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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その伍壱
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生命の魔女の腰巾着・獣堕ちの狩人を見逃すほどキリスト教は甘くはなかった。三日三晩追い回され、やっとの思いで追っ手を撒いた頃には少年の力はほとんど残っていなかった。そんな時、実においしそうな香りを彼は嗅ぎ分けた。
少年はこの先にいるであろう人間から食料を奪い取ると決意して進んだが途中で力を使い果たし、ついに倒れてしまう。そんな彼に治療を施して保護し、食事を与えたのが伊達政宗一行だった。
そして孤独な少年を仲間にしたいと提案し、立派な名前も与えた。伊達政宗、彼は偉大な男である。
九頭竜は正式に俺達の仲間となった。大幅な戦力増強になる。ただ寺にこいつを連れて行けば殺されてしまう可能性もある。どうしたものかな。
「なあ仁和。九頭竜の見た目をどうにか出来ないか?」
「そうですね......。体毛は剃るとして、骨格が人間とは多少異なっているので難儀ですよ。どうにかするとしても彼の情報が少なすぎます」
「んじゃあ、九頭竜のことを軽く調べてみよう。──おい九頭竜、少しお前の体を仁和が調べるんだが良いか?」
「構わ、ない。苦痛、には、慣れて、いる」
「いやいやいや、痛くはねぇと思うぞ。仁和はそんなことしないし」
「そう、か」
仁和は九頭竜に近づき、骨格や肉付きを触って確かめた。そして仁和は九頭竜の口内をじっくりと観察し、眉間に皺を寄せる。
熟考しつつ仁和は話し始めた。「骨格などから察するに、九頭竜殿は犬というよりオオカミに分類されるでしょう。驚くことに、九頭竜殿の歯は人間よりオオカミに近いのです。彼には裂肉歯と言っても差し支えない歯が奥に生えていて、この歯は犬やオオカミなどの肉食動物が共通して持つ特殊なものになります。
見た目の件ですが関節を紐で縛って真っ直ぐ伸ばせば、少し骨格の違和感はなくなると思いますよ」
「ってことはつまり、九頭竜はオオカミと人間の混血種になるわけか」
「ええ。ところで九頭竜殿は調理された肉などを食べれますか?」
「食べら、れる」
「なるほど。犬とオオカミの違いの一つとして、人間に飼い慣らされず野生で進化したオオカミは生肉以外、例えば調理された肉などを食べるとお腹を下します。けれど九頭竜殿が食べれると言うのならば、幼き頃から調理した肉を食べていたりしたことによって体が変化したということでしょう」
九頭竜は犬と言えば犬で、オオカミと言えばオオカミとも考えられるということか。
「んで、九頭竜を人間っぽい見た目に変えることは出来そうか?」
「その前にやらなければいけないことがあります」
「それは何だ?」
「九頭竜殿の歯には裂肉歯のような尖った歯以外に平らな歯も存在します。野生の動物は生肉を食べるので、その肉に付いている皮や筋によって歯の歯石などが取り除かれますが、九頭竜殿はオオカミと違って生肉以外も食すようなので、平らな歯にたまった歯石などが取り除かれていないのですよ。やらなければいけないことは歯磨きなのです!」
「歯磨きって言ってもどうやるんだよ」
「歯のエナメル質を傷付けぬように柔らかい毛で磨きたいのですが、あいにく持ち合わせていません。なので先ほど焚き火をした際の炭を使いましょう」
「炭!?」
「塩があれば良いですが、こういった環境で塩は貴重なので炭で歯を磨きましょう。炭の表面には細かい穴があり、その穴が歯の汚れを吸着してくれます。まずは石で炭を砕きましょうか」
仁和は炭を砕き、サラサラな粒になったものを九頭竜の口に突っ込んだ。指を使って磨けと言われた九頭竜は言われた通りに磨き、水で口をゆすいだ。
「まあ、これで九頭竜殿の問題も解決したのでお寺に向かって再出発です。九頭竜殿の食事はお寺に到着してからにしましょう」
「「了解っ!」」
こうして仲間も増え、寺にいる坊主達を脅す準備も整った。だが後に九頭竜を仲間にしたことで敵を増やす結果を招くことになるとは考えてもみなかった。
そんなことはつゆ知らず、寺に着くなり生臭坊主どもに放蕩しているよなと尋ねると顔面が引きつった。なのでこれ好機と坊主達を脅し、一時的にではあるが僧兵という戦力を手に入れられた。
しかも俺が名乗ると広い部屋を一つ貸してくれると言うので、その好意に甘えさせてもらおう(笑)。
全員で部屋に入ると入り口に成実と景頼を配置して見張らせて、俺は九頭竜の方を見る。
「九頭竜は今までどうやって生活してきたんだ?」
「生命の、魔女と名乗、る人に、助け、られた」
「生命の魔女? んな奴は聞いたことがないが......」
「彼女は、俺、に、人間らし、い生活を、させてく、れた。だが、生命の、魔女は殺さ、れ、俺は必死で、逃げ、てきた。そこ、で、お前、達に、出会っ、た」
生命の魔女なんて聞いたこともないな。名前から考えると、生命を司る魔女ってことなのだろうか。魔女関連なら慧に聞いた方が早いな。
「おい」俺は慧の肩を叩く。「お前は生命の魔女って聞いたことはあるか?」
「え!? 生命の魔女様のことですか!?」
「あぁん? 何で様付けで呼んでんだ?」
「それはもちろん、私達のような異端者にとって生命の魔女様は希望の光ですから。何たって私が研究する死者蘇生に成功したお方ですから」
「!! おい慧、その生命の魔女とやらが死者蘇生に成功したってのはマジなのか?」
「はい。嘘は言っていませんよ?」
慧の顔は嘘を言っている奴の表情ではない。ということは生命の魔女とか言う胡散臭い奴は、本当に死者蘇生を成功させたということなのか!?
少年はこの先にいるであろう人間から食料を奪い取ると決意して進んだが途中で力を使い果たし、ついに倒れてしまう。そんな彼に治療を施して保護し、食事を与えたのが伊達政宗一行だった。
そして孤独な少年を仲間にしたいと提案し、立派な名前も与えた。伊達政宗、彼は偉大な男である。
九頭竜は正式に俺達の仲間となった。大幅な戦力増強になる。ただ寺にこいつを連れて行けば殺されてしまう可能性もある。どうしたものかな。
「なあ仁和。九頭竜の見た目をどうにか出来ないか?」
「そうですね......。体毛は剃るとして、骨格が人間とは多少異なっているので難儀ですよ。どうにかするとしても彼の情報が少なすぎます」
「んじゃあ、九頭竜のことを軽く調べてみよう。──おい九頭竜、少しお前の体を仁和が調べるんだが良いか?」
「構わ、ない。苦痛、には、慣れて、いる」
「いやいやいや、痛くはねぇと思うぞ。仁和はそんなことしないし」
「そう、か」
仁和は九頭竜に近づき、骨格や肉付きを触って確かめた。そして仁和は九頭竜の口内をじっくりと観察し、眉間に皺を寄せる。
熟考しつつ仁和は話し始めた。「骨格などから察するに、九頭竜殿は犬というよりオオカミに分類されるでしょう。驚くことに、九頭竜殿の歯は人間よりオオカミに近いのです。彼には裂肉歯と言っても差し支えない歯が奥に生えていて、この歯は犬やオオカミなどの肉食動物が共通して持つ特殊なものになります。
見た目の件ですが関節を紐で縛って真っ直ぐ伸ばせば、少し骨格の違和感はなくなると思いますよ」
「ってことはつまり、九頭竜はオオカミと人間の混血種になるわけか」
「ええ。ところで九頭竜殿は調理された肉などを食べれますか?」
「食べら、れる」
「なるほど。犬とオオカミの違いの一つとして、人間に飼い慣らされず野生で進化したオオカミは生肉以外、例えば調理された肉などを食べるとお腹を下します。けれど九頭竜殿が食べれると言うのならば、幼き頃から調理した肉を食べていたりしたことによって体が変化したということでしょう」
九頭竜は犬と言えば犬で、オオカミと言えばオオカミとも考えられるということか。
「んで、九頭竜を人間っぽい見た目に変えることは出来そうか?」
「その前にやらなければいけないことがあります」
「それは何だ?」
「九頭竜殿の歯には裂肉歯のような尖った歯以外に平らな歯も存在します。野生の動物は生肉を食べるので、その肉に付いている皮や筋によって歯の歯石などが取り除かれますが、九頭竜殿はオオカミと違って生肉以外も食すようなので、平らな歯にたまった歯石などが取り除かれていないのですよ。やらなければいけないことは歯磨きなのです!」
「歯磨きって言ってもどうやるんだよ」
「歯のエナメル質を傷付けぬように柔らかい毛で磨きたいのですが、あいにく持ち合わせていません。なので先ほど焚き火をした際の炭を使いましょう」
「炭!?」
「塩があれば良いですが、こういった環境で塩は貴重なので炭で歯を磨きましょう。炭の表面には細かい穴があり、その穴が歯の汚れを吸着してくれます。まずは石で炭を砕きましょうか」
仁和は炭を砕き、サラサラな粒になったものを九頭竜の口に突っ込んだ。指を使って磨けと言われた九頭竜は言われた通りに磨き、水で口をゆすいだ。
「まあ、これで九頭竜殿の問題も解決したのでお寺に向かって再出発です。九頭竜殿の食事はお寺に到着してからにしましょう」
「「了解っ!」」
こうして仲間も増え、寺にいる坊主達を脅す準備も整った。だが後に九頭竜を仲間にしたことで敵を増やす結果を招くことになるとは考えてもみなかった。
そんなことはつゆ知らず、寺に着くなり生臭坊主どもに放蕩しているよなと尋ねると顔面が引きつった。なのでこれ好機と坊主達を脅し、一時的にではあるが僧兵という戦力を手に入れられた。
しかも俺が名乗ると広い部屋を一つ貸してくれると言うので、その好意に甘えさせてもらおう(笑)。
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「九頭竜は今までどうやって生活してきたんだ?」
「生命の、魔女と名乗、る人に、助け、られた」
「生命の魔女? んな奴は聞いたことがないが......」
「彼女は、俺、に、人間らし、い生活を、させてく、れた。だが、生命の、魔女は殺さ、れ、俺は必死で、逃げ、てきた。そこ、で、お前、達に、出会っ、た」
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「おい」俺は慧の肩を叩く。「お前は生命の魔女って聞いたことはあるか?」
「え!? 生命の魔女様のことですか!?」
「あぁん? 何で様付けで呼んでんだ?」
「それはもちろん、私達のような異端者にとって生命の魔女様は希望の光ですから。何たって私が研究する死者蘇生に成功したお方ですから」
「!! おい慧、その生命の魔女とやらが死者蘇生に成功したってのはマジなのか?」
「はい。嘘は言っていませんよ?」
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