200 / 245
第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐漆
しおりを挟む
戦国時代の環境に順応し過ぎて、周囲を囲まれていても動揺しなくなってきたな。いや、少しは緊張するべきか。敵の持っている武器には目を見張るから、第三者に露見する前に倒して武器を奪い取ろう。
二人は起こさなくても良いな。俺一人で十分に相手出来る。催涙剤を試してみたかったが、ガスマスクをしているから正攻法でやるしかない。ただあのガスマスクのせいでかなり視界不良になっているようだから、背後を取るのか簡単だろう。
「さて、アマテラスも頼むぞ」
『政宗が死んだ時に、か?』
「物騒だな、おい。骨を拾われるくらい弱ってはないぞ」
『そうだな。貴様は神にも勝る力を秘めているから心配無用だ』
「俺だって神力がなければ強くはない。過大評価をするな」
悲鳴を上げられてはまずいから、一撃で気付かれずに仕留めよう。
木刀を強く握ると背後を取り、的確に後頭部を叩いていった。気を失っていく奴らを一塊にすると武器を掻っ払って、そのまま放置することとした。直に目が覚めて撤退するはずだ。
それにしても、この武器は良いな。確かこの銃はソビエト連邦が生み出したAK47だって仁和が言っていた。特徴も一致するし、AK47で八割方間違いはないだろう。
AK47は構造がシンプルで弾詰まりも起こりにくいからメンテナンスもあまりやる必要がない。命中率が高くはないのが玉に瑕ではあるが、狙撃をするつもりはないから関係ない。
弾倉、つまりは替えの弾も何個かある。数を撃てばいつかは当たると言うから、そもそも命中率など無視しても良い。
「こりゃ珍しい武器がたくさんある。イングラムM10もあるな。イングラムM10は高い火力と高い連射速度を兼ね備えた、小型で小回りも利く銃だ」
というかAK47もイングラムM10も構造がシンプルで複製しやすく安価のため、テロリストがよく使うと聞いてはいたが間違ってはいなかったようだ。
イングラムM10は連射スピードが速く弾をすぐに使い切ってしまう。ただそれを想定して弾もたくさん用意してあるから、連射可能ではある。
「ふむ、興味のない銃の話しも仁和から聞いておいて損はなかった。意外と役立つものだな」
これでAK47もイングラムM10がともに三丁入手することが出来た。それぞれ一丁ずつを二人にも持たせておこう。反動があるから素人にはブレるだろうが、牽制には有効だしな。
「おや」柳生師範は何度も瞬きをした。「その武器はどうしたんだい?」
「ちょっとアテがありまして、ゲットしてきました」
「また随分とゴツい見た目の銃だが......」
「AK47とイングラムM10です。護身用に持っていてください」
「ああ、持っていることとしよう。では急ぎ、この旅館を発ってしまおうか」
「ええ、それが良いでしょう。ここも危険なので」
何となく悟ったであろう柳生師範は武器を装備して防具を装着し、愛華の体を揺すって起こした。俺はその間ずっと八方を警戒し、敵襲を防ぐために神経を尖らせた。
「不審な動きをする奴は他にいるか?」
『我の索敵に引っ掛かるような不審人物は確認出来ていない。おっ、幼女を尾行する変態中年ジジイならば近くにいるぞ』
「バナナの皮でも使って変態ジジイの方を転ばせておいてくれ」
『バナナの皮か? 階段のところにでも設置しておこうか?』
「階段はやめろ。死ぬだろ」
やはりどうにもアマテラスの考えていること、思考などは人間の俺とは多少異なる。変態ジジイだとしても、人に迷惑をかけなければ生きる価値はある。まあ幼女の趣味はどうかと思うが......ベビーシッターとか保育士とかの職業ではないことを願おう。
「運転は柳生師範がし、愛華は身を潜めてください。俺はいつも通り後方を警戒しているので」
「「わかった!」」
逃げ切るまでもう少しだ。戦国時代に戻すまでに時間が掛かるなんて、アマテラスも万能というわけではないのが面倒だ。
『聞こえているが?』
「おっと、そうだった」
舗装されていない道を車で進み、等間隔で小刻みに揺れた。その揺れがあまりにも激しかったため、少々酔ってしまった。
車酔いとは不覚だった。この状態では銃もうまく扱えない。何とかならんのか、全知全能の神?
