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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾肆
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体を何度も揺すられ、俺は目を覚ました。「どうした、仁和?」
「やっと目覚めたのですね。薬が効きすぎましたか」
「は!? 薬?」
「政宗殿に薬を飲ませたのですよ。そうしたら、気を失ってしまいました」
「何で俺に薬を飲ませたんだ?」
「軽い風邪のようなものにかかっていたので、薬となる植物を探して飲ませたんです。ほら、以前猿を貰いましたよね?」
「ああ、確かに仁和に猿をあげたな」
「このような実話があります。チンパンジーが病気になりますが、普段は口にしない植物を食べて約一日後に体調が治ったというものです。この植物を調べると、チンパンジーの病気の薬だったのです。つまりチンパンジーは、その植物を薬として食べたことになります。
政宗殿の病気は何かわかりませんでしたので鼻水をいただき、その鼻水を使って政宗殿と同じ病気を猿に感染させます。すると猿はいつもなら食べないはずの植物を食べたので、この植物は政宗殿の病気に効くのだと思って回収しました。回収した植物を政宗殿に飲ませてみたところ、一応体調は良くなったようです」
ということは、仁和は俺の体調を治すために猿を欲しがったということか。
「何となく理解はした。だけど、何で科学者だって嘘を言ったんだ?」
「ああ、それはですね、単純に馬鹿にされないためです。科学的知識があったとしても、科学者ではなかったら相手にされません。なので、職業を偽っていました」
「なるほど......」
これにて一件落着なのだが、まだ戦をしている。気を抜いてしまってはいけないので気を鋭くした。
「仁和、戦はまだまだ続くだろ?」
「今日のところは終わりました。政宗殿が寝ている間に夜に近づきましたので」
「一日目は終了か」
「はい」
何とも拍子抜けだ。俺が熟睡している間に一日目が終わってしまうとは。
俺は肩を落としながらも、頑張って椅子から立ちあがった。そして周囲を見回すと、うまそうに飯を食べていた。俺の腹も鳴ったので、急いで飯の置いてある場所まで駆けていった。
同日、夜。敵方の夜襲を警戒し、未来人衆遠距離射手部隊と夜行隊を配置。これで安心しながら作業が出来るぞ。
「若様?」成実は不思議そうな目でこちらを見てきた。「何をなさっているのですか?」
「昼間は出来なかった薬学の勉強だ。動くよりよっぽど楽だぞ」
「さようですか」
「何だ、成実もやりたいのか?」
「い、いえ、そのようなことはこざいません......」
「どっちでも良いけどよ、なら俺の近くにいてくれないか?」
「よろこんで!」
成実は自分の胸を拳で叩き。任せてくれっていう意思表示をした。しかし強く叩きすぎたようで、その直後にむせていた。
「ゴホッゴホッ!」
「無事か? 何ともないか?」
「体に異常はないので、若様は心配なさらず」
「おう、成実が無事ならば良いのだが」
咳き込む成実を目の端にし、俺は薬学書を開いて読んでいった。ふーん、とかつぶやいて感心していると、成実が何か手伝いたそうに手元を覗いてきた。
「手伝いたいのか?」
「いえ!」成実は両手を勢いよく振った。「滅相もございません!」
「そうか? まあ、ちょうど良いから手伝ってくれ。明日の戦に使いたい武器を作るんだ」
「武器、ですか?」
「そうなんだよ。非常に役立つ武器を作る! と言っても、今から作る武器は目に見えない」
「?」
「毒ガスを作るんだ!」
「!?」
思った通りの反応だったので、少しニヤけてしまった。
「毒ガスを作るんだが、見せかけのものだから安心しろ。本物を作ったら全員を殺しちゃうことになるだろ?」
「良かったです」成実は胸を撫で下ろした。「本物の毒ガスでないなら安心です」
俺は米沢城から大切に持ってきていた容器を取り出して、成実に見せた。成実はその容器を恐る恐る触り、かなりおびえていた。
「厳重に密閉された容器ですが、この容器に毒ガスが入っているのでしょうか?」
「正確に言うと、毒ガスの素が入っている」
「毒ガスの素?」
「この容器に入っている毒ガスの素を使い、これから見掛け倒しの毒ガスを作っていく。まずは成実、この容器に鼻を近づけてみろ」
成実が容器に鼻を近づけたのを確認し、容器のフタを取った。するとたちまち、成実は鼻を摘まんだ。
「ぐあああぁぁ!」
「ハハハハハ! ものすごい刺激臭だろ?」
「ゲフッ! ゴホッ! ガハッ!」
「悪い悪い。ふざけたくなったんだ。許してくれ」
容器にフタをすると、少し離れたところに置いた。そしてまだ苦しそうにしている成実の背中をさすり、深呼吸をさせた。
「その容器に入っている......ゴホッ......ものはなんですか?」
「この容器に入っていた刺激臭を発するものは、腐った卵だ!」
「腐った卵?」
「ああ、腐った卵だ。卵が腐ると刺激臭を発するようになる。この刺激臭を腐卵臭と言うんだ。この腐卵臭は硫化水素の臭気で、これを硫黄の臭いと言う奴もいる。ただ硫黄単体に臭いはなく、俗に硫黄の臭いと言われるのは硫化水素の臭いだ。硫黄は火縄銃の火薬に使われている黒色火薬の原料になっている」
というように俺は自慢気に説明したが、前世の俺が働いていた高校の理科の教師である神原正樹の受け売りだけどな。
「やっと目覚めたのですね。薬が効きすぎましたか」
「は!? 薬?」
「政宗殿に薬を飲ませたのですよ。そうしたら、気を失ってしまいました」
「何で俺に薬を飲ませたんだ?」
「軽い風邪のようなものにかかっていたので、薬となる植物を探して飲ませたんです。ほら、以前猿を貰いましたよね?」
「ああ、確かに仁和に猿をあげたな」
「このような実話があります。チンパンジーが病気になりますが、普段は口にしない植物を食べて約一日後に体調が治ったというものです。この植物を調べると、チンパンジーの病気の薬だったのです。つまりチンパンジーは、その植物を薬として食べたことになります。
政宗殿の病気は何かわかりませんでしたので鼻水をいただき、その鼻水を使って政宗殿と同じ病気を猿に感染させます。すると猿はいつもなら食べないはずの植物を食べたので、この植物は政宗殿の病気に効くのだと思って回収しました。回収した植物を政宗殿に飲ませてみたところ、一応体調は良くなったようです」
ということは、仁和は俺の体調を治すために猿を欲しがったということか。
「何となく理解はした。だけど、何で科学者だって嘘を言ったんだ?」
「ああ、それはですね、単純に馬鹿にされないためです。科学的知識があったとしても、科学者ではなかったら相手にされません。なので、職業を偽っていました」
「なるほど......」
これにて一件落着なのだが、まだ戦をしている。気を抜いてしまってはいけないので気を鋭くした。
「仁和、戦はまだまだ続くだろ?」
「今日のところは終わりました。政宗殿が寝ている間に夜に近づきましたので」
「一日目は終了か」
「はい」
何とも拍子抜けだ。俺が熟睡している間に一日目が終わってしまうとは。
俺は肩を落としながらも、頑張って椅子から立ちあがった。そして周囲を見回すと、うまそうに飯を食べていた。俺の腹も鳴ったので、急いで飯の置いてある場所まで駆けていった。
同日、夜。敵方の夜襲を警戒し、未来人衆遠距離射手部隊と夜行隊を配置。これで安心しながら作業が出来るぞ。
「若様?」成実は不思議そうな目でこちらを見てきた。「何をなさっているのですか?」
「昼間は出来なかった薬学の勉強だ。動くよりよっぽど楽だぞ」
「さようですか」
「何だ、成実もやりたいのか?」
「い、いえ、そのようなことはこざいません......」
「どっちでも良いけどよ、なら俺の近くにいてくれないか?」
「よろこんで!」
成実は自分の胸を拳で叩き。任せてくれっていう意思表示をした。しかし強く叩きすぎたようで、その直後にむせていた。
「ゴホッゴホッ!」
「無事か? 何ともないか?」
「体に異常はないので、若様は心配なさらず」
「おう、成実が無事ならば良いのだが」
咳き込む成実を目の端にし、俺は薬学書を開いて読んでいった。ふーん、とかつぶやいて感心していると、成実が何か手伝いたそうに手元を覗いてきた。
「手伝いたいのか?」
「いえ!」成実は両手を勢いよく振った。「滅相もございません!」
「そうか? まあ、ちょうど良いから手伝ってくれ。明日の戦に使いたい武器を作るんだ」
「武器、ですか?」
「そうなんだよ。非常に役立つ武器を作る! と言っても、今から作る武器は目に見えない」
「?」
「毒ガスを作るんだ!」
「!?」
思った通りの反応だったので、少しニヤけてしまった。
「毒ガスを作るんだが、見せかけのものだから安心しろ。本物を作ったら全員を殺しちゃうことになるだろ?」
「良かったです」成実は胸を撫で下ろした。「本物の毒ガスでないなら安心です」
俺は米沢城から大切に持ってきていた容器を取り出して、成実に見せた。成実はその容器を恐る恐る触り、かなりおびえていた。
「厳重に密閉された容器ですが、この容器に毒ガスが入っているのでしょうか?」
「正確に言うと、毒ガスの素が入っている」
「毒ガスの素?」
「この容器に入っている毒ガスの素を使い、これから見掛け倒しの毒ガスを作っていく。まずは成実、この容器に鼻を近づけてみろ」
成実が容器に鼻を近づけたのを確認し、容器のフタを取った。するとたちまち、成実は鼻を摘まんだ。
「ぐあああぁぁ!」
「ハハハハハ! ものすごい刺激臭だろ?」
「ゲフッ! ゴホッ! ガハッ!」
「悪い悪い。ふざけたくなったんだ。許してくれ」
容器にフタをすると、少し離れたところに置いた。そしてまだ苦しそうにしている成実の背中をさすり、深呼吸をさせた。
「その容器に入っている......ゴホッ......ものはなんですか?」
「この容器に入っていた刺激臭を発するものは、腐った卵だ!」
「腐った卵?」
「ああ、腐った卵だ。卵が腐ると刺激臭を発するようになる。この刺激臭を腐卵臭と言うんだ。この腐卵臭は硫化水素の臭気で、これを硫黄の臭いと言う奴もいる。ただ硫黄単体に臭いはなく、俗に硫黄の臭いと言われるのは硫化水素の臭いだ。硫黄は火縄銃の火薬に使われている黒色火薬の原料になっている」
というように俺は自慢気に説明したが、前世の俺が働いていた高校の理科の教師である神原正樹の受け売りだけどな。
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