返して貰えたし、石も手に入ったし、あっちも損してないし、いい事づくしだろ?」
「うん!じゃあ、はい。」
レンの方へ手を出すアンバーグリス。
「は?」
「飛空石出し放題なんだよね?あと100個頂戴?」
「お前なぁ・・・調子に乗るな!!それだけで充分だろ!!」
「充分じゃないよ!!これだけじゃ足りないよ!」
「駄目だ!子供のくせにそんな高価なもの欲しがらないの!!」
「えええええええ!!!」
「ええ~!!じゃない!!さあ帰るぞ。」
「うう・・・けちー。」
「ケチで結構だ。ほら行くぞ。」
そう言って手を出すレン。
「!!・・・うん!!」
出された手を握り、手を繋いで帰る2人。
「レンくん・・・」
「ん?」
「大好きだよ♡」
そう言ってほっぺにキスをするアンバーグリス。
「・・・お、おう。」
顔が赤くなるレン。
アンバーグリスはこの時間がずっと続けばいいのにと願ったのであった・・・。
そして、家に着くと・・・
「ちょっと!!二人共遅かったじゃない!!まさかエッチなことしてないでしょうね!?」
家に入るなり、ローズマリーが現れる。
「し、してないよ!帰りにデートしてただけだもん!」
「はぁぁぁぁ!?デートぉぉぉ!?」
あれはデートなのか!?
「商人ギルドと魔石屋に寄ってただけだ。」
「商人ギルド?どうしてよ?」
「あのね、レンくんが凄いもの発明してくれたんだよ!だからその商品登録してきたの!審査も通ったし、売れちゃうよ!ついでにレンくんがギルドに登録したよ!」
「・・・もう行くことはないけどね。」
「は?なんでよ?」
「別に。」
「はあ?なによそれ!」
「関係ないだろ?じゃあ俺は家に帰る。今日は色々あって疲れたし。」
そう言って帰ろうとするが・・・
「あ、レンさんちょっと待ってください!」
メイドに呼び止められるレン。
「なんですか?」
「お客様がお待ちです。」
「は?」
「こちらへ。」
メイドに連れられて客間の方へ行くレン。
「ねえ、アンバー・・・何があったの?」
「わかんない・・・登録が終わってレンくんの所に戻ったら機嫌悪くて・・・登録の時にロザリアさんと何かあったのかな・・・」
「ロザリアさんと!?やばいんじゃない・・・」
「何が?」
「今来てるのがロザリアさんとギルドマスターなのよ!!」
「ええ!?」
「私達も行こう!」
「うん!」
二人はレンの後を追う。
一方、レンは・・・
コンコンッ
「旦那様、レンさんを連れてまいりました。」
「入ってくれ!」
ガチャッ
客間の扉が開かれると、そこにはベルガモット、アイリスにギルドマスターとロザリアが座っていた。
「・・・部屋を間違えました。」
「いや、間違ってないよ!?」
「いえ、間違えたはずです。」
「いやいやいや、間違ってないから!」
「じゃあ急に用が出来たのでこれで失礼します。」
「じゃあって何!?絶対に出来てないよね!?いいから入って!」
「いや、会いたくない人達がいるんで拒否します。」
「話は聞いてるから!そのことについて2人が謝罪に来てるんだよ!!いいから入って!」
レンは仕方なく部屋に入る。
「で・・・なんすか?」
明らかに機嫌が悪いレンに空気がピリつく。
「レン君、先程はごめんなさい!!こちらから頼んだことなのに失礼な態度を取ってしまったわ。本当にごめんなさい。」
そう言って、椅子から立つと深々とお辞儀をするロザリア。
「あたしからも謝るのじゃ。本当に申し訳ないことをした。足が悪くて座ったままですまないが、許して欲しいのじゃ。」
そう言ってギルドマスターも座ったままお辞儀をする。
「それって、依頼を達成したいから謝ってるんですよね?本当はこんな子供に謝りたくないけど、仕事の為ですよね?」
「レン君、そんな事はないよ!二人は君に対する態度を心から謝りに来たんだ。」
「許してあげたらどう?」
ベルガモットとアイリスが説得をする。
すると・・・
「わかりました。謝罪を受け入れます。」
