7 / 10
2章 レベ上げとパーティ結成
07
しおりを挟む
マガミと呼ばれた狼は、満足そうに目を細める。
日に透けるような豊かな白銀の長毛に覆われた体躯は、私の身長よりも大きい。目の縁や額に走る赤い紋様は、目を奪われるような鮮やかさだ。
まさに『神聖なる生き物です』というようなこの風貌の持ち主である彼は、この山の主にあたる。
マガミとの出会いは、師匠に拾われた直後に遡る。
それからだいぶお世話になっている、友人の1人だ。
『ナギ、しばらくだったな。息災か?』
「ええ、おかげさまで。マガミも相変わらずの毛艶ですね」
『そんな事はない。ぶらっしんぐをしてくれるものがいないせいで、以前よりも艶がなかろう?』
「長く山を空けてすいませんでした。またやらせて頂きますね」
舌っ足らずなカタカナ可愛いなぁ、もう!
それに、ああ、なんて素晴らしいもふもふだ……。
擦り寄るマガミに抱きつくように毛並みを堪能する。
大きなわんちゃんなんて全人類の夢そのものだろう。しかも狼。ウルフ。かっこいい。
かっこよくて可愛い私の友人はなんて素晴らしいことか。
正直もっともっと久しぶりに再会した友との触れ合いを楽しみたいが、そうともいかない。
私は、毛を逆立て固まっているライルへと視線を移した。
「マガミ、今日は彼を紹介しに来たんです」
『ああ、観ていたとも。だから招いたんだ』
おっ、これは話が早そうだ。
『いつぞやの小僧と違い、気概のありそうな眷属だ』
そう言うマガミは、心做しか笑っているように見える。
……どちらかと言えば『にこっ』じゃなくて『にやぁ』って感じの笑い方に見えるのは気のせいかな。気のせいだね、うん。
それにしても、眷属か。なるほど。
マガミは狼の姿をしている、山の主。
そしてライルは、黒狼の獣人。
以前マガミは言っていた。
『狼を司るもの達は、全て我の眷属であり子である』と。
……ライル、君は本当に運がいい。
「では、彼をお願いできますか?」
『ああ、勿論だとも』
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
サクサクと進んでいた話に待ったをかけたのは、ライルその人だ。
引きつった顔のまま、片手をこちらに差し出し静止を求めている。そんな顔してたらせっかくのイケメンが台無しだよ、ライル。どうしたどうした。
そんなに困惑しなくたって、もう分かっているクセに。
「……なんだ、つまり、あれか? 俺は神獣レベルの存在に鍛えて貰うために、ここまで来たってのか?」
ライルが導き出した答えは、まさしくそのもの。
察しも良い眷属に、マガミも思わずニッコリした。
***
麗らかな木漏れ日。
静かな湖のほとり。囀ることり達。
ああ、なんて素敵な休日だろうか。
──背後で聞こえる、断末魔さえなければ、だが。
「ぐあ、ぁ……ッッ」
『ほれ、どうした。その程度か? 我が眷属よ』
あ、あれは内蔵イったな。
湖のほとりにあった岩に腰掛けながら食べていたサンドイッチを籠に入れ、勢いよく肉体回復のポーションをライルへと投げつける。
バシャリと軽い音がして、淡い光にライルの身体が包まれたかと思えば、次の瞬間には怪我が全回復した。
そして、息つく暇もなく、またマガミの牙が襲いかかって来るのだ。
ライルはこれを今のところ3日繰り返している。
え? 何でこんなことをしているのかって?
さて、それではここで問題です。
Q:手っ取り早く、かつ確実にレベルを上げるにはどうしたらいいですか?
A:自分より高レベルな存在と死ぬギリギリまで戦うのを繰り返せばいいです。
つまりはそういうことだ。
「スパルタにも程があんだろぉがぁぁああああッッッ!!!!」
ライルの叫び声は、空高く響き渡った。
日に透けるような豊かな白銀の長毛に覆われた体躯は、私の身長よりも大きい。目の縁や額に走る赤い紋様は、目を奪われるような鮮やかさだ。
まさに『神聖なる生き物です』というようなこの風貌の持ち主である彼は、この山の主にあたる。
マガミとの出会いは、師匠に拾われた直後に遡る。
それからだいぶお世話になっている、友人の1人だ。
『ナギ、しばらくだったな。息災か?』
「ええ、おかげさまで。マガミも相変わらずの毛艶ですね」
『そんな事はない。ぶらっしんぐをしてくれるものがいないせいで、以前よりも艶がなかろう?』
「長く山を空けてすいませんでした。またやらせて頂きますね」
舌っ足らずなカタカナ可愛いなぁ、もう!
