188 / 245
第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その拾伍
しおりを挟む
途中で目を覚ますと目隠しをされているようで周囲は見えなかったが、体の感覚はちゃんと機能していた。手足は拘束され、口もしゃべれないように縛られていた。
誰かの肩に担がれて運ばれていく感覚があり、椅子に座らされたかと思うと目隠しと口を縛る縄が取り外された。
「やあ、もう目を覚ましていたのか」
「江渡弥平か。鐵は策略家として大成するだろうな」
「彼は我々のところに以前いた仁和君より優秀な参謀だ。御影要は強いから、君が本気を出しても敵わないよ?」
「優秀な手駒を揃えたな。俺側にいる軍配士の仁和の裏を掻くのが鐵の役目で、本気になった俺を倒すのが御影の役目ってことか」
「適材適所という奴だ。何たって、御影の右に出る者はいないからね」
「右だけ警戒していたら、背後や正面、左や真上から攻撃される可能性が高くなるぞ」
「面白い冗談だね。ハハハハハ」
「何を笑っていやがる」
「これは失敬。君の冗談があまりにも面白くてね、つい笑ってしまった」
江渡弥平はただ笑っているだけだが、手はうまく動かせていない。おそらく、俺が前に切った神経やら腱やら筋やらが原因で意のままに手や指を動かせないのだろう。もうこいつは拳銃はおろか、箸ですら握ることは叶わない。
俺が捕らわれているこの部屋には江渡弥平以外に鐵と御影も隅の方で待機している。神力を使えばすぐにでも脱出出来るが、この部屋では神力が使えない。自力での脱出は不可能に近い。他力本願をしたいところだ。
逃げ道は一つある扉だけで、ここから逃げるには神力を使える範囲まで行くしかない。足は拘束されているからウサギ跳びのようにしないと移動出来ないから、何としてでも縄を切らないといかん。
まずは時間稼ぎをしておく必要がある。こいつらとの会話を出来るだけ引き延ばしてみよう。
「おい江渡弥平! 貴様、手をうまく動かせていないようだが?」
「テメェ、わかっていて言っているな?」
あ、地雷踏んじまった。江渡弥平が顔面を真っ赤にして怒っている。怒っているのは間違いない。
「待て待て待て。暇だから何か話しをしないか?」
「何だ、こんなになってまでこちら側の情報を引き出したいのか?」
「当然だ」
「良いだろう。鐵と御影にお前の話し相手となってもらうか」
二人は江渡弥平に呼ばれ、両者は腕を組みながら俺の前に立った。
「はあ」鐵は肩を落とした。「ボスがお前を警戒していたからもっと腕が立って頭が良い奴だと思っていたが、あんなので気を失ってしまうとは。はっきり言って拍子抜けだよ」
御影も口を開いた。「然り。右に同じだ」
「俺らを舐めていると痛い目に遭うからな。覚悟しておけ」
「そんなことは構わない。何人で攻めてきたのか、隊の編成と人数、主力格の名前と容姿などを教えろ。使う武器や戦法を教えてくれれば助かるんだが」
「は? 教えるわけねぇだろ」
俺が教えることを拒むと、鐵の合図とともに御影が俺の側頭部に蹴りを入れた。
「ガハッ!」俺の口からは血が垂れ出てきた。「ぶっ殺してやるぞ!」
「ぶっ殺すぶっ殺さない、なんてどうでも良い。さっき僕が言ったことを素直に吐かないと、また御影の蹴りが入るぞ」
ここで嘘を言ったとしても後々バレてしまう。かといって何も言わないのはまずい。せめて神力が使えたらこんな奴らなんて倒せるんだが、神力に依存し過ぎるのは良くない。
まずはこの二人を褒め殺してみよう。俺は前世から口八丁手八丁だからな。
「やっぱりお前らはすごいぜ。鐵は作戦を立てたりする時に大いに役立つし、御影ならば俺は勝てる気がしない。ぶっちゃけると、安倍晴明よりすごいんじゃないか? 安倍晴明なんか、奥さんが弟子の蘆屋道満と浮気をした挙げ句、呪い殺されているじゃないか」
二人を褒めたつもりだったが安倍晴明をバカにしたのが間違いだったか。
御影は無表情で殺気立った。「貴様は安倍晴明様を愚弄しているのか? それに安倍晴明様は二人に殺されたあとで唐にいた師によって生き返らせてもらい、見事二人を殺している」
二人はブチ切れた。特に御影が。
「残念だが、俺の奥さんは俺を裏切るようなことはしないぞ。安倍晴明とその奥さんの仲が悪かったんじゃないか?」
「言わせておけば......殺す!」
御影に脇腹を蹴られると、部屋の隅まで吹っ飛んで床に叩きつけられた。
念じながら、呪縛と唱えた御影によって俺の体は金縛りにあった。指一本も動かせない。さすがは化け物と戦っている陰陽師だ。神力を使わなければ太刀打ち出来ない。
江渡弥平は御影を止めた。「そいつは殺すんじゃない。これから二十一世紀の日本へと送り込む予定なんだから」
二十一世紀の日本へ送り込む、だと!? それをする意味が江渡弥平にあるのか?
そんなことを考えていると、昔見たことがあるタイムマシンに乗せられた。外から遠隔に操作され、周りの景色が一瞬にして変わったかと思うと超高層ビル群と産業革命によって一気に汚れてしまった空が広がっていた。
タイムマシンから下りると、コンクリートの壁に縄をこすり付けて千切った。そしてタイムマシンをぶち壊してゴミ処理場に捨てて、まずは何県にいるのか西暦何年なのか確かめるために動き出した。
誰かの肩に担がれて運ばれていく感覚があり、椅子に座らされたかと思うと目隠しと口を縛る縄が取り外された。
「やあ、もう目を覚ましていたのか」
「江渡弥平か。鐵は策略家として大成するだろうな」
「彼は我々のところに以前いた仁和君より優秀な参謀だ。御影要は強いから、君が本気を出しても敵わないよ?」
「優秀な手駒を揃えたな。俺側にいる軍配士の仁和の裏を掻くのが鐵の役目で、本気になった俺を倒すのが御影の役目ってことか」
「適材適所という奴だ。何たって、御影の右に出る者はいないからね」
「右だけ警戒していたら、背後や正面、左や真上から攻撃される可能性が高くなるぞ」
「面白い冗談だね。ハハハハハ」
「何を笑っていやがる」
「これは失敬。君の冗談があまりにも面白くてね、つい笑ってしまった」
江渡弥平はただ笑っているだけだが、手はうまく動かせていない。おそらく、俺が前に切った神経やら腱やら筋やらが原因で意のままに手や指を動かせないのだろう。もうこいつは拳銃はおろか、箸ですら握ることは叶わない。
俺が捕らわれているこの部屋には江渡弥平以外に鐵と御影も隅の方で待機している。神力を使えばすぐにでも脱出出来るが、この部屋では神力が使えない。自力での脱出は不可能に近い。他力本願をしたいところだ。
逃げ道は一つある扉だけで、ここから逃げるには神力を使える範囲まで行くしかない。足は拘束されているからウサギ跳びのようにしないと移動出来ないから、何としてでも縄を切らないといかん。
まずは時間稼ぎをしておく必要がある。こいつらとの会話を出来るだけ引き延ばしてみよう。
「おい江渡弥平! 貴様、手をうまく動かせていないようだが?」
「テメェ、わかっていて言っているな?」
あ、地雷踏んじまった。江渡弥平が顔面を真っ赤にして怒っている。怒っているのは間違いない。
「待て待て待て。暇だから何か話しをしないか?」
「何だ、こんなになってまでこちら側の情報を引き出したいのか?」
「当然だ」
「良いだろう。鐵と御影にお前の話し相手となってもらうか」
二人は江渡弥平に呼ばれ、両者は腕を組みながら俺の前に立った。
「はあ」鐵は肩を落とした。「ボスがお前を警戒していたからもっと腕が立って頭が良い奴だと思っていたが、あんなので気を失ってしまうとは。はっきり言って拍子抜けだよ」
御影も口を開いた。「然り。右に同じだ」
「俺らを舐めていると痛い目に遭うからな。覚悟しておけ」
「そんなことは構わない。何人で攻めてきたのか、隊の編成と人数、主力格の名前と容姿などを教えろ。使う武器や戦法を教えてくれれば助かるんだが」
「は? 教えるわけねぇだろ」
俺が教えることを拒むと、鐵の合図とともに御影が俺の側頭部に蹴りを入れた。
「ガハッ!」俺の口からは血が垂れ出てきた。「ぶっ殺してやるぞ!」
「ぶっ殺すぶっ殺さない、なんてどうでも良い。さっき僕が言ったことを素直に吐かないと、また御影の蹴りが入るぞ」
ここで嘘を言ったとしても後々バレてしまう。かといって何も言わないのはまずい。せめて神力が使えたらこんな奴らなんて倒せるんだが、神力に依存し過ぎるのは良くない。
まずはこの二人を褒め殺してみよう。俺は前世から口八丁手八丁だからな。
「やっぱりお前らはすごいぜ。鐵は作戦を立てたりする時に大いに役立つし、御影ならば俺は勝てる気がしない。ぶっちゃけると、安倍晴明よりすごいんじゃないか? 安倍晴明なんか、奥さんが弟子の蘆屋道満と浮気をした挙げ句、呪い殺されているじゃないか」
二人を褒めたつもりだったが安倍晴明をバカにしたのが間違いだったか。
御影は無表情で殺気立った。「貴様は安倍晴明様を愚弄しているのか? それに安倍晴明様は二人に殺されたあとで唐にいた師によって生き返らせてもらい、見事二人を殺している」
二人はブチ切れた。特に御影が。
「残念だが、俺の奥さんは俺を裏切るようなことはしないぞ。安倍晴明とその奥さんの仲が悪かったんじゃないか?」
「言わせておけば......殺す!」
御影に脇腹を蹴られると、部屋の隅まで吹っ飛んで床に叩きつけられた。
念じながら、呪縛と唱えた御影によって俺の体は金縛りにあった。指一本も動かせない。さすがは化け物と戦っている陰陽師だ。神力を使わなければ太刀打ち出来ない。
江渡弥平は御影を止めた。「そいつは殺すんじゃない。これから二十一世紀の日本へと送り込む予定なんだから」
二十一世紀の日本へ送り込む、だと!? それをする意味が江渡弥平にあるのか?
そんなことを考えていると、昔見たことがあるタイムマシンに乗せられた。外から遠隔に操作され、周りの景色が一瞬にして変わったかと思うと超高層ビル群と産業革命によって一気に汚れてしまった空が広がっていた。
タイムマシンから下りると、コンクリートの壁に縄をこすり付けて千切った。そしてタイムマシンをぶち壊してゴミ処理場に捨てて、まずは何県にいるのか西暦何年なのか確かめるために動き出した。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
錆びた剣(鈴木さん)と少年
へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。
誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。
そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。
剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。
そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。
チートキタコレ!
いや、錆びた鉄のような剣ですが
ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。
不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。
凸凹コンビの珍道中。
お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる