152 / 245
第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その伍零
しおりを挟む
アマテラスは、俺の視点で小説のようなものを書いていた。その理由、当然気になる。俺は元気よく返事をした。
「気になるに決まってんだろーーー!」
「そんなもんなのか?」
「まあなっ!」
「良かろう」アマテラスは紙の束を回収した。「我がこれを書こうと思った経緯を話していこうじゃないか」
俺が殺されてアーティネスに出会った日、アマテラスは自分の部屋でその様子を確認していた。
アーティネスは俺を見た。「目覚めましたか?」
今でもこの時のことは記憶に残っている。俺はあの時、非常に動揺していた。
「誰だ!」
「私は人柱の一柱である女神・アーティネスです」
「女神? なら、なんで黒衣を?」
「人柱は皆、この黒衣を着衣する決まりがありますから」
「人柱?」
「人柱は人間界では生け贄ですが、私達の場合は『人間界でいう人柱』が転生して君臨した神のようなものです。俗に『犠牲神』とも呼称されます」
「なるほど。で、人柱の女神がいるところに、俺。......つまり、俺って死んだ?」
「はい」
「かなり淡泊な反応だな......」
「ええ」
「死んだことは受け入れる。でも、人柱の女神が俺に用があるのか?」
「人柱は生け贄の辛さがわかります。『死』は辛い。あなたも、随分と辛い死因ですよ? ですから、死んでからは好きなことをやれるようなアフターケアをあなたに提供しようと思って、閻魔大王に無理言って私の部屋に招きました」
「辛い死因?」
「あなたは、殺されたのです!」
「俺の死因は? 犯人は誰なんだ?」
「そうですね」アーティネスは顎に手を当てた。「死因と犯人を当てることが出来たら、あなたに転生の権利を与えましょう」
「転生?」
「輪廻転生です。あなたは新たに人生をやり直せます」
「それって、偉人とかにも転生出来たりする?」
「はい。偉人にも転生は可能です。しかし、転生は生まれた時からスタートなので、偉人になれるかはあなた次第でしょう」
「なら、俺は伊達政宗に転生したい」
「いいでしょう。死因と犯人を当ててみなさい。質問は受け付けます」
「ちなみに、転生後は前世の記憶あります?」
「記憶を維持した状態での転生も出来ますが、そうしますか?」
「もちろん! ......そういえば、転生にペナルティってあるのか?」
「死因と犯人、そのどちらかを間違えたら即地獄行きになるように閻魔大王に働きかけます」
この時すでに、アマテラスは俺に目を付けていたようだ。その理由を尋ねると、アーティネスは普通は試練などを与えることはないらしく、俺はアーティネスによって見込まれたのだという。
俺に何かを見いだしたアマテラスは、下界での俺の様子を観察して事細かく紙に書いていった。
「素晴らしいぞ!」アマテラスは俺の行動を見ていた。「記憶が戻ったと思ったら、自分で目を刺した! あの行動力と実行力は賞賛に値する」
俺は伊達政宗に転生するが、九歳まで記憶は戻らなかった。だから、自分が正しい伊達政宗としての道を辿るべく、急いで刀で目を刺してみた。滅茶苦茶痛かったことを記憶しているが、お陰様で今でも隻眼である。
アマテラスは俺の観察を毎日の楽しみとするようになった。そしてついに、元服を迎えた。それからの俺は輝宗に気に入られようといろいろな活躍をしてみせた。
それからの俺はどんどん力を付けていき、仲間の協力もあって、ついにはヘルリャフカ討伐することに成功した。
「我でも封印することが精一杯だった、あのヘルリャフカをあっさりと討伐してしまうのは......。ますます有望株じゃないか!」
その時、アマテラスの頭の中でとある考えがよぎった。それは、他の神にも俺の素晴らしさを説きたい、というものだ。俺がヘルリャフカを倒したことは神界に広く知れ渡っていたが、どのように強くなったのかなどまでは知られていない。
俺の素晴らしさは成長過程にあると思ったアマテラスは、観察日記として書いていたものを使って小説風に書き直した。それが、さっきの分厚い紙の束だ。
