隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
185 / 245
第五章『奥州の覇者』

伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その拾参

しおりを挟む
 いろいろあったが江渡弥平を倒すために戦の準備を始めた未来人衆(に加えて、その他の数人)。俺は死んだことになっているので目立つことは出来ず、かといって戦に参加しないわけにもいかない。なので米沢城にいる家臣の統率は小十郎と石川昭光、米沢城の守りは鬼庭良直とクロークを筆頭とする鉄壁の兵士達に任せた。
 残る成実や景頼、真壁、夜行隊、未来人衆は俺の指示の元で戦に向かうこととなった。夜行隊は舞鶴をはじめとして、俺が生きていると知る者はいない。
「総員、位置に着いてください!」仁和は歯を食いしばった。「私達の元上司と決着を付けるため、江渡弥平を実質的トップとする歴史改変計画の実行者達をこれから倒します! 己の体がボロボロになろうと、最後の最後まで我々が勝つと信じてください! 今こそ、政宗殿への恩返しをする時です!」
「「行くぞーーー!」」
「「うおおおおぉぉぉーーーー!!」」
 仁和にしては珍しく、声を荒げていた。それほどまでに江渡弥平を憎んでいたということだ。まあ無理もない。用済みとなって江渡弥平に捨てられた歴史改変計画の元人員の寄せ集めが未来人衆だからな。
 俺も負けてはいられない。帯刀すると夜行隊が来る前に台に飛び乗り、未来人衆を見下ろした。
「我々が負けることはない! また、君達を捨てるなんてことは俺はしない! 思う存分に力を振るい、君達を捨てた江渡弥平に鉄槌を下そう! 神は我々の味方である!」
「「若旦那あああぁぁーーーー!」」
「行くぞ! 江渡弥平達に君達を捨てたことを後悔させるんだ!」
 未来人衆の士気が上がったところで、成実と景頼と合流した。
「ってかさ、景頼も歴史改変計画の元人員だったよな?」
「はい、そうですが」
「未来人衆にいる知り合いと会って、もうちょっと士気を上げて来てくれ」
「わかりました」
 景頼は駆け足で未来人衆の元へ行き、知り合いと話して士気を上げるために頑張ってくれた。
「さて成実。お前には見掛け倒しの毒ガスが溜められた容器を何個か渡そう」
「ということは、あの臭かったものが入っているということですか!?」
「そういうことになる」
「む、無理です! あんな臭いものは持ちたくないですよ!」
「だけど、戦況を見極めるのは成実が一番うまい。ここぞという時に敵陣にこの容器を投げ込んでほしいんだ。出来れば、敵本陣に毒ガスを投げ込んで撹乱かくらんさせてくれ」
「......若様の頼みとあらば、やるしかないですね。この伊達成実、命を賭けてでも成功させましょう」
「ああ、信頼しているよ」
 仁和には秘密だが、俺の狙いは江渡弥平と鐵凌牙と御影要だ。さっきも言ったが、鐵凌牙と御影要の二人は名前がうらやましい。もしどちらかがいたら殴り飛ばしてやるぜ。
「師匠! 僕はどうすれば良いでしょうか?」
「ん、真壁か。お前に出来ることは少ないし、隊の中心で守ってもらった方が良いだろう。非戦闘要員は守ると決めているからな」
「誰が非戦闘要員ですか!!」
「そう怒るな。真壁の力で敵を一掃出来るとも思えないから、仕方ないだろ。お前だって自覚はあるんじゃないか?」
「自覚はしていますが、改めて言われると......」
「ま、褒美は期待しろよ。お前は俺達に鐵と御影の情報をくれたからな」
「褒美はいらないので、僕に戦い方を教えてくださいよ」
「戦い方か。褒美の代わりならば鍛えるくらいはしてやる。この戦が終わったら俺の元に来い」
「良いんですか!? ありがとうございます!」
「よし、じゃあ用意してある馬から気に入った奴を選んでまたがっておけ」
「了解しました」
 こうしている間に夜行隊の準備も出来て、江渡弥平がいると思われる場所へと向かうために米沢城を出発した。

 一方その頃、米沢城内が大騒ぎとなっていたのは言うまでもない。政宗を殺した(と思われている)鼬鼠殺しへの復讐など二の次で、誰を伊達氏の当主とするべきか真剣な会議が開かれた。
 義姫率いる小次郎派は、政宗の実弟である小次郎を当主として推していた。対して伊達氏の家臣団率いる昭光派は、伊達氏筆頭石川氏の昭光を伊達氏の当主として押している。他にも成実を当主として推す動きまであった。
 義姫は熱弁する。「亡き輝宗や政宗の血を真っ直ぐ引き継いだ小次郎こそ、伊達氏の当主として相応ふさわしい。昭光殿や成実殿も伊達の血を引いているが、枝分かれしている家では様にならん」
「しかし、成実殿や昭光殿が伊達の血を引いているのも事実。まだ幼い小次郎殿に当主を任せるより、有能な成実殿か昭光殿を当主とする方が適任でしょう」
「成実殿は若様から気に入られておる。一門としても当主としての能力としても申し分ない。成実殿が当主となるべきだ」
「何を言うか。一門筆頭の昭光殿が当主となるのが当然だろうに」
「昭光殿が一門筆頭の石川氏と言えど、能力をかんがみれば成実殿一択だ!」
「争いは何も生まん。普通に考えれば若様の弟である小次郎殿こそが次の当主となるべきお方」
「ご冗談を。幼い小次郎殿に当主が務まるとお考えで?」
 と、このように会議は白熱した。政宗が生きているとも知らずに。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...