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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その漆零
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0番と名乗る男は、器用に羽を動かしている。背中に直に生えているとしか思えない。しかも牙も生えていて、吸血鬼族の真祖だと自称しているではないか。
「エリアスは0番について何か知っているか?」
小声で尋ねると、エリアスは首を横に振った。
「そもそもエヴァの実験体番号は1を起点として、順に番号を割り振っていました。まさか実験体番号0が存在しているとは......」
「ならば吸血鬼とやらは?」
「おそらくですが、0番もエヴァの実験によって生み出された存在でしょう。生物としては九頭竜様と似たような亜人に分類されるはずです」
その説明が0番には聞こえていたようで、その通りです、と言って肯定した。
「コウモリの中でも大型であるオオコウモリや、近年発見された新種である吸血コウモリ(ナミチスイコウモリ)を交配し、その結果誕生した大型の吸血コウモリと人間を掛け合わせたことによって生まれたのが私です。
羽は生えていて自分の意志で動かせますが、飛行能力は持っていません。なので羽はお飾りみたいなものですね。主食は血液でも問題ないのですが、それだとかなりの量を吸わないといけないので、血を吸う必要がない時は普通の食事をしています」
「''血を吸う必要がない時''ってことは、血を吸う必要がある時もあるのか?」
「ええ、ありますよ。例を挙げると、私が作られた理由はキリシタン宗に対抗するためだ、とエヴァ様に言われています。キリシタン宗は体に流れる血を生命の根源として神聖視しているので、私が奴ら信徒の血を吸えば十分畏怖の対象になります。それにキリシタン宗が考える悪魔の姿には羽が生えているようなので、私は悪魔格として暗躍することになっているのですよ。
ちなみに言わせてもらうと、私以外にも下等生物を嬲るために悪魔格として活動している者も何人かいましてね。そこにいる犬畜生にも悪魔の格を与え、人狼として活躍してもらう予定でしたが......エヴァ様いわく役立たずのようなので、ここで処分することにしましょう」
「九頭竜には指一本触れさせねぇよ」
0番が汎用型実験体ならば、その身体能力は達人の域に至っているはずだ。せめてこの場でこいつだけでも仕留めないと、後々面倒なことになりかねない。
刀で0番の首をはねようと腕を振り上げると、腹に球体が直撃して後ろに倒れる。エリアスは考え込んでいたため、245番の不意打ちを防げなかったらしい。
「お屋形様、すみません!」
「構わん! それより本格的に厄介になってきたぞ。特に245番の遠距離攻撃が邪魔だ。もしこの戦闘に三人の魔女が加わってくれば、対処しきれなくなる」
一応こちら側も弓による火矢や石を投擲することで遠距離攻撃を行っているが、ほとんど命中していない。もし当たったとしても、大したダメージにはなっていないようだ。
起き上がって地団駄を踏みたくなるのを我慢してスキを窺っていると、寺の方から僧兵が隊列を組み、大声を上げながら出てきた。
これなら寺も魔女教相手に少しは時間を稼げるだろう。俺は額の汗を袖で拭って体を休めようとしたが、245番が単独で僧兵の元へ駆けていく。なぜ球体による遠距離攻撃をしないのか見ていると、僧兵達を軽く殴ったり蹴ったりしているだけで、どんどん僧兵が倒れていくのだ。
245番は遠距離攻撃だけでなく、近距離攻撃にも特化していた。動きは素人だが、それが関係ないというほど圧倒的な力。軽いパンチだけで僧兵が瞬く間に倒れ、立っている僧兵は一人もいなくなった。
俺達はもちろん、戦闘の様子を遠くから見ていた住職達も唖然として立ち尽くすしかなかった。
「さすが私の最高傑作だ。そもそも245番の攻撃スタイルは接近戦であって、球体による遠距離攻撃はあくまでも戦闘の補助さ」
単純に考えると、245番は筋力を増強しているように見える。しかしそんな単純なわけがないことは明白だ。しかも遠距離攻撃は戦闘の補助だとエヴァは抜かしやがる。ますます245番の不気味さが増した。
驚愕から立ち直ったジョーやホームズも俺とエリアスの戦闘に加わり、他の皆は傍観する三人の魔女を牽制しつつ弓で矢を射て援護。
ジョーは剣聖と呼ばれていただけあって、セレナやカルミラを相手取って互角以上に渡り合っている。ホームズはバリツを駆使して0番を攻撃しているが、相性が悪い。0番は身体能力が高く、ホームズの攻撃を全て避けていた。
「ホームズ、俺も混ぜろ!」
俺とホームズが共闘したことで0番と釣り合って拮抗し、決め手に欠けたまま殴り合いは続く。
エリアスは245番と一対一で戦うことになり、少し緊張している。けれど245番は構うことなく球体を弾き、エリアスは避けたり受け止めたりして対処していた。
主にホームズが0番を攻撃しているので、俺はエリアスと245番の戦闘をチラリと見ているだけの余裕がある。245番はエリアスに有効打を与えられる力がある、とエヴァが言っていたことを仁和から聞いたが、それ故に二人が戦っているのは不安だ。
だがエリアスの特殊能力ならば大抵の攻撃は当たっても大丈夫だ。もっとも、心臓は脳と違って骨に覆われていないので、そこを銃で撃たれれば危険になる。ただ戦国時代からは戦に銃が導入され、そんな時代に作られた鎧である当世具足もそれなりに防御力はある。さすがに西洋のプレートアーマーみたいな隙間がほとんどない鎧には劣るが、エリアスは骨が硬いから隙間があっても関係ないに等しい。
