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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆弐
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煙草を吸いたかった俺は、せめて煙草を吸う仕草をした。すると、それを察したのか景頼が煙草を持ってやって来た。
「若様。煙草はいかがですか?」
「よくわかったな、俺が煙草を吸いたいと」
「まあ、若様のことは全てわかっているつもりなので。このタイミングなら煙草を吸いたいのでは、と考えつきました」
「すまんな」
俺は景頼から煙草を受け取り、着火して煙を吹いた。
「戦の最中に何が起こったんですか?」
「レイカーに言われたんだ。俺は強くなりすぎたって」
「強いことは良いことです」
「ただ、人間は神に匹敵しちゃいけないらしいんだ。だから、俺の処分がこれから神界で開かれる会議で決められる。最悪の場合は、俺は地獄行きだ」
「なっ! だから逃げ帰ったのですか!」
「そういうことだ」
やっぱり、煙草は二十一世紀のが良いな。......煙草と言えば、ホームズの奴はどうしたんだろうか。
「ホームズはどこにいる?」
「さあ、私はわかりません」
「んじゃ、ホームズを探しに行ってくる」
「承知しました」
煙草を口にくわえながら、部屋を出てホームズを探す。ホームズのことだから、おそらく風当たりが良い場所にいるはずだ。
米沢城で風当たりが良い場所。あそこしかないだろ。
アマテラスは手元の書類に目を落とす。「アーティネス。あの伊達政宗に神力を与えたようだが、ちゃんと洗脳は出来ているのか? あの個体は力を持ちすぎている」
「はい」アーティネスは椅子から立ちあがり、身を乗り出した。「名坂横久は完璧に洗脳出来ています。今さら強大な力を持とうが、我々が自由に操ることが出来ます」
「それに保証はあるか?」
「......ありません」
「座れ。他に伊達政宗について報告のある者は誰かな?」
レイカーはここで挙手をするべきか迷っていた。早い段階より、会議の終盤の方が良い気がした。
すると、バルスは手を上げた。
「ほう」アマテラスはバルスに目を向けた。「バルス、何を報告したいのか申してみろ」
「操ることが出来る保証はあります」
「立ち上がれ。そして、報告をするんだ」
「わかりました」バルスは立ち、咳払いをした。「伊達政宗の精神は、すでにアーティネス様が破壊済みです。そしてアーティネス様自らが心の支えとなり、信頼できる一人となりました。操り人形と化したも同然でしょう」
「ふむ、それもそうか」
アマテラスは顎に手を当てて、それから机上を強く叩いた。
「「!」」
「これより、伊達政宗の力を見極める! 四天王だけは、俺の後に着いてこい。──下界に降りる」
アマテラスは決断を下した。レイカーはその決断に驚き、唖然とする。ヘルリャフカのせいで弱体化しているとは言え、神界最強を誇るアマテラスと伊達政宗では結果は明白。アマテラスが勝つ。
椅子を蹴り飛ばしたアマテラスは、息を荒げた。力を込めて、拳を握る。「本気で倒す!」
四天王はここぞとばかりに一斉に立ちあがり、アマテラスの後ろに並んだ。四天王の目は、力んでいる。ヘルリャフカには敵わないが、雑魚を倒すのはやりがいがある。そう考えているのだ。
「開け、ゲート!」アマテラスは手を振り払い、下界に通じるゲートの入り口を開いた。「留守中はアーティネスに任せる」
「承りました」
「行くぞ!」
アマテラスは躊躇いもせず、ゲートに飛び込んだ。四天王もそれに続き、五人が飛び込んだ後はゲートの入り口は閉じた。
レイカーは頭を抱え、小さくつぶやいた。「名坂君は負ける」
俺の読み通り、風当たりが良い場所にホームズはいた。ホームズは陶器製のパイプを口にくわえていた。
「やあ」ホームズはパイプを持つ手を入れ替えて、体を俺に向けた。「何か用かな?」
「ホームズが考えにふける時は陶器製のパイプを使う。今は陶器製のパイプを使っているな」
「ん、ああ。僕はパイプを使い分けるんだよ。君の言うとおり、陶器製のパイプを使う場合は考えにふけったり精神を集中させる時に使うよ」
「何を考えていたんだ?」
「伊達輝宗をどのように助けるか、その一点に集中して考えていた」
「そうか。それは随分と──」
俺が話している最中に、ホームズはパイプを放り投げてステッキを掴んだ。「誰だ、そこにいるのは!?」
背に気配を感じ、俺も帯刀していた刀を鞘から引き抜いて距離をとった。燭台切の代わりはまだ兼三に作らせている途中だから、大して力のないだが仕方ない。
「二人とも、俊敏な身のこなしだ」
この声、以前に聞いたことがあった。そして姿を目で捉え、声の主がアマテラスだと気付いた。
「アマテラス!」
「何だ」ホームズは俺を見た。「知り合いなのか?」
「ホームズ、ステッキを離すな! 奴は敵だぁ! バリツの構えをしていろっ!」
「あ、ああ」
何でアマテラスがいるんだ!? ちくしょう、レイカーは何をやってんだ。燭台切もない。こんな刀で何が出来るってんだよ。
