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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐肆
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「良いですか、柳生師範? 確かにあなたは剣術も体術も優秀ですが、今回のような場合での戦いにはルールがないです。つまりゲリラ、奇襲、速攻をされてしまってはこちらが必ず負けます。例えるならば、オセロや将棋などのゲームでは交互に攻撃をするのがルールですが、実際の戦いで相手は俺達が攻撃をするのを待ってはくれません」
「ふむふむ。ヒーローが名乗るまで敵は攻撃をしないといったセオリーが通じない、ということだね?」
「はい。そのようなことでしょう」
何とか見つけた旅館の部屋にて、柳生師範に戦い方を教えていた。愛華は体術に不向きなので、俺達二人で守ることになったので戦い方は教えていない。
「それよりも名坂少年」
「何でしょうか?」
「拳銃の使い方、コツなどを教えてくれると助かるんだが」
「俺は拳銃の扱いには慣れていますが、いつも使っているのは今持っているものより機能の低いものです。使い方などは教えられますが、コツと言われるとどうにも......」
「常識の範疇でならどうだい?」
「それなら大丈夫です。ええと、まずはランチェスターの法則について話しますね」
「ランチェスターの法則?」
「俺もくわしくは知らなくて、同じ仕事をしていた仁和って人から聞いたことなんです。そのランチェスターの法則に基づくと、どんなに手練れの拳銃使いが揃った軍でも、それより人数の多い軍であるならば手練れではない拳銃使いでも勝つには有利になるそうです」
「ということは、拳銃による乱戦では人数の多い方が有利ってことか」
「はい、そうなります。こちら側には拳銃の扱いに長けた者はおろか、人数も三人しかいません。つまり拳銃による戦いでは俺達が圧倒的に不利なんです」
柳生師範は考え込むように顔を下に向け、小さくうなり声を上げた。
「では名坂少年はこれからどのような計画を立てているのかな?」
「拳銃だけでの戦いでは向こうに分があります。なので拳銃以外の戦い方も組み込んでみる、というのが最適だと考えています。敵は拳銃などの銃火器を装備していますが、狙いが甘かった上に狙いを定めずに連射をしている者もいました。手練れの射撃手ならば狙いが甘いわけもないし、無意味な連射をするわけがありません。敵の人員が拳銃の扱いに不得手な者が多いならば、それ以外の戦術での勝機もありますし」
元々考えるのは苦手なのだが、これが火事場の馬鹿力みたいなものなのか。こんなに頭の回転が早くなったのは前世でもなかなかなかったぞ。
「具体的にはどのような戦術がある?」
「まず、敵の拳銃を攻略する必要があります。盾なんかがあると便利ですが、拳銃に撃ち抜かれるくらい耐久力が低いと意味がありません。耐久力の高い盾を用意している時間もないので、もし拳銃を持った敵が襲ってきたら不規則に走りましょう。敵が手練れでないならば撃たれる心配はありません。特に愛華は身長が低いので、小刻みな動きが得意なはずです」
「仮に敵が手練れだったならばどうする?」
「敵から剥ぎ取った防弾チョッキやらは三人分はないので、それを切り取って撃たれたら致命傷となる部分だけでも覆いましょう。第二に、攻撃手段を確保したいですね」
攻撃するための武器などを用意ならば、戦国時代より現代の方が簡単なのは当然のことだ。拳銃や刀剣類は手に入りにくいが、それ以外は案外と簡単に入手可能だ。さっき俺が食らってしまった(非常に危険な)催涙剤もコンビニなどに売っているし、撹乱用として爆竹や鼠花火、煙幕花火なんかも欲しいところだ。
簡易爆弾ならば材料さえあれば作れるし、それらの物を購入するのは柳生師範へ押しつけることにしよう。
「柳生師範はこの紙に書いてある物をコンビニや旅館の売店などで買ってきてください」
「ああ、わかった。愛華を頼むよ」
「任せてください」
柳生師範が部屋を出たので、深く考え込むこととした。俺達の勝利条件はアマテラスが俺を戦国時代に戻すまで逃げることで、敵の勝利条件は俺を捕まえること。俺の生死を問わない可能性もある。
逃げ切るための移動手段も確保出来ていて、武器や防具もそれなりにある。加えて柳生師範もいる。逃げ切ることは出来そうだな。
となると俺が今考えるべきは、戦国時代に戻ってからどのようにして江渡弥平に勝つのか。ついでにタイムマシンの設計図などもあれば手に入れたい。
江渡弥平に勝つには陰陽師の御影と鐵を何とかしないといけない。そもそも、あいつらが奇術を使えるかどうかが肝心だ。もしも奇術が使えるような化け物ならば、俺だけでは太刀打ち出来ないからな。
陰陽師二人が俺の前で披露した奇術は呪縛、つまり金縛りだけだ。指が一本も動かなくなったが、体を動かなくさせる薬品が存在すると仁和から聞いた記憶がある。その薬品名は確か......錯視見る小瓶、みたいな感じだったはずだ。
『おい政宗。こちらの方で調べてみたら、もしかしてお前の言っている薬品は「錯視見る小瓶」ではなくて「サクシニルコリン」のことではないか?』
「......誰にも間違いはある。仕方のないことだ」
『ハハハハハ! 面白い奴だな』
「笑うなっ!」
「ふむふむ。ヒーローが名乗るまで敵は攻撃をしないといったセオリーが通じない、ということだね?」
「はい。そのようなことでしょう」
何とか見つけた旅館の部屋にて、柳生師範に戦い方を教えていた。愛華は体術に不向きなので、俺達二人で守ることになったので戦い方は教えていない。
「それよりも名坂少年」
「何でしょうか?」
「拳銃の使い方、コツなどを教えてくれると助かるんだが」
「俺は拳銃の扱いには慣れていますが、いつも使っているのは今持っているものより機能の低いものです。使い方などは教えられますが、コツと言われるとどうにも......」
「常識の範疇でならどうだい?」
「それなら大丈夫です。ええと、まずはランチェスターの法則について話しますね」
「ランチェスターの法則?」
「俺もくわしくは知らなくて、同じ仕事をしていた仁和って人から聞いたことなんです。そのランチェスターの法則に基づくと、どんなに手練れの拳銃使いが揃った軍でも、それより人数の多い軍であるならば手練れではない拳銃使いでも勝つには有利になるそうです」
「ということは、拳銃による乱戦では人数の多い方が有利ってことか」
「はい、そうなります。こちら側には拳銃の扱いに長けた者はおろか、人数も三人しかいません。つまり拳銃による戦いでは俺達が圧倒的に不利なんです」
柳生師範は考え込むように顔を下に向け、小さくうなり声を上げた。
「では名坂少年はこれからどのような計画を立てているのかな?」
「拳銃だけでの戦いでは向こうに分があります。なので拳銃以外の戦い方も組み込んでみる、というのが最適だと考えています。敵は拳銃などの銃火器を装備していますが、狙いが甘かった上に狙いを定めずに連射をしている者もいました。手練れの射撃手ならば狙いが甘いわけもないし、無意味な連射をするわけがありません。敵の人員が拳銃の扱いに不得手な者が多いならば、それ以外の戦術での勝機もありますし」
元々考えるのは苦手なのだが、これが火事場の馬鹿力みたいなものなのか。こんなに頭の回転が早くなったのは前世でもなかなかなかったぞ。
「具体的にはどのような戦術がある?」
「まず、敵の拳銃を攻略する必要があります。盾なんかがあると便利ですが、拳銃に撃ち抜かれるくらい耐久力が低いと意味がありません。耐久力の高い盾を用意している時間もないので、もし拳銃を持った敵が襲ってきたら不規則に走りましょう。敵が手練れでないならば撃たれる心配はありません。特に愛華は身長が低いので、小刻みな動きが得意なはずです」
「仮に敵が手練れだったならばどうする?」
「敵から剥ぎ取った防弾チョッキやらは三人分はないので、それを切り取って撃たれたら致命傷となる部分だけでも覆いましょう。第二に、攻撃手段を確保したいですね」
攻撃するための武器などを用意ならば、戦国時代より現代の方が簡単なのは当然のことだ。拳銃や刀剣類は手に入りにくいが、それ以外は案外と簡単に入手可能だ。さっき俺が食らってしまった(非常に危険な)催涙剤もコンビニなどに売っているし、撹乱用として爆竹や鼠花火、煙幕花火なんかも欲しいところだ。
簡易爆弾ならば材料さえあれば作れるし、それらの物を購入するのは柳生師範へ押しつけることにしよう。
「柳生師範はこの紙に書いてある物をコンビニや旅館の売店などで買ってきてください」
「ああ、わかった。愛華を頼むよ」
「任せてください」
柳生師範が部屋を出たので、深く考え込むこととした。俺達の勝利条件はアマテラスが俺を戦国時代に戻すまで逃げることで、敵の勝利条件は俺を捕まえること。俺の生死を問わない可能性もある。
逃げ切るための移動手段も確保出来ていて、武器や防具もそれなりにある。加えて柳生師範もいる。逃げ切ることは出来そうだな。
となると俺が今考えるべきは、戦国時代に戻ってからどのようにして江渡弥平に勝つのか。ついでにタイムマシンの設計図などもあれば手に入れたい。
江渡弥平に勝つには陰陽師の御影と鐵を何とかしないといけない。そもそも、あいつらが奇術を使えるかどうかが肝心だ。もしも奇術が使えるような化け物ならば、俺だけでは太刀打ち出来ないからな。
陰陽師二人が俺の前で披露した奇術は呪縛、つまり金縛りだけだ。指が一本も動かなくなったが、体を動かなくさせる薬品が存在すると仁和から聞いた記憶がある。その薬品名は確か......錯視見る小瓶、みたいな感じだったはずだ。
『おい政宗。こちらの方で調べてみたら、もしかしてお前の言っている薬品は「錯視見る小瓶」ではなくて「サクシニルコリン」のことではないか?』
「......誰にも間違いはある。仕方のないことだ」
『ハハハハハ! 面白い奴だな』
「笑うなっ!」
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