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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾
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なぜ川を渡れたのか。話しは、米沢城で片栗粉を集めた時まで遡る。
俺と仁和とジョーで片栗粉を集めていた。アマテラスは城の外で待機中だった。
ジョーは片栗粉を片手に持った。「これをどう使えば川が渡れるんだよ?」
「ジョーには言ってなかったか?」
すると、仁和は手を挙げた。「私もどのように川が渡れるか聞いておりません」
「ん!? 仁和なら言わなくても大体はわかるだろ?」
「川に適量の片栗粉を混ぜるのだということはわかりますが、それだと川が白くなってしまいます。だからわからないのです」
「川が白くなるのを防ぐ技を手に入れたんだ」
「というと?」
俺は右手を掲げて、透明にさせた。「この技が今回は使えるんだ」
「なるほど、片栗粉によって白くなってしまった川の水を透明にさせるのですね」
「そうだ、よくわかったな。ただし、川の水を全て透明にしてしまっては水っぽくないからバレてしまう。だから、数メートルずつ区切って、下の方へいけばいくほど透明度を低くしていけば良い。このような技が実現可能なのか試すために川を渡るんだ」
これが実現可能ならば、透明化の技は非常に便利なものとなる。それを今回の戦で試してみたい。そのため、片栗粉が必要なのである。
「そういえば」仁和は思い出したように目を大きく開き、首を傾げた。「ジョセフ・ウィリアム=ヘルダー殿は何とお呼びすれば良いですか?」
急に話しが変わったことに驚きつつ、俺はその質問に応じた。「俺は『ジョセフ』の愛称である『ジョー』と呼んでいるが」
「ジョーですか。あまり格好良くありませんね。ウィリアムの愛称である『リアム』なんてどうでしょうか?」
「リアムもあまり格好良くはないが。というか、そもそもウィリアム=ヘルダーが苗字だぜ?」
「ウィリアム=ヘルダーが苗字なのですね。長いです」
ジョーは口を開いた。「俺は貴族じゃない。だから、苗字は賜ったものなんだ」
賜った、ということは目上の人が名付けたということか。ジョーの世界で剣聖より目上の奴は少ないし、かなり絞り込める。
「もしかして、殿下か何かから名付けられたのか?」
「ああ、その通り。アインシュタイン王家の王位第一継承者であるウィリアム・アインシュタイン王太子殿下が自らの名を取って名付けていただいた」
「んじゃあ、ヘルダーってのは誰から取ったんだ?」
「ウィリアム王太子殿下によると、太古の英雄ヘルダー様から取ったそうだ」
「英雄ヘルダー?」
「その昔、俺の世界をお救いになった英雄様だ。強靱な体を持ち、目にも止まらぬ早さで敵を一掃したと伝承にはある。だから、俺の世界では『ヘルダー』は『勇気ある強者』の意となっている」
「ふーん」
だとすると、ウィリアム王太子というのは性格が悪いということか。自分の名前と太古の英雄の名前を並べるとは......。自分の名前を苗字として剣聖に付けたということは、剣聖のルーツは自分にあると誇示したかったのだろうか。何はともあれ、ウィリアムがジョーを見下していたのは確かだ。
仁和はにんまりと笑った。「ならば、ジョセフのもう一つの短縮形である『ジョーイ』なんてどうでしょう?」
「「却下!」」
俺とジョーの意見は一致した。
アマテラスに戦場まで瞬間移動させてもらい、川まで向かった。そしてその川に適量の片栗粉を入れた。混ぜるのもアマテラスにやってもらうと、俺は白く濁ってしまった川の水を本来の水のように透明化させた。
「どんなもんだ!」
川を透明にすることが出来たから、次は川を渡れるか試してみた。ゆっくり歩くと沈んでしまうが、走ると水の上を足だけで進めた。これに俺は興奮し、十数分ほど遊んだ。
それから、家臣達に川を渡るように指示した。その結果、敵方が口々に『伊達軍が奇術を使った』と言うに至った。
この奇術に恐れをなした敵方は、早々に逃げ出した。俺は逃げ出した奴を追いかけ、倒してから金目の物を剥ぎ取った。
「これじゃあどっちが悪者かわかったもんじゃねぇな」
「命だけはお許しを!」
「安心しな。金目の物を貰ったら逃がしてやるよ」
「けれど、この姿でお国に帰還したら殺されます......」
「それもそうだな。なら、伊達軍になるか?」
「え!?」
「俺は伊達氏現当主の伊達政宗だ。お前らのような者も受け入れているんだ。野伏りをするよりはマシじゃないか?」
「ぐ、軍門に降らせてください!」
「ハハハ、そうか。なら、俺に着いてこい」
こうして敵方を懐柔(?)し、味方を増やしていった。そういう奴らを一時的に夜行隊に入れて、舞鶴の部下として配置させた。
舞鶴は頭を下げた。「仲間が増えて、こちらとしても助かった」
「ああ、それなら良かった。ちゃんと新入りを指導してくれよ。舞鶴は期待の新人なんだから」
「わかっている」
「そんなら、夜行隊を誰一人として欠けさせないように戦え! 部下を見殺しにする奴は最低だからや」
「はっ!」
この戦いでは、あまり仲間を死なせたくない。慎重に駒を進めねばなるまい。
俺と仁和とジョーで片栗粉を集めていた。アマテラスは城の外で待機中だった。
ジョーは片栗粉を片手に持った。「これをどう使えば川が渡れるんだよ?」
「ジョーには言ってなかったか?」
すると、仁和は手を挙げた。「私もどのように川が渡れるか聞いておりません」
「ん!? 仁和なら言わなくても大体はわかるだろ?」
「川に適量の片栗粉を混ぜるのだということはわかりますが、それだと川が白くなってしまいます。だからわからないのです」
「川が白くなるのを防ぐ技を手に入れたんだ」
「というと?」
俺は右手を掲げて、透明にさせた。「この技が今回は使えるんだ」
「なるほど、片栗粉によって白くなってしまった川の水を透明にさせるのですね」
「そうだ、よくわかったな。ただし、川の水を全て透明にしてしまっては水っぽくないからバレてしまう。だから、数メートルずつ区切って、下の方へいけばいくほど透明度を低くしていけば良い。このような技が実現可能なのか試すために川を渡るんだ」
これが実現可能ならば、透明化の技は非常に便利なものとなる。それを今回の戦で試してみたい。そのため、片栗粉が必要なのである。
「そういえば」仁和は思い出したように目を大きく開き、首を傾げた。「ジョセフ・ウィリアム=ヘルダー殿は何とお呼びすれば良いですか?」
急に話しが変わったことに驚きつつ、俺はその質問に応じた。「俺は『ジョセフ』の愛称である『ジョー』と呼んでいるが」
「ジョーですか。あまり格好良くありませんね。ウィリアムの愛称である『リアム』なんてどうでしょうか?」
「リアムもあまり格好良くはないが。というか、そもそもウィリアム=ヘルダーが苗字だぜ?」
「ウィリアム=ヘルダーが苗字なのですね。長いです」
ジョーは口を開いた。「俺は貴族じゃない。だから、苗字は賜ったものなんだ」
賜った、ということは目上の人が名付けたということか。ジョーの世界で剣聖より目上の奴は少ないし、かなり絞り込める。
「もしかして、殿下か何かから名付けられたのか?」
「ああ、その通り。アインシュタイン王家の王位第一継承者であるウィリアム・アインシュタイン王太子殿下が自らの名を取って名付けていただいた」
「んじゃあ、ヘルダーってのは誰から取ったんだ?」
「ウィリアム王太子殿下によると、太古の英雄ヘルダー様から取ったそうだ」
「英雄ヘルダー?」
「その昔、俺の世界をお救いになった英雄様だ。強靱な体を持ち、目にも止まらぬ早さで敵を一掃したと伝承にはある。だから、俺の世界では『ヘルダー』は『勇気ある強者』の意となっている」
「ふーん」
だとすると、ウィリアム王太子というのは性格が悪いということか。自分の名前と太古の英雄の名前を並べるとは......。自分の名前を苗字として剣聖に付けたということは、剣聖のルーツは自分にあると誇示したかったのだろうか。何はともあれ、ウィリアムがジョーを見下していたのは確かだ。
仁和はにんまりと笑った。「ならば、ジョセフのもう一つの短縮形である『ジョーイ』なんてどうでしょう?」
「「却下!」」
俺とジョーの意見は一致した。
アマテラスに戦場まで瞬間移動させてもらい、川まで向かった。そしてその川に適量の片栗粉を入れた。混ぜるのもアマテラスにやってもらうと、俺は白く濁ってしまった川の水を本来の水のように透明化させた。
「どんなもんだ!」
川を透明にすることが出来たから、次は川を渡れるか試してみた。ゆっくり歩くと沈んでしまうが、走ると水の上を足だけで進めた。これに俺は興奮し、十数分ほど遊んだ。
それから、家臣達に川を渡るように指示した。その結果、敵方が口々に『伊達軍が奇術を使った』と言うに至った。
この奇術に恐れをなした敵方は、早々に逃げ出した。俺は逃げ出した奴を追いかけ、倒してから金目の物を剥ぎ取った。
「これじゃあどっちが悪者かわかったもんじゃねぇな」
「命だけはお許しを!」
「安心しな。金目の物を貰ったら逃がしてやるよ」
「けれど、この姿でお国に帰還したら殺されます......」
「それもそうだな。なら、伊達軍になるか?」
「え!?」
「俺は伊達氏現当主の伊達政宗だ。お前らのような者も受け入れているんだ。野伏りをするよりはマシじゃないか?」
「ぐ、軍門に降らせてください!」
「ハハハ、そうか。なら、俺に着いてこい」
こうして敵方を懐柔(?)し、味方を増やしていった。そういう奴らを一時的に夜行隊に入れて、舞鶴の部下として配置させた。
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「ああ、それなら良かった。ちゃんと新入りを指導してくれよ。舞鶴は期待の新人なんだから」
「わかっている」
「そんなら、夜行隊を誰一人として欠けさせないように戦え! 部下を見殺しにする奴は最低だからや」
「はっ!」
この戦いでは、あまり仲間を死なせたくない。慎重に駒を進めねばなるまい。
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