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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その参伍
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世界は球体である。僕がこの事実を知ったのは、水平線が歪んでいるところを見た幼い頃だ。地は球い、そして後に''地球''と名付けた。自画自賛とはなるが、我ながらうまい言い方だと思う。
いきなりだが、僕はどうも地球中心説が人々の傲慢だと思ってしまう。地球が中心に位置し、太陽も月も地球の周りを回っているなんて考えは傲慢以外の何者でもない。
しかし地球中心説を否定した僕は周囲から忌み嫌われた。異端者と呼ばれ始めた頃には人里を離れ、山奥で自分の好きな研究に没頭した。
山奥での生活は不便であり、貯金の額も低かったので貧しかった。なのでひとまず牛の血と鉄製の鍋、わら灰を使って青い顔料を作り、それを人に売って収入源とすることには成功する。
それなりに生活が出来るようになると、地球の研究に本腰を入れる。まず取り掛かったのは、地球中心説が間違っているという証拠探しだ。
地球中心説が間違いだという確たる証拠は主様と仁和様が現れるまで見つからなかったものの、太陽中心説という新たな説を提唱。この太陽中心説は、太陽を中心として月や地球も回るというものだ。
とある日、前述した主様と仁和様が僕の住む山小屋に訪れた。最初は警戒したが、仁和様が僕の疑問の一つにあっさりと答えたのを見て、神が降臨したのかと我が眼を疑った。
仁和様はまず地球は自転・公転していると断った上で、飛んでも同じ位置に着地するのは、人間も空中で地球とともに前へ進んでいると言ったのだ。例として、船の上で飛んでも同じ位置に着地する、という話しを挙げた。
僕は仁和様のすごさに感服し、快く配下となることを承諾。望遠鏡をはじめとする道具を賜った。
この望遠鏡は遠くにある物が手を伸ばすと届く位置にあると錯覚するほど近くに見えるようになるもので、星の観測に大いに役立った。仁和様に言われたので太陽を直接見ることは出来ないが、望遠鏡を通して太陽を紙に映し出すことによって、太陽に黒い点があることに気が付いた。
この黒い点を仁和様は''黒点''と呼んでいて、すでに知っていたようだ。この黒点を観察することで太陽が回転していることを突き止めた。
そして何と星は球体なのは地球でも例外ないはずなのだが、歪な形をしていて球体ではない星が一つだけあった。この星のことを仁和様に尋ねると、''土星''という名の星だと知った。
なぜ土星が球体ではないのかと聞くと、望遠鏡の倍率が足りなかったから土星の環が観測出来なかったのだろうという答えをいただいた。
しかも、もし土星をちゃんと観測出来た場合に見える土星の絵を仁和様は描いてくれた。その絵によると、土星の周りには輪っかが浮いているようだ。
土星の輪っかを歩くことが出来るかという問いには、仁和様は無理だと答えた。この答えは残念だった。おそらく、虹と似たようなものなのだろう。
このように仁和様は無知な僕に様々なことを教えてくれた。主様も異端者である僕を仲間にしたことで騒ぎが起こっているというのに、逆に僕を元気づけてくれた。だからこそ、恩を仇では返せない。恩は恩で返すのだ。
人間兵器化計画。主様達の仇敵・江渡弥平という人物が推し進める計画で、人の意識を奪うことで人を襲う人間兵器を作り出すというものだ。仁和様も元々は江渡の配下だったが、裏切られたことを起に主様に仕え、今では大隊を束ねる統率者となっている。
この江渡の計画によって作り出された人間兵器に対抗出来る手段を模索するのが僕の仕事だ。僕は犬によって人間兵器を襲わせることを提案したが、主様は犬を用いて人間兵器を誘導するということを唱えた。さすがは主様である。僕はその意見に賛成した。
後日、主様はイギリス人を連れてきた。驚くことに、イギリス人の彼は主様に薬学について教えた師匠だという。名をシャーロック・ホームズと言い、さぞすごい方なのだと思ったが体に害を及ぼす麻薬各種などの嗜好品を好んで摂取している。
そういう点さえなければ、ホームズという人物は非常に優秀だ。犬についてくわしく、仁和様でさえ教わることもあるという。上には上がいるのだと実感した瞬間だった。
「おい」江渡弥平はしかめっ面で鐵を呼び止めた。「計画の方は順調なのか?」
「伊達政宗によって以前使っていたアジトから逃げる羽目になりましたが、幸いにしてゾンビウイルスの試作品は全て持ち出せました。人間兵器化計画が記された帳面など全十五冊は持って来られなかったので計画はあちら側にバレてしまいましたが、計画は順調と言って差し支えないでしょう」
「そうか。順調ならば文句はない。毎回毎回あの政宗が我々の邪魔をするからな。次こそは人間兵器で奴らを蹂躙してやる。伊達の血を根絶やしに!」
「彼は危険な存在なので、真っ先に倒すのが最善です。さすがは我がボス」
「そんなことより、被験者を十人集められたか?」
「はい。元気がある者を十人捕まえてきました。斉京勇と名乗る男は逃がしてしまいましたが、まあ支障はございません」
