隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
201 / 245
第五章『奥州の覇者』

伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐捌

しおりを挟む
『政宗。アドレナリンの分泌ぶんぴつの調整くらいは我には容易いが、やってやろうか?』
 アドレナリンか。仁和いわく、アドレナリンは逃げるか戦うかする行動に大きな影響を及ぼすようだ。アドレナリンによって逃げるか戦うかの判断をするわけだが、その分泌を調整出来るとは大したものだ。
『大したものだろ?』
「俺の思考に割り込んでくるなっ!」
 地図を取り出すと周辺の地形や建物などを確認した。すると運良く近くに廃虚と化したビルがある。ここで敵を迎え撃ってはどうかと柳生師範に提案すると、勝機があるならばと受け入れてくれた。
「それで名坂少年はどのような作戦を考えているんだい?」
「柳生師範に買ってくるように頼んだ中に丸鋼がありましたよね?」
「ああ、あったな。その丸鋼を武器にしたりするんじゃないのかな?」
「丸鋼は長いものを頼みましたが、さすがにこれで叩こうとは思いませんよ。ちゃんとした作戦があります」
「それは頼もしい。君を信用している」
「ありがとうございます」
 明日まで逃げ切れば戦国時代に戻れる。この武器も持って帰れれば良いんだが、それはどうやら無理みたいだ。まあ構わないが。
 でも待てよ......廃虚のビルならば鉄筋くらい何本かは手に入りそうだな。丸鋼を用意した意味はなかったということか。
「ん? あっ! 柳生師範、車二台に追われています!」
「こちらから銃撃は出来そうか?」
「距離があるので俺達が持っている銃では射程外です。しかし向こうの所持する武器は射程距離の長いものだと見受けられます! スピードを上げて早く廃虚のビルへ行きましょう!」
「急ごう!」
 一応俺もイングラムM10を構えたが、牽制にすらなっていない。ならば煙幕花火と爆竹を使うしかない。
「ライターありますか?」
「煙草の横に置いてあるぞ」
「あ、ありました!」
 柳生師範のライターを手に取ると、窓を開けて煙幕花火を後方へ投げた。そうしたら白い煙が充満し、奴らの視界は完全に閉ざされたことだろう。
 もし視界が閉ざされたら、運転手は窓から身を乗り出すはずだ。そこで俺は爆竹を投げつけた上で、催涙剤をプッシュした。
 スプレーというものは意外と風に乗って遠くへと流れる。俺も前世で姉を怒らせた際に、ハッカのスプレーを顔に吹き掛けられたことがある。咄嗟とっさに背を向けて口を覆ったが、背中側から吹き掛けられたハッカの粒子が口に入ってきた。そして苦しくなったのだ。スプレーは侮れん。
 思惑おもわく通りに催涙剤が後方へと風に乗って流れ、身を乗り出していたであろう何人かの悲鳴が聞こえた。運転手が催涙剤を食らったら車は制御不能となる。二台は一列に並んで俺達を追っているので、先頭を走る車がコントロール出来なくなると後ろの車も巻き込まれる。
「二台ともに倒しました」
「さすが名坂少年だ。恐れ入るよ」
「光栄ですが、廃虚のビルへ急いだ方が良さそうです」
「他にも追われているのは確かだな」
 思い切りアクセルを踏まれた車は法定速度を無視して突っ走り、あっという間に目的地に到着した。戦国時代とは比べものにもならない文明の利器に感謝をしつつ、各々が武器を持って廃虚のビルに足を踏み入れた。
 一階の床が崩れる可能性は低いだろうが、壁や天井が崩れないという保証はどこにもない。けれど柳生師範と愛華はそんなことを意に介さずに階段を駆け上がっていった。
「さすがは剣道親子、と言ったところか」
 俺も二人に続いて階段を上がると、二階で立ち止まって通路を吟味した。この廃虚のビルは壁がほとんどなく、狭まった通路というものがない。狭いところと言えば階段がある部分だけなので、罠を仕掛けるべきはここしかない。
「この階段に罠を仕掛けることにしましょう。丸鋼を五本ほど出してください」
 受け取った丸鋼を階段をふさぐように横にして縦一列に等間隔に並べて設置すると、あり合わせのもので丸鋼に電気を流した。
「確かに電気を流すのは良いアイディアだが、丸鋼の設置個所はガムテープで貼ってあるだけだ。蹴られればすぐに破られてしまう」
「この丸鋼が蹴られる、という可能性は低いです。階段に仕掛けたので、侵入者からすると少し高い位置にあることになるので足が上がらないでしょう。仮に足が上がったとして、階段は幅が狭いので思うように動かせないですし」
「なるほど。だけどこんな足止めはすぐに攻略されると思うのだが」
「電気が流れていることを知らない敵は、丸鋼がガッチガチに固められているだけだと考えるはずです。そしてまずは手で丸鋼を握ろうとする──それが作戦の本命です」
「本命?」
 見ていればわかると言い、敵が来るのを待った。二階に通じるのが階段以外にないと知った敵は疑いもなく階段を上がり、丸鋼をつい掴んでしまった。
「うわああああぁぁぁーーーーーっ!」
 電気が流れている丸鋼を掴んだバカは、それでも手を離そうとしない。正確には、手が離れないのだ。手の平で触れてしまうと感電した際に反射的に握ってしまうのだが、その後も手が離れなくなる。
 そのバカの後ろにいた奴は丸鋼から手を離させようとそいつの肩に両手を置いたが、骨を通じて感電するため二人目も手が離れなくなった。
「柳生師範、これこそが作戦です」
「納得したよ。見事だ」
 こうして敵が足踏みをしている間に催涙剤を吹き掛けると、全員が行動不能となるので縄で縛り上げた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

処理中です...