140 / 245
第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参捌
しおりを挟む
さて。俺は体が完治するまで休むことになった。それまで何をすれば良いのやら。そう考えていると、鍛冶屋の権次と兼三を思い出した。そして、休暇中は新たな武器開発に着手しようと決めた。
まずは権次と兼三を呼び出す。そして、俺が特注した刀を戦場で使っていた景頼も一緒に部屋に招き入れた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。新たな武器を作りたいんだ。しかも、より強力なもので」
すると権次が、ニヤリと笑った。「若様、良い提案ですね。そういうことなら全面的に協力しましょう」
「良いのか?」
「更なる強力な武器の追究が、我々吹屋の役目ですぜぇ」
鍛冶屋は、この時代だと吹屋とも言ったようだ。くわしくは知らんがな......。
「まず、景頼にやってもらいたいことがある」
「何でしょうか?」
「俺があげたあの刀を、もう一度振り回してくれないか?」
「それは良いのですが、何を壊せばいいですか?」
「景頼は俺と戦うんだ。その戦いで、景頼の武器の改良点を権次や兼三に見つけてもらいたい。もちろん、景頼は手を抜くな。体がなまった俺の運動にもなるからな」
「しかし、若様はまだ完治しておりません!」
「構わない。骨が折れるくらいなら、まだ死なないから」
それから数十分を費やし、景頼を説得した。景頼がうなずいた時、俺はすでに疲れていた。
「んじゃ、皆外に出ろ」
景頼のあの武器にまともに戦える武器は、切れ味の良い刀より頑丈な刀だ。改良点を見つけるためには防御壁は使えない。あの相手に見合った武器を選ぶのがコツだ。
頑丈な刀は分厚い刀。切れ味が良い刀は薄い刀。刀身、つまり刀の中央を除く厚みを肉置と言う。肉置が厚ければ頑丈、肉置が薄ければ切れ味が良いわけだ。
肉置を薄くして切れ味を良くさせている刀もあるが、景頼のあの武器には歯が立たない。頑丈な刀が必要だ。
こういう場合に備えて、極限まで肉置を厚く作らせた刀がある。
景頼の刀は切れ味こそないが相手を潰すのには有効。対して俺の刀は、頑丈さは景頼の刀には及ばないが、切れ味なら負けない。しかも、鉄の不純物を残し、あえて炭素も混ぜた。かなり硬い刀となった。重さでも負けぬようにと、神力によって圧縮した鉄を内部に流し込んだ。
この刀なら負ける気はしない。刀の名前は燭台切! 史実での政宗の愛刀は燭台切光忠であり、『燭台切』の名の由来にした。
この燭台切の剣先が鉄塊に触れただけで、燭台切の重さにより鉄塊が真っ二つになるほどの力だ。
「行くぞ、景頼!」
「はいっ!」
景頼が刀を振り回した。俺はすき間をぬって懐に入ると、燭台切の剣先を燭台切の刀に当てる。景頼はそれに反応し、距離を取った。
燭台切の真骨頂は、刀自体の重さで斬ることにある。力を加えずとも切れる。これが景頼の刀との違いだ。重さばかりが良いわけではない。切れ味と重さが良い塩梅になってこその、燭台切だ。
燭台切の重さによる一撃は、空中から振り下ろすのが良い。俺は空高くジャンプをし、思い切り振り下ろす。景頼は刀を両手で持ち、俺の一撃を受け止める。
「やるな、景頼」
「若様こそ」
ここまでは燭台切だけの重さによる攻撃。ここからは俺の体重も燭台切の剣先に集中させる。景頼の刀自体を壊してしまえば、こちらの勝ちになるわけだ。
「くっ!」
「その程度か、景頼?」
間一髪で景頼は俺の軌道を反らさせた。俺は顔面から地面に落ちた。
「痛っ! イタタタタ」
鼻血が出たかと思ったが、それほどじゃなかった。俺は安心して、燭台切を握る。次は俺の体重を加えて横一文字に切ろう。
「俺の勝ちだ、景頼!」
俺は格好良くかがみ、横に切った。景頼は刀で防ごうとするが、俺の刀に押されて体勢を崩して床に倒れた。景頼の刀が重くなければ、このように体勢を崩すことはなかっただろう。最大の弱点は、重さだな。
「さすが若様! 負けました」
「なぁに、弱点を利用して勝ったまでだよ」
俺は燭台切を鞘に収めた。それから権次と兼三の元へ行き、景頼の刀の改良点を尋ねた。
「若様」兼三は疑問を呈した。「景頼殿の刀を改良するより、若様の刀を改良した方が早くないですか?」
「......おぉ、言われてみればそうだな!」
ただ、この燭台切は量産したくない。ヘッポコ主人公が持つ唯一のチート級能力として、大切にしておきたいのだ。
「この刀は量産したくない。当初の目的通り、景頼の刀を改良しよう」
権次は挙手をした。「景頼殿のあの刀の最大の弱点は、若様の言うとおり重さにあります。重さがあの刀の優れた点であると同時に、弱点にもなり得る。この改良を最初にした方が良いでしょう」
「どうやるんだ?」
「今のところ、そういう案はありません。ですが、必ず改良方法を見つけ出します」
「頼むぞ」
権次と兼三は景頼の刀の改良点を列挙していった。俺が完璧だとして作り上げた刀だが、ここまで改良点があるとへこむ。