『全知全能の神とは我のことか? 言っておくが、我はゼウスほど万能でもない。太陽神ではあるが、夜を統べているのは我ではなくツクヨミだ。それすなわち、全知全能ではないであろう?』
「ふむ、お前を創った奴も理不尽なものだな」
『仕方あるまい。政宗だって好き好んで名坂横久として生まれたわけではないだろ?』
「まあな。ただ、今は好き好んで伊達政宗をやってるが」
『それもそうであったか』
「車酔いによって視界はぐちゃぐちゃだが、アマテラスは俺の銃の狙いを定めることは出来るか?」
『出来ればとっくにやっている』
「そうか」
ならば無駄な弾を多く使うことになるが、標的を捕捉する前にイングラムM10を連射しよう。元々そういうことに特化した銃だが、弾の数が多いとは言っても足りるかどうか。やるしかないが、ギリギリだな。
二人は起こさなくても良いな。俺一人で十分に相手出来る。催涙剤を試してみたかったが、ガスマスクをしているから正攻法でやるしかない。ただあのガスマスクのせいでかなり視界不良になっているようだから、背後を取るのか簡単だろう。
「さて、アマテラスも頼むぞ」
『政宗が死んだ時に、か?』
「物騒だな、おい。骨を拾われるくらい弱ってはないぞ」
『そうだな。貴様は神にも勝る力を秘めているから心配無用だ』
「俺だって神力がなければ強くはない。過大評価をするな」
悲鳴を上げられてはまずいから、一撃で気付かれずに仕留めよう。
木刀を強く握ると背後を取り、的確に後頭部を叩いていった。気を失っていく奴らを一塊にすると武器を掻っ払って、そのまま放置することとした。直に目が覚めて撤退するはずだ。
それにしても、この武器は良いな。確かこの銃はソビエト連邦が生み出したAK47だって仁和が言っていた。特徴も一致するし、AK47で八割方間違いはないだろう。
AK47は構造がシンプルで弾詰まりも起こりにくいからメンテナンスもあまりやる必要がない。命中率が高くはないのが玉に瑕ではあるが、狙撃をするつもりはないから関係ない。
弾倉、つまりは替えの弾も何個かある。数を撃てばいつかは当たると言うから、そもそも命中率など無視しても良い。
「こりゃ珍しい武器がたくさんある。イングラムM10もあるな。イングラムM10は高い火力と高い連射速度を兼ね備えた、小型で小回りも利く銃だ」
というかAK47もイングラムM10も構造がシンプルで複製しやすく安価のため、テロリストがよく使うと聞いてはいたが間違ってはいなかったようだ。
イングラムM10は連射スピードが速く弾をすぐに使い切ってしまう。ただそれを想定して弾もたくさん用意してあるから、連射可能ではある。
「ふむ、興味のない銃の話しも仁和から聞いておいて損はなかった。意外と役立つものだな」
これでAK47もイングラムM10がともに三丁入手することが出来た。それぞれ一丁ずつを二人にも持たせておこう。反動があるから素人にはブレるだろうが、牽制には有効だしな。
「おや」柳生師範は何度も瞬きをした。「その武器はどうしたんだい?」
「ちょっとアテがありまして、ゲットしてきました」
「また随分とゴツい見た目の銃だが......」
「AK47とイングラムM10です。護身用に持っていてください」
「ああ、持っていることとしよう。では急ぎ、この旅館を発ってしまおうか」
「ええ、それが良いでしょう。ここも危険なので」
何となく悟ったであろう柳生師範は武器を装備して防具を装着し、愛華の体を揺すって起こした。俺はその間ずっと八方を警戒し、敵襲を防ぐために神経を尖らせた。
「不審な動きをする奴は他にいるか?」
『我の索敵に引っ掛かるような不審人物は確認出来ていない。おっ、幼女を尾行する変態中年ジジイならば近くにいるぞ』
「バナナの皮でも使って変態ジジイの方を転ばせておいてくれ」
『バナナの皮か? 階段のところにでも設置しておこうか?』
「階段はやめろ。死ぬだろ」
やはりどうにもアマテラスの考えていること、思考などは人間の俺とは多少異なる。変態ジジイだとしても、人に迷惑をかけなければ生きる価値はある。まあ幼女の趣味はどうかと思うが......ベビーシッターとか保育士とかの職業ではないことを願おう。
「運転は柳生師範がし、愛華は身を潜めてください。俺はいつも通り後方を警戒しているので」
「「わかった!」」
逃げ切るまでもう少しだ。戦国時代に戻すまでに時間が掛かるなんて、アマテラスも万能というわけではないのが面倒だ。
『聞こえているが?』
「おっと、そうだった」
舗装されていない道を車で進み、等間隔で小刻みに揺れた。その揺れがあまりにも激しかったため、少々酔ってしまった。
車酔いとは不覚だった。この状態では銃もうまく扱えない。何とかならんのか、全知全能の神?
『全知全能の神とは我のことか? 言っておくが、我はゼウスほど万能でもない。太陽神ではあるが、夜を統べているのは我ではなくツクヨミだ。それすなわち、全知全能ではないであろう?』
「ふむ、お前を創った奴も理不尽なものだな」
『仕方あるまい。政宗だって好き好んで名坂横久として生まれたわけではないだろ?』
「まあな。ただ、今は好き好んで伊達政宗をやってるが」
『それもそうであったか』
「車酔いによって視界はぐちゃぐちゃだが、アマテラスは俺の銃の狙いを定めることは出来るか?」
『出来ればとっくにやっている』
「そうか」
ならば無駄な弾を多く使うことになるが、標的を捕捉する前にイングラムM10を連射しよう。元々そういうことに特化した銃だが、弾の数が多いとは言っても足りるかどうか。やるしかないが、ギリギリだな。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる