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ヴィクトリア朝イギリス
食事
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【イギリスと茶】
朝起きてからアーリー・ティー、朝食にブレックファスト・ティー、午前十一時頃にイレブンジズ、昼食にランチ・ティー、午後にアフタヌーン・ティー、夕方にハイ・ティー、夕食後にアフタ・ディナー・ティー、夜にナイト・ティーをイギリス人は口にしています。
一日でこれですから、消費量が半端ないです。イギリスと茶は、切っても切り離せないほど強く結びついていました。
正典では、アフタヌーン・ティーが一番多く登場しています。
紅茶に砂糖を入れるような習慣も、この頃から始まったものです。
1756年、ロンドンの商人であるジョナス・ハンウェイが『八日間の旅行記』の中で、茶のことを『健康に有害で、工業の発展を妨げ、国民を貧困に陥れる』と言って飲むことに反対をしました。
イギリスで作られた代表的な百科事典『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の初版に『ティ』という項目がありました。そこには『良質の緑茶の茶葉は素晴らしい香りがして、普通の緑茶より渋い味があるが心地よい味。茶に出すと薄いグリーン色でスミレの香りがする。ボヘア茶は緑茶より色が濃く、時に黒みがかっている。ほのかなバラの香りがして甘さと渋さが混じりあったような味がする。』と書かれているようです。
ちなみに、『エンサイクロペディア・ブリタニカ』は日本では『大英百科事典』と訳され、短編『赤髪組合』で質屋ウィルスンが紙に書き写したものです。現在では『ブリタニカ国際大百科事典』という名前で知られています。
【薬としての食事】
短編『白銀号事件』で、カレーにアヘンを混入させて眠らせました。当時のカレーの後味は強烈で、アヘンの味をごまかせます。
当時のカレーは本作のために作りました。作り方などのくわしいことは『正典の謎』の章の『「白銀号事件」の謎』を読んでください。
フリードリヒ・エンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』によると、医者にかかれない労働者達は、有害な売薬を購入していました。広告に書かれている売薬の効能を信じたからです。
その中でも『ゴットフリーズ・コーディアル(ゴットフリーの強心剤)』という水薬を乳幼児に飲ませていました。その水薬は大人しくさせる効果があったものの、それはアヘンが入っていたための効果であって、体に有害でした。それを飲んだ乳幼児達は『顔色の色つやもなくなり、生気を失い、虚弱になり、たいていは二歳にならないうちに死んでしまう』と記されているようです。
薬を与えていた親達は、有害なものだとは思ってもいませんでした。
海外ではペットフードに大麻を入れてペットを大人しくさせていましたが、それと似たようなものでしょう。麻薬が有害だとわかった今日でも同様の行いがされていて、もっとペットを大切にしてもらいたいです。
1712年、寝覚めにチョコレートを飲んだ記述があります。当時は液体のチョコレートなどがありました。短編『まだらの紐』ではコーヒーが眠気覚ましに使われています。
短編『ウィステリア荘』では、濃いコーヒーを飲ませて正気に戻させている描写があります。
女性は気付け薬として以外は、コーヒーを飲みません。当時、コーヒーは男性中心の飲み物でした。男性はコーヒーを飲む場所に入り浸っていたため、女性からの反感も強かったです。1674年には、『コーヒーに反対する女性の誓願』というパンフレットが出ました。
短編『海軍条約文書事件』では、気付け薬としてブランデーが使われています。
【塩漬け】
短編『グロリア・スコット号』では、塩漬けの牛肉が登場しています。長期の航海に耐えられるように大量の塩を利かせ、樽に詰めて入れたものです。タンパク源にはなるものの、味に難があったようです。
短編『ボール箱』では、防腐剤の代わりに粗塩を耳につけています。
腐らせない、という点で塩が使われていました。どちらの例も航海に深い関わりがあるため、腐らせないためには塩だという知識があったのでしょう。
【インペリアル・トカイ】
ホームズはワイン通であり、フランス産の赤ワインのクラレットやボーヌも飲みましたが、白ワインのモンラシェを好んだようです。短編『最後の挨拶』では、ドイツの大物スパイであるフォン・ボルクを捕まえて、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世の特別な酒蔵にあった貴重なワインであるインペリアル・トカイで祝杯を上げました。
このトカイワインがどの種類なのか。フランス王ルイ14世が『ワインの王にして、王のワイン』と言ったほどのデザートワインの逸品であるトカイ・エッセンシアが有力です。女帝マリア・テレジアが、黄金が溶け込んでいると信じてウィーン大学に化学分析をさせたという逸話もあります。
ただ、トカイ・エッセンシアはアルコール濃度5パーセント~8パーセントの甘口ワインで糖分が高いので、グラスで乾杯するような飲み方はおすすめ出来ないようです。
