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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その拾漆
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神保町を巡りながら食べ歩きを楽しんでいると、なぜか裏路地に視線が引き寄せられた。不良数人がか弱い女を取り囲んでいるようだ。
都会の不良は田舎の不良より情けないなと肩を落としつつ、木刀を片手に不良に近づいた。そして木刀で殴打し、不良の意識が揺らいでいるスキに蹴り飛ばした。
あの不良、体格は良かったが実戦ではすぐに死ぬタイプだ。何度もそういう奴を見てきた。
「っと、おいあんた。不良に囲まれてたが大丈夫か?」
「......どっちだ?」
「へ?」
「剣術か体術、お前はどっちが優れている?」
「両方優れているけど」
「やはりそうか。あんた、うちの道場に来てくれ」
何がなんだか頭が理解していないのに、その男勝りな女は俺を無理矢理引っ張って道場まで連れてきた。
「ここは私の父さんの道場なんだけど、最近は習いたいって人がいないから生徒になりたい人を呼び込んでいたら不良に絡まれたんだ」
「君も道場で習っているなら、あいつら程度はぶっ飛ばせるんじゃないの?」
「私はどうも体術がからっきしでね。剣術、つまり剣道しか優れていないんだよ」
「なるほど、君は確かに棒とかは持っていないな」
「そういうあなたは木刀を持っているけど、正しい流派の剣術を使ってはいないじゃないか」
「俺は我流だからな。ほとんど誰からも習ってはいない」
だからか、と納得した女は道場の扉を開けて俺を入れた。靴を脱いで道場に上がると、ひたすら素振りをしている白髪で剣道着を着用した半世紀を生きたような男がいた。
「愛華、その隻眼の少年は?」
俺をここに連れてきた女・愛華は俺に竹刀を渡した。「この人がこの道場に入るかどうかわからないけど、剣術と体術ともにすごかったよ」
「愛華がそう言うなら、かなり優秀なんだな。少年よ、名は何と申すか?」
伊達政宗とは名乗れまい。だから、前世の名前である名坂横久と名乗った。
「そうか、名坂横久か。良い響きだ。して、早速手合わせをしようではないか」
「手合わせ、ですか?」
「俺と名坂少年とで対決する、という意味だよ。ルールもあまり知らないようだから、竹刀が相手の体に触れさせられた時点で勝利、ということにしよう」
ちょうど俺の着ていた服も剣道着に似ていたので、着替えることなく対決がスタートした。まずは距離を取って竹刀を確かめてみた。木刀や刀などと違う感触であり、振る時の感覚まで違うな。
そうしていると相手が接近してきたので、竹刀を振って相手が振り下ろした竹刀を弾き返す。相手の体勢が崩れたので背後に回って竹刀を振りかぶるが、一気に懐へと入られたので再び離れた。
前のめりの姿勢となってから走り出して速攻を仕掛け、それに応じた相手のスキを突いた。しかしその攻撃すらもいなして、俺が逆にカウンターを食らった。
左膝に相手の竹刀が直撃し、俺は負けてしまったのである。
「あちゃー」愛華は頭を抱えた。「またかーー!」
「えっと、俺の負けですね」
「うむ、名坂少年の負けだな。うちの道場で教わりたい者は俺と戦って、見事に勝った者だけが生徒となるというシステムにしている。だが、習いたいって奴が弱すぎてな。いつも俺が勝ってしまう」
「いやいや、父さんが強すぎるだけだよっ!」
「つまり、あなたは剣術を人に教えたいけど強い人にしか駄目だ、ということですよね?」
「そうだ。今まで俺に勝った者はいない。そして名坂少年も負けた。名坂少年よ、帰って良いぞ」
俺はここで帰っても良いが、もし俺が道場で教わらないならば愛華って奴がまた不良に絡まれる可能性もある。ここで俺の剣術を誇示しなくてはなるまい。
「あの、真剣とかってありますか? 俺の剣術は我流でして、戦国時代にあるような戦の実戦重視なんですよ。竹刀だといつも使っている刀と違くて、どうも力が発揮出来なかったんです」
「真剣は危険だ。尖っていない刀ならばあるが、持ってこようか?」
「お願いします」
刃が削られて尖っていない刀を受け取ると、それを両手で握った。いつも使っている刀より刃が薄いのは、戦国時代の刀は殴っても折れないような強度が重視されるからだろう。一方で現代の刀は切れ味が重視されるため、より薄くして力を集中させるようにしている。俺が切れ味を追求するために肉置を削った時みたいだ。
戦国時代に刀で敵との一対一をする場合、相手が兜を装着していたら殴ることを追求された戦国時代の刀では切れ味が弱いので一撃で脳を切れないのは言うまでもない。殴ることに重きを置かれた戦国時代の刀は切れ味は二の次であり、そんな刀が一振りで兜と頭蓋骨を切り裂いて脳にまで刃が到達するわけがない。
では、戦国時代の刀で一撃で脳を貫いて敵を倒すにはどうするできか。首を切り落とすにしても切れ味がないので出来ない。正解は、目を突き刺すことだ。
頭蓋骨、または頭蓋骨の絵や写真を見たことがある者はわかるかもしれないが、目のあった部分に骨は当然ない。目の硬度が骨と同等なわけではないし、むしろ柔らかい。つまり、刀で目を突き刺せば一撃で脳までも貫けるのだ。