「あ、ありがとうございます!レン君!」
「ありがとう、本当にすまなかったのじゃ。」
ホッとする2人。
しかし・・・
「ですが、要求は受け入れません。」
『え!?』
その言葉に4人が驚く。
「悪魔の森の魔物の毛皮は自分達で何とかしてください。」
「そんな!!もう貴方に頼るしかないのに・・・!」
絶望するロザリア。
「レン君、どうして依頼を受けてくれないんだい?」
「それは・・・」
続く
「いいから!早くしないと!!」
手を引き、走るアンバーグリス。
そして、何かの商会の前にたどり着く2人。
「ここは?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・久しぶりに走ったら死にそう・・・レンくんはよく大丈夫だね・・・」
「アンバーグリスの体力がなさ過ぎなんだよ。もっと運動したほうがいいよ?ところでここは?」
「ちょっと待って・・・ふぅぅ・・・やっと落ち着いた・・・ここは魔石屋さんだよ。」
「魔石屋?」
「うん!」
「ここに何の用があるの?」
「うん!とりあえず入ろ!」
二人は魔石屋の中に入る。
「いらっしゃーい。って、お嬢ちゃん。また懲りずに来たな。」
お店の中には五十代くらいのおじさんがカウンターの奥に座っていた。
「今日こそは当てるんだから!」
「は?」
「お、今日は彼氏と来たのか!」
「彼氏じゃなくて婚約者!」
「いや、違います。」
「違くないよ!」
「違います。」
「どっちだよ!!」
「で、当てるって何?」
「実はね、ここで今〈飛空石〉が当たるくじをやってるの!それを当てたくて毎日来てるんだけど、全然当たらなくて・・・レンくんもいるから今日はやめようと思ったんだけど、誰かに当てられちゃうんじゃないかと不安で・・・」
だからソワソワしてたのか。
「お嬢ちゃん今日もやるのかい?」
「勿論だよ!今日こそ当てるんだから!!」
「当たるといいねえ。(にやにや)」
ん?なんかにやにやしてんな。
本当に当たりが入ってんのか?
「じゃあ今日も5回!!」
「はいよーまいどありー!じゃあどうぞー。」
店主はくじが入っている箱を持ってくる。
「先ずは一回目!!」
ガサゴソとくじを引き、1つ目のくじを開ける。
〈火の魔石〉
「うわあん!!ハズレだー!!」
あ、火の魔石はハズレなんだな。
「あはは、残念だったね!次こそ当たるといいねえ。(にやにや)」
やっぱり怪しいな。
「因みにその飛空石以外に当たりは?」
「他には〈通信石〉とか〈映像石〉が当たりかな?遠くの人と話せたり、映像を記憶出来たりするんだよ!どれも欲しいけど一番は飛空石が欲しいの!」
「へえ、通信石と映像石かぁ・・・それがあればあれが作れるな。」
「あれが作れるって!?何か面白いものが作れるの!?」
「多分?」
「それなら全部当てないと!おじさん!もう一回行くよ!」
「おう!さあ当たるかな?」
アンバーグリスは再度ガサゴソとくじを引く。
〈水の魔石〉
「うわぁぁん!またハズレだぁ!!」
「ホントにお嬢ちゃんは運がないなあ。(にやにや)」
またにやにやしやがって・・・
「うう、もう一回!!」
「ちょっと待って。」
「へ?」
「おじさん、これ本当に当たり入ってるの?」
「なっ、当たり前だろ!」
「じゃあ俺がこのくじ全部引いても大丈夫なんだよね?」
「当然だ!まあでもこのくじは一人5回までだからな。全部は引けねえよ?」
「ふうん。」
レンはさり気なく、くじが入ってる箱を鑑定する。
〈魔石屋のくじ箱〉
魔石屋が作ったくじが入った箱
殆どハズレだが当たりもちゃんと入っている
確かに当たりは入ってるのか・・・
じゃあ単にアンバーグリスの運が悪いのか?
このくじに当たりは入っていた。
が、しかし魔石屋の店主は当たりくじを取られないように箱のフタ部分に貼り付けていたのであった。
(くっくっくっ・・・絶対に当たらねえよ・・・そう簡単に貴重な石を渡せるかよ。ふふっこのくじでボロ儲けだぜ!)
