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2章 レベ上げとパーティ結成
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マガミと呼ばれた狼は、満足そうに目を細める。
日に透けるような豊かな白銀の長毛に覆われた体躯は、私の身長よりも大きい。目の縁や額に走る赤い紋様は、目を奪われるような鮮やかさだ。
まさに『神聖なる生き物です』というようなこの風貌の持ち主である彼は、この山の主にあたる。
マガミとの出会いは、師匠に拾われた直後に遡る。
それからだいぶお世話になっている、友人の1人だ。
『ナギ、しばらくだったな。息災か?』
「ええ、おかげさまで。マガミも相変わらずの毛艶ですね」
『そんな事はない。ぶらっしんぐをしてくれるものがいないせいで、以前よりも艶がなかろう?』
「長く山を空けてすいませんでした。またやらせて頂きますね」
舌っ足らずなカタカナ可愛いなぁ、もう!
それに、ああ、なんて素晴らしいもふもふだ……。
擦り寄るマガミに抱きつくように毛並みを堪能する。
大きなわんちゃんなんて全人類の夢そのものだろう。しかも狼。ウルフ。かっこいい。
かっこよくて可愛い私の友人はなんて素晴らしいことか。
正直もっともっと久しぶりに再会した友との触れ合いを楽しみたいが、そうともいかない。
私は、毛を逆立て固まっているライルへと視線を移した。
「マガミ、今日は彼を紹介しに来たんです」
『ああ、観ていたとも。だから招いたんだ』
おっ、これは話が早そうだ。
『いつぞやの小僧と違い、気概のありそうな眷属だ』
そう言うマガミは、心做しか笑っているように見える。
……どちらかと言えば『にこっ』じゃなくて『にやぁ』って感じの笑い方に見えるのは気のせいかな。気のせいだね、うん。
それにしても、眷属か。なるほど。
マガミは狼の姿をしている、山の主。
そしてライルは、黒狼の獣人。
以前マガミは言っていた。
『狼を司るもの達は、全て我の眷属であり子である』と。
……ライル、君は本当に運がいい。
「では、彼をお願いできますか?」
『ああ、勿論だとも』
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
サクサクと進んでいた話に待ったをかけたのは、ライルその人だ。
引きつった顔のまま、片手をこちらに差し出し静止を求めている。そんな顔してたらせっかくのイケメンが台無しだよ、ライル。どうしたどうした。
そんなに困惑しなくたって、もう分かっているクセに。
「……なんだ、つまり、あれか? 俺は神獣レベルの存在に鍛えて貰うために、ここまで来たってのか?」
ライルが導き出した答えは、まさしくそのもの。
察しも良い眷属に、マガミも思わずニッコリした。
***
麗らかな木漏れ日。
静かな湖のほとり。囀ることり達。
ああ、なんて素敵な休日だろうか。
──背後で聞こえる、断末魔さえなければ、だが。
「ぐあ、ぁ……ッッ」
『ほれ、どうした。その程度か? 我が眷属よ』
あ、あれは内蔵イったな。
湖のほとりにあった岩に腰掛けながら食べていたサンドイッチを籠に入れ、勢いよく肉体回復のポーションをライルへと投げつける。
バシャリと軽い音がして、淡い光にライルの身体が包まれたかと思えば、次の瞬間には怪我が全回復した。
そして、息つく暇もなく、またマガミの牙が襲いかかって来るのだ。
ライルはこれを今のところ3日繰り返している。
え? 何でこんなことをしているのかって?
さて、それではここで問題です。
Q:手っ取り早く、かつ確実にレベルを上げるにはどうしたらいいですか?
A:自分より高レベルな存在と死ぬギリギリまで戦うのを繰り返せばいいです。
つまりはそういうことだ。
「スパルタにも程があんだろぉがぁぁああああッッッ!!!!」
ライルの叫び声は、空高く響き渡った。
日に透けるような豊かな白銀の長毛に覆われた体躯は、私の身長よりも大きい。目の縁や額に走る赤い紋様は、目を奪われるような鮮やかさだ。
まさに『神聖なる生き物です』というようなこの風貌の持ち主である彼は、この山の主にあたる。
マガミとの出会いは、師匠に拾われた直後に遡る。
それからだいぶお世話になっている、友人の1人だ。
『ナギ、しばらくだったな。息災か?』
「ええ、おかげさまで。マガミも相変わらずの毛艶ですね」
『そんな事はない。ぶらっしんぐをしてくれるものがいないせいで、以前よりも艶がなかろう?』
「長く山を空けてすいませんでした。またやらせて頂きますね」
舌っ足らずなカタカナ可愛いなぁ、もう!
それに、ああ、なんて素晴らしいもふもふだ……。
擦り寄るマガミに抱きつくように毛並みを堪能する。
大きなわんちゃんなんて全人類の夢そのものだろう。しかも狼。ウルフ。かっこいい。
かっこよくて可愛い私の友人はなんて素晴らしいことか。
正直もっともっと久しぶりに再会した友との触れ合いを楽しみたいが、そうともいかない。
私は、毛を逆立て固まっているライルへと視線を移した。
「マガミ、今日は彼を紹介しに来たんです」
『ああ、観ていたとも。だから招いたんだ』
おっ、これは話が早そうだ。
『いつぞやの小僧と違い、気概のありそうな眷属だ』
そう言うマガミは、心做しか笑っているように見える。
……どちらかと言えば『にこっ』じゃなくて『にやぁ』って感じの笑い方に見えるのは気のせいかな。気のせいだね、うん。
それにしても、眷属か。なるほど。
マガミは狼の姿をしている、山の主。
そしてライルは、黒狼の獣人。
以前マガミは言っていた。
『狼を司るもの達は、全て我の眷属であり子である』と。
……ライル、君は本当に運がいい。
「では、彼をお願いできますか?」
『ああ、勿論だとも』
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
サクサクと進んでいた話に待ったをかけたのは、ライルその人だ。
引きつった顔のまま、片手をこちらに差し出し静止を求めている。そんな顔してたらせっかくのイケメンが台無しだよ、ライル。どうしたどうした。
そんなに困惑しなくたって、もう分かっているクセに。
「……なんだ、つまり、あれか? 俺は神獣レベルの存在に鍛えて貰うために、ここまで来たってのか?」
ライルが導き出した答えは、まさしくそのもの。
察しも良い眷属に、マガミも思わずニッコリした。
***
麗らかな木漏れ日。
静かな湖のほとり。囀ることり達。
ああ、なんて素敵な休日だろうか。
──背後で聞こえる、断末魔さえなければ、だが。
「ぐあ、ぁ……ッッ」
『ほれ、どうした。その程度か? 我が眷属よ』
あ、あれは内蔵イったな。
湖のほとりにあった岩に腰掛けながら食べていたサンドイッチを籠に入れ、勢いよく肉体回復のポーションをライルへと投げつける。
バシャリと軽い音がして、淡い光にライルの身体が包まれたかと思えば、次の瞬間には怪我が全回復した。
そして、息つく暇もなく、またマガミの牙が襲いかかって来るのだ。
ライルはこれを今のところ3日繰り返している。
え? 何でこんなことをしているのかって?
さて、それではここで問題です。
Q:手っ取り早く、かつ確実にレベルを上げるにはどうしたらいいですか?
A:自分より高レベルな存在と死ぬギリギリまで戦うのを繰り返せばいいです。
つまりはそういうことだ。
「スパルタにも程があんだろぉがぁぁああああッッッ!!!!」
ライルの叫び声は、空高く響き渡った。
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