「なるほど」話しを聞き終わった俺は、何度かうなずく。「つまり、俺の伝記本を書きたかったわけか?」
「ああ。他の神の思考まで読めるのは我しかいないし、お前の伝記を書くのは我がうってつけであろう?」
「それは構わないが、ということはアマテラスは俺達の味方だってことか?」
「うむ、そういうことになる」
俺はガッツポーズをした。「よっしゃっ!」
「だが、あまり手助けはしないぞ。ピンチに助けるくらいだ」
「それでも助かるよ」
強力な仲間を得た。アマテラスは俺の歴史知識以上のチートになってしまう。これで一安心、同盟を結ぶことにしよう。
「ホースティーに拒まれたんだが、ここに同盟を結びに際しての条件が書かれている」
「読もうか」
アマテラスは俺が提示する条件を読んでいき、笑みを浮かべた。「この程度の条件なら飲んでやる」
「マジか! サンキュー! で、アマテラスが提示する条件は何だ?」
「それは伝記本を書かせてもらうために──」
「あのぅ」成実は気になったようにこちらを覗いてきた。「転生ってなんでしょうか?」
「気になるに決まってんだろーーー!」
「そんなもんなのか?」
「まあなっ!」
「良かろう」アマテラスは紙の束を回収した。「我がこれを書こうと思った経緯を話していこうじゃないか」
俺が殺されてアーティネスに出会った日、アマテラスは自分の部屋でその様子を確認していた。
アーティネスは俺を見た。「目覚めましたか?」
今でもこの時のことは記憶に残っている。俺はあの時、非常に動揺していた。
「誰だ!」
「私は人柱の一柱である女神・アーティネスです」
「女神? なら、なんで黒衣を?」
「人柱は皆、この黒衣を着衣する決まりがありますから」
「人柱?」
「人柱は人間界では生け贄ですが、私達の場合は『人間界でいう人柱』が転生して君臨した神のようなものです。俗に『犠牲神』とも呼称されます」
「なるほど。で、人柱の女神がいるところに、俺。......つまり、俺って死んだ?」
「はい」
「かなり淡泊な反応だな......」
「ええ」
「死んだことは受け入れる。でも、人柱の女神が俺に用があるのか?」
「人柱は生け贄の辛さがわかります。『死』は辛い。あなたも、随分と辛い死因ですよ? ですから、死んでからは好きなことをやれるようなアフターケアをあなたに提供しようと思って、閻魔大王に無理言って私の部屋に招きました」
「辛い死因?」
「あなたは、殺されたのです!」
「俺の死因は? 犯人は誰なんだ?」
「そうですね」アーティネスは顎に手を当てた。「死因と犯人を当てることが出来たら、あなたに転生の権利を与えましょう」
「転生?」
「輪廻転生です。あなたは新たに人生をやり直せます」
「それって、偉人とかにも転生出来たりする?」
「はい。偉人にも転生は可能です。しかし、転生は生まれた時からスタートなので、偉人になれるかはあなた次第でしょう」
「なら、俺は伊達政宗に転生したい」
「いいでしょう。死因と犯人を当ててみなさい。質問は受け付けます」
「ちなみに、転生後は前世の記憶あります?」
「記憶を維持した状態での転生も出来ますが、そうしますか?」
「もちろん! ......そういえば、転生にペナルティってあるのか?」
「死因と犯人、そのどちらかを間違えたら即地獄行きになるように閻魔大王に働きかけます」
この時すでに、アマテラスは俺に目を付けていたようだ。その理由を尋ねると、アーティネスは普通は試練などを与えることはないらしく、俺はアーティネスによって見込まれたのだという。
俺に何かを見いだしたアマテラスは、下界での俺の様子を観察して事細かく紙に書いていった。
「素晴らしいぞ!」アマテラスは俺の行動を見ていた。「記憶が戻ったと思ったら、自分で目を刺した! あの行動力と実行力は賞賛に値する」
俺は伊達政宗に転生するが、九歳まで記憶は戻らなかった。だから、自分が正しい伊達政宗としての道を辿るべく、急いで刀で目を刺してみた。滅茶苦茶痛かったことを記憶しているが、お陰様で今でも隻眼である。
アマテラスは俺の観察を毎日の楽しみとするようになった。そしてついに、元服を迎えた。それからの俺は輝宗に気に入られようといろいろな活躍をしてみせた。
それからの俺はどんどん力を付けていき、仲間の協力もあって、ついにはヘルリャフカ討伐することに成功した。
「我でも封印することが精一杯だった、あのヘルリャフカをあっさりと討伐してしまうのは......。ますます有望株じゃないか!」
その時、アマテラスの頭の中でとある考えがよぎった。それは、他の神にも俺の素晴らしさを説きたい、というものだ。俺がヘルリャフカを倒したことは神界に広く知れ渡っていたが、どのように強くなったのかなどまでは知られていない。
俺の素晴らしさは成長過程にあると思ったアマテラスは、観察日記として書いていたものを使って小説風に書き直した。それが、さっきの分厚い紙の束だ。
「なるほど」話しを聞き終わった俺は、何度かうなずく。「つまり、俺の伝記本を書きたかったわけか?」
「ああ。他の神の思考まで読めるのは我しかいないし、お前の伝記を書くのは我がうってつけであろう?」
「それは構わないが、ということはアマテラスは俺達の味方だってことか?」
「うむ、そういうことになる」
俺はガッツポーズをした。「よっしゃっ!」
「だが、あまり手助けはしないぞ。ピンチに助けるくらいだ」
「それでも助かるよ」
強力な仲間を得た。アマテラスは俺の歴史知識以上のチートになってしまう。これで一安心、同盟を結ぶことにしよう。
「ホースティーに拒まれたんだが、ここに同盟を結びに際しての条件が書かれている」
「読もうか」
アマテラスは俺が提示する条件を読んでいき、笑みを浮かべた。「この程度の条件なら飲んでやる」
「マジか! サンキュー! で、アマテラスが提示する条件は何だ?」
「それは伝記本を書かせてもらうために──」
「あのぅ」成実は気になったようにこちらを覗いてきた。「転生ってなんでしょうか?」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

戦争はただ冷酷に
航空戦艦信濃
歴史・時代
1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…
1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。
科学チートで江戸大改革! 俺は田沼意次のブレーンで現代と江戸を行ったり来たり
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第3回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
天明六年(1786年)五月一五日――
失脚の瀬戸際にあった田沼意次が祈祷を行った。
その願いが「大元帥明王」に届く。
結果、21世紀の現代に住む俺は江戸時代に召喚された。
俺は、江戸時代と現代を自由に行き来できるスキルをもらった。
その力で田沼意次の政治を助けるのが俺の役目となった。
しかも、それで得た報酬は俺のモノだ。
21世紀の科学で俺は江戸時代を変える。
いや近代の歴史を変えるのである。
2017/9/19
プロ編集者の評価を自分なりに消化して、主人公の説得力強化を狙いました。
時代選定が「地味」は、これからの展開でカバーするとしてですね。
冒頭で主人公が選ばれるのが唐突なので、その辺りつながるような話を0話プロローグで追加しました。
失敗の場合、消して元に戻します。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
生きてこそ-悲願の萩-
夢酔藤山
歴史・時代
遅れて生まれたがために天下を取れなかった伊達政宗。その猛々しい武将としての一面は表向きだ。長く心にあった、母親との確執。それゆえ隠してきた秘密。老い先短い母親のために政宗の出来ることはひとつだった。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる