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番外編
番外編2 僕の幸せ
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目が、覚める。
見慣れた天井に、見慣れた部屋。
そして、隣で微睡む、最愛の人。
愛しいその人の頬を撫でれば、無意識なのか擦り寄って来るのが、本当に可愛らしい。
「ん……」
「あ……ごめん。起こしちゃったかな」
「いえ、……おはようございます。アレン様」
そう、ふわりと微笑んで。
頬にある僕の手に、小さな自分の手を重ねて微笑む、僕の妻。
この国の王妃として、民にも愛されるひと。
「おはよう、ヴィオラ」
ああ、なんて、僕は幸せなんだろう。
優しくヴィオラを抱き寄せて、その額へと口付けを落とした。
「父上、母上! おはようございます!」
「おはようございます。お父様、お母様……」
身支度を済ませて食堂へと赴けば、子供たちがお行儀よく席に着いて待っていた。
元気にハツラツとした挨拶をしてくる愛息子と、もじもじと照れ笑いをする愛娘。
僕とヴィオラによく似た、僕達の宝物。国の宝。
「おはよう、2人とも」
「おはようございます。よく眠れたかしら?」
夫婦で挨拶を返せば、きゃあきゃあと可愛らしい声でそれぞれの答えが返ってくる。
忙しい身だが、食事くらいは家族で取りたい。
そんな僕のわがままを叶えてくれる家族と、城勤めの使用人達には感謝してもし足りない。
朝食が終われば、僕には国王としての。
ヴィオラには王妃としての政務が待っている。
子供達も勉強や稽古で予定が山積みだ。
王妃になりたての頃は、ヴィオラはよく「自分は相応しくないのでは」と不安を漏らしていた。
けれど、どうだろう。結婚して数年で、彼女は国中から愛される王妃へと成長した。
誰に対しても優しく、丁寧な対応をするヴィオラ。
慰問へと貧民街へと出かけた時も、子供やお年寄りに視線を合わせるように、ドレスが汚れるのも厭わずしゃがみ込み話を聞いていた。
そして、その訴えを聞き漏らすことなく、出来うる限り政務に反映しようと試みる。
現に、ヴィオラが王妃になってから、貧民街の治安と孤児院の経営は確実に良くなっている。
まだ取り掛かって数年だからこの程度だけど……きっと、子供たちが大きくなる頃には、見違えるような国になっているだろう。
……僕も、それに負けないような、そんな国王にならなくては。
互いに支え合い、補い合い、成長し合っていけるような。
そんな夫婦に、ヴィオラとならなれるだろう。
「父上! 今日は午後に、皆で中庭をお散歩するのですよね?」
「ああ、そうだよ。明後日のガーデンパーティーの下見のためにね。お手伝いしてくれるかな?」
「はい……!」
「もちろんですっ!」
花が咲くように笑う、僕達の宝物。
眩しい笑顔に、ヴィオラと2人、顔を見合わせて僕達も笑いあった。
──ああ、僕は、なんて幸せなんだろう。
***
午後、家族と共に華やかなガーデンをゆっくりど歩く。
大小鮮やかなローズが花咲くそこで、穏やかな時間が流れる。
多少の無理をしてでも、午前中に全ての書類を終わらせた甲斐があったなぁ……。
「あっ、うさちゃん!」
「可愛いね、あっちに行っちゃった」
子供達が走り出し、それをヴィオラが窘める。
僕はそれに笑って、彼女達を追いかけて、護衛として着いてきてくれた、騎士のみんなも笑っている。
王族として、幼い頃から僕自身寂しい思いをすることも多かった。
そんな時、そばにいてくれたのは、婚約者であるヴィオラだった。
まだ、婚約者のいない2人の子供達。
2人のためにも、家族の時間はなるべく取るようにしたい。
それが僕とヴィオラの出した結論だ。
「ヴィオラ、大丈夫かい?」
「ええ、アレン様も、無理をなさらないでくださいね?」
2人で自然と、お互いへの労りを口にする。
それが何だかくすぐったくて、心のやわい部分がぬくもりで満ちるかのようで──僕は、ヴィオラの手を優しく握り直した。
