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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その陸参
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意識がハッキリとしてくると、俺は今誰かの肩に担がれて運ばれていることがわかる。俺を担いでいる僧侶を含めて、周囲には僧侶が七人ほどいる。俺は武器を持っていないので、ここで起き上がって僧侶を七人相手にするのは愚策だ。まだ気を失っているように装った方がいい。
やがて周囲から俺を担ぐ僧侶以外の人の気配が消えた。チャンスだ。俺を担いでいる僧侶の首を思い切り締め、地面に倒れたところで金的を執拗に蹴り上げる。尼さんじゃなくて良かった。
「対人戦闘の時に相手が男だった場合は金的が有効だな」
俺は最近よく敵の金的を蹴っている気がする。だが、別にズルくはない。だって背後からいきなり頭を殴打する方がズルいじゃん。
「ってか、ここどこだよ!?」
辺りを見回すと洞窟内のようだ。僧侶の懐から燭台とロウソク、火打ち石を取り出すとロウソクに着火。燭台でロウソクを持って洞窟の探索を開始した。
洞窟は入り組んだ道が多く、途中で迷ってしまう。仕方がないので引き返して、倒した僧侶に出口を案内してもらおう。そう楽観したが、迷ったのに元来た道を正確に辿れるわけはなかった。余計に迷子になる。そして理解したのだ。
「これ......詰んでね?」
いや、待て待てっ! 冷静に考えろ。まずは困った時に一家に一台、アマテラスだ!
『我は手を貸す気はないぞ』
「は? 何で?」
『我が手を貸すのは貴様が死にかけた時くらいだ。あとは貴様の手に余ることが起きた場合とかだな』
「使えねー」
次だ、次。地図を書こうにも紙も筆もないし、洞窟の地面や壁は硬いから跡を残して印しにすることも出来ない。手持ちの物で使えそうなのは気絶した時に抜き取られていて、使えそうなものは僧侶から拝借したものばかりだ。
ひとまず先へ進んでみよう。俺は燭台を持って前進し、己の勘を頼りに別れ道を突き進んだ。その結果、無駄に疲れただけで何一つ成果は得られなかった。
一方で寺の方では、政宗が洞窟内をさまよっているなどということを夢にも思う者はいなかった。
政宗の異変にすぐに気付きそうな仁和ですら、エリアスとの会話に熱中していたために気付かなかった。ただすでに仁和はエリアスとの会話を終えていて、明日の予定について皆へ指示していた。
「柏木殿と藤堂殿は政宗殿の言ったように金を精錬して純度を上げ、資金確保を行ってください」
「仁和様」藤堂は思案顔で尋ねる。「金の精錬は灰吹法で行うとして、まず金をどこで集めれば良いでしょうか?」
「コツコツ砂金集めや、他の貴金属から抽出することも可能ですね。最悪の場合は黄鉄鉱や黄銅鉱を金と偽ろうと思うので、砂金集めの際は採っておいてください」
「わかりました」
藤堂は仁和の指示にうなずくが、砂金集めのついでに採った黄鉄鉱を金と偽る方法には苦笑していた。
砂金集めは川で行うが、黄鉄鉱や黄銅鉱も砂金と同様に金色であり川で採れる。つまり、黄鉄鉱や黄銅鉱を砂金だと勘違いする者がよくいる。
黄鉄鉱などと砂金を区別する方法は単純で、ハンマーで叩けばいい。黄鉄鉱などはハンマーで叩かれると砕けるが、金属の性質の一つである展性を持つ砂金はハンマーで叩かれると広がる。
上のような違いはあるものの、素人目には区別がつかずに黄鉄鉱を金と見誤る。それを利用し、仁和は砂金集めのついでに採取出来る黄鉄鉱を金と偽る方法を提案した。そりゃ、苦笑するしかない。
そのような小さな問題はあったものの的確に指示をして明日の予定をまとめた仁和は、やっと政宗がいないことを自覚し、驚きながらも政宗の行方を皆に質問する。しかしこの場の全員が政宗の行方に心当たりはなく、寺が関係していることは一目瞭然である。
仁和は護衛を兼ねた成実を連れて住職の元へ行き、政宗のことを問う。
「政宗公が行方知れず!? それは大変だ!」
住職は嘘っぽく驚いていた。それはもちろん、住職らが犯人だからである。だが、確たる証拠はない。これと言った動機もない。仁和はそれ以上、住職を問い詰めることが出来なかった。
「では住職殿。政宗殿の捜索にご助力を」
「それはわかっていますよ。捜索は手伝わせていただきます」
「今日は夜遅いので、捜索開始は明朝ということでお願いします」
「わかりました」
仁和は住職との会話を終わらせ、寝ずに夜が明けるのを待つ。仁和だけではない。政宗の愉快な仲間達は皆、祈るように手を合わせて朝を待っている。政宗が心配のようだ。
そして数時間後、待ちわびたとばかりに仁和達は雄叫びを上げる。太陽が仁和達の長い長い沈黙を突き破り、やっと顔を出し始めたのだ。
「行きますよ! 政宗殿を探しに!」
「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
その士気は言うまでもなく。カルミラが襲撃してきた時よりも気合いが入り。彼・彼女らは寺を飛び出した。ただ一人の主、政宗を追って......。
「アマテラス、何か小っ恥ずかしい解説をしてない?」
『してないぞ?』
「そう? なら良いんだけど」
どうやら政宗は悪寒を感じたようだ。妙に鋭くなりおって、この小僧は。
やがて周囲から俺を担ぐ僧侶以外の人の気配が消えた。チャンスだ。俺を担いでいる僧侶の首を思い切り締め、地面に倒れたところで金的を執拗に蹴り上げる。尼さんじゃなくて良かった。
「対人戦闘の時に相手が男だった場合は金的が有効だな」
俺は最近よく敵の金的を蹴っている気がする。だが、別にズルくはない。だって背後からいきなり頭を殴打する方がズルいじゃん。
「ってか、ここどこだよ!?」
辺りを見回すと洞窟内のようだ。僧侶の懐から燭台とロウソク、火打ち石を取り出すとロウソクに着火。燭台でロウソクを持って洞窟の探索を開始した。
洞窟は入り組んだ道が多く、途中で迷ってしまう。仕方がないので引き返して、倒した僧侶に出口を案内してもらおう。そう楽観したが、迷ったのに元来た道を正確に辿れるわけはなかった。余計に迷子になる。そして理解したのだ。
「これ......詰んでね?」
いや、待て待てっ! 冷静に考えろ。まずは困った時に一家に一台、アマテラスだ!
