赤色の伝説

DREAM MAKER

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旅立ち

5。

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次の日、僕達は食料を売ってそれから魔法隊の方に行くことにした。
食料を売っている間シェルは他に買い物があるからと言ってどこかに行ってしまった。
帰ってきた時、シェルは男とほとんど変わらないような恰好をしていた。
少し変わった模様が胸のあたりに織り込まれている服に白のズボン、そしてマントを羽織っていた。
「目立つといけないから、はい。」
そう言ってシェルは僕の頭にターバンをつけてくれた。
「あ、ありがと」
なんかシェルはお姉さんみたい。
次に僕達は魔法隊の建物に行ってみた。
扉が軽い音をたてて開く。
「あ・・・・」
良く見ずに扉を開いてしまった。
中に人がいたのだ。しかもその人とはこの間僕を蹴った戦士。
扉を開いた瞬間に、そいつとストルーアさんが振り返る。
今見ると、その戦士は髪が赤いというだけであまり兄さんには似ていなかった。
身長はシェルより頭一つ分ぐらい高い。髪は短く切られている。鋭い目つきだが、女子からは好かれそうな感じの青年だ。
世間でいう「格好いい」という言葉に当てはまっている。
「あの時の、子供(ガキ)か」
低い声でぼそりと呟く。
子供って・・・そりゃあんたから見れば子供ですけどね・・・。
落ち込む僕をシェルがよしよしと慰めてくれる。
な、情ない。
「やめんかウォーク。戦士隊をクビになったからといって他の人に当たるでない」
その言葉を無視して、そのウォークという青年は僕の近くに来る。
僕はびくびくしながら言った。
「な、なんだよ」
「お前、あの地下牢をどうやって抜け出した?」
「ど、どうだっていいだろぉっ!」
「それにこの竜・・・」
そう言うとウォークは肩にいたラクナスをひょいっと持ち上げた。
「やめろよ!ラクナスに何すんだ!」
まるでおもちゃを取り上げられた子供のように突っかかる僕。
「ラクナス・・・?」
ウォークがまじまじとラクナスを見る。
「まさか・・・。あいつは消されたはずじゃ・・・」
その言葉にかっとなった僕はラクナスを奪い取った。そしてただ、ラクナスを力一杯抱きしめた。
「消された!?それはどういうことじゃ、ウォーク!ラクナス殿は・・・」
ガタ、という音と共にストルーアさんが立ち上がる音が聞こえた。きっと顔は青ざめているのだろう。
僕はうずくまったままずっとラクナスを抱きしめていた。
でも悲しくて。
何故だか兄のことを言われるたびに悲しくなって、涙が、ラクナスの羽の上に落ちた。
それに気づいたのか、シェルは僕の頭をそっと撫でてくれ、
「大丈夫よ」
とささやいてくれた。
僕の頭上ではまだ言い争いが続いていた。どうやらウォークが、ラクナスが消された事をストルーアさんに話しているらしい。
ラクナスはただ・・・・嬉しそうに尻尾を振っていた。あまり状況を理解していないらしい。

「おい。えーっと・・・。お前、ちょっと立てよ」
ウォークがぶっきらぼうに話しかけてきた。
いやだ。今は立ちたくない。
「おい」
僕に触れようとしたらしいウォークをシェルが怒る。
「ちょっとやめなさい。まだそっとしておいてあげなさいよ」
「でも、じゃないと話が始まんないぜ・・・」
「いいのよ・・・。ロムル、落ち着いたら言ってちょうだい。ね?」
良かった。シェルは優しい。


「落ち着いた?ロムル」
無言でうなずく僕に、そう、と微笑みかけるシェル。ラクナスも肩のところで身体を僕の顔にすり寄せてくる。
「さて、いいかの。ロムル殿」
ストルーアさんがそう言ったので僕は頷いた。
「そこの娘さんに聞いたが、まあ赤髪がどうして珍しいか、そういう事はお兄さんにでも聞いて下され。一応伝説にはなっておりますが、私ではいまいち分からないところがありますし、このウォークが口を割るとも思えませんしな」
ちらっとウォークの方を見ると、ウォークは壁に寄りかかり、窓の外をじっと見ている。
「で、でも、その兄が・・・」
「分かっております。で、あなたはどうするのです?」
・・・・このまま帰っても仕方ないし。
「えっと、兄を消した魔法使いのところに行こうと思います」
「やはりそうされますか・・・。・・・・ウォーク」
呼びかけに応えてウォークが振り返る。
「ウォーク、お前も一緒についていってやれ」
「は!? ど、どうしてだよ!」
「どうしてって、ロムル殿のところは少年とか弱い女性。とても戦力らしきものが見られない。だからお前が守ってあげなさい」
「関係ないね」
「ああ、そう。ラクナスとあんなに仲が良かったお前が、その弟さんとなると手を貸せなくなるのか。そーかそーか。ラクナスが聞いたら何て思うかの」
「う」
「良かったですな。ロムル殿」
「え?あ、ちょっと待て!ストルーア!!俺はなあっ!」
そうウォークがストルーアに突っかかろうとしたとき、ウォークの服にラクナスが噛みついてぐいぐい引っ張る。
「あっ、こら。・・・・ったく、仕方ないな。負けたよ」
そう言ってウォークは僕の頭をぽんっと叩いた。
「よろしくな。・・・・えー・・・っと・・・」
「ロムルだよ」
「ロムル、ね」

どうやら彼は忘れるのが早いらしい。
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