「覚悟は、出来ているな?」
アマテラスの鋭い眼が光った。その瞬間、金縛りでもあったように体の身動きが取れなくなった。どんな妖術だってんだ、眼力で金縛りって。
「若様。煙草はいかがですか?」
「よくわかったな、俺が煙草を吸いたいと」
「まあ、若様のことは全てわかっているつもりなので。このタイミングなら煙草を吸いたいのでは、と考えつきました」
「すまんな」
俺は景頼から煙草を受け取り、着火して煙を吹いた。
「戦の最中に何が起こったんですか?」
「レイカーに言われたんだ。俺は強くなりすぎたって」
「強いことは良いことです」
「ただ、人間は神に匹敵しちゃいけないらしいんだ。だから、俺の処分がこれから神界で開かれる会議で決められる。最悪の場合は、俺は地獄行きだ」
「なっ! だから逃げ帰ったのですか!」
「そういうことだ」
やっぱり、煙草は二十一世紀のが良いな。......煙草と言えば、ホームズの奴はどうしたんだろうか。
「ホームズはどこにいる?」
「さあ、私はわかりません」
「んじゃ、ホームズを探しに行ってくる」
「承知しました」
煙草を口にくわえながら、部屋を出てホームズを探す。ホームズのことだから、おそらく風当たりが良い場所にいるはずだ。
米沢城で風当たりが良い場所。あそこしかないだろ。
アマテラスは手元の書類に目を落とす。「アーティネス。あの伊達政宗に神力を与えたようだが、ちゃんと洗脳は出来ているのか? あの個体は力を持ちすぎている」
「はい」アーティネスは椅子から立ちあがり、身を乗り出した。「名坂横久は完璧に洗脳出来ています。今さら強大な力を持とうが、我々が自由に操ることが出来ます」
「それに保証はあるか?」
「......ありません」
「座れ。他に伊達政宗について報告のある者は誰かな?」
レイカーはここで挙手をするべきか迷っていた。早い段階より、会議の終盤の方が良い気がした。
すると、バルスは手を上げた。
「ほう」アマテラスはバルスに目を向けた。「バルス、何を報告したいのか申してみろ」
「操ることが出来る保証はあります」
「立ち上がれ。そして、報告をするんだ」
「わかりました」バルスは立ち、咳払いをした。「伊達政宗の精神は、すでにアーティネス様が破壊済みです。そしてアーティネス様自らが心の支えとなり、信頼できる一人となりました。操り人形と化したも同然でしょう」
「ふむ、それもそうか」
アマテラスは顎に手を当てて、それから机上を強く叩いた。
「「!」」
「これより、伊達政宗の力を見極める! 四天王だけは、俺の後に着いてこい。──下界に降りる」
アマテラスは決断を下した。レイカーはその決断に驚き、唖然とする。ヘルリャフカのせいで弱体化しているとは言え、神界最強を誇るアマテラスと伊達政宗では結果は明白。アマテラスが勝つ。
椅子を蹴り飛ばしたアマテラスは、息を荒げた。力を込めて、拳を握る。「本気で倒す!」
四天王はここぞとばかりに一斉に立ちあがり、アマテラスの後ろに並んだ。四天王の目は、力んでいる。ヘルリャフカには敵わないが、雑魚を倒すのはやりがいがある。そう考えているのだ。
「開け、ゲート!」アマテラスは手を振り払い、下界に通じるゲートの入り口を開いた。「留守中はアーティネスに任せる」
「承りました」
「行くぞ!」
アマテラスは躊躇いもせず、ゲートに飛び込んだ。四天王もそれに続き、五人が飛び込んだ後はゲートの入り口は閉じた。
レイカーは頭を抱え、小さくつぶやいた。「名坂君は負ける」
俺の読み通り、風当たりが良い場所にホームズはいた。ホームズは陶器製のパイプを口にくわえていた。
「やあ」ホームズはパイプを持つ手を入れ替えて、体を俺に向けた。「何か用かな?」
「ホームズが考えにふける時は陶器製のパイプを使う。今は陶器製のパイプを使っているな」
「ん、ああ。僕はパイプを使い分けるんだよ。君の言うとおり、陶器製のパイプを使う場合は考えにふけったり精神を集中させる時に使うよ」
「何を考えていたんだ?」
「伊達輝宗をどのように助けるか、その一点に集中して考えていた」
「そうか。それは随分と──」
俺が話している最中に、ホームズはパイプを放り投げてステッキを掴んだ。「誰だ、そこにいるのは!?」
背に気配を感じ、俺も帯刀していた刀を鞘から引き抜いて距離をとった。燭台切の代わりはまだ兼三に作らせている途中だから、大して力のないだが仕方ない。
「二人とも、俊敏な身のこなしだ」
この声、以前に聞いたことがあった。そして姿を目で捉え、声の主がアマテラスだと気付いた。
「アマテラス!」
「何だ」ホームズは俺を見た。「知り合いなのか?」
「ホームズ、ステッキを離すな! 奴は敵だぁ! バリツの構えをしていろっ!」
「あ、ああ」
何でアマテラスがいるんだ!? ちくしょう、レイカーは何をやってんだ。燭台切もない。こんな刀で何が出来るってんだよ。
「覚悟は、出来ているな?」
アマテラスの鋭い眼が光った。その瞬間、金縛りでもあったように体の身動きが取れなくなった。どんな妖術だってんだ、眼力で金縛りって。
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