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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参壱
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若様に蹴り飛ばされて起こされたクローク殿は、ぶすっとした顔で私と合流をしました。
「何でこんな騒がしいんだよ?」
「こちら側の軍が負け掛かっていまして、若様直々に戦に出向くからです」
「何だ、それなら俺を連れて行けば良いのに」
「そういうわけにはいきませんよ。若様は人に頼るようなお方ではありませんから」
「ま、そうだな」
私はクローク殿と一緒に米沢城の警備をしました。といっても、侵入者はいませんでした。
何事もなく安心していると、クローク殿は窓へ顔を突っ込んで『血だらけの奴が運ばれているぞ』とか言っています。
「本当ですか!?」
「見てみろよ」
外に目を向けると、大敗した軍のような出で立ちの者達が米沢城に帰ってきている時でした。
「クローク殿はここで待っていてください」
私は手伝いをするため、米沢城を飛び出しました。すると若様が気を失っていました。私は急いで若様の体を支えました。
「景頼殿」私が若様の体を支えるまで、若様の体を支えていてくれた人は流れる汗を拭いました。「若様に外傷はなく、精神的ストレスが要因で倒れて気絶したようです。なので、一時的に布団へと入れておいてください」
「わかりました」
私は若様を丁寧に本丸御殿へ運び、布団を敷いて若様を寝かせました。
俺は布団で横になっていた。状況を整理しようと頭を働かせるが、なかなか整理出来ない。
ひとまず布団から脱すると、余力を使って廊下を這った。その奇行に気付いた景頼は、急いで駆け寄ってきた。
「若様、ご無事でしたか!?」
「何とか無事なようだよ。それより、成実、小十郎、仁和は大丈夫なのか?」
「生きてはいます。ただ、まだ安静にしないといけないようです」
「では、三人が回復してから会議を開く。それで──」
意識がまた途切れた。それからは断続的に意識が戻ったり途切れたりした。そのから、布団にまた運ばれたことが感覚でわかった。
それにしても、なぜ負けそうになっていたのか。この原因を探るべく、寝ながら頭をフル回転させた。
だが、これが全然わからない。ついに体が回復するまでに答えは得られなかった。
「やっぱり会議を開いて話し合いになるか」
俺は廊下を歩いて、景頼の元まで向かった。景頼は歩く俺の姿を見て、飛び上がった。
「まだ安静にしていないと駄目ですよ!」
「良いのだ。三人は起きたか?」
「まあ、一応......。ただ、まだ思考回路が正常に動くような状態ではないです」
「なら、景頼。着いてこい」
「わ、わかりました」
景頼を部屋に入れると、足を崩して床に座った。俺は顔を上げて口を開いた。
「推理を始めよう」
「はい!」
「まずは状況の整理をしてみよう。敵方の人数は、報告だと十万人だった。だから俺は十五万人の軍隊を編成させて、成実と神辺に指揮権を一任させた。仁和と、仁和率いる未来人衆にも同行させた。十万人VS十五万人に加えて、成実、神辺、仁和の三人もいた。それはなぜか。原因があるとしたら、編成された軍隊にあるはずだ。景頼は編成された軍隊の配置図を持ってるか?」
「私は持っていませんが、記憶しています」
「なら、紙と筆、墨を持ってくるからそこに書いてくれ」
「はい」
俺は紙、筆、墨を景頼に差し出した。すると景頼は配置図を紙に書いてくれた。
その配置図によると、未来人衆は前方に配置されていたようだ。遠距離射手部隊は後方配置の方が向いているが、これくらいであの三人が引っ張る軍隊が劣勢になるはずがない。
他に原因になりそうなのは......。
「あっ!」景頼は自身が書いた配置図を見て、目を大きく開いた。「前方に戦に長けた隊が密集していますね!」
「言われてみればそうだな」
「それが原因ということはないですかね?」
「考えられなくはない可能性だが、他にも原因があるかもしれない。考えてみよう」
それから二人で、配置図のにらめっこをすること数時間。俺は眠くなった。
「若様、眠くなりましたか?」
「まあ、かなり頭を使っちまったからな」
