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ホームズの論文
捜査における犬の用途
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ホームズは短編『這う男』で、捜査における犬の用途について論文を書きたいと言っています。
ホームズいわく、犬はその家族の生活を反映するようで、陰気な家族には陽気な犬、幸福な家庭に悲しげな犬、とげとげしい人間にはとげとげしい犬、危険な人間には危険な犬がいるそうです。この考えについてワトスンは、少しばかりこじつけだと言っています。
この論文をホームズが書いたかどうかわかりませんが、平賀三郎さんはこの論文の内容を考えるために正典の犬の描写を抜粋しています。その内容を見ていきましょう。
危険(つまり乱暴)な人間の飼った犬が、飼い主の性格を反映して乱暴な性格になっている例が正典にあります。それが短編『椈屋敷』です。『椈屋敷』では、ルーカッスル家が登場します。そのルーカッスル家は、夜になると防犯のために子牛ほどもあるマスティフ種の犬を庭に放っています。カルロと呼ばれるその犬は、乱暴な飼い主の喉に噛みつきました。
当時は防犯のために犬を飼うことが多かったようです。そのことも、正典を読んでいればわかります。短編『スリー・クォーターの失踪』や短編『青いガーネット』でホームズは、犬をけしかけらやれていたり、犬をけしかけると怒鳴られています。また、短編『白銀号事件』ではホームズではないですが犬をけしかけると怒鳴られる描写があります。
ホームズが犬をけしかけられた『スリー・クォーターの失踪』では、事前に馬車の車輪にアニシードの香りを付けており、ポンピーという犬に車輪の香りを追わせて馬車の目的地を探しています。
そのポンピーはビーグルより大きくフォックスハウンドより小さいようです。ビーグルとフォックスハウンドは犬種の名前です。ビーグルとフォックスハウンドを見比べると、これくらいの大きさなんだな、とポンピーの実感が湧きました。
長編『緋色の研究』では、毒物の実験台として犬を使いました。
犬と言えば本作でもたびたび名前を出す、トビーというスパニエルとラーチャーの雑種犬がいます。長編『四つの署名』で、犯人追跡に貢献しました。
短編『ウィスタリア荘』では、飼い主に化けた人物に飼い犬が近づき、飼い主でないとわかると噛みつきました。『這う男』でも飼い主の体臭が変わっていたため、犬は吠えました。このことからも犬は嗅覚などが優れていることがわかります。
そして正典の犬と言われたら、『白銀号事件』などが思い出されます。『白銀号事件』では、番犬として使われていた犬が鳴かなかったことから、犯人は番犬の顔見知りだとホームズは推理しました。この鳴かなかった犬の事件を、平賀さんは論文のテーマとなっただろうと述べています。
『緋色の研究』1881年
『青いガーネット』1887年
『四つの署名』1888年
『椈屋敷』1889年
『白銀号事件』1890年
『スリー・クォーターの失踪』1896年
『這う男』1903年
また、上のものは事件を発生順に並べたものです。『這う男』が発生した1903年の9月6日に、ホームズは犬についての論文を書きたいと言っているので、それ以降に論文を書いたことになります(もし書いたなら)。
まず『緋色の研究』で犬を毒物の実験台にし、『青いガーネット』事件で犬をけしかけると怒鳴られ、『四つの署名』事件で犬を捜査に利用。『椈屋敷』事件で論文の内容の一つである『飼い主の性格を反映して乱暴な性格になっている』例を得て、『白銀号事件』で論文のテーマも得ました。
こうやって考えてみると、ホームズが論文を書きたいと思ったのは事件を解決するうちに犬について興味が湧いたからではないでしょうか。
いずれにせよ、ホームズが探偵を引退後は養蜂をしていて時間はあったので、その開いている時間で捜査における犬の用途についての論文を書いた可能性はあります。いずれ書くと言っていた、ホームズの探偵学を一冊の本にまとめた『探偵学大全』の中で犬について書いたかもしれません。
ちなみに、当時の日本は江戸時代くらいで、それ以前の日本では犬種の一つである日本原産の狆は、磯田道史さんいわく、犬とは別の生き物と考えていたようです。少なくとも、犬と狼くらいの違いだと思われていたらしいです。当時は狆が高貴な生き物と考えられ、かなり高価でした。
狆の写真を見てみたのですが、私は猫派なのに狆が可愛く見えました。犬も意外と良いですね。
なぜ狆がホームズと関係があるのか。実は、当時のイギリスの女王であるヴィクトリア女王に、狆は献上されていました。1853年に浦賀にペリーが来航し、それからヴィクトリア女王の元に狆が来ました。
ペリー来航が1853年で、ホームズが生まれたのは1854年だと言われています(諸説ありますが、ペリー来航の前後だということは確かです)。この狆について犬と扱って論文に書いたのかはわかりませんが、日本のバリツを使えますしヴィクトリア女王は狆を飼っていたので、ホームズは狆のことを知っていたと考えることが出来ます(ホームズは政府に忠誠を誓う立派なイギリス紳士であり、ヴィクトリア女王にも敬意をはらっていました)。
ホームズいわく、犬はその家族の生活を反映するようで、陰気な家族には陽気な犬、幸福な家庭に悲しげな犬、とげとげしい人間にはとげとげしい犬、危険な人間には危険な犬がいるそうです。この考えについてワトスンは、少しばかりこじつけだと言っています。
この論文をホームズが書いたかどうかわかりませんが、平賀三郎さんはこの論文の内容を考えるために正典の犬の描写を抜粋しています。その内容を見ていきましょう。
危険(つまり乱暴)な人間の飼った犬が、飼い主の性格を反映して乱暴な性格になっている例が正典にあります。それが短編『椈屋敷』です。『椈屋敷』では、ルーカッスル家が登場します。そのルーカッスル家は、夜になると防犯のために子牛ほどもあるマスティフ種の犬を庭に放っています。カルロと呼ばれるその犬は、乱暴な飼い主の喉に噛みつきました。
当時は防犯のために犬を飼うことが多かったようです。そのことも、正典を読んでいればわかります。短編『スリー・クォーターの失踪』や短編『青いガーネット』でホームズは、犬をけしかけらやれていたり、犬をけしかけると怒鳴られています。また、短編『白銀号事件』ではホームズではないですが犬をけしかけると怒鳴られる描写があります。
ホームズが犬をけしかけられた『スリー・クォーターの失踪』では、事前に馬車の車輪にアニシードの香りを付けており、ポンピーという犬に車輪の香りを追わせて馬車の目的地を探しています。
そのポンピーはビーグルより大きくフォックスハウンドより小さいようです。ビーグルとフォックスハウンドは犬種の名前です。ビーグルとフォックスハウンドを見比べると、これくらいの大きさなんだな、とポンピーの実感が湧きました。
長編『緋色の研究』では、毒物の実験台として犬を使いました。
犬と言えば本作でもたびたび名前を出す、トビーというスパニエルとラーチャーの雑種犬がいます。長編『四つの署名』で、犯人追跡に貢献しました。
短編『ウィスタリア荘』では、飼い主に化けた人物に飼い犬が近づき、飼い主でないとわかると噛みつきました。『這う男』でも飼い主の体臭が変わっていたため、犬は吠えました。このことからも犬は嗅覚などが優れていることがわかります。
そして正典の犬と言われたら、『白銀号事件』などが思い出されます。『白銀号事件』では、番犬として使われていた犬が鳴かなかったことから、犯人は番犬の顔見知りだとホームズは推理しました。この鳴かなかった犬の事件を、平賀さんは論文のテーマとなっただろうと述べています。
『緋色の研究』1881年
『青いガーネット』1887年
『四つの署名』1888年
『椈屋敷』1889年
『白銀号事件』1890年
『スリー・クォーターの失踪』1896年
『這う男』1903年
また、上のものは事件を発生順に並べたものです。『這う男』が発生した1903年の9月6日に、ホームズは犬についての論文を書きたいと言っているので、それ以降に論文を書いたことになります(もし書いたなら)。
まず『緋色の研究』で犬を毒物の実験台にし、『青いガーネット』事件で犬をけしかけると怒鳴られ、『四つの署名』事件で犬を捜査に利用。『椈屋敷』事件で論文の内容の一つである『飼い主の性格を反映して乱暴な性格になっている』例を得て、『白銀号事件』で論文のテーマも得ました。
こうやって考えてみると、ホームズが論文を書きたいと思ったのは事件を解決するうちに犬について興味が湧いたからではないでしょうか。
いずれにせよ、ホームズが探偵を引退後は養蜂をしていて時間はあったので、その開いている時間で捜査における犬の用途についての論文を書いた可能性はあります。いずれ書くと言っていた、ホームズの探偵学を一冊の本にまとめた『探偵学大全』の中で犬について書いたかもしれません。
ちなみに、当時の日本は江戸時代くらいで、それ以前の日本では犬種の一つである日本原産の狆は、磯田道史さんいわく、犬とは別の生き物と考えていたようです。少なくとも、犬と狼くらいの違いだと思われていたらしいです。当時は狆が高貴な生き物と考えられ、かなり高価でした。
狆の写真を見てみたのですが、私は猫派なのに狆が可愛く見えました。犬も意外と良いですね。
なぜ狆がホームズと関係があるのか。実は、当時のイギリスの女王であるヴィクトリア女王に、狆は献上されていました。1853年に浦賀にペリーが来航し、それからヴィクトリア女王の元に狆が来ました。
ペリー来航が1853年で、ホームズが生まれたのは1854年だと言われています(諸説ありますが、ペリー来航の前後だということは確かです)。この狆について犬と扱って論文に書いたのかはわかりませんが、日本のバリツを使えますしヴィクトリア女王は狆を飼っていたので、ホームズは狆のことを知っていたと考えることが出来ます(ホームズは政府に忠誠を誓う立派なイギリス紳士であり、ヴィクトリア女王にも敬意をはらっていました)。
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