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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その参陸
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斉京勇が夜盗の頭をしていた時の部下であった舞鶴紀子は、後に伊達氏に仕えた。そして舞鶴は夜行隊という夜襲を仕掛けることに特化した隊の長を務め、それなりの武功を立てたと斉京は聞き及んでいた。
しかし夜行隊には身元もハッキリとしない者が多数所属し、現に江渡弥平の手の者も身を潜めていたようだ。結果として政宗らは死にかけたようだ。
身元確認などの作業を得意としていないのが舞鶴であり、内通者や暗殺者が夜行隊に所属していても気付かないだろう。
舞鶴は一つの隊を統率する程度ならば問題ないほどに育てたつもりだったが、味方に敵が紛れていることを見抜くということまでは教えてなかった。やはり彼女が隊長を務めるのはまだ早かったのか。
伊達氏領内では斉京の元部下の夜盗メンバー達が、舞鶴を含めて楽しく暮らしていた。夜行隊に所属する者達は気性が荒いものの手練れも多く、かなりの功績を残している。よって、夜行隊に所属する面々は、当時の平民からすると非常にうらやましいほどの待遇なのである。
そのことを知っていた斉京は、最近は空腹だったために美味しい料理の数々を想像した。そうしている内に米沢城に到着し、安心して膝から崩れ落ちた。
米沢城付近で倒れている斉京を見つけたのは他ならぬ舞鶴だった。舞鶴からその報告を受けた俺は、ひとまず斉京を個室に運び入れて布団に寝かせた。
仁和と藤堂を呼び出すと、斉京の体調を診るように言った。二人は真剣に斉京の体を調べたが、ただの空腹によって気を失っただけだとわかった。
すると俺は栄養剤を引っ張り出し、斉京の口へ注ぎ込んだ。仁和によると、あと何時間かすれば起きるのではないか、とのことだ。
俺は斉京のために料理人に美味しい料理を作らせた。この料理さえ食べれば、すぐに元気が回復するはずだ。
「仁和と藤堂はゾンビウイルスの対策の準備へ戻ってくれ。俺はここで斉京が起きるまで待っている」
仁和はため息をついた。「政宗殿も看病はほどほどにしてください」
「わかってるよ。それより、久々の再会なんだから舞鶴も来れば良いのだがな。あ、仁和が舞鶴を呼んで来いよ」
「舞鶴殿をですか? 彼女は今、夜行隊に所属する者達の身元を照らし合わせているようですよ」
「せっかく元上司がやって来たというのに......。舞鶴らしいな」
俺は久々に会う相手が来たならば、仕事なんかせずに会いに行くが。というか仕事をしなくて良いのなら泣いて喜ぶぞ。
ってそんなことより、斉京が米沢城にわざわざ来たということはかなり重大な事件があったと見て間違いない。もしかすると助けを呼んで来るために斉京は米沢の地に足を運んだのかもしれない。
「!?」急に起き上がった斉京は、俺の姿を見つけて安心したような表情になった。「この斉京勇、またあなた様に会えたことを光栄に思います!」
「敬語を使わなくたって良いぞ。あまり敬語で話すのは好きじゃないからな」
「では改めて、久々であったな。俺は他の元夜盗の者達とともに村で集まって暮らしていたのだが、とある集団に襲われた際に俺以外の元夜盗の者達が捕まってしまった。俺は逃げることが出来たので助けを呼ぼうと思い、急ぎ馳せ参じたのだ」
「その仲間を助けてほしいと?」
「ああ。奴らが人を捕まえたのは、新たな病気の症状を確かめるためのようだ。その新型病原体を奴らは''生ける屍''と呼んでいた。捕まえる人間は出来るだけ手練れであった方が良かったようで、それが原因で俺もかなり追われた」
「......待て、ゾンビと言ったか?」
「人間の人格がなくなることで人を襲う人間兵器と化す計画。この計画を完遂するために俺達は捕まったのだ」
そんな計画を進めているのは江渡弥平達くらいしかいない。となると斉京が狙われた理由は、人間をゾンビウイルスで兵器化する際に手練れであった方が強くなるからだと思われる。
「斉京達を襲った奴らの本部へ突っ込んで、捕まった奴らを助けに行ってほしいというのが斉京の希望か?」
「そうなる」
「頑張ってみよう。現在は対策を練っている段階だが、準備が出来次第奴らの本部には突っ込もうと思っていたのだ」
「奴らと知り合いだったのか?」
「まあな。因縁の相手だ」
ゾンビウイルスの症状を確かめるために江渡弥平達はどうしていたのかと思っていたが、まさか無関係のところから被験者を調達していたということか。
もし他にも捕らえられて無理矢理被験者をやらされている人がいたら、そいつらも助けないといけない。つまり、江渡弥平達の本部には被験者(一般人)もいることになる。迂闊に銃撃出来ないし、被験者が人の盾になっているわけだ。
こうなると銃だけじゃなく火薬の類いも使えないし、本部へ踏み込むには計画をもっと煮詰める必要がある。
「斉京は用意してある料理を食っていろ。俺はやらなくてはいけないことが出来ちまった!」