もう、この手が離れることの、ないように。
見慣れた天井に、見慣れた部屋。
そして、隣で微睡む、最愛の人。
愛しいその人の頬を撫でれば、無意識なのか擦り寄って来るのが、本当に可愛らしい。
「ん……」
「あ……ごめん。起こしちゃったかな」
「いえ、……おはようございます。アレン様」
そう、ふわりと微笑んで。
頬にある僕の手に、小さな自分の手を重ねて微笑む、僕の妻。
この国の王妃として、民にも愛されるひと。
「おはよう、ヴィオラ」
ああ、なんて、僕は幸せなんだろう。
優しくヴィオラを抱き寄せて、その額へと口付けを落とした。
「父上、母上! おはようございます!」
「おはようございます。お父様、お母様……」
身支度を済ませて食堂へと赴けば、子供たちがお行儀よく席に着いて待っていた。
元気にハツラツとした挨拶をしてくる愛息子と、もじもじと照れ笑いをする愛娘。
僕とヴィオラによく似た、僕達の宝物。国の宝。
「おはよう、2人とも」
「おはようございます。よく眠れたかしら?」
夫婦で挨拶を返せば、きゃあきゃあと可愛らしい声でそれぞれの答えが返ってくる。
忙しい身だが、食事くらいは家族で取りたい。
そんな僕のわがままを叶えてくれる家族と、城勤めの使用人達には感謝してもし足りない。
朝食が終われば、僕には国王としての。
ヴィオラには王妃としての政務が待っている。
子供達も勉強や稽古で予定が山積みだ。
王妃になりたての頃は、ヴィオラはよく「自分は相応しくないのでは」と不安を漏らしていた。
けれど、どうだろう。結婚して数年で、彼女は国中から愛される王妃へと成長した。
誰に対しても優しく、丁寧な対応をするヴィオラ。
慰問へと貧民街へと出かけた時も、子供やお年寄りに視線を合わせるように、ドレスが汚れるのも厭わずしゃがみ込み話を聞いていた。
そして、その訴えを聞き漏らすことなく、出来うる限り政務に反映しようと試みる。
現に、ヴィオラが王妃になってから、貧民街の治安と孤児院の経営は確実に良くなっている。
まだ取り掛かって数年だからこの程度だけど……きっと、子供たちが大きくなる頃には、見違えるような国になっているだろう。
……僕も、それに負けないような、そんな国王にならなくては。
互いに支え合い、補い合い、成長し合っていけるような。
そんな夫婦に、ヴィオラとならなれるだろう。
「父上! 今日は午後に、皆で中庭をお散歩するのですよね?」
「ああ、そうだよ。明後日のガーデンパーティーの下見のためにね。お手伝いしてくれるかな?」
「はい……!」
「もちろんですっ!」
花が咲くように笑う、僕達の宝物。
眩しい笑顔に、ヴィオラと2人、顔を見合わせて僕達も笑いあった。
──ああ、僕は、なんて幸せなんだろう。
***
午後、家族と共に華やかなガーデンをゆっくりど歩く。
大小鮮やかなローズが花咲くそこで、穏やかな時間が流れる。
多少の無理をしてでも、午前中に全ての書類を終わらせた甲斐があったなぁ……。
「あっ、うさちゃん!」
「可愛いね、あっちに行っちゃった」
子供達が走り出し、それをヴィオラが窘める。
僕はそれに笑って、彼女達を追いかけて、護衛として着いてきてくれた、騎士のみんなも笑っている。
王族として、幼い頃から僕自身寂しい思いをすることも多かった。
そんな時、そばにいてくれたのは、婚約者であるヴィオラだった。
まだ、婚約者のいない2人の子供達。
2人のためにも、家族の時間はなるべく取るようにしたい。
それが僕とヴィオラの出した結論だ。
「ヴィオラ、大丈夫かい?」
「ええ、アレン様も、無理をなさらないでくださいね?」
2人で自然と、お互いへの労りを口にする。
それが何だかくすぐったくて、心のやわい部分がぬくもりで満ちるかのようで──僕は、ヴィオラの手を優しく握り直した。
もう、この手が離れることの、ないように。
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