隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
194 / 245
第五章『奥州の覇者』

伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐壱

しおりを挟む
 俺にはちゃんとした勝機がある。勝つプランはあるのだ。こいつらはボクシングや空手、柔道などの体術に優れた奴らだろうということは身のこなしから容易に想像出来る。しかし、殺しに関してはまったくの素人だ。
 どういうことなのか言葉にして説明するのは難しいが、こいつらファンキー集団は江渡弥平の回し者ではあるが殺しのプロではない。推測には過ぎないが、ファンキー集団らは闇金か何かの多重債務さいむ者なのではないか?
 闇金関係の多重債務者の中で体術に秀でた者が、俺を捕らえるために狩り出されたと思われる。多重債務者はお金を返すためには狩り出されるしかないし、それが一度自己破産した人間ならば尚更だ。自己破産は二度も出来ないからな。
 まあ、そんな推測はどうでも良い。重要なのは、俺が今から相手をする奴らは殺しに慣れていないということだ。ならば、勝てる自信はある。
「お前ら、一応は格闘技をかじっているだろ? 俺と武器無しでタイマンを張れや!」
 格闘技をやっていて、なおかつ闇金などの裏の業界にいる人間は頭がイカれている。並びに、強い奴とのタイマンもやりたいはずだ。だからこそ、この誘いに乗るだろうと踏んだ。
「おい貴様。名は伊達政宗、だったか? 戦国武将と同姓同名だが、強いんだろ?」
「剣術、体術ともに自信がある」
「よっしゃ、じゃあ俺と体術だけでタイマン張ろうぜ」
「よしきた! 俺は浅く広く格闘技をかじっている。ボクシング、空手、柔道などを習っていた。剣術も数十個に及ぶ流派を学んでいる」
「なるほど、多岐に渡るな。俺はボクシング一本を極めただけだが、負ける気はねぇよ」
「どちらが先手かな?」
「そっちで構わない」
「では、遠慮なくやらせてもらおう」
 俺が先手をやれとは言われたが、向こうから先に殴りかかってくる可能性もある。だからまずは相手の目線や息づかい、重心の位置などから次の動きを予測した。
 そして俺は姿勢を崩さずに重心をずらし、懐に入ってノーモーションで顔面にパンチを食らわせて後退した。
「へー、良いパンチ持ってんな。動きも素晴らしい。案外やるな」
「......」
 息を吸う際には体が無防備になっている確率が高い。息を止めているか吐いている時は行動を起こす場合がほとんどだから、俺は息を吸っている時に身構えておくことにする。
 相手はボクシング経験者で、あの余裕から見ても有段者かもしれない。カウンターにも気をつけながら殴るしかないか。
「まあまあ、そんな身構えんな!」
「──ガハッ!」
 相手が動いたかと思うと、正面を避けて横からの掌底しょうてい打ちが炸裂さくれつした。俺は後方に倒れるが、受け身を取ってから立ち上がる。
「ちょ、お前......。ボクシングじゃ掌底打ちは反則技だろ! ボクシング極めたから反則技も極めたってか!?」
「およ、よくわかるね。ま、掌底打ちは喧嘩じゃ基本だろ?」
「まあな」
 掌底打ちとは平手打ちにも似ているが、直接当てて攻撃する部分は手首に近いところだ。衝撃が手首の関節で緩和かんわされないため、俺にも衝撃が通ってダメージを受けるものの相手へのダメージも大きい。食らった奴の骨が折れたりもする危険な技だ。
 掌底打ちはボクシングでは反則技だったはずだから、おそらく相手はボクシングで反則とカウントされる技を掌底打ち以外にも使えるのだろう。気をつけよう。
 俺は再度構えると、各種格闘技の動きを応用して近づいて心臓を殴りつけた。そして相手を真似るように掌底打ちを食らわせ、衝撃を心臓へと貫通かんつうさせた。
「イタタタ! やるな、テメェ」
「掌底打ちのお返しだ」
 ここからは慎重にしておいた方が最善だ。柳生師範から教わったことを全て活かしつつ、自分なりの応用を加えて戦おう。やはり金的へ攻撃しておく、という選択はどうだろうか。いや、こいつが去勢していないという確証はない。
 金的を攻撃しないのなら、目潰しか心臓へのインパクト、後頭部を殴打することによる脳震盪しんとう狙い......などなど。後遺症は避けたいからなあ、攻撃の選択に困るな。
神部かみべ、やめろ!」肩に掛かる程度の髪を持つキザな野郎は、無神経にも俺達の戦いを中断させた。「我々の目的は伊達政宗の無力化であって殺しではない!」
「チッ! 俺はこいつと戦いたかったんだがな」
 神部と呼ばれたボクシング経験者は、ポケットからスプレー缶を取り出した。噴射口を俺の顔に向けると、スプレー缶の中身を吹きかけた。
「ぐああああぁぁぁーーーーーーっ!」
 まずい、吹きかけるだけでこのダメージならば催涙さいるい剤を使われたか。 早く顔を洗わないと失明の恐れがあるが、目が開けないから身動きが出来ない。隻眼になってからは片目を死守したかったが、駄目かもしれん。
「さて、伊達政宗は無力化したから車に運び入れよう」
「ちゃんと戦いたかったが、仕方ねぇか」
 俺は文字通りお先真っ暗のまま縄で縛られた上に、奴らの車へと運び込まれた。俺はこれからどうすれば良いのか、誰か助けてくれ!?
『プッ! 政宗、お前は何をしているのだ?』
 こいつ、ゼッテェぶっ飛ばしてやるからな! おいコラ、アマテラス! 助けろ!
『土下座するなら良いが?』
 この状況でどうやって土下座するんだよ!
『それもそうか。ハハハハハ』
 アマテラスはどうやら助けてくれそうにない。ここは自分で切り抜けろ、ということか。セーブポイントまで戻りたいよ。おじさん、もう無理だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

処理中です...