それに、ああ、なんて素晴らしいもふもふだ……。
擦り寄るマガミに抱きつくように毛並みを堪能する。
大きなわんちゃんなんて全人類の夢そのものだろう。しかも狼。ウルフ。かっこいい。
かっこよくて可愛い私の友人はなんて素晴らしいことか。
正直もっともっと久しぶりに再会した友との触れ合いを楽しみたいが、そうともいかない。
私は、毛を逆立て固まっているライルへと視線を移した。
「マガミ、今日は彼を紹介しに来たんです」
『ああ、観ていたとも。だから招いたんだ』
おっ、これは話が早そうだ。
『いつぞやの小僧と違い、気概のありそうな眷属だ』
そう言うマガミは、心做しか笑っているように見える。
……どちらかと言えば『にこっ』じゃなくて『にやぁ』って感じの笑い方に見えるのは気のせいかな。気のせいだね、うん。
それにしても、眷属か。なるほど。
マガミは狼の姿をしている、山の主。
そしてライルは、黒狼の獣人。
以前マガミは言っていた。
『狼を司るもの達は、全て我の眷属であり子である』と。
……ライル、君は本当に運がいい。
「では、彼をお願いできますか?」
『ああ、勿論だとも』
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
サクサクと進んでいた話に待ったをかけたのは、ライルその人だ。
引きつった顔のまま、片手をこちらに差し出し静止を求めている。そんな顔してたらせっかくのイケメンが台無しだよ、ライル。どうしたどうした。
そんなに困惑しなくたって、もう分かっているクセに。
「……なんだ、つまり、あれか? 俺は神獣レベルの存在に鍛えて貰うために、ここまで来たってのか?」
ライルが導き出した答えは、まさしくそのもの。
察しも良い眷属に、マガミも思わずニッコリした。
***
麗らかな木漏れ日。
静かな湖のほとり。囀ることり達。
ああ、なんて素敵な休日だろうか。
──背後で聞こえる、断末魔さえなければ、だが。
「ぐあ、ぁ……ッッ」
『ほれ、どうした。その程度か? 我が眷属よ』
あ、あれは内蔵イったな。
湖のほとりにあった岩に腰掛けながら食べていたサンドイッチを籠に入れ、勢いよく肉体回復のポーションをライルへと投げつける。
バシャリと軽い音がして、淡い光にライルの身体が包まれたかと思えば、次の瞬間には怪我が全回復した。
そして、息つく暇もなく、またマガミの牙が襲いかかって来るのだ。
ライルはこれを今のところ3日繰り返している。
え? 何でこんなことをしているのかって?
さて、それではここで問題です。
Q:手っ取り早く、かつ確実にレベルを上げるにはどうしたらいいですか?
A:自分より高レベルな存在と死ぬギリギリまで戦うのを繰り返せばいいです。
つまりはそういうことだ。
「スパルタにも程があんだろぉがぁぁああああッッッ!!!!」
ライルの叫び声は、空高く響き渡った。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

婚約破棄感謝します!~え!?なんだか思ってたのと違う~
あゆむ
ファンタジー
ラージエナ王国の公爵令嬢である、シーナ・カルヴァネルには野望があった。
「せっかく転生出来たんだし、目一杯楽しく生きなきゃ!!」
だがどうやらこの世界は『君は儚くも美しき華』という乙女ゲームで、シーナが悪役令嬢、自分がヒロインらしい。(姉談)
シーナは婚約破棄されて国外追放になるように努めるが……

召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~
紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ
恋愛
「それでは魔王様、勇者が攻めて来ますので我が軍を率いて何とかして下さい」「……え?」
気づけばそこは暗黒城の玉座で、目の前には金髪碧眼のイケメンが跪いている。
私が魔王の生まれ変わり?何かの間違いです勘弁して下さい。なんだか無駄に美形な人外達に囲まれるけど逆ハーとか求めてないんで家に帰して!
これは、渋々ながらもリーダーを務めることになった平凡OLが(主においしいゴハンを食べる為に)先代魔王の知識やら土魔法やらを駆使して、争いのない『優しい国』を目指して建国していく物語。
◆他サイトにも投稿

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる