【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき

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10 彼女との邂逅

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「これは、マーガレットご令嬢!もう大丈夫なのですか?」
「ええ、ご心配をお掛けして、ごめんなさい。あんなことがあったものだから……」
「無理もありません。あのような嘘を並べて言い逃げしようなどと……ご心労がたたるのも当たり前です」
「ふふ、宰相様。ありがとうございます」

宰相と、にこやかに会話をする声が聞こえてくる。
軽やかな、女らしい、可愛らしいと形容出来る、少女の声。

なのに、何故だろう。
──先程感じたような、背中を舐めあげられるかのような、嫌悪感が……全身を走る。

「それで、そちらの方は……?」
「ああ、ご紹介が遅れましたな。こちらの方々は──……」

紹介をされそうになり、そちらを振り向こうと、足を動かし、て──………



「兄貴!!!!」



──ぐいっ!!
イライアスに、強く腕を引かれて、それを阻止される。

「すいません!ちょっと御手洗お借りします!!」
「は!!!?」

振り向きもせずに声を張り上げるライに、俺は引きずられるようにそこから走り去ることになった。

背中に、まとわりつくような視線を、ずっと感じながら。


※※※


「……ここらでいいかな……」
「お前、ほんと、覚えとけ」

ふう、と息を吐くライの横で、息も絶え絶えな俺。
俺だって腕には覚えもあるが、ほんとにこいつは(美形な)脳筋ゴリラだ。んな体力どこから湧き上がりやがるんだよ……!
ライ、お前は王子としての自覚を持て。隣国の王城で『御手洗』とか大声で言うな。帰ったら侍女長に言いつけるからなお前。

「……お前、なんであんなことしたんだ」
「ごめん。……なんか、『あの子』と話をしたら、ダメな気がしたんだ」

よく、わかんないんだけどさ。
そう頭を搔くライを見て、静かに溜飲を下げた。
前も言ったように、こいつは直感力に優れている。こいつが『そう』だと言うのなら、きっとそうなんだろう。
勝手に城を走り回ってしまったが、まあ、最悪御手洗を探して迷子になったとでも言えばいい。

息を整えゆるりと辺りを見渡せば、来賓として来る俺達が1度も足を踏み入れたことがない、少し奥まったところだった。
……城務めの人達の、居住区……に、近いのか?

ひっそりと静まり返った、静かな区域。
来賓が通るきらびやかな本館とは違う、城にしては質素めな作りは、とても公爵令嬢という高位な者がいるようには思えない。

──1度戻るか……

そう思い、踵を返そうとした。
その時……

「失礼致します」

俺とライは、1人の女性に声をかけられた。

「……なんだ」
「御無礼を承知で失礼致します。御謁見、お許しくださいませ」

そこにいたのは、メイド服に身を包む、1人と女性だった。彼女の胸にはひとつのバッジが光っている。
城勤めのメイドではない。制服が違う。
そして何より、バッジ付きのメイドということは、彼女は『高位貴族の屋敷の侍女長』である事を示している。

そして確か、このバッジの紋章は──……

「許す。顔を上げてくれ」
「ありがとうございます。申し遅れました。わたくしは、ライラック公爵家侍女長を勤めております。

──……クレアと申します」


ライラック家……ヴィオラの家の、ものだ。


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