幼い頃から目を突き刺す練習をしていたし、突き技のコツはホームズなどから教わっている。
俺は刀を持って戦場にいるイメージをし、目の前に敵がいると仮定して目があると思われる位置を突き刺した。この意味が、愛華の父親ならばわかるはずだ。
都会の不良は田舎の不良より情けないなと肩を落としつつ、木刀を片手に不良に近づいた。そして木刀で殴打し、不良の意識が揺らいでいるスキに蹴り飛ばした。
あの不良、体格は良かったが実戦ではすぐに死ぬタイプだ。何度もそういう奴を見てきた。
「っと、おいあんた。不良に囲まれてたが大丈夫か?」
「......どっちだ?」
「へ?」
「剣術か体術、お前はどっちが優れている?」
「両方優れているけど」
「やはりそうか。あんた、うちの道場に来てくれ」
何がなんだか頭が理解していないのに、その男勝りな女は俺を無理矢理引っ張って道場まで連れてきた。
「ここは私の父さんの道場なんだけど、最近は習いたいって人がいないから生徒になりたい人を呼び込んでいたら不良に絡まれたんだ」
「君も道場で習っているなら、あいつら程度はぶっ飛ばせるんじゃないの?」
「私はどうも体術がからっきしでね。剣術、つまり剣道しか優れていないんだよ」
「なるほど、君は確かに棒とかは持っていないな」
「そういうあなたは木刀を持っているけど、正しい流派の剣術を使ってはいないじゃないか」
「俺は我流だからな。ほとんど誰からも習ってはいない」
だからか、と納得した女は道場の扉を開けて俺を入れた。靴を脱いで道場に上がると、ひたすら素振りをしている白髪で剣道着を着用した半世紀を生きたような男がいた。
「愛華、その隻眼の少年は?」
俺をここに連れてきた女・愛華は俺に竹刀を渡した。「この人がこの道場に入るかどうかわからないけど、剣術と体術ともにすごかったよ」
「愛華がそう言うなら、かなり優秀なんだな。少年よ、名は何と申すか?」
伊達政宗とは名乗れまい。だから、前世の名前である名坂横久と名乗った。
「そうか、名坂横久か。良い響きだ。して、早速手合わせをしようではないか」
「手合わせ、ですか?」
「俺と名坂少年とで対決する、という意味だよ。ルールもあまり知らないようだから、竹刀が相手の体に触れさせられた時点で勝利、ということにしよう」
ちょうど俺の着ていた服も剣道着に似ていたので、着替えることなく対決がスタートした。まずは距離を取って竹刀を確かめてみた。木刀や刀などと違う感触であり、振る時の感覚まで違うな。
そうしていると相手が接近してきたので、竹刀を振って相手が振り下ろした竹刀を弾き返す。相手の体勢が崩れたので背後に回って竹刀を振りかぶるが、一気に懐へと入られたので再び離れた。
前のめりの姿勢となってから走り出して速攻を仕掛け、それに応じた相手のスキを突いた。しかしその攻撃すらもいなして、俺が逆にカウンターを食らった。
左膝に相手の竹刀が直撃し、俺は負けてしまったのである。
「あちゃー」愛華は頭を抱えた。「またかーー!」
「えっと、俺の負けですね」
「うむ、名坂少年の負けだな。うちの道場で教わりたい者は俺と戦って、見事に勝った者だけが生徒となるというシステムにしている。だが、習いたいって奴が弱すぎてな。いつも俺が勝ってしまう」
「いやいや、父さんが強すぎるだけだよっ!」
「つまり、あなたは剣術を人に教えたいけど強い人にしか駄目だ、ということですよね?」
「そうだ。今まで俺に勝った者はいない。そして名坂少年も負けた。名坂少年よ、帰って良いぞ」
俺はここで帰っても良いが、もし俺が道場で教わらないならば愛華って奴がまた不良に絡まれる可能性もある。ここで俺の剣術を誇示しなくてはなるまい。
「あの、真剣とかってありますか? 俺の剣術は我流でして、戦国時代にあるような戦の実戦重視なんですよ。竹刀だといつも使っている刀と違くて、どうも力が発揮出来なかったんです」
「真剣は危険だ。尖っていない刀ならばあるが、持ってこようか?」
「お願いします」
刃が削られて尖っていない刀を受け取ると、それを両手で握った。いつも使っている刀より刃が薄いのは、戦国時代の刀は殴っても折れないような強度が重視されるからだろう。一方で現代の刀は切れ味が重視されるため、より薄くして力を集中させるようにしている。俺が切れ味を追求するために肉置を削った時みたいだ。
戦国時代に刀で敵との一対一をする場合、相手が兜を装着していたら殴ることを追求された戦国時代の刀では切れ味が弱いので一撃で脳を切れないのは言うまでもない。殴ることに重きを置かれた戦国時代の刀は切れ味は二の次であり、そんな刀が一振りで兜と頭蓋骨を切り裂いて脳にまで刃が到達するわけがない。
では、戦国時代の刀で一撃で脳を貫いて敵を倒すにはどうするできか。首を切り落とすにしても切れ味がないので出来ない。正解は、目を突き刺すことだ。
頭蓋骨、または頭蓋骨の絵や写真を見たことがある者はわかるかもしれないが、目のあった部分に骨は当然ない。目の硬度が骨と同等なわけではないし、むしろ柔らかい。つまり、刀で目を突き刺せば一撃で脳までも貫けるのだ。
幼い頃から目を突き刺す練習をしていたし、突き技のコツはホームズなどから教わっている。
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