1 / 10
1 勇者パーティからの追放
01
しおりを挟む
勇者というものをご存知だろうか。
そう、RPGゲームでよくある、『アレ』の事だ。
神やら 神官やら国王やらに選ばれた、国を救う英雄。
……の、はずなんだけど。
「ナギ!お前をパーティから追放する!!」
「はあ。そうですか。一応理由を聞いても?」
私が異世界転移した先の勇者とやらは、随分違う気質のようだ。
3人の女性を侍らせながら意気揚々と宣言する『この世界の勇者』に、気の抜けた声が漏れたのは仕方ないと思う。
※※※
私、小毬 凪は、剣と魔法の世界に転移した。
何とも在り来りな話だが、通勤のため電車待ちの最前列に並んでいたら酔っ払いに背後からぶつかられてそのままお陀仏。
気がついたらRPGゲームのような世界にぽつんと放り出されていたのだ。
スーツ姿で草原に座り込む私を拾ってくれたのは近所で薬売りを営むおじいさん──後の師匠となる人物だった。
師匠からこの世界の常識、生きる術、そして薬師としての知識と技術の全てを叩き込まれた私は、2年前に独り立ちした。
というか、独り立ちせざるを得なかった。
なんてったって、朝起きたら師匠がひとつの置き手紙を残して消えていたのだから。
『もう大丈夫じゃろ。あとは気張って生きろ。じゃあの☆』
なんとも気の抜ける、クソじ──じゃない、タヌキじじ……でもなく、師匠らしいと思った。
ちなみに手紙は感動のあまり握り潰していたらしく、シワッシワになっていた。
次にあったらお礼をたくさんしようと思う。ええ、それはもうたっっっくさん。
そのために、独り立ちした今でも私は薬の調合の修行を欠かした事は無い。
最近では「1滴垂らしただけで毛髪を全て枯らす薬」や「腸内でガスの発生が止まらなくなる薬」などを開発した。師匠へと送るのがとても楽しみだ。
……話が逸れた。
師匠の話になると、それはもう多大なる感謝と愛が溢れてしまうのは私の悪癖だ。
まあ、そんなこんなで独り立ちした私は、この世界のギルドへ所属することにしたのだ。
この世界には魔法が存在する。
そして、魔物も。
魔力を持たず魔法を使えない一般市民では強力な魔物に太刀打ち出来ない。
そのため、魔物を倒す術を持つ者達──『冒険者』へと依頼をし、金銭と引き換えに魔物を駆逐して貰うのだ。そして冒険者達は金銭を得て生活をたてる。
実にwin-winな関係だ。
そして、その依頼のやり取りが円滑に進むようにと作られたのが、『ギルド』だ。
まあ、ここら辺は漫画やゲームでお馴染みだろう。無駄な説明は要らないと思う。
ギルドに所属する冒険者の種類は様々だ。
剣士、魔法使い、治癒者、獣操縦士──……そして私のような調合師とか。
そう、RPGゲームでよくある、『アレ』の事だ。
神やら 神官やら国王やらに選ばれた、国を救う英雄。
……の、はずなんだけど。
「ナギ!お前をパーティから追放する!!」
「はあ。そうですか。一応理由を聞いても?」
私が異世界転移した先の勇者とやらは、随分違う気質のようだ。
3人の女性を侍らせながら意気揚々と宣言する『この世界の勇者』に、気の抜けた声が漏れたのは仕方ないと思う。
※※※
私、小毬 凪は、剣と魔法の世界に転移した。
何とも在り来りな話だが、通勤のため電車待ちの最前列に並んでいたら酔っ払いに背後からぶつかられてそのままお陀仏。
気がついたらRPGゲームのような世界にぽつんと放り出されていたのだ。
スーツ姿で草原に座り込む私を拾ってくれたのは近所で薬売りを営むおじいさん──後の師匠となる人物だった。
師匠からこの世界の常識、生きる術、そして薬師としての知識と技術の全てを叩き込まれた私は、2年前に独り立ちした。
というか、独り立ちせざるを得なかった。
なんてったって、朝起きたら師匠がひとつの置き手紙を残して消えていたのだから。
『もう大丈夫じゃろ。あとは気張って生きろ。じゃあの☆』
なんとも気の抜ける、クソじ──じゃない、タヌキじじ……でもなく、師匠らしいと思った。
ちなみに手紙は感動のあまり握り潰していたらしく、シワッシワになっていた。
次にあったらお礼をたくさんしようと思う。ええ、それはもうたっっっくさん。
そのために、独り立ちした今でも私は薬の調合の修行を欠かした事は無い。
最近では「1滴垂らしただけで毛髪を全て枯らす薬」や「腸内でガスの発生が止まらなくなる薬」などを開発した。師匠へと送るのがとても楽しみだ。
……話が逸れた。
師匠の話になると、それはもう多大なる感謝と愛が溢れてしまうのは私の悪癖だ。
まあ、そんなこんなで独り立ちした私は、この世界のギルドへ所属することにしたのだ。
この世界には魔法が存在する。
そして、魔物も。
魔力を持たず魔法を使えない一般市民では強力な魔物に太刀打ち出来ない。
そのため、魔物を倒す術を持つ者達──『冒険者』へと依頼をし、金銭と引き換えに魔物を駆逐して貰うのだ。そして冒険者達は金銭を得て生活をたてる。
実にwin-winな関係だ。
そして、その依頼のやり取りが円滑に進むようにと作られたのが、『ギルド』だ。
まあ、ここら辺は漫画やゲームでお馴染みだろう。無駄な説明は要らないと思う。
ギルドに所属する冒険者の種類は様々だ。
剣士、魔法使い、治癒者、獣操縦士──……そして私のような調合師とか。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ②
KZ
ファンタジー
初めましての人は初めまして。プロデューサーこと、主人公の白夜 零斗(はくや れいと)です。
2回目なので、俺については特に何もここで語ることはありません。みんなが知ってるていでやっていきます。
では、今回の内容をざっくりと紹介していく。今回はホワイトデーの話だ。前回のバレンタインに対するホワイトデーであり、悪魔に対するポンこ……天使の話でもある。
前回のバレンタインでは俺がやらかしていたが、今回はポンこ……天使がやらかす。あとは自分で見てくれ。
※※※
※小説家になろうにも掲載しております。現在のところ後追いとなっております※
貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる