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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その参玖
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「政宗よ」アマテラスは床に正座し、頭を地に着くほど下げた。「本当に悪いことをしたと思っている」
「へ?」
テレパシーが使えるようになってからは、アマテラスとの会話は全てテレパシーで終わらせている。しかし今は違う。久々に意識を神界に連れて来られ、目の前ではアマテラスが土下座をするという異様な光景があった。
テレパシーでは話せない、何か重大な誤りをアマテラスは犯してしまったのかもしれない。でなければ、アマテラスは土下座をするなどあり得ないはずだ。
「急にどうしたんだ、アマテラス。怒らないから言ってみろよ」
「本当に怒らないのか?」
「俺達はお互い戦ったりともに協力し合って絆を深めた仲じゃないか。水くさいぞ」
「いや、しかし......我はやってはならないことをしたのだ。許されて良いはずがない」
「俺達は仲間だろ? な?」
アマテラスは最初は抵抗があったが次第に話す気になったようで、頭を上げて一枚の紙を差し出してきた。
「この紙はなんだ?」
「読んでみればわかる」
「そうか」
俺はその紙に書かれていることを読み、そして読了と同時に細かく引き千切った。
「ほら怒った」
「ほら怒った、じゃねーよっ! テメェ、やりやがったな!」
「ハハハハハ。予想通りの反応だよ」
「やっぱり楽しんでやがったか!」
破り捨てた紙には、俺が地震を爪に例えていた場面が小説のような書き方に直されて記されていた。この例えを俺がしたとなれば末代までの恥だと言ったが、アマテラスが俺のことを記録していることを完全に忘れていた。
「おい! 他にもこの場面を記している紙があるんじゃないか!? 一つ一つ破いてやる!」
「無駄だ。コピーだけで何百枚もあるのだからな。文字通りこの紙を下界にばら撒いて末代までの恥にしてやろう。我に感謝しろよ」
「この野郎! ぶっ飛ばしてやる!」
と、こういうことがあった。その後、俺はアマテラスの部屋の中にある紙という紙を引き千切っていき、雄叫びを上げながら強制的に意識を政宗の体へと戻された。
意識が体に戻ってから一時間ほど経った頃。城内が非常に騒がしかった。元々藤堂の件で城下の者が騒がしかったが、それに加えて城内の家臣どもも騒ぎ出した。
仁和を探して何事かと尋ねると、どうやら藤堂が地震を予測したようだとわかった。これから何日かするとある程度大きく揺れる地震が起き、藤堂はこの地震で城下の家々が何軒か崩れ落ちる可能性を指摘した。
結果、家臣どもはそれを防ぐべく対策を講じていた。城下に建つ家や米沢城自体の補強、それに付随して石垣の補強、城下の者の安全の確保などが最優先で進められた。
仁和は藤堂と地震の対策を真剣に話し合っていた。
「耐震構造というのはですね──」
「いや、しかし......」
「──というのはどうでしょうか?」
「良いかもしれませんね」
地震が起こるとわかってからはゾンビのことなど二の次、三の次だ。俺に出来ることもないので、ただ時間が流れるのをゆっくりと待った。
「若様」成実は俺の元へ駆けつけ、深く頭を下げた。「城下の者への説明が思うように進まないのです。若様からもどうかご説明をしていただけないかと......」
案の定、この時代の者達は地震を理解出来ないか。
「逆に聞くが、地震について納得している奴らの人数は?」
「数十名、大半が老人でございます」
「さすが長く生きているだけはある。地震の脅威を何となくでも悟っているのか。で、地震について納得出来ていない者や対策が気に入らないという者、地震なんて信じないという者は大体何人いる?」
「百余名です」
「結構多いな。一人一人を説得していたら地震が起きるまでには間に合わんし、広い場所にそいつらを集めてくれ。俺が説得してみる」
「お一人でですか?」
「仁和と藤堂は忙しいようだから、無理強いは出来ないからな。一人での説得だ」
「民からの投石の可能性もあるので、若様の警護は我々が行います」
「警護はいらん。城下の奴らが警戒してしまったら意味がないだろ?」
「しかし若様の身の危険を守るのが最優先です」
「民を守れずに当主が務まるわけがない。民あってこそだ」
成実は不安がっていたので、遠方から未来人衆遠距離射手部隊が警護する、ということで納得させた。そして忠義達には、くれぐれも城下の奴らに姿が見られないように警護しろと念を押しておいた。
数時間もしないうちに開けた場所に城下の者が集められ、俺は緊張しつつ前に立った。
「刮目せよ!」俺は声を張り上げる。「俺は伊達氏第十七代当主・伊達藤次郎政宗である! 独眼竜、と言った方が聞こえが良かろう。いずれ天下を手中に収め、世界を席巻する者の名だ。覚えておくが良い。
時に、地震なんて起こるわけがないと高をくくっている阿呆がいるようだな。戯け! 地震を舐めるな! 最悪の場合は建造物のほとんどが全壊し、諸君らはそれら瓦礫の下敷きとなるのだ! 宣言しよう。地震とは神のイタズラでもなければ虚言でもない。自然によって生み出された、紛れもなく現実に起こるべくして起こる現象である! 山が噴火するのと似たような現象と言えばわかりやすいだろう。死にたくなければ言うとおりにしろ!」
我ながらうまく言えたと思ったのだが、成実の危惧していたことが現実のものとなった。民の一人の怒号を皮切りに、俺へ向けての投石が開始された。
「へ?」
テレパシーが使えるようになってからは、アマテラスとの会話は全てテレパシーで終わらせている。しかし今は違う。久々に意識を神界に連れて来られ、目の前ではアマテラスが土下座をするという異様な光景があった。
テレパシーでは話せない、何か重大な誤りをアマテラスは犯してしまったのかもしれない。でなければ、アマテラスは土下座をするなどあり得ないはずだ。
「急にどうしたんだ、アマテラス。怒らないから言ってみろよ」
「本当に怒らないのか?」
「俺達はお互い戦ったりともに協力し合って絆を深めた仲じゃないか。水くさいぞ」
「いや、しかし......我はやってはならないことをしたのだ。許されて良いはずがない」
「俺達は仲間だろ? な?」
アマテラスは最初は抵抗があったが次第に話す気になったようで、頭を上げて一枚の紙を差し出してきた。
「この紙はなんだ?」
「読んでみればわかる」
「そうか」
俺はその紙に書かれていることを読み、そして読了と同時に細かく引き千切った。
「ほら怒った」
「ほら怒った、じゃねーよっ! テメェ、やりやがったな!」
「ハハハハハ。予想通りの反応だよ」
「やっぱり楽しんでやがったか!」
破り捨てた紙には、俺が地震を爪に例えていた場面が小説のような書き方に直されて記されていた。この例えを俺がしたとなれば末代までの恥だと言ったが、アマテラスが俺のことを記録していることを完全に忘れていた。
「おい! 他にもこの場面を記している紙があるんじゃないか!? 一つ一つ破いてやる!」
「無駄だ。コピーだけで何百枚もあるのだからな。文字通りこの紙を下界にばら撒いて末代までの恥にしてやろう。我に感謝しろよ」
「この野郎! ぶっ飛ばしてやる!」
と、こういうことがあった。その後、俺はアマテラスの部屋の中にある紙という紙を引き千切っていき、雄叫びを上げながら強制的に意識を政宗の体へと戻された。
意識が体に戻ってから一時間ほど経った頃。城内が非常に騒がしかった。元々藤堂の件で城下の者が騒がしかったが、それに加えて城内の家臣どもも騒ぎ出した。
仁和を探して何事かと尋ねると、どうやら藤堂が地震を予測したようだとわかった。これから何日かするとある程度大きく揺れる地震が起き、藤堂はこの地震で城下の家々が何軒か崩れ落ちる可能性を指摘した。
結果、家臣どもはそれを防ぐべく対策を講じていた。城下に建つ家や米沢城自体の補強、それに付随して石垣の補強、城下の者の安全の確保などが最優先で進められた。
仁和は藤堂と地震の対策を真剣に話し合っていた。
「耐震構造というのはですね──」
「いや、しかし......」
「──というのはどうでしょうか?」
「良いかもしれませんね」
地震が起こるとわかってからはゾンビのことなど二の次、三の次だ。俺に出来ることもないので、ただ時間が流れるのをゆっくりと待った。
「若様」成実は俺の元へ駆けつけ、深く頭を下げた。「城下の者への説明が思うように進まないのです。若様からもどうかご説明をしていただけないかと......」
案の定、この時代の者達は地震を理解出来ないか。
「逆に聞くが、地震について納得している奴らの人数は?」
「数十名、大半が老人でございます」
「さすが長く生きているだけはある。地震の脅威を何となくでも悟っているのか。で、地震について納得出来ていない者や対策が気に入らないという者、地震なんて信じないという者は大体何人いる?」
「百余名です」
「結構多いな。一人一人を説得していたら地震が起きるまでには間に合わんし、広い場所にそいつらを集めてくれ。俺が説得してみる」
「お一人でですか?」
「仁和と藤堂は忙しいようだから、無理強いは出来ないからな。一人での説得だ」
「民からの投石の可能性もあるので、若様の警護は我々が行います」
「警護はいらん。城下の奴らが警戒してしまったら意味がないだろ?」
「しかし若様の身の危険を守るのが最優先です」
「民を守れずに当主が務まるわけがない。民あってこそだ」
成実は不安がっていたので、遠方から未来人衆遠距離射手部隊が警護する、ということで納得させた。そして忠義達には、くれぐれも城下の奴らに姿が見られないように警護しろと念を押しておいた。
数時間もしないうちに開けた場所に城下の者が集められ、俺は緊張しつつ前に立った。
「刮目せよ!」俺は声を張り上げる。「俺は伊達氏第十七代当主・伊達藤次郎政宗である! 独眼竜、と言った方が聞こえが良かろう。いずれ天下を手中に収め、世界を席巻する者の名だ。覚えておくが良い。
時に、地震なんて起こるわけがないと高をくくっている阿呆がいるようだな。戯け! 地震を舐めるな! 最悪の場合は建造物のほとんどが全壊し、諸君らはそれら瓦礫の下敷きとなるのだ! 宣言しよう。地震とは神のイタズラでもなければ虚言でもない。自然によって生み出された、紛れもなく現実に起こるべくして起こる現象である! 山が噴火するのと似たような現象と言えばわかりやすいだろう。死にたくなければ言うとおりにしろ!」
我ながらうまく言えたと思ったのだが、成実の危惧していたことが現実のものとなった。民の一人の怒号を皮切りに、俺へ向けての投石が開始された。
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