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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その拾
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「ゲホッゲホッゲホッ!」俺は起き上がり、猛毒が流し込まれた口内を漱いだ。「鼬鼠殺しの奴め、やりやがったな」
口を漱ぎ終わると景頼も猛毒で気絶しているようだったので、陶器で水をすくって景頼の口の中へと注ぎ込んだ。
「ゴホッ!」苦々しい表情の景頼は立ち上がり、俺と同様に口を漱ぐ。「若様、一応は生きておりますね」
「仁和のお陰だ。それより、早く体内に入った猛毒を取り除かないと。仁和に嘔吐剤を貰ってくるよ」
「ええ、お願いします」
未来人衆がいつもいる部屋へ行くと、なぜか戦の準備を始めていた。俺が唖然としていると、皆が俺を見て涙目になっていることに気付いた。
皆にどうしたんだと尋ねると、声を出しながら泣き出す者が続出した。
「若旦那が生きているぞ!」
「ああ、若旦那だ!」
「俺は夢を見ているのか!?」
生きているぞ、と言われたということは伊達政宗が死んだと報告した者がいるはずだ。そんな報告をする奴は一人しか知らん。
「仁和、お前の仕業だな?」
「さすが政宗殿。察しが良いですね」
「もったいぶらず、作戦をこいつらに説明してやれ」
「わかりました」
俺と景頼がなぜ生きているのか。多分、俺と景頼が猛毒を飲み込んだという事実を知っている奴ならば、そこに疑問を呈することだろう。
口頭での説明は難しいので、話しを半年前の毒の対策について俺が考え始める時まで戻すことにする。
やっぱり毒について書かれた書物が何冊か欲しい。二十一世紀の本は江渡弥平達によって燃やされたし、情報が枯渇している気がする。
かといって仁和を頼りすぎるのも良くない。俺は悩みに悩んだ末に、仁和を頼らず独学で毒を学ぼうとした。そして、毒のことがくわしく記された書物を取り寄せた。
俺はその書物で毒について学び、知識を蓄えていった。だが、仁和の足元にも及ばない知識だとは百も承知である。
「なるほど、こんな毒物もあるのか」
書物には毒物の一覧があり、思ったよりも詳細に書かれている。サトウキビが毒になる、なんてのも意外だった。
サトウキビに繁殖したカビは神経毒を発生させ、体内に混入すると中枢神経系に大ダメージを与える。脳浮腫、頭痛、重度の痙攣などの症状が出ることもあり、最悪の場合は呼吸不全によって死に至る。
中毒を引き起こす量は体重一キロ当たり12.5ミリグラムのようで、かなりの猛毒だ。まさか身近にあるものが毒にもなり得るとは......。
しかし毒の知識は蓄えられても、毒の対策方法までは書かれていない。
「どうしたものか」
そこへ仁和が来ると、事情を察したようで二十一世紀の本を片手を話し始めた。
「良いですか、政宗殿。毒の対策なんて簡単なものなのです」
「ど、どうすれば毒の対策が出来るんだ?」
「毒を以て毒を制す、です。政宗殿は毒の摂取を続け、毒への耐性を得てください。毒への耐性を得れば、毒物を摂取しても死ななくなります。しかしそれでも、体内に入った毒は取り除くのが賢明です。嘔吐剤は用意していますし」
「毒への耐性!? そんなことが出来るものなのか?」
「ゲルハルト・シュラーダーという博士がいました。1903年~1990年の人物なのですが、未来ではサリンという毒ガスの発明者として知られています。このシュラーダー博士は有機リン系の毒物を合成して普段から被曝していたために、本人ですら気付かないうちに人類初の毒ガス耐性人間になっていたようです。ちゃんとした実例もありますので、やってみましょう」
俺は頭を抱えた。「実例あるのかよ」
その日から、仁和立ち会いの元で毒を食べまくった。ついでに小十郎や景頼、成実も毒の耐性を得るために毒を食べまくったので、景頼も死なずにすんだのだ。
こうして、文字通り毒を以て毒を制すことに成功した俺達は、鼬鼠殺しからの暗殺から逃れられた。
仁和に頼ってしまったことに後悔はあるが、俺には二言しかないことを思い出した。
これからの計画は全て仁和が立てたものなのだが、鼬鼠殺しは俺と景頼が死んだと思い込んでいる。また、俺と景頼が死んだという鼬鼠殺しの報告を受けた者が伊達氏に攻めてくる確率はほぼ100%で、攻めてきたところを倒して服従させようというものだ。
「仁和。未来人衆への計画の説明よりも、嘔吐剤が欲しいんだけど。マジで俺達死んじまう」
「ああ、そうでしたね」
仁和は嘔吐剤を渡してきたので、俺と景頼で嘔吐剤を飲んで毒を吐き出した。
これで一件落着。俺が死んだと思って油断して攻め込んできたところを叩いて、服従させてやる。仁和によると暗殺の首謀者は江渡弥平が怪しいようなので、ラスボス対決としよう。
未来人衆の前に立った俺は、木刀を振り上げた。「お前らを見捨てた総司令官に目に物見せてやろう! 我々の底力で奴らを倒す!」
「「おお!」」
「さすが若旦那!」
「総司令官とはえらい違いだ!」
「やっちまおうぜ!」
敵方は油断しているようだが、俺達は油断出来ない。俺達の相手は二十一世紀の最新の兵器を持ってきている可能性もあるからだ。下手をすると、歴史から伊達政宗の名前が消えてしまうこともある。慎重に行動をするのが第一目標だ。
口を漱ぎ終わると景頼も猛毒で気絶しているようだったので、陶器で水をすくって景頼の口の中へと注ぎ込んだ。
「ゴホッ!」苦々しい表情の景頼は立ち上がり、俺と同様に口を漱ぐ。「若様、一応は生きておりますね」
「仁和のお陰だ。それより、早く体内に入った猛毒を取り除かないと。仁和に嘔吐剤を貰ってくるよ」
「ええ、お願いします」
未来人衆がいつもいる部屋へ行くと、なぜか戦の準備を始めていた。俺が唖然としていると、皆が俺を見て涙目になっていることに気付いた。
皆にどうしたんだと尋ねると、声を出しながら泣き出す者が続出した。
「若旦那が生きているぞ!」
「ああ、若旦那だ!」
「俺は夢を見ているのか!?」
生きているぞ、と言われたということは伊達政宗が死んだと報告した者がいるはずだ。そんな報告をする奴は一人しか知らん。
「仁和、お前の仕業だな?」
「さすが政宗殿。察しが良いですね」
「もったいぶらず、作戦をこいつらに説明してやれ」
「わかりました」
俺と景頼がなぜ生きているのか。多分、俺と景頼が猛毒を飲み込んだという事実を知っている奴ならば、そこに疑問を呈することだろう。
口頭での説明は難しいので、話しを半年前の毒の対策について俺が考え始める時まで戻すことにする。
やっぱり毒について書かれた書物が何冊か欲しい。二十一世紀の本は江渡弥平達によって燃やされたし、情報が枯渇している気がする。
かといって仁和を頼りすぎるのも良くない。俺は悩みに悩んだ末に、仁和を頼らず独学で毒を学ぼうとした。そして、毒のことがくわしく記された書物を取り寄せた。
俺はその書物で毒について学び、知識を蓄えていった。だが、仁和の足元にも及ばない知識だとは百も承知である。
「なるほど、こんな毒物もあるのか」
書物には毒物の一覧があり、思ったよりも詳細に書かれている。サトウキビが毒になる、なんてのも意外だった。
サトウキビに繁殖したカビは神経毒を発生させ、体内に混入すると中枢神経系に大ダメージを与える。脳浮腫、頭痛、重度の痙攣などの症状が出ることもあり、最悪の場合は呼吸不全によって死に至る。
中毒を引き起こす量は体重一キロ当たり12.5ミリグラムのようで、かなりの猛毒だ。まさか身近にあるものが毒にもなり得るとは......。
しかし毒の知識は蓄えられても、毒の対策方法までは書かれていない。
「どうしたものか」
そこへ仁和が来ると、事情を察したようで二十一世紀の本を片手を話し始めた。
「良いですか、政宗殿。毒の対策なんて簡単なものなのです」
「ど、どうすれば毒の対策が出来るんだ?」
「毒を以て毒を制す、です。政宗殿は毒の摂取を続け、毒への耐性を得てください。毒への耐性を得れば、毒物を摂取しても死ななくなります。しかしそれでも、体内に入った毒は取り除くのが賢明です。嘔吐剤は用意していますし」
「毒への耐性!? そんなことが出来るものなのか?」
「ゲルハルト・シュラーダーという博士がいました。1903年~1990年の人物なのですが、未来ではサリンという毒ガスの発明者として知られています。このシュラーダー博士は有機リン系の毒物を合成して普段から被曝していたために、本人ですら気付かないうちに人類初の毒ガス耐性人間になっていたようです。ちゃんとした実例もありますので、やってみましょう」
俺は頭を抱えた。「実例あるのかよ」
その日から、仁和立ち会いの元で毒を食べまくった。ついでに小十郎や景頼、成実も毒の耐性を得るために毒を食べまくったので、景頼も死なずにすんだのだ。
こうして、文字通り毒を以て毒を制すことに成功した俺達は、鼬鼠殺しからの暗殺から逃れられた。
仁和に頼ってしまったことに後悔はあるが、俺には二言しかないことを思い出した。
これからの計画は全て仁和が立てたものなのだが、鼬鼠殺しは俺と景頼が死んだと思い込んでいる。また、俺と景頼が死んだという鼬鼠殺しの報告を受けた者が伊達氏に攻めてくる確率はほぼ100%で、攻めてきたところを倒して服従させようというものだ。
「仁和。未来人衆への計画の説明よりも、嘔吐剤が欲しいんだけど。マジで俺達死んじまう」
「ああ、そうでしたね」
仁和は嘔吐剤を渡してきたので、俺と景頼で嘔吐剤を飲んで毒を吐き出した。
これで一件落着。俺が死んだと思って油断して攻め込んできたところを叩いて、服従させてやる。仁和によると暗殺の首謀者は江渡弥平が怪しいようなので、ラスボス対決としよう。
未来人衆の前に立った俺は、木刀を振り上げた。「お前らを見捨てた総司令官に目に物見せてやろう! 我々の底力で奴らを倒す!」
「「おお!」」
「さすが若旦那!」
「総司令官とはえらい違いだ!」
「やっちまおうぜ!」
敵方は油断しているようだが、俺達は油断出来ない。俺達の相手は二十一世紀の最新の兵器を持ってきている可能性もあるからだ。下手をすると、歴史から伊達政宗の名前が消えてしまうこともある。慎重に行動をするのが第一目標だ。
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