そう思っていたが245番はエリアスに素早く接近し、鎧の胸に手の平を付ける。するとエリアスは力が抜けたように倒れ、それから動かなくなった。
「エリアスは0番について何か知っているか?」
小声で尋ねると、エリアスは首を横に振った。
「そもそもエヴァの実験体番号は1を起点として、順に番号を割り振っていました。まさか実験体番号0が存在しているとは......」
「ならば吸血鬼とやらは?」
「おそらくですが、0番もエヴァの実験によって生み出された存在でしょう。生物としては九頭竜様と似たような亜人に分類されるはずです」
その説明が0番には聞こえていたようで、その通りです、と言って肯定した。
「コウモリの中でも大型であるオオコウモリや、近年発見された新種である吸血コウモリ(ナミチスイコウモリ)を交配し、その結果誕生した大型の吸血コウモリと人間を掛け合わせたことによって生まれたのが私です。
羽は生えていて自分の意志で動かせますが、飛行能力は持っていません。なので羽はお飾りみたいなものですね。主食は血液でも問題ないのですが、それだとかなりの量を吸わないといけないので、血を吸う必要がない時は普通の食事をしています」
「''血を吸う必要がない時''ってことは、血を吸う必要がある時もあるのか?」
「ええ、ありますよ。例を挙げると、私が作られた理由はキリシタン宗に対抗するためだ、とエヴァ様に言われています。キリシタン宗は体に流れる血を生命の根源として神聖視しているので、私が奴ら信徒の血を吸えば十分畏怖の対象になります。それにキリシタン宗が考える悪魔の姿には羽が生えているようなので、私は悪魔格として暗躍することになっているのですよ。
ちなみに言わせてもらうと、私以外にも下等生物を嬲るために悪魔格として活動している者も何人かいましてね。そこにいる犬畜生にも悪魔の格を与え、人狼として活躍してもらう予定でしたが......エヴァ様いわく役立たずのようなので、ここで処分することにしましょう」
「九頭竜には指一本触れさせねぇよ」
0番が汎用型実験体ならば、その身体能力は達人の域に至っているはずだ。せめてこの場でこいつだけでも仕留めないと、後々面倒なことになりかねない。
刀で0番の首をはねようと腕を振り上げると、腹に球体が直撃して後ろに倒れる。エリアスは考え込んでいたため、245番の不意打ちを防げなかったらしい。
「お屋形様、すみません!」
「構わん! それより本格的に厄介になってきたぞ。特に245番の遠距離攻撃が邪魔だ。もしこの戦闘に三人の魔女が加わってくれば、対処しきれなくなる」
一応こちら側も弓による火矢や石を投擲することで遠距離攻撃を行っているが、ほとんど命中していない。もし当たったとしても、大したダメージにはなっていないようだ。
起き上がって地団駄を踏みたくなるのを我慢してスキを窺っていると、寺の方から僧兵が隊列を組み、大声を上げながら出てきた。
これなら寺も魔女教相手に少しは時間を稼げるだろう。俺は額の汗を袖で拭って体を休めようとしたが、245番が単独で僧兵の元へ駆けていく。なぜ球体による遠距離攻撃をしないのか見ていると、僧兵達を軽く殴ったり蹴ったりしているだけで、どんどん僧兵が倒れていくのだ。
245番は遠距離攻撃だけでなく、近距離攻撃にも特化していた。動きは素人だが、それが関係ないというほど圧倒的な力。軽いパンチだけで僧兵が瞬く間に倒れ、立っている僧兵は一人もいなくなった。
俺達はもちろん、戦闘の様子を遠くから見ていた住職達も唖然として立ち尽くすしかなかった。
「さすが私の最高傑作だ。そもそも245番の攻撃スタイルは接近戦であって、球体による遠距離攻撃はあくまでも戦闘の補助さ」
単純に考えると、245番は筋力を増強しているように見える。しかしそんな単純なわけがないことは明白だ。しかも遠距離攻撃は戦闘の補助だとエヴァは抜かしやがる。ますます245番の不気味さが増した。
驚愕から立ち直ったジョーやホームズも俺とエリアスの戦闘に加わり、他の皆は傍観する三人の魔女を牽制しつつ弓で矢を射て援護。
ジョーは剣聖と呼ばれていただけあって、セレナやカルミラを相手取って互角以上に渡り合っている。ホームズはバリツを駆使して0番を攻撃しているが、相性が悪い。0番は身体能力が高く、ホームズの攻撃を全て避けていた。
「ホームズ、俺も混ぜろ!」
俺とホームズが共闘したことで0番と釣り合って拮抗し、決め手に欠けたまま殴り合いは続く。
エリアスは245番と一対一で戦うことになり、少し緊張している。けれど245番は構うことなく球体を弾き、エリアスは避けたり受け止めたりして対処していた。
主にホームズが0番を攻撃しているので、俺はエリアスと245番の戦闘をチラリと見ているだけの余裕がある。245番はエリアスに有効打を与えられる力がある、とエヴァが言っていたことを仁和から聞いたが、それ故に二人が戦っているのは不安だ。
だがエリアスの特殊能力ならば大抵の攻撃は当たっても大丈夫だ。もっとも、心臓は脳と違って骨に覆われていないので、そこを銃で撃たれれば危険になる。ただ戦国時代からは戦に銃が導入され、そんな時代に作られた鎧である当世具足もそれなりに防御力はある。さすがに西洋のプレートアーマーみたいな隙間がほとんどない鎧には劣るが、エリアスは骨が硬いから隙間があっても関係ないに等しい。
そう思っていたが245番はエリアスに素早く接近し、鎧の胸に手の平を付ける。するとエリアスは力が抜けたように倒れ、それから動かなくなった。
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