隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

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第四章『輝宗の死』

伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その伍参

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 輝宗の魂はアーティネスによって地獄へと送られたが、アマテラスとレイカーの尽力で地獄の結界を一時的に破ることが出来た。そして、ホームズの口利きでとある世界に連れてこられた。
「あの」輝宗はアマテラスとレイカー、ホームズの顔を見た。「ここはどこなんだ?」
 ホームズは咳払いをする。「『シャーロック・ホームズの叡智えいち』の世界さ」
「『Holmesホームズ』の頭文字の『H』か?」
「『シャーロック・ホームズのH』ではなく『シャーロック・ホームズの叡智』だよ」
「『H』ではなく『叡智』ということか?」
「そうだ」
「それがどうしたんだ?」
 アマテラスは本を手に取った。「この本が『シャーロック・ホームズの叡智』。これは新潮文庫にしかない本なんだ」
「新潮文庫?」
 ホームズは、本の世界は危険だと伝えた。しかし、世界で一つしかないような本は外界から遮断されているから安全だと話す。そして、『シャーロック・ホームズの叡智』は世界で一つしかないと言った。
「これは政宗が言ったことだが、新潮文庫は諸事情によって短編集からいくつかの短編を掲載出来なかったんだ。その割愛した短編を一冊にまとめ、『シャーロック・ホームズの叡智』として出版したんだ。他の出版社のホームズ物語は九冊だけど、新潮社のホームズ物語は十冊ある」
 これが輝宗を助ける方法である。ヒントは、ホームズが楽しそうに語った自身の伝記だ。その中で、ホームズが失踪している時に何があったのかということを聞いたが、そこでルパンが登場していた。
 ルパンはホームズの伝記本を十冊持った。何かの間違いかと思ったが、それがヒントになった。ルパンは日本語を学んでいたから、新潮社のホームズ物語で勉強していたかもしれない。日本で初めてホームズ物語を完訳して出版したのが新潮社だから、ルパンが新潮社のホームズ物語を持っていてもおかしくはない。
 そこのところはどうでも良い。そこからヒントを得た俺は、ホームズに『シャーロック・ホームズの叡智』のことを言ってみた。するとホームズは、『シャーロック・ホームズの叡智』の世界のホームズに口利きをしてくれて、輝宗が住めることとなった。これで輝宗を殺さずにすんだ。

 輝宗と義継を撃った後、俺は城に入って仁和と合流した。
「どうだった?」
「うまい演技でしたよ」
 ふう、まったく。輝宗を殺すのは伊達じゃねぇな。だがこれで、また一歩先に進めるぞ。
「輝宗の遺体はちゃんと埋葬しておいてくれ」
「わかっております」
 畠山義継は領地没収を輝宗から命じられ、渋々それを飲み込んだ。そして義継は命を奪わなかった礼をするため、今日はここへ来ていた。
 その礼を終えて帰る時に、義継は輝宗を人質に取って二本松城に連れて帰ろうとする暴挙に出た。もし輝宗が連れて行かれれば形勢は逆転し、伊達氏が窮地に追いやられる。史実では、義継と輝宗は撃たれ死んだ。
 一説には、輝宗が自分もろとも撃てと言ったようだが、伊達政宗を守るための家臣達の偽装だろう。何たって、鉄砲隊に命令出来るのは政宗くらいしかいないからだ。俺もまた、史実通りにやってしまったというわけだ。
 義継が輝宗を人質に取ろうとしたのは、仁和達の脅しによるところが大きい。
「仁和、義継への脅しは助かったよ」
「いえ、あまり褒められた出来ではありませんでしたが」
 さて。輝宗を殺したのは良いが、史実では輝宗の死に政宗が怒る。そんでもって、輝宗の初七日を終わらせてから二本松城を攻め入るんだ。
 史実通りに行動をする。つまり、初七日を終えてから二本松城を攻め入るんだ。その準備を今日にも始めようか。
 ちょうどその時、伊達氏の老臣・鬼庭おににわ良直よしなおが通りかかった。
「良直!」
「これは若様。どういたしましたか?」
「二本松城を落とす! 良直にも同行してもらいたい」
「この老いぼれにも役に立つことがあるならば、喜んで同行しますとも!」
「ありがたい」
 鬼庭良直。長く伊達氏に使えている者だ。しかも、名字がうらやましい! 鬼庭、何て良い響きなんだ! すごく格好が良い名前だぜ。鬼庭政宗とか鬼庭横久......カッコいいね、うん。
「じゃあ、またあとで会おう」
「はい」
 俺は早速、戦の準備を開始した。ウルトラウィークの手入れは後回しにし、まずは燭台切とホームズから貰ったステッキの手入れをしたい。
 ホームズは元の世界に帰ったから、もういない。俺はバリツを受け継いだ。今回の戦にステッキを持っていくことにしよう。
「名坂ぁ~」
 ステッキを撫でていたら、小十郎が部屋に入ってきた。「どうしたんだ?」
「刀ってどうやってぐんだっけ?」
 そう言って、小十郎は俺に刀を向けてきた。危なっ! 剣先を俺に向けてくんな! せめて鞘に入れてから持ってきてくれよ。
「また忘れたのか? やり方をもう一度教えてやるから、こっち来い。日本刀の素晴らしさは、みがけば光ることにあるんだぞ」
「ありがとよ」
 小十郎から刀を受け取り、研いでいった。手入れをおこったのか、磨く前はくすんでいた。
 少々肉置はすり減ったが、小十郎の刀は一応光り輝いた。
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