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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆壱
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「やってしまったか」レイカーは下界の伊達政宗の行動を見ながら、頭を抱えた。「これは神界で重要案件として扱われる可能性がある」
レイカーがこう言うのも無理はなかった。伊達政宗は自身が生み出した刀により、かなりの戦闘力を得ている。それに加え、神力やチート級の歴史知識、有能な家臣を有している。つまり、伊達政宗一人でも神にも匹敵する力を持ってしまったことになる。
人間は神に匹敵してはいけない。そのため、神の使者に与えられる神力にも制約がある。しかし、伊達政宗の才は多岐にわたる。悪く言えば器用貧乏なわけだが、伊達政宗は歴史知識に関してはずば抜けている。歴史知識だけなら、知の神に勝るだろう。
しかも、長く戦国時代にいたことで剣の腕にも磨きが掛かり、戦闘能力も向上。家臣から最高の武器を得て、神力を駆使して江渡弥平を倒した。
伊達政宗をこのまま野放しにしていたら神の強敵となる。力なら三魔種族の方がはるかに格上だが、ヘルリャフカのように神界には踏み込んでこない。だが、伊達政宗なら神界に来る可能性もあるし、神界での長時間の活動が可能だと判明している。それだけ強靱の肉体と精神も兼ね備えている。
レイカーは腕を組んだ。「このままだと他の神から名坂君に目を付けられてしまう。最悪の場合は神の使者の権利を剥奪し、地獄送りに......」
今の神のトップなら、伊達政宗を地獄送りにしかねない。レイカーは早く手を打たないといけないとして、伊達政宗の精神を呼び寄せた。
「うおっ!」江渡弥平を倒してすぐに神界に来たため、伊達政宗は驚いた。「どうした、急に!?」
「名坂君、やってくれたね!」
「へ? 何を?」
混乱する伊達政宗に、レイカーは丁寧に説明をする。その説明を受けた伊達政宗は、余計に混乱した。
「つまり、俺は死ぬのか!?」
「僕が何とかする! いや、しなければならない!」
「俺はどうすれば良い?」
「大丈夫、君は江渡弥平を殺さずにその場から退却するんだ。僕はこれから行われるであろう神柱会議に出席する。そこで印象操作をしてみる。
名坂君はこれ以上力を誇示しないようにしてほしい。簡単に言うと、僕が良しと言うまでは戦わないでくれ」
「た、戦いはしないが、なぜ江渡弥平を倒したことが問題なんだ?」
「江渡弥平は二十一世紀の技術を使っていて、君に倒せるような敵じゃなかった。今回はマグレだと思うが、江渡弥平を倒したのなら神達は君を脅威だと認識することになる」
「なるほど」
「とにかく! この戦からは手を引いてくれ!」
「わかった」
「では早速、君の精神を伊達政宗の体に戻す」
レイカーは早急に伊達政宗の体に精神を返し、部屋を飛び出した。これを阻止するにはどうすれば良いのか、レイカーの頭はそれだけしか考えていなかった。
「名坂君がいなくなれば、我々人間保守派は矛を失う!」
レイカーはものすごい形相となった。
伊達政宗の体に戻った俺は、燭台切の柄を投げ捨てて山城を抜け出した。ウルトラウィークに飛び乗ると、敵方に背を向けて走り出した。
「全軍に告ぐ! 退却だ! 直ちに城へ戻るんだっ!」
俺の行動を見た成実は、勢いよく息を吸い込んだ。「若様が退却とのことだ! 帰還しろ!」
成実の声に気付き、家臣は命からがら前線から離脱。米沢城へ馬を導いた。
「成実、こちらの死亡者はざっと何人だ?」
「報告によると、数百人にとどまったようです」
「なら、他に死亡者を出さずに城に帰らなくてはいけない。成実は味方の警護にあたって周囲を警戒しろ!」
「わかりました。未来人衆の主力を数人ほど駆り出して周囲を警戒します」
「ああ」
走らせすぎて、ウルトラウィークはバテていた。
「ウルトラウィーク、頑張ってくれ。そしたら、好きなだけ鳴いて良いぞ」
「ヒヒーン!」
「今は鳴くな! 走ることに集中するんだ」
「ヒヒーーーーーン」
「な、鳴く時間が長くなった......」
全力で逃げること数十分。さすがに敵方は追いかけてこない。俺はホッとしつつも、自分の処分が神界でどう決まるのか心配だった。今日は安心して眠れないかもしれない。
アマテラスに歴史知識を剥奪されておくべきだったか!
次第にそんな不安は薄れていった。大体は不安感の方が勝るはずだが、今は安心感が不安感に勝っていた。なぜだか知らんが、精神的にまずいことが起きるということはなさそうだ。
米沢城に待機していた者は、早い帰還に驚いていた。理由は事後報告でも構わんが、輝宗には何と言い訳すれば良いのか。いや、それも後回しだ。今はレイカーからの連絡を静かに待つばかり。
「ウルトラウィーク、ここまで送ってくれてありがとな。ゆっくり休め」
ウルトラウィークは前足を上げて、空に向けて叫ぶ。「ヒヒーーーーーーーーーーーンッ!」
「おう!」
ウルトラウィークの頭を撫でてから、城の中に入る。鎧などを脱ぎ捨てると、負傷した部分に手当をする。血はそこまで流れてもいない。
椅子に腰を下ろし、肩の力を抜いた。煙草を、吸いたいな。
レイカーがこう言うのも無理はなかった。伊達政宗は自身が生み出した刀により、かなりの戦闘力を得ている。それに加え、神力やチート級の歴史知識、有能な家臣を有している。つまり、伊達政宗一人でも神にも匹敵する力を持ってしまったことになる。
人間は神に匹敵してはいけない。そのため、神の使者に与えられる神力にも制約がある。しかし、伊達政宗の才は多岐にわたる。悪く言えば器用貧乏なわけだが、伊達政宗は歴史知識に関してはずば抜けている。歴史知識だけなら、知の神に勝るだろう。
しかも、長く戦国時代にいたことで剣の腕にも磨きが掛かり、戦闘能力も向上。家臣から最高の武器を得て、神力を駆使して江渡弥平を倒した。
伊達政宗をこのまま野放しにしていたら神の強敵となる。力なら三魔種族の方がはるかに格上だが、ヘルリャフカのように神界には踏み込んでこない。だが、伊達政宗なら神界に来る可能性もあるし、神界での長時間の活動が可能だと判明している。それだけ強靱の肉体と精神も兼ね備えている。
レイカーは腕を組んだ。「このままだと他の神から名坂君に目を付けられてしまう。最悪の場合は神の使者の権利を剥奪し、地獄送りに......」
今の神のトップなら、伊達政宗を地獄送りにしかねない。レイカーは早く手を打たないといけないとして、伊達政宗の精神を呼び寄せた。
「うおっ!」江渡弥平を倒してすぐに神界に来たため、伊達政宗は驚いた。「どうした、急に!?」
「名坂君、やってくれたね!」
「へ? 何を?」
混乱する伊達政宗に、レイカーは丁寧に説明をする。その説明を受けた伊達政宗は、余計に混乱した。
「つまり、俺は死ぬのか!?」
「僕が何とかする! いや、しなければならない!」
「俺はどうすれば良い?」
「大丈夫、君は江渡弥平を殺さずにその場から退却するんだ。僕はこれから行われるであろう神柱会議に出席する。そこで印象操作をしてみる。
名坂君はこれ以上力を誇示しないようにしてほしい。簡単に言うと、僕が良しと言うまでは戦わないでくれ」
「た、戦いはしないが、なぜ江渡弥平を倒したことが問題なんだ?」
「江渡弥平は二十一世紀の技術を使っていて、君に倒せるような敵じゃなかった。今回はマグレだと思うが、江渡弥平を倒したのなら神達は君を脅威だと認識することになる」
「なるほど」
「とにかく! この戦からは手を引いてくれ!」
「わかった」
「では早速、君の精神を伊達政宗の体に戻す」
レイカーは早急に伊達政宗の体に精神を返し、部屋を飛び出した。これを阻止するにはどうすれば良いのか、レイカーの頭はそれだけしか考えていなかった。
「名坂君がいなくなれば、我々人間保守派は矛を失う!」
レイカーはものすごい形相となった。
伊達政宗の体に戻った俺は、燭台切の柄を投げ捨てて山城を抜け出した。ウルトラウィークに飛び乗ると、敵方に背を向けて走り出した。
「全軍に告ぐ! 退却だ! 直ちに城へ戻るんだっ!」
俺の行動を見た成実は、勢いよく息を吸い込んだ。「若様が退却とのことだ! 帰還しろ!」
成実の声に気付き、家臣は命からがら前線から離脱。米沢城へ馬を導いた。
「成実、こちらの死亡者はざっと何人だ?」
「報告によると、数百人にとどまったようです」
「なら、他に死亡者を出さずに城に帰らなくてはいけない。成実は味方の警護にあたって周囲を警戒しろ!」
「わかりました。未来人衆の主力を数人ほど駆り出して周囲を警戒します」
「ああ」
走らせすぎて、ウルトラウィークはバテていた。
「ウルトラウィーク、頑張ってくれ。そしたら、好きなだけ鳴いて良いぞ」
「ヒヒーン!」
「今は鳴くな! 走ることに集中するんだ」
「ヒヒーーーーーン」
「な、鳴く時間が長くなった......」
全力で逃げること数十分。さすがに敵方は追いかけてこない。俺はホッとしつつも、自分の処分が神界でどう決まるのか心配だった。今日は安心して眠れないかもしれない。
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次第にそんな不安は薄れていった。大体は不安感の方が勝るはずだが、今は安心感が不安感に勝っていた。なぜだか知らんが、精神的にまずいことが起きるということはなさそうだ。
米沢城に待機していた者は、早い帰還に驚いていた。理由は事後報告でも構わんが、輝宗には何と言い訳すれば良いのか。いや、それも後回しだ。今はレイカーからの連絡を静かに待つばかり。
「ウルトラウィーク、ここまで送ってくれてありがとな。ゆっくり休め」
ウルトラウィークは前足を上げて、空に向けて叫ぶ。「ヒヒーーーーーーーーーーーンッ!」
「おう!」
ウルトラウィークの頭を撫でてから、城の中に入る。鎧などを脱ぎ捨てると、負傷した部分に手当をする。血はそこまで流れてもいない。
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