隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
164 / 245
第四章『輝宗の死』

伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その玖

しおりを挟む
 暴れ回らないということに、ジョーが納得してくれて良かった。このままジョーを放置していたら歴史を変えてしまう恐れがあったが、もう大丈夫そうだな。まあ歴史が変わってしまっても、アマテラスに頼めばどうにかなりそうだ。
「さて、ジョー。俺はジョーのお陰で物などを透明にする技を手に入れただろ?」
「確かに、体を透明化させていたな」
「今回の戦では、この透明化の力がどれほどのものか試したいんだ。手伝ってくれるか?」
「もちろんだ!」
「よし、じゃあまずは仁和をここに呼んできてくれ」
「仁和? 誰だ、それは?」
「まだジョーには言っていなかったか。俺の参謀さんぼうみたいなもんだよ。すごく有能だ」
「政宗の参謀か。わかった、連れてくるぜ」
 ジョーは猛スピードで駆けていった。俺の全速力より断然速いペースだ。異世界の剣聖は伊達ではないということかな。
 数分もしないでジョーが戻ってきて、その肩に仁和がかつがれていた。
「政宗殿」肩から降りた仁和は無表情だったが怒っているようだった。「急に私を連れてこようとしないでください」
「え、いや、俺はジョーに『仁和を担げ』とは言っていない。『仁和を呼んでこい』って命じただけなんだが......?」
「命じたのは政宗殿なのでしょう?」
「そうなんだけどさ、ほら」
「そんなことより、早く用件を伝えてください。私もいそがしいのですよ」
「それは悪かったな。まずは用件を伝える。仁和、今片栗かたくり持ってる?」
 この透明化を試すには、まずは片栗粉を使いたいところだ。ちょうど近くに川もあるし、透明化を試すには持ってこいの場面なんだが。
「片栗粉ですか?」
「そうだ。その片栗粉が必要なんだ」
「片栗粉は米沢城にあると思いますよ。どうやって片栗粉を取りに戻るかはわかりませんが」
 米沢城にあるのならば、取りに戻るにはかなり時間が掛かる。ならば、アマテラスに頼むのが最善だな。
 アマテラスを呼ぼうとしたら、急に目の前にアマテラスが現れた。
 巨体のアマテラスは俺を見下ろした。「呼んだかな?」
「行動が早えな、アマテラス!」
「お前の心を読んでいたからだ。小説を書いている途中だったけど、急いで来たんだ」
「それよりも、頼みたいことがある」
「米沢城への瞬間移動ならやってやるが、どうする?」
「それはありがたい。俺と仁和とジョーを米沢城に送ってくれ」
 一度うなずいたアマテラスは、指を鳴らした。すると周囲の景色は見覚えのあるものに変わった。その景色は、まぎれもなく米沢城のものだ。
「仁和、早く片栗粉を大量に持ってきてくれ」
「は、はいっ!」
 その後俺達は城中を走り回り、大量の片栗粉を掻き集めることが出来た。

 それから数時間後のことである。重臣らを後方に集めて、指示を出した。
「良いか、お前ら? お前らの部下に、これから川を渡るように命じてくれ。川には渡れるような細工をしてあるから、お構いなく川の上を走って行け」
「「!?」」
 俺の意味不明な指示に戸惑とまどいつつも、一応は首を縦に振った家臣達。さて、これから実験だ。
 透明化の力を試すために、俺の家臣達には川の上を走ってもらう。どういうことかくわしい説明は後回しにして、まずは川を足だけで渡ってもらいたいのだ。
「川の上では歩くな! 必ずおぼれるから!」
 歩かないように忠告もした。これで川の上を歩いても俺は知らない。ちゃんと俺は忠告したのだから、川の上を歩いた奴が悪い。
 ちなみに、細工した状態の川の上を歩くと、底なし沼にはまったように溺れる。多分辛いことだと思う。俺は助けないからな。
「よし、じゃあ戦の前線に戻れ。俺が合図をしたら、配下を引き連れて川を渡ってもらいたい。走ったら溺れないと俺が保証する」
 そう言うと、若様が言うならばと家臣達の表情も晴れてきた。笑みを浮かべる奴もいたが、そいつは緊張感がなさすぎる。
 俺とジョーはある程度手加減をしながら最前線に復帰し、目にも止まらぬ早さで敵を倒していった。
「やるな、ジョー!」
「政宗こそ」
 ジョーは確かに強い。確かに強いのだけれど、戦い方は蒙古もうこ襲来しゅうらいの時の日本と同じだ。
 蒙古襲来の頃の日本は、武将が一人ずつ名乗り出て一対一で戦うのが主流だったのだ。ジョーもそれと同じで、敵と戦うために『やあやあ我こそは、ジョセフ・ウィリアム=ヘルダーである!』と言っている。おそらく、ジョーの元いた世界ではそのような戦い方が主流だったからだ。
 その点を除いたら、ジョーは格好良い。まあ、それが言いたかったんだ。
「全軍に告ぐ! 我が軍の者は、必ず川を渡れぇ!」
 俺が川の方を指差すと、全軍が川へ突進するように走った。俺も負けじと川へ向かって走り、先頭に立って川を渡った。俺が実際に川を渡ったからか安心した家臣達は、嬉々ききとして(いたわけではないが)川の上を走った。それを見た敵方は、少し狼狽ろうばいしていた。
 ふむ、この透明化の力がどれほどのものか、ということは今回の実験で大体わかった。それじゃあそろそろ、史実を辿って物語を進めていこうではないか。
 そして、敵方の一人が「伊達軍が奇術を使ったぁ!」と叫んだのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

架空戦記 隻眼龍将伝

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞
歴史・時代
第四回歴史・時代劇小説大賞エントリー ♦♦♦ あと20年早く生まれてきたら、天下を制する戦いをしていただろうとする奥州覇者、伊達政宗。 そんな伊達政宗に時代と言う風が大きく見方をする時間軸の世界。 この物語は語り継がれし歴史とは大きく変わった物語。 伊達家御抱え忍者・黒脛巾組の暗躍により私たちの知る歴史とは大きくかけ離れた物語が繰り広げられていた。 異時間軸戦国物語、if戦記が今ここに始まる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この物語は、作者が連載中の「天寿を全うしたら美少女閻魔大王に異世界に転生を薦められました~戦国時代から宇宙へ~」のように、異能力・オーバーテクノロジーなどは登場しません。 異世界転生者、異次元転生者・閻魔ちゃん・神・宇宙人も登場しません。 作者は時代劇が好き、歴史が好き、伊達政宗が好き、そんなレベルでしかなく忠実に歴史にあった物語を書けるほどの知識を持ってはおりません。 戦国時代を舞台にした物語としてお楽しみください。 ご希望の登場人物がいれば感想に書いていただければ登場を考えたいと思います。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

処理中です...