トカイワインで『サモロドニ』という甘さを抑えたドライなワインのものもあり、福島賛さんは『まだまだ研究の余地はありそうである。』と言っています。
朝起きてからアーリー・ティー、朝食にブレックファスト・ティー、午前十一時頃にイレブンジズ、昼食にランチ・ティー、午後にアフタヌーン・ティー、夕方にハイ・ティー、夕食後にアフタ・ディナー・ティー、夜にナイト・ティーをイギリス人は口にしています。
一日でこれですから、消費量が半端ないです。イギリスと茶は、切っても切り離せないほど強く結びついていました。
正典では、アフタヌーン・ティーが一番多く登場しています。
紅茶に砂糖を入れるような習慣も、この頃から始まったものです。
1756年、ロンドンの商人であるジョナス・ハンウェイが『八日間の旅行記』の中で、茶のことを『健康に有害で、工業の発展を妨げ、国民を貧困に陥れる』と言って飲むことに反対をしました。
イギリスで作られた代表的な百科事典『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の初版に『ティ』という項目がありました。そこには『良質の緑茶の茶葉は素晴らしい香りがして、普通の緑茶より渋い味があるが心地よい味。茶に出すと薄いグリーン色でスミレの香りがする。ボヘア茶は緑茶より色が濃く、時に黒みがかっている。ほのかなバラの香りがして甘さと渋さが混じりあったような味がする。』と書かれているようです。
ちなみに、『エンサイクロペディア・ブリタニカ』は日本では『大英百科事典』と訳され、短編『赤髪組合』で質屋ウィルスンが紙に書き写したものです。現在では『ブリタニカ国際大百科事典』という名前で知られています。
【薬としての食事】
短編『白銀号事件』で、カレーにアヘンを混入させて眠らせました。当時のカレーの後味は強烈で、アヘンの味をごまかせます。
当時のカレーは本作のために作りました。作り方などのくわしいことは『正典の謎』の章の『「白銀号事件」の謎』を読んでください。
フリードリヒ・エンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』によると、医者にかかれない労働者達は、有害な売薬を購入していました。広告に書かれている売薬の効能を信じたからです。
その中でも『ゴットフリーズ・コーディアル(ゴットフリーの強心剤)』という水薬を乳幼児に飲ませていました。その水薬は大人しくさせる効果があったものの、それはアヘンが入っていたための効果であって、体に有害でした。それを飲んだ乳幼児達は『顔色の色つやもなくなり、生気を失い、虚弱になり、たいていは二歳にならないうちに死んでしまう』と記されているようです。
薬を与えていた親達は、有害なものだとは思ってもいませんでした。
海外ではペットフードに大麻を入れてペットを大人しくさせていましたが、それと似たようなものでしょう。麻薬が有害だとわかった今日でも同様の行いがされていて、もっとペットを大切にしてもらいたいです。
1712年、寝覚めにチョコレートを飲んだ記述があります。当時は液体のチョコレートなどがありました。短編『まだらの紐』ではコーヒーが眠気覚ましに使われています。
短編『ウィステリア荘』では、濃いコーヒーを飲ませて正気に戻させている描写があります。
女性は気付け薬として以外は、コーヒーを飲みません。当時、コーヒーは男性中心の飲み物でした。男性はコーヒーを飲む場所に入り浸っていたため、女性からの反感も強かったです。1674年には、『コーヒーに反対する女性の誓願』というパンフレットが出ました。
短編『海軍条約文書事件』では、気付け薬としてブランデーが使われています。
【塩漬け】
短編『グロリア・スコット号』では、塩漬けの牛肉が登場しています。長期の航海に耐えられるように大量の塩を利かせ、樽に詰めて入れたものです。タンパク源にはなるものの、味に難があったようです。
短編『ボール箱』では、防腐剤の代わりに粗塩を耳につけています。
腐らせない、という点で塩が使われていました。どちらの例も航海に深い関わりがあるため、腐らせないためには塩だという知識があったのでしょう。
【インペリアル・トカイ】
ホームズはワイン通であり、フランス産の赤ワインのクラレットやボーヌも飲みましたが、白ワインのモンラシェを好んだようです。短編『最後の挨拶』では、ドイツの大物スパイであるフォン・ボルクを捕まえて、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世の特別な酒蔵にあった貴重なワインであるインペリアル・トカイで祝杯を上げました。
このトカイワインがどの種類なのか。フランス王ルイ14世が『ワインの王にして、王のワイン』と言ったほどのデザートワインの逸品であるトカイ・エッセンシアが有力です。女帝マリア・テレジアが、黄金が溶け込んでいると信じてウィーン大学に化学分析をさせたという逸話もあります。
ただ、トカイ・エッセンシアはアルコール濃度5パーセント~8パーセントの甘口ワインで糖分が高いので、グラスで乾杯するような飲み方はおすすめ出来ないようです。
トカイワインで『サモロドニ』という甘さを抑えたドライなワインのものもあり、福島賛さんは『まだまだ研究の余地はありそうである。』と言っています。
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