「斉京勇? 随分と大層な名前だな」
「恩人が名付け親のようですよ」
伊達政宗達はどの犬種が適切か話し合っている中、斉京勇は何度も転びながら山道を進んだ。米沢城を目指し、助けを呼ぶために。
いきなりだが、僕はどうも地球中心説が人々の傲慢だと思ってしまう。地球が中心に位置し、太陽も月も地球の周りを回っているなんて考えは傲慢以外の何者でもない。
しかし地球中心説を否定した僕は周囲から忌み嫌われた。異端者と呼ばれ始めた頃には人里を離れ、山奥で自分の好きな研究に没頭した。
山奥での生活は不便であり、貯金の額も低かったので貧しかった。なのでひとまず牛の血と鉄製の鍋、わら灰を使って青い顔料を作り、それを人に売って収入源とすることには成功する。
それなりに生活が出来るようになると、地球の研究に本腰を入れる。まず取り掛かったのは、地球中心説が間違っているという証拠探しだ。
地球中心説が間違いだという確たる証拠は主様と仁和様が現れるまで見つからなかったものの、太陽中心説という新たな説を提唱。この太陽中心説は、太陽を中心として月や地球も回るというものだ。
とある日、前述した主様と仁和様が僕の住む山小屋に訪れた。最初は警戒したが、仁和様が僕の疑問の一つにあっさりと答えたのを見て、神が降臨したのかと我が眼を疑った。
仁和様はまず地球は自転・公転していると断った上で、飛んでも同じ位置に着地するのは、人間も空中で地球とともに前へ進んでいると言ったのだ。例として、船の上で飛んでも同じ位置に着地する、という話しを挙げた。
僕は仁和様のすごさに感服し、快く配下となることを承諾。望遠鏡をはじめとする道具を賜った。
この望遠鏡は遠くにある物が手を伸ばすと届く位置にあると錯覚するほど近くに見えるようになるもので、星の観測に大いに役立った。仁和様に言われたので太陽を直接見ることは出来ないが、望遠鏡を通して太陽を紙に映し出すことによって、太陽に黒い点があることに気が付いた。
この黒い点を仁和様は''黒点''と呼んでいて、すでに知っていたようだ。この黒点を観察することで太陽が回転していることを突き止めた。
そして何と星は球体なのは地球でも例外ないはずなのだが、歪な形をしていて球体ではない星が一つだけあった。この星のことを仁和様に尋ねると、''土星''という名の星だと知った。
なぜ土星が球体ではないのかと聞くと、望遠鏡の倍率が足りなかったから土星の環が観測出来なかったのだろうという答えをいただいた。
しかも、もし土星をちゃんと観測出来た場合に見える土星の絵を仁和様は描いてくれた。その絵によると、土星の周りには輪っかが浮いているようだ。
土星の輪っかを歩くことが出来るかという問いには、仁和様は無理だと答えた。この答えは残念だった。おそらく、虹と似たようなものなのだろう。
このように仁和様は無知な僕に様々なことを教えてくれた。主様も異端者である僕を仲間にしたことで騒ぎが起こっているというのに、逆に僕を元気づけてくれた。だからこそ、恩を仇では返せない。恩は恩で返すのだ。
人間兵器化計画。主様達の仇敵・江渡弥平という人物が推し進める計画で、人の意識を奪うことで人を襲う人間兵器を作り出すというものだ。仁和様も元々は江渡の配下だったが、裏切られたことを起に主様に仕え、今では大隊を束ねる統率者となっている。
この江渡の計画によって作り出された人間兵器に対抗出来る手段を模索するのが僕の仕事だ。僕は犬によって人間兵器を襲わせることを提案したが、主様は犬を用いて人間兵器を誘導するということを唱えた。さすがは主様である。僕はその意見に賛成した。
後日、主様はイギリス人を連れてきた。驚くことに、イギリス人の彼は主様に薬学について教えた師匠だという。名をシャーロック・ホームズと言い、さぞすごい方なのだと思ったが体に害を及ぼす麻薬各種などの嗜好品を好んで摂取している。
そういう点さえなければ、ホームズという人物は非常に優秀だ。犬についてくわしく、仁和様でさえ教わることもあるという。上には上がいるのだと実感した瞬間だった。
「おい」江渡弥平はしかめっ面で鐵を呼び止めた。「計画の方は順調なのか?」
「伊達政宗によって以前使っていたアジトから逃げる羽目になりましたが、幸いにしてゾンビウイルスの試作品は全て持ち出せました。人間兵器化計画が記された帳面など全十五冊は持って来られなかったので計画はあちら側にバレてしまいましたが、計画は順調と言って差し支えないでしょう」
「そうか。順調ならば文句はない。毎回毎回あの政宗が我々の邪魔をするからな。次こそは人間兵器で奴らを蹂躙してやる。伊達の血を根絶やしに!」
「彼は危険な存在なので、真っ先に倒すのが最善です。さすがは我がボス」
「そんなことより、被験者を十人集められたか?」
「はい。元気がある者を十人捕まえてきました。斉京勇と名乗る男は逃がしてしまいましたが、まあ支障はございません」
「斉京勇? 随分と大層な名前だな」
「恩人が名付け親のようですよ」
伊達政宗達はどの犬種が適切か話し合っている中、斉京勇は何度も転びながら山道を進んだ。米沢城を目指し、助けを呼ぶために。
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