日常探偵団

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
15 / 59

稲穂祭と予言者 その参

しおりを挟む
「二人とも、やめたまえ」
「でも、先輩...」
「まあまあ。しかし、優先すべきは予言者さ」
「予言者...あれはマグレじゃないっすか?」
「マグレで二つを当てるとは、運勢が良すぎるな」
「実際、占いなんて相手が言って欲しそうなことを言えばいいんすよ。占い師は所詮その程度っす」
「バッカ、高田! なかなか探してもいない先輩の唯一の友達を貶(けな)すな!」
「ほお? 新島は私を貶しているようだが」
「あ、いやっ? 違います。えっと、そうっ! これは、あれだ...仲がいい奴のフォロー...」
「私と新島はそんなに仲が良かったか?」
「えっと...同じ部活じゃありませんか?」
「まあいい」
「それより、ナミちゃん。あそこで人が集まってるね」
「また事故か!」
「そうみたいだな」
 車が横転していた。まさか、立てつづけにこんなことが起こるとは。
 軽音楽部のライブが盛り上がり、耳に音楽が響く。そして、その傍(かたわ)らで車が奏でる衝突の騒音が空中に漂い続けていた。
「あそこ、行ってみようっす!」
「ああ。私も同意見だ。三鷹ちゃんと新島はどうだ」
「俺も行きたい!」
「わ、私も」
「一致だ。行こう」
 四人は人が密集していた場所に向かった。そこの前の道路では車が一台ひっくり返っていた。
「七不思議、起こったな」
「なあ、高田。他にポストには何か入ってなかったのか?」
「もちろん。新島が気になっていそうなものは入ってないよ」
「そうか」
「何かわかったのか?」
「まだ、全然わからない。何で事故が平成十八年の稲穂祭の三日間に集中したかなんて、わかるわけがない」
「意図的にやろうと思っても、方法なんてないもんな」
「ああ。まったくその通りだ」
 車から人が降りてきた。運転席側からで、乗っているのはその男が一人だけのようだ。その男は急いでポケットからスマホを取りだして、電話をかけた。
「すみません。事故を起こしてしまって...」
「保険に入っていますので、安心してください。そちらの現在地を教えていただければレッカー移動をしますが、どうしますか?」
「お願いします」
「では、現在地を教えてください」
「えっと──千葉県八坂市の...。あの、そこの生徒さん。この学校名は?」
 野次馬の一人が「八坂中学校だよ」と答えた。運転手はすかさずに電話相手に話した。
「千葉県八坂市の八坂中学校の前の大通りだけど、わかりますか?」
「わかりました。では、レッカー移動をさせていただきます」
「はい」
 運転手は電話を切った。その頃には職員が駆けつけて、野次馬の生徒を払っていた。その波に乗って、四人はその場を離れた。
「新島!」
「高田か...何だよ」
「何だよ、じゃねーよ! それより、この稲穂祭...」
「七不思議の一番目が実行されてるよ」
「じゃなくて、予言者わかったよ」
「は?」
「誰だと思う?」
「誰だよ」
「事故を起こした本人だ」
「だったら、電柱が倒れていたのはどうやってするんだよ」
「手紙にはある事件としか書いてなかった」
「だったら、事故を予想していた紙切れは?」
「そうだな...」
「やっぱり、駄目じゃねーか」
「う~ん?」
 高田は腕を組んでいた。新島はため息をついた。
「誰が何のために予言しているのか、わからないとだめね」
「部長...」
「まあ、まあ。さあて、三鷹ちゃん! 次はどこ行こっか? ほら、高田も新島も。予言者を探すより、楽しむよ!」
 土方は三鷹と肩を組んで先に歩いて行った。
「新島、どうする?」
「ちょっと、俺は部室に戻っていたいが」
「じゃあ、俺も」
「先輩と三鷹先輩の二人で楽しんでもらおう」
「そうだな」
 二人は土方に話して部室の鍵をもらった。それから、急いで部室に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

巨象に刃向かう者たち

つっちーfrom千葉
ミステリー
 インターネット黎明期、多くのライターに夢を与えた、とあるサイトの管理人へ感謝を込めて書きます。資産を持たぬ便利屋の私は、叔母へ金の融通を申し入れるが、拒絶され、縁を感じてシティバンクに向かうも、禿げた行員に挙動を疑われ追い出される。仕方なく、無一文で便利屋を始めると、すぐに怪しい来客が訪れ、あの有名アイドルチェリー・アパッチのためにひと肌脱いでくれと頼まれる。失敗したら命もきわどくなる、いかがわしい話だが、取りあえず乗ってみることに……。この先、どうなる……。 お笑いミステリーです。よろしくお願いいたします。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

インスピレーションVS本能

ふら(鳥羽風来)
ミステリー
短い推理小説を書いてみました。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...