「アンバーグリス、残りのくじ俺が引いていいか?」
「え!?別にいいけど・・・」
「お、兄ちゃんが引くのか?いいぜ、当てて彼女にかっこいいとこ見せてやんな!」
(当たるわけねえけどな。)
そう言ってくじ箱を持ってレンの前に出す。
そしてレンがくじを引こうとした時だった。
「ちょっとごめんよ!」
大柄でふくよかな、多分奥さんであろう人が店主の後ろを通ろうとしたが、体が大きいせいか店主にぶつかってしまう。
ドンッ!!
「うわ!」
店主はその拍子にくじ箱を落としてしまう。
「なにすんだよ!!落としちまったじゃねえか!」
「ああ!?アンタが邪魔なのが悪いんだろうが!!」
「ごめんなさい。」
どの世界でも奥さんのほうが強いんだな。
さっきの威勢はなくなり、静かにくじ箱を拾う店主。
「悪かったな。じゃあ引いてくれ。」
「あ、はい。」
レンはくじ箱に手を入れてくじを引く。
これでいいかな?
くじを一枚取り、開けると・・・
〈通信石〉
と書かれていた。
「ええええええ!?!?」
驚く店主。
「わあ!!当たりだぁ!!すごぉぉい!!」
おお!流石幸運値Max!!
やっぱりアンバーグリスのくじ運が悪いだけか!
(な、なぜだ!?当たりは引けないはずなのに!!)
「じゃあ次行きますよ?」
「あ、ああ。」
(たまたまだ!他の2つは絶対に引けねえ!!)
レンは更にくじを引く。
〈映像石〉
「何ぃぃぃぃぃ!?」
「わあ!!連続で当たったぁ!!」
(馬鹿な!!何故当たるぅぅぅ!!!??)
「最後行きます。」
(せめて飛空石だけは死守を!!)
レンが最後のくじを引き、それを開くと・・・
〈飛空石〉
「なんでだぁぁぁ!!!??」
「やったぁぁぁぁ!!!念願の飛空石!!」
ふっ、久しぶりに強運パワーが炸裂したな!
「おい!ズルしてんじゃねえのか!当たりが3連続なんておかしいだろ!!」
「ズル?それはどういったことですか?」
「当たりが書いてあるくじをあらかじめ書いておいて中から取ったフリしたんだろ!!」
「レンくんがそんなことするわけないじゃん!!」
「いーや、絶対におかしい!!」
「じゃあ中のくじ全部確認したらどうですか?」
「わかった。待ってろよ!直ぐに確認してやる。ズルだとわかったらお前ら牢屋にぶち込んでやるからな!!」
そう言って店主は本来くじがあった場所を確認する。
「あれ・・・?」
しかし、上に貼り付けてあったくじは何もなかった。
「どうしたんですか?全部開けてみてくださいよ。」
「ない・・・取られないように上に貼り付けて置いた当たりくじが・・・ない!!」
「は?どういうことですか?」
「はっ!しまったァァァ!!」
「ちょっとそれどういうこと!?おじさんのほうがズルしてるじゃん!!」
「ううっ!!でもどうして・・・」
店主は気づいていなかった。
先程くじ箱を落とした拍子に張り付いていたくじが剥がれてしまったことを・・・
「当たりくじを取られないように上に貼っておくなんて詐欺ですよね?商人ギルドに言ったら牢屋行きですね。」
「ううっ・・・すまねえ!!ほんの出来心なんだ!!もうしねえし、魔石も渡すから許してくれ!!」
そう言って3つの魔石を出す店主。
が、それを見た店主の奥さんは・・・
「おや、魔石売れたのかい!?良かった、これで借金が返せるねえ!!」
上機嫌のおばちゃん。
しかし・・・
「へ?これはくじで当たったんだよ?」
「はあ?くじ?アンタ!どういうことだい!!?くじってなんだい!?」
どうやら奥さんにナイショでやっていたみたいだ。
「ううっ!!すまねえ!!この魔石をエサにくじ引きで儲けようと思ったんだけど、全部取られちまったんだ!!」
「はぁぁぁ!?!?この魔石が幾らすると思ってんだい!!この3つが売れれば借金どころか大金持ちになれるんだよ!!」
「え!?そうなの!?」
「うん。飛空石は一つ1000万リルドするよ?」
「1000万!?この石が!?」
「だから毎日くじ引きしたんだよ?一回500リルドで、もしかしたら高くて買えない魔石が手に入るんだから!」
「そりゃ皆食いつくよな。まあ、くじの景品にしたほうが悪いし、これは貰っていこう。」
「ええ!?それは困るよ!!」
「困ると言われても、くじで当てたんだし仕方ないですよね?」
「ずっと欲しかったんだぁ!これで何作ろうかなぁ!」
ワクワクしているアンバーグリス。
が、
「た、頼むよ!!それがなくなったらうちは破産しちまうよ!!この通りだよ!!」