このことを仁和達にいち早く伝えて作戦を新しく考え直そう。藤堂は合理的な思考の持ち主だから人の盾ごと敵を倒そうとするだろうが、俺と仁和はそんな考えには至らない。藤堂を抜きにして仁和と二人で考えなくてはならない。
しかし夜行隊には身元もハッキリとしない者が多数所属し、現に江渡弥平の手の者も身を潜めていたようだ。結果として政宗らは死にかけたようだ。
身元確認などの作業を得意としていないのが舞鶴であり、内通者や暗殺者が夜行隊に所属していても気付かないだろう。
舞鶴は一つの隊を統率する程度ならば問題ないほどに育てたつもりだったが、味方に敵が紛れていることを見抜くということまでは教えてなかった。やはり彼女が隊長を務めるのはまだ早かったのか。
伊達氏領内では斉京の元部下の夜盗メンバー達が、舞鶴を含めて楽しく暮らしていた。夜行隊に所属する者達は気性が荒いものの手練れも多く、かなりの功績を残している。よって、夜行隊に所属する面々は、当時の平民からすると非常にうらやましいほどの待遇なのである。
そのことを知っていた斉京は、最近は空腹だったために美味しい料理の数々を想像した。そうしている内に米沢城に到着し、安心して膝から崩れ落ちた。
米沢城付近で倒れている斉京を見つけたのは他ならぬ舞鶴だった。舞鶴からその報告を受けた俺は、ひとまず斉京を個室に運び入れて布団に寝かせた。
仁和と藤堂を呼び出すと、斉京の体調を診るように言った。二人は真剣に斉京の体を調べたが、ただの空腹によって気を失っただけだとわかった。
すると俺は栄養剤を引っ張り出し、斉京の口へ注ぎ込んだ。仁和によると、あと何時間かすれば起きるのではないか、とのことだ。
俺は斉京のために料理人に美味しい料理を作らせた。この料理さえ食べれば、すぐに元気が回復するはずだ。
「仁和と藤堂はゾンビウイルスの対策の準備へ戻ってくれ。俺はここで斉京が起きるまで待っている」
仁和はため息をついた。「政宗殿も看病はほどほどにしてください」
「わかってるよ。それより、久々の再会なんだから舞鶴も来れば良いのだがな。あ、仁和が舞鶴を呼んで来いよ」
「舞鶴殿をですか? 彼女は今、夜行隊に所属する者達の身元を照らし合わせているようですよ」
「せっかく元上司がやって来たというのに......。舞鶴らしいな」
俺は久々に会う相手が来たならば、仕事なんかせずに会いに行くが。というか仕事をしなくて良いのなら泣いて喜ぶぞ。
ってそんなことより、斉京が米沢城にわざわざ来たということはかなり重大な事件があったと見て間違いない。もしかすると助けを呼んで来るために斉京は米沢の地に足を運んだのかもしれない。
「!?」急に起き上がった斉京は、俺の姿を見つけて安心したような表情になった。「この斉京勇、またあなた様に会えたことを光栄に思います!」
「敬語を使わなくたって良いぞ。あまり敬語で話すのは好きじゃないからな」
「では改めて、久々であったな。俺は他の元夜盗の者達とともに村で集まって暮らしていたのだが、とある集団に襲われた際に俺以外の元夜盗の者達が捕まってしまった。俺は逃げることが出来たので助けを呼ぼうと思い、急ぎ馳せ参じたのだ」
「その仲間を助けてほしいと?」
「ああ。奴らが人を捕まえたのは、新たな病気の症状を確かめるためのようだ。その新型病原体を奴らは''生ける屍''と呼んでいた。捕まえる人間は出来るだけ手練れであった方が良かったようで、それが原因で俺もかなり追われた」
「......待て、ゾンビと言ったか?」
「人間の人格がなくなることで人を襲う人間兵器と化す計画。この計画を完遂するために俺達は捕まったのだ」
そんな計画を進めているのは江渡弥平達くらいしかいない。となると斉京が狙われた理由は、人間をゾンビウイルスで兵器化する際に手練れであった方が強くなるからだと思われる。
「斉京達を襲った奴らの本部へ突っ込んで、捕まった奴らを助けに行ってほしいというのが斉京の希望か?」
「そうなる」
「頑張ってみよう。現在は対策を練っている段階だが、準備が出来次第奴らの本部には突っ込もうと思っていたのだ」
「奴らと知り合いだったのか?」
「まあな。因縁の相手だ」
ゾンビウイルスの症状を確かめるために江渡弥平達はどうしていたのかと思っていたが、まさか無関係のところから被験者を調達していたということか。
もし他にも捕らえられて無理矢理被験者をやらされている人がいたら、そいつらも助けないといけない。つまり、江渡弥平達の本部には被験者(一般人)もいることになる。迂闊に銃撃出来ないし、被験者が人の盾になっているわけだ。
こうなると銃だけじゃなく火薬の類いも使えないし、本部へ踏み込むには計画をもっと煮詰める必要がある。
「斉京は用意してある料理を食っていろ。俺はやらなくてはいけないことが出来ちまった!」
このことを仁和達にいち早く伝えて作戦を新しく考え直そう。藤堂は合理的な思考の持ち主だから人の盾ごと敵を倒そうとするだろうが、俺と仁和はそんな考えには至らない。藤堂を抜きにして仁和と二人で考えなくてはならない。
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