『我は手を貸す気はないぞ』
「は? 何で?」
『我が手を貸すのは貴様が死にかけた時くらいだ。あとは貴様の手に余ることが起きた場合とかだな』
「使えねー」
次だ、次。地図を書こうにも紙も筆もないし、洞窟の地面や壁は硬いから跡を残して印しにすることも出来ない。手持ちの物で使えそうなのは気絶した時に抜き取られていて、使えそうなものは僧侶から拝借したものばかりだ。
ひとまず先へ進んでみよう。俺は燭台を持って前進し、己の勘を頼りに別れ道を突き進んだ。その結果、無駄に疲れただけで何一つ成果は得られなかった。
一方で寺の方では、政宗が洞窟内をさまよっているなどということを夢にも思う者はいなかった。
政宗の異変にすぐに気付きそうな仁和ですら、エリアスとの会話に熱中していたために気付かなかった。ただすでに仁和はエリアスとの会話を終えていて、明日の予定について皆へ指示していた。
「柏木殿と藤堂殿は政宗殿の言ったように金を精錬して純度を上げ、資金確保を行ってください」
「仁和様」藤堂は思案顔で尋ねる。「金の精錬は灰吹法で行うとして、まず金をどこで集めれば良いでしょうか?」
「コツコツ砂金集めや、他の貴金属から抽出することも可能ですね。最悪の場合は黄鉄鉱や黄銅鉱を金と偽ろうと思うので、砂金集めの際は採っておいてください」
「わかりました」
藤堂は仁和の指示にうなずくが、砂金集めのついでに採った黄鉄鉱を金と偽る方法には苦笑していた。
砂金集めは川で行うが、黄鉄鉱や黄銅鉱も砂金と同様に金色であり川で採れる。つまり、黄鉄鉱や黄銅鉱を砂金だと勘違いする者がよくいる。
黄鉄鉱などと砂金を区別する方法は単純で、ハンマーで叩けばいい。黄鉄鉱などはハンマーで叩かれると砕けるが、金属の性質の一つである展性を持つ砂金はハンマーで叩かれると広がる。
上のような違いはあるものの、素人目には区別がつかずに黄鉄鉱を金と見誤る。それを利用し、仁和は砂金集めのついでに採取出来る黄鉄鉱を金と偽る方法を提案した。そりゃ、苦笑するしかない。
そのような小さな問題はあったものの的確に指示をして明日の予定をまとめた仁和は、やっと政宗がいないことを自覚し、驚きながらも政宗の行方を皆に質問する。しかしこの場の全員が政宗の行方に心当たりはなく、寺が関係していることは一目瞭然である。
仁和は護衛を兼ねた成実を連れて住職の元へ行き、政宗のことを問う。
「政宗公が行方知れず!? それは大変だ!」
住職は嘘っぽく驚いていた。それはもちろん、住職らが犯人だからである。だが、確たる証拠はない。これと言った動機もない。仁和はそれ以上、住職を問い詰めることが出来なかった。
「では住職殿。政宗殿の捜索にご助力を」
「それはわかっていますよ。捜索は手伝わせていただきます」
「今日は夜遅いので、捜索開始は明朝ということでお願いします」
「わかりました」
仁和は住職との会話を終わらせ、寝ずに夜が明けるのを待つ。仁和だけではない。政宗の愉快な仲間達は皆、祈るように手を合わせて朝を待っている。政宗が心配のようだ。
そして数時間後、待ちわびたとばかりに仁和達は雄叫びを上げる。太陽が仁和達の長い長い沈黙を突き破り、やっと顔を出し始めたのだ。
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その士気は言うまでもなく。カルミラが襲撃してきた時よりも気合いが入り。彼・彼女らは寺を飛び出した。ただ一人の主、政宗を追って......。
「アマテラス、何か小っ恥ずかしい解説をしてない?」
『してないぞ?』
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