ショックを隠しつつ、四人で改良点を見つけていった。その点を改善して、権次の手によって設計図が書かれていく。俺はその作業を感心しながら見ていた。
まずは権次と兼三を呼び出す。そして、俺が特注した刀を戦場で使っていた景頼も一緒に部屋に招き入れた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。新たな武器を作りたいんだ。しかも、より強力なもので」
すると権次が、ニヤリと笑った。「若様、良い提案ですね。そういうことなら全面的に協力しましょう」
「良いのか?」
「更なる強力な武器の追究が、我々吹屋の役目ですぜぇ」
鍛冶屋は、この時代だと吹屋とも言ったようだ。くわしくは知らんがな......。
「まず、景頼にやってもらいたいことがある」
「何でしょうか?」
「俺があげたあの刀を、もう一度振り回してくれないか?」
「それは良いのですが、何を壊せばいいですか?」
「景頼は俺と戦うんだ。その戦いで、景頼の武器の改良点を権次や兼三に見つけてもらいたい。もちろん、景頼は手を抜くな。体がなまった俺の運動にもなるからな」
「しかし、若様はまだ完治しておりません!」
「構わない。骨が折れるくらいなら、まだ死なないから」
それから数十分を費やし、景頼を説得した。景頼がうなずいた時、俺はすでに疲れていた。
「んじゃ、皆外に出ろ」
景頼のあの武器にまともに戦える武器は、切れ味の良い刀より頑丈な刀だ。改良点を見つけるためには防御壁は使えない。あの相手に見合った武器を選ぶのがコツだ。
頑丈な刀は分厚い刀。切れ味が良い刀は薄い刀。刀身、つまり刀の中央を除く厚みを肉置と言う。肉置が厚ければ頑丈、肉置が薄ければ切れ味が良いわけだ。
肉置を薄くして切れ味を良くさせている刀もあるが、景頼のあの武器には歯が立たない。頑丈な刀が必要だ。
こういう場合に備えて、極限まで肉置を厚く作らせた刀がある。
景頼の刀は切れ味こそないが相手を潰すのには有効。対して俺の刀は、頑丈さは景頼の刀には及ばないが、切れ味なら負けない。しかも、鉄の不純物を残し、あえて炭素も混ぜた。かなり硬い刀となった。重さでも負けぬようにと、神力によって圧縮した鉄を内部に流し込んだ。
この刀なら負ける気はしない。刀の名前は燭台切! 史実での政宗の愛刀は燭台切光忠であり、『燭台切』の名の由来にした。
この燭台切の剣先が鉄塊に触れただけで、燭台切の重さにより鉄塊が真っ二つになるほどの力だ。
「行くぞ、景頼!」
「はいっ!」
景頼が刀を振り回した。俺はすき間をぬって懐に入ると、燭台切の剣先を燭台切の刀に当てる。景頼はそれに反応し、距離を取った。
燭台切の真骨頂は、刀自体の重さで斬ることにある。力を加えずとも切れる。これが景頼の刀との違いだ。重さばかりが良いわけではない。切れ味と重さが良い塩梅になってこその、燭台切だ。
燭台切の重さによる一撃は、空中から振り下ろすのが良い。俺は空高くジャンプをし、思い切り振り下ろす。景頼は刀を両手で持ち、俺の一撃を受け止める。
「やるな、景頼」
「若様こそ」
ここまでは燭台切だけの重さによる攻撃。ここからは俺の体重も燭台切の剣先に集中させる。景頼の刀自体を壊してしまえば、こちらの勝ちになるわけだ。
「くっ!」
「その程度か、景頼?」
間一髪で景頼は俺の軌道を反らさせた。俺は顔面から地面に落ちた。
「痛っ! イタタタタ」
鼻血が出たかと思ったが、それほどじゃなかった。俺は安心して、燭台切を握る。次は俺の体重を加えて横一文字に切ろう。
「俺の勝ちだ、景頼!」
俺は格好良くかがみ、横に切った。景頼は刀で防ごうとするが、俺の刀に押されて体勢を崩して床に倒れた。景頼の刀が重くなければ、このように体勢を崩すことはなかっただろう。最大の弱点は、重さだな。
「さすが若様! 負けました」
「なぁに、弱点を利用して勝ったまでだよ」
俺は燭台切を鞘に収めた。それから権次と兼三の元へ行き、景頼の刀の改良点を尋ねた。
「若様」兼三は疑問を呈した。「景頼殿の刀を改良するより、若様の刀を改良した方が早くないですか?」
「......おぉ、言われてみればそうだな!」
ただ、この燭台切は量産したくない。ヘッポコ主人公が持つ唯一のチート級能力として、大切にしておきたいのだ。
「この刀は量産したくない。当初の目的通り、景頼の刀を改良しよう」
権次は挙手をした。「景頼殿のあの刀の最大の弱点は、若様の言うとおり重さにあります。重さがあの刀の優れた点であると同時に、弱点にもなり得る。この改良を最初にした方が良いでしょう」
「どうやるんだ?」
「今のところ、そういう案はありません。ですが、必ず改良方法を見つけ出します」
「頼むぞ」
権次と兼三は景頼の刀の改良点を列挙していった。俺が完璧だとして作り上げた刀だが、ここまで改良点があるとへこむ。
ショックを隠しつつ、四人で改良点を見つけていった。その点を改善して、権次の手によって設計図が書かれていく。俺はその作業を感心しながら見ていた。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる