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2章 レベ上げとパーティ結成

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 マガミの神域から出た翌日。
 私とライルは、カリラの街へと来ていた。
 
 目的はギルド。
 ついに、私とライルでパーティを結成する日が来た。
 
 ……と、いうのは建前で。
 
「なあ! ナギ、あれなんだ!?」
「あれはパン屋です。帰りに寄りましょうか」
 
「あれは!?」
「武具屋さんですね。出発前にお邪魔しますよ」
 
「じゃあ、あれは?!」
「病院ですね 」
「それはいいや」
「ダメですよ?」
 
 今日はライルの街デビューだったりする。
 
 
 
 ライルを拾ったのは1ヶ月前だが、今まで街に出したことはなかった。
 それは純粋にライルの怪我が酷かったのもあるし、ライルが怖がったのだ。
 
 元々、ライルは奴隷だった。
 他人を怖がるのも仕方ないし、まだ彼を狙う奴隷商が辺りをうろついている可能性もあったから、今まで無理強いもしなかったのだ。
 
 だが、これからは冒険者としてライルも外の世界へと旅立つのだ。
 ギルドへの登録もしなければいけないし……と連れ出してみたら、これだ。
 
 まるでお母さんと初めてのショッピングモールへやって来てはしゃぐ子供そのもの。はい、可愛い。
 こんなに喜んでくれるなら、もっと早くに街デビューしても良かったかもしれないなぁ。
 
 なんて呑気に考えていると、ライルに顔を覗きこまれた。
 
「……なあ。ナギの家のある、あの山は神域なんだろ?」
「ええ、らしいですね」
「で、マガミのいたとこは聖域?」
「らしいですね」
「……差ってなんだ??」
「さあ? 私にもよく分かってません」
「えええ」
 
 嘘だろ、という顔を向けるライルだが、わかんないものは仕方ない。
 そもそも『神域』やら『聖域』やらは数が少ないんだ。
 その分、研究や世間の定説というものも確率していない。
 
 私に分かることは、この山が『加護持ちしか入れない山』であり、師匠曰く『神域』だということ。
 そして、マガミの住まう空間がこちらとは別の次元に存在する『聖域』だと師匠が言っていた、ということ。
 
 そう説明すると、ライルはものすごく怪訝そうな顔をして。
 
「………ナギの師匠って何者だよ」
 
 と、呟いた。
 
「さあ? ただの凄腕の『調合師』で、お酒と女と金にだらしないクソじじ──おじいさんですよ」 
 
 あのたぬきじじ……おじいさんにはそれくらいの認識で十分です。
 色々と物知りだけど、相当なお年だったし、年の功というものだろう。
 
「まあ、師匠の事なんてどうでもいいんです」
「言い方がひでえ」
「今どこをほっつき歩いてるのかも分かりませんし、気にするだけ無駄ですよ。ほら、着きましたよ」
 
 ──ここがギルドです。
 
 さあ、目指せ『私の考える最強のパーティ』への第一歩である。
 
 
 ***
 
 
「はい、ライルさんの登録と、ナギさんとのパーティ結成。どちらも終わりましたよぉ~♡」
「ありがとうございます、リースさん」
 
 ぱむ! と目の前で手を打つリースさんに、ニコリと笑ってお礼を一言。
 ライルもぺこりと頭を下げた。
 
「いいえ、お仕事ですもの。お気にならさず~。……それはそうと、ナギさんってば、またいい男連れてきましたねぇ」
「ふふ、そうでしょう。自慢のパートナーですよ」
「ええ、ほんと……食べちゃいたいくらい」
 
 ペロリと舌なめずりをするリースさんはえっちだ。
 すう、っとまつ毛ばっさばさの水色の大きなお目目が細まり、浮かべる微笑みは大変えっちだ。
 うちの子にはまだ早いです!!
 
 赤くなっちゃったライルの足を踏んだり、慌てるライルをお気に召したリースさんが「可愛い~♡」と腕に抱きついたり。
 それでまたライルが真っ赤になって固まっちゃったり。
 わちゃわちゃと賑やかになったギルドの受付カウンターだが。
 
 ──ピロンッ
 
 開きっぱなしだったパーティ結成画面から聞こえた軽やかな音に、全員の動きが止まった。
 
 これは……
 
「パーティ加入希望の申し入れ?」
 
 ……いや、早くない?
 結成して5分も経ってませんが??
 そう、皆で画面を覗き込んで、見えた名前に思わず笑ってしまった。
 笑ったのは私だけで、ライルとリースさんはぎょっとして固まってしまったけれど、無理もない。
 
「ははっ、相変わらずだなぁ」
「えっ、えっ?! ナギさん、この方って……!?」
 
 相も変わらず、彼女はタイミングが良い。
 カウトしに行こうと考えていた人物からの連絡に、私の機嫌はうなぎ登りだ。
 
「ライル、次の仲間が見つかりましたよ」
「は!? 次の仲間……って、コレが!?」
 
 
 私たちのパーティに申請をした女性。
 
 その名をティアナ・クライマー。
 職業『精霊女王』。
 
 
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