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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆零
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二日後、俺達は新たなる戦場に向かって馬を駆けた。もうすぐ輝宗を殺すことになるが、まだ生かす方法は見つかっていない。どうすれば良いのだろうか。
俺は燭台切を強く握る。そして、昨日のことを思い出した。
昨日、俺は小十郎と話し合った。輝宗を生かすための方法を考えるためである。輝宗を生かすには、基本的にホームズの力が必要不可欠だ。ホームズの世界に移住させるにせよ、どのように輝宗を守るのか。
「難問だな」小十郎は頭を掻く。「ホームズを使うにしても、どうすれば良いのか。レイカーの言ってることを信じるにしても、だ。輝宗を生かしたのなら、いずれアーティネスにバレるぞ」
「だよな。もしかしたら、アーティネスはすでに気付いている可能性もある」
「それにどう対処するってんだ」
小十郎の言っていることは正しい。レイカーを信じずに、輝宗を殺すことも出来る。
「ただ、アーティネスは牛丸を殺した張本人だ。それは間違いない」
「そうだけどさぁ」
アーティネスは許したくない。俺を操り人形にしていて、かつ用済みの輝宗を殺そうとしている。俺が輝宗を殺したら、アーティネスの思う壺になる。それは何としてでも避ける!
燭台切を腰に添え付け、長柄槍を右手に持って、試しに振る。もうすぐ戦場に到着する。俺の力を見せつけて、出来るだけ早く降伏させないと死人が増えることになる。初っ端から本気だ。
「行けえええぇぇ!」
俺の掛け声とともに、原っぱの彼方に姿が見えてきた敵方に矢が飛ぶ。次に槍が前に出て、槍同士で戦いが始まった。
俺も槍を振り回し、折れたら新たな槍で敵をなぎ倒す。戦は順調のようだ。我が軍が優位である。
成実は声を張り上げる。「若様! 上空に石がっ!!」
天を仰ぐと、大きな石がこちらに飛んできていた。どこから飛ばされてきたのか目を向けると、築かれた山城に大きなシーソーが置かれていた。あの石に潰されたら、死人が出る。
俺は馬の背に立ち、帯刀していた燭台切を鞘から抜いた。「成実! 俺が石を砕くっ!」
馬から飛ぶと、防御壁で空中に仮の足場を作って石まで向かった。石の上に乗ると、燭台切の刃先を石に当てて重さで真っ二つにする。割れた片方に飛びつくと、粉々に砕いてからもう片方の石に移る。それも砕くと、次にシーソーの方を見る。
また石を投げる準備をしていた。急いであの山城を攻略する必要がある!
「成実に指揮を任せる!」
「わかりました!」
馬に戻ると、山城へ走った。馬をそこで降り、燭台切を片手で握りながら登山を開始する。険しい道だが、防御壁で足場を作りながらなら進めることが出来る。
第一関門が、鉄砲で狙われた。防御壁でそれを防ぐと、銃を切りながらシーソーの位置を確認する。シーソーは水堀の先のようだ。水堀を飛んだ方が早いだろう。
水堀の水に粘度を持たせ、トランポリンの要領でシーソーまで飛んだ。その勢いでシーソーの周囲の奴らを蹴り飛ばすと、ストックしてある石を燭台切で切り砕いた。
「シーソーも壊しておこう」
俺はシーソーを破壊した。
「あー、壊しちゃったか、シーソー」
声の主を辿り、視界に捉えた。それは紛れもなく、江渡弥平だった。
「久しいね、伊達政宗」
「江渡弥平! 貴様、ついに出たか!」
「何年ぶりかな。うちの牛丸達はよろしくしているか?」
「牛丸は死んだ」
「そうか、奴は優秀だったが残念だよ」
「テメェ! 覚悟しろ」
「そんな刀で何が出来ると言うんだよ」江渡弥平は拳銃を取り出した。「この銃は二十一世紀のものでね、手に入れるのに苦労した」
「それがどうした?」
「連射してもオーバーヒートしないように──おっと、君にはオーバーヒートと言っても意味は伝わらないね」
つまり、あの拳銃は連射可能な代物か。近づくのも難しいが、防御壁があるば......。
「残念だが、ここは神が干渉出来ない領域だ。神力は封じられる」
「なっ!?」防御壁どころか、神力が発動しない!「どこで神力の情報を得たんだ!」
「我々の情報網を侮るなかれってね!」
なら、弾丸をどうやって防げば良いんだ!? いや、冷静になれ。逃げれば良いんだよ。
「逃げられないように人員を割いている。無駄だ」
「チッ!」
最終手段としてとっておきたかったが、仕方ない。ここで使うしかない。燭台切の第二形態の特徴は、特大級の長さにある。折りたたみ傘式に、ある程度はリーチを長く出来る仕掛けがあるんだ。俺は燭台切を第二形態に移行する。
「行くぞ!」
リーチがより長くなれば、拳銃で撃たれる前に江渡弥平を刺せるようになる。権次の案で改良したが、もう役に立った。
「長くなったって意味はない」
「ある!」
ただ、燭台切の刃が江渡弥平に当たっても鋭利じゃないからダメージは与えられない。が、拳銃で撃たれる前に片を付けなくてはならない。だったら、これしかないな。
江渡弥平の目を盗み、石で燭台切の肉置を削る。肉置がなくなれば頑丈ではなくなるが、鋭利さは増す。これでどうだ。
俺は鋭利になり重さを失った燭台切で、江渡弥平を斬りつけた。
「ぐあああぁぁ!」
江渡弥平の手の腱や筋を切り、一生拳銃を握れなくした。あとは足の腱も切り裂き、当分は歩けなくする。役目を終えた燭台切はポッキリと折れる。
俺は燭台切を強く握る。そして、昨日のことを思い出した。
昨日、俺は小十郎と話し合った。輝宗を生かすための方法を考えるためである。輝宗を生かすには、基本的にホームズの力が必要不可欠だ。ホームズの世界に移住させるにせよ、どのように輝宗を守るのか。
「難問だな」小十郎は頭を掻く。「ホームズを使うにしても、どうすれば良いのか。レイカーの言ってることを信じるにしても、だ。輝宗を生かしたのなら、いずれアーティネスにバレるぞ」
「だよな。もしかしたら、アーティネスはすでに気付いている可能性もある」
「それにどう対処するってんだ」
小十郎の言っていることは正しい。レイカーを信じずに、輝宗を殺すことも出来る。
「ただ、アーティネスは牛丸を殺した張本人だ。それは間違いない」
「そうだけどさぁ」
アーティネスは許したくない。俺を操り人形にしていて、かつ用済みの輝宗を殺そうとしている。俺が輝宗を殺したら、アーティネスの思う壺になる。それは何としてでも避ける!
燭台切を腰に添え付け、長柄槍を右手に持って、試しに振る。もうすぐ戦場に到着する。俺の力を見せつけて、出来るだけ早く降伏させないと死人が増えることになる。初っ端から本気だ。
「行けえええぇぇ!」
俺の掛け声とともに、原っぱの彼方に姿が見えてきた敵方に矢が飛ぶ。次に槍が前に出て、槍同士で戦いが始まった。
俺も槍を振り回し、折れたら新たな槍で敵をなぎ倒す。戦は順調のようだ。我が軍が優位である。
成実は声を張り上げる。「若様! 上空に石がっ!!」
天を仰ぐと、大きな石がこちらに飛んできていた。どこから飛ばされてきたのか目を向けると、築かれた山城に大きなシーソーが置かれていた。あの石に潰されたら、死人が出る。
俺は馬の背に立ち、帯刀していた燭台切を鞘から抜いた。「成実! 俺が石を砕くっ!」
馬から飛ぶと、防御壁で空中に仮の足場を作って石まで向かった。石の上に乗ると、燭台切の刃先を石に当てて重さで真っ二つにする。割れた片方に飛びつくと、粉々に砕いてからもう片方の石に移る。それも砕くと、次にシーソーの方を見る。
また石を投げる準備をしていた。急いであの山城を攻略する必要がある!
「成実に指揮を任せる!」
「わかりました!」
馬に戻ると、山城へ走った。馬をそこで降り、燭台切を片手で握りながら登山を開始する。険しい道だが、防御壁で足場を作りながらなら進めることが出来る。
第一関門が、鉄砲で狙われた。防御壁でそれを防ぐと、銃を切りながらシーソーの位置を確認する。シーソーは水堀の先のようだ。水堀を飛んだ方が早いだろう。
水堀の水に粘度を持たせ、トランポリンの要領でシーソーまで飛んだ。その勢いでシーソーの周囲の奴らを蹴り飛ばすと、ストックしてある石を燭台切で切り砕いた。
「シーソーも壊しておこう」
俺はシーソーを破壊した。
「あー、壊しちゃったか、シーソー」
声の主を辿り、視界に捉えた。それは紛れもなく、江渡弥平だった。
「久しいね、伊達政宗」
「江渡弥平! 貴様、ついに出たか!」
「何年ぶりかな。うちの牛丸達はよろしくしているか?」
「牛丸は死んだ」
「そうか、奴は優秀だったが残念だよ」
「テメェ! 覚悟しろ」
「そんな刀で何が出来ると言うんだよ」江渡弥平は拳銃を取り出した。「この銃は二十一世紀のものでね、手に入れるのに苦労した」
「それがどうした?」
「連射してもオーバーヒートしないように──おっと、君にはオーバーヒートと言っても意味は伝わらないね」
つまり、あの拳銃は連射可能な代物か。近づくのも難しいが、防御壁があるば......。
「残念だが、ここは神が干渉出来ない領域だ。神力は封じられる」
「なっ!?」防御壁どころか、神力が発動しない!「どこで神力の情報を得たんだ!」
「我々の情報網を侮るなかれってね!」
なら、弾丸をどうやって防げば良いんだ!? いや、冷静になれ。逃げれば良いんだよ。
「逃げられないように人員を割いている。無駄だ」
「チッ!」
最終手段としてとっておきたかったが、仕方ない。ここで使うしかない。燭台切の第二形態の特徴は、特大級の長さにある。折りたたみ傘式に、ある程度はリーチを長く出来る仕掛けがあるんだ。俺は燭台切を第二形態に移行する。
「行くぞ!」
リーチがより長くなれば、拳銃で撃たれる前に江渡弥平を刺せるようになる。権次の案で改良したが、もう役に立った。
「長くなったって意味はない」
「ある!」
ただ、燭台切の刃が江渡弥平に当たっても鋭利じゃないからダメージは与えられない。が、拳銃で撃たれる前に片を付けなくてはならない。だったら、これしかないな。
江渡弥平の目を盗み、石で燭台切の肉置を削る。肉置がなくなれば頑丈ではなくなるが、鋭利さは増す。これでどうだ。
俺は鋭利になり重さを失った燭台切で、江渡弥平を斬りつけた。
「ぐあああぁぁ!」
江渡弥平の手の腱や筋を切り、一生拳銃を握れなくした。あとは足の腱も切り裂き、当分は歩けなくする。役目を終えた燭台切はポッキリと折れる。
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