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第四章『輝宗の死』

伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その捌

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 戦が始まった。伊達政宗の物語としては、この戦の話しが好きだ。この戦──後世では人取ひととり橋の戦いと呼ばれる──で、俺は先ほど身につけた透明化による攻撃を試してみたいと思っている。
 うまく透明化が使いこなせると、次にホースティーと戦っても勝機はある。
 ジョーにウルトラウィークを持って行かれたし、俺は徒歩で敵の本陣まで向かうしかないようだ。まあ、透明化を身につけた俺にとっては本陣までは簡単に行けるがな。
「ふう、まずは全身を透明化だ。耳もちゃんと透明にしないと、両耳が千切れ去られてしまう」
 透明人間と化した俺は、人混みをかき分けながら本陣へ向かった。まさか歩いて本陣へ向かうことが出来るとは思っていなかった。これはこれで楽で良いな。
 ついでに敵方の強そうな奴を倒しておこうと周囲を見回すと、見るからに強そうな敵方がいた。俺はそいつの目の前まで行き透明化を解除し、燭台切で首を斬った。
「将来厄介やっかいになりそうな奴には容赦ようしゃなく殺すのが俺の流儀りゅうぎでね。悪かったな」
 俺の顔に付いた敵方の血をぬぐい、また透明化した。ここでそろそろ真の力を試してみよう。
 透明化の原理は、一時的に体に光りを通すようなものだ。それを応用し、光りをシャットアウトすることも出来るかもしれない。光りを完全に遮断しゃだんするイメージだ。
 敵方の雑兵数人の視界から光りを遮断してみた。すると、そいつらはオロオロとしていたので、多分光りの遮断は成功したようだ。
 それから俺は雑兵を蹴散らしていった。姿を見せないとさすがに怪しまれるから、途中からは透明化を解除している。
「若様」舞鶴は俺の背後に立った。「共闘をしよう」
「おっ! もう俺の背後を取れるまでに成長したのかよ! 早いなぁ」
「驚くところはそこではないだろう......。周囲の敵を一掃するには、共闘が一番であろう?」
「そうだな、力の温存も必要だ。俺達で共闘をしようか」
「私は若様から教わったように一掃するので、若様も頼みますよ」
「俺に任せろ!」
 舞鶴は昨日の今日でかなり成長した。数分で一個中隊を壊滅かいめつさせられる力を、すでに有しているはずだ。
 俺も舞鶴に負けないように頑張らねばなるまい。燭台切を透明化させ、防御壁を空中に張り巡らせる。その防御壁も透明化させれば、敵からは予測不能の動きとなる。
 防御壁を足場に空中から攻撃をし、雑兵どもを片付けた。粗方ザコを倒し終えると、ジョーがどこにいるのか探してみた。すると、本陣の方で暴れ回っていた。
 まずい。歴史上、この戦は伊達政宗軍が勝ってはいけないのだ。ジョーが本陣で暴れ回っているのを止めねばならない。
「舞鶴、ちょっと本陣へ行くからザコを片付けておいてくれ」
「わかった、ここは私に任せてくれ」
 剣聖という肩書きだけあって、ジョーはかなり強いから歴史をねじ曲げてしまう可能性が高い。舞鶴にバレないように体を透明化させて、防御壁による足場で空中から本陣を目指した。
 本陣でのジョーの暴れ方を眺めていたら、相当敵を倒して伊達政宗軍が優勢となっていた。この状態ならば、こちらの軍が勝ってしまうな。こちら側が優勢にならないようにくわしく説明し忘れた俺の責任だ。
 ジョーを気絶させなければ、これを収束させることは不可能に等しい。だが、頭上からならジョーを気絶させられそうだ。
 俺はジョーの真上から落下して頭を蹴り飛ばした。「よし、まずはヒットだ!」
「痛えっ! あ? 政宗!?」
「死角からの俺の本気の一撃を受けてもケロッとしてやがるぜ......。ひとまず気絶しとけよ!」
 本気で蹴り飛ばしたのだが、まさかあれで気絶しないとは。けれでも、あれほどの耐久力ならば近距離で銃を撃っても死なす心配はいらないか。
 距離を詰めて、懐から取り出した銃をジョーに向けて何発か放ってみた。命中はしたが、強固な体によってはじかれてしまった。某有名漫画の、体がゴムの奴のように弾きかえしていた。
 弾をね返したジョーは、長いため息をもらす。「地味に痛いなぁ!」
「あ、地味に痛いんだ!」
 あまりダメージを受けていないように見えたが、地味には痛いようだ。ジョーの基準がわからんが、痛みを感じていることは確かだ。
 一気に気絶するまで追い込もう。防御壁をジョーの四方に展開し、逃げ場をふさいだ。そして燭台切の柄を、思い切りジョーの頭に叩きつけた。
「ガハッ!」
「燭台切の柄は兼三が硬く強化した。かなり痛いだろう?」
「ちくしょう!」
 叫ぶだけ叫び、気を失った。俺はジョーを肩に乗せ、戦いの最前線から離脱した。隊の後方でジョーの体を地面に下ろし、ほおをビンタした。
「おい、起きろ、ジョー!」
 目を覚ましたジョーは、非常に驚いたような表情をしていた。それも当然だ。急に仲間が自分に蹴り掛かってきたら、普通は頭が混乱する。だから、この戦に勝ってはいけないと説明した。
「なぜ勝ってはならないのだ?」
「俺は未来人だと言っただろう?」
「ああ」
「未来人だからこそ、この戦いは伊達政宗軍が勝たないのだと知っている。けれど、ジョーはかなり暴れ回っていた。このままでは伊達政宗軍が勝ってしまうと思い、急いでジョーを気絶させたんだ」
「なるほどな」
 ジョーは納得したようで、何度かうなずいていた。
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