そう言って奥さんは土下座をする。
「でも・・・」
アンバーグリスは諦めきれないでいる。
店主の方をみるとオロオロしているだけであった。
全く・・・関係ない奥さんが俺達みたいな子供に土下座までしているのに・・・
「お願いだよぉ!!持っていかないでおくれよぉぉ!!」
「うう・・・」
アンバーグリスも困ってるな。
「わかりました。」
「え!?」
「魔石は諦めます。」
「えええええ!?」
その言葉に驚くアンバーグリス。
「本当かい!?」
「まじかよ!悪いな!!」
バッと明るい顔で嬉しそうにいう店主。
それを見たレンは・・・
「はあ?悪いな?おじさん、奥さんが俺達みたいな子供に土下座までしてるのに貴方は何なんですか?ただオロオロしてただけのくせに出てきた言葉がそれですか?」
「いや、その・・・」
その言葉に狼狽える店主。
「やっぱりこれは持ち帰ります。」
「ええ!?ちょっと!!アンタ!!この子達が情けをかけてくれてんだ!!頭を下げて礼を言うのが筋ってもんだろ!!」
「うう・・・」
「じゃあ頂きますね。」
魔石を持って去ろうとすると・・・
「ま、待ってくれ!!」
店主がレンの前までやってきて土下座の体制に入る。
「俺が悪かった!これからは真っ当な商売をする!だから俺にチャンスをくれないか!!頼む!!」
そう言って土下座をする店主。
「わかりました。頭を上げてください。お二方には土下座なんてさせてしまって申し訳ありませんでした。コレはお返しします。その代わり、今までアンバーグリスが支払った代金は返却してください。お願いします。」
そう言って頭を下げるレン。
「も、勿論だ!全額返す!お嬢ちゃん、本当に済まなかった!!」
店主はアンバーグリスが使った代金を返却する。
「じゃあ帰ろうか!」
「う、うん・・・」
「ありがとよ、私もこれがちゃんと仕事するように見張っとくからね。」
「はい…これからも頑張ってくださいね!」
そう言って二人は店を後にする。
「うう・・・欲しかったなぁ・・・」
そう言ってしょんぼりするアンバーグリス。
「へ?何言ってんの?」
「へ?」
「タダで貴重な魔石が手に入ったじゃん。」
「レンくんこそ何言ってんの!?魔石は返しちゃったじゃん!!」
「うーん、ここは人が多いしなぁ・・・アンバーグリス、あそこの路地に行くよ。」
「え!?」
レンに連れられ人気のない路地に到着するアンバーグリス。
「ま、まさかここでエッチなことを・・・?・・・レンくんなら・・・いいよ?」
そう言って目を瞑ってレンからのキスを待つアンバーグリス。
「いや、違うし。」
したいけど。
「違うの!?じゃあなんでここに?」
「まあ見てて。」
《召喚!飛空石!!》
レンが召喚魔法を唱えるとレンの手に飛空石が現れる。
「えええええ!!飛空石!?」
目の前に現れた飛空石に驚くアンバーグリス。
「さっき見たからな。ほら。」
飛空石をアンバーグリスに渡すレン。
「あ!!そうだった!!やったあ!飛空石だぁ!!」
とても嬉しそうなアンバーグリス。
「そっか、このスキルがあるから返したんだね!」
「ああ。おばちゃんにあそこまで頼まれちゃね・・・でも、おっさんだけだったらあれも持って帰ったけどな。まあ、お金も返して貰えたし、石も手に入ったし、あっちも損してないし、いい事づくしだろ?」
「うん!じゃあ、はい。」
レンの方へ手を出すアンバーグリス。
「は?」
「飛空石出し放題なんだよね?あと100個頂戴?」
「お前なぁ・・・調子に乗るな!!それだけで充分だろ!!」
「充分じゃないよ!!これだけじゃ足りないよ!」
「駄目だ!子供のくせにそんな高価なもの欲しがらないの!!」
「えええええええ!!!」
「ええ~!!じゃない!!さあ帰るぞ。」
「うう・・・けちー。」
「ケチで結構だ。ほら行くぞ。」
そう言って手を出すレン。
「!!・・・うん!!」
出された手を握り、手を繋いで帰る2人。
「レンくん・・・」
「ん?」
「大好きだよ♡」
そう言ってほっぺにキスをするアンバーグリス。
「・・・お、おう。」
顔が赤くなるレン。
アンバーグリスはこの時間がずっと続けばいいのにと願ったのであった・・・。
そして、家に着くと・・・
「ちょっと!!二人共遅かったじゃない!!まさかエッチなことしてないでしょうね!?」
家に入るなり、ローズマリーが現れる。
「し、してないよ!帰りにデートしてただけだもん!」
「はぁぁぁぁ!?デートぉぉぉ!?」
あれはデートなのか!?
「商人ギルドと魔石屋に寄ってただけだ。」
「商人ギルド?どうしてよ?」
「あのね、レンくんが凄いもの発明してくれたんだよ!だからその商品登録してきたの!審査も通ったし、売れちゃうよ!ついでにレンくんがギルドに登録したよ!」
「・・・もう行くことはないけどね。」
「は?なんでよ?」
「別に。」
「はあ?なによそれ!」
「関係ないだろ?じゃあ俺は家に帰る。今日は色々あって疲れたし。」
そう言って帰ろうとするが・・・
「あ、レンさんちょっと待ってください!」
メイドに呼び止められるレン。
「なんですか?」
「お客様がお待ちです。」
「は?」
「こちらへ。」
メイドに連れられて客間の方へ行くレン。
「ねえ、アンバー・・・何があったの?」
「わかんない・・・登録が終わってレンくんの所に戻ったら機嫌悪くて・・・登録の時にロザリアさんと何かあったのかな・・・」
「ロザリアさんと!?やばいんじゃない・・・」
「何が?」
「今来てるのがロザリアさんとギルドマスターなのよ!!」
「ええ!?」
「私達も行こう!」
「うん!」
二人はレンの後を追う。
一方、レンは・・・
コンコンッ
「旦那様、レンさんを連れてまいりました。」
「入ってくれ!」
ガチャッ
客間の扉が開かれると、そこにはベルガモット、アイリスにギルドマスターとロザリアが座っていた。
「・・・部屋を間違えました。」
「いや、間違ってないよ!?」
「いえ、間違えたはずです。」
「いやいやいや、間違ってないから!」
「じゃあ急に用が出来たのでこれで失礼します。」
「じゃあって何!?絶対に出来てないよね!?いいから入って!」
「いや、会いたくない人達がいるんで拒否します。」
「話は聞いてるから!そのことについて2人が謝罪に来てるんだよ!!いいから入って!」
レンは仕方なく部屋に入る。
「で・・・なんすか?」
明らかに機嫌が悪いレンに空気がピリつく。
「レン君、先程はごめんなさい!!こちらから頼んだことなのに失礼な態度を取ってしまったわ。本当にごめんなさい。」
そう言って、椅子から立つと深々とお辞儀をするロザリア。
「あたしからも謝るのじゃ。本当に申し訳ないことをした。足が悪くて座ったままですまないが、許して欲しいのじゃ。」
そう言ってギルドマスターも座ったままお辞儀をする。
「それって、依頼を達成したいから謝ってるんですよね?本当はこんな子供に謝りたくないけど、仕事の為ですよね?」
「レン君、そんな事はないよ!二人は君に対する態度を心から謝りに来たんだ。」
「許してあげたらどう?」
ベルガモットとアイリスが説得をする。
すると・・・
「わかりました。謝罪を受け入れます。」
「あ、ありがとうございます!レン君!」
「ありがとう、本当にすまなかったのじゃ。」
ホッとする2人。
しかし・・・
「ですが、要求は受け入れません。」
『え!?』
その言葉に4人が驚く。
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「そんな!!もう貴方に頼るしかないのに・・・!」
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「それは・・・」
続く
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