その場の空気が、睡眠一択となりかけた時だった。小十郎が俺達の元へ駆け込んできた。
「名坂!」
「ムニャムニャ。ん~、神辺かぁ」
「ムニャムニャなんて擬音、現実で聞いたのは初めてだよ。そんなに眠いのか?」
「すまんな。それより体の方は?」
「無事だ。起きたら暗い部屋にいて、部屋を出て名坂を探していたら本丸御殿に着いた」
「座ってくれ」
「ありがとう」
小十郎は出陣して敵と戦っていた一人だ。良い情報を聞き出せるかもしれない。
「今、なぜ五万人の兵力差があるのに劣勢になったのか話し合っていたんだ。その理由を、神辺はわかるか?」
「劣勢だった理由、か? あの時は命がけだったから、戦場の記憶がないんだが」
「そうだよな。俺は本当に悪いことをした」
小十郎は戦に専念していたから、劣勢になった理由まではわからないし、戦場の記憶もないはずだ。
次にこのような失敗がないようにするためには、原因を突き止めるしかない。当主になってすぐでこんな難問を投げ掛けられるとは。しかも、目の上のたんこぶである蘆名氏や定綱と戦っている最中だというのに......。
「何でこんな騒がしいんだよ?」
「こちら側の軍が負け掛かっていまして、若様直々に戦に出向くからです」
「何だ、それなら俺を連れて行けば良いのに」
「そういうわけにはいきませんよ。若様は人に頼るようなお方ではありませんから」
「ま、そうだな」
私はクローク殿と一緒に米沢城の警備をしました。といっても、侵入者はいませんでした。
何事もなく安心していると、クローク殿は窓へ顔を突っ込んで『血だらけの奴が運ばれているぞ』とか言っています。
「本当ですか!?」
「見てみろよ」
外に目を向けると、大敗した軍のような出で立ちの者達が米沢城に帰ってきている時でした。
「クローク殿はここで待っていてください」
私は手伝いをするため、米沢城を飛び出しました。すると若様が気を失っていました。私は急いで若様の体を支えました。
「景頼殿」私が若様の体を支えるまで、若様の体を支えていてくれた人は流れる汗を拭いました。「若様に外傷はなく、精神的ストレスが要因で倒れて気絶したようです。なので、一時的に布団へと入れておいてください」
「わかりました」
私は若様を丁寧に本丸御殿へ運び、布団を敷いて若様を寝かせました。
俺は布団で横になっていた。状況を整理しようと頭を働かせるが、なかなか整理出来ない。
ひとまず布団から脱すると、余力を使って廊下を這った。その奇行に気付いた景頼は、急いで駆け寄ってきた。
「若様、ご無事でしたか!?」
「何とか無事なようだよ。それより、成実、小十郎、仁和は大丈夫なのか?」
「生きてはいます。ただ、まだ安静にしないといけないようです」
「では、三人が回復してから会議を開く。それで──」
意識がまた途切れた。それからは断続的に意識が戻ったり途切れたりした。そのから、布団にまた運ばれたことが感覚でわかった。
それにしても、なぜ負けそうになっていたのか。この原因を探るべく、寝ながら頭をフル回転させた。
だが、これが全然わからない。ついに体が回復するまでに答えは得られなかった。
「やっぱり会議を開いて話し合いになるか」
俺は廊下を歩いて、景頼の元まで向かった。景頼は歩く俺の姿を見て、飛び上がった。
「まだ安静にしていないと駄目ですよ!」
「良いのだ。三人は起きたか?」
「まあ、一応......。ただ、まだ思考回路が正常に動くような状態ではないです」
「なら、景頼。着いてこい」
「わ、わかりました」
景頼を部屋に入れると、足を崩して床に座った。俺は顔を上げて口を開いた。
「推理を始めよう」
「はい!」
「まずは状況の整理をしてみよう。敵方の人数は、報告だと十万人だった。だから俺は十五万人の軍隊を編成させて、成実と神辺に指揮権を一任させた。仁和と、仁和率いる未来人衆にも同行させた。十万人VS十五万人に加えて、成実、神辺、仁和の三人もいた。それはなぜか。原因があるとしたら、編成された軍隊にあるはずだ。景頼は編成された軍隊の配置図を持ってるか?」
「私は持っていませんが、記憶しています」
「なら、紙と筆、墨を持ってくるからそこに書いてくれ」
「はい」
俺は紙、筆、墨を景頼に差し出した。すると景頼は配置図を紙に書いてくれた。
その配置図によると、未来人衆は前方に配置されていたようだ。遠距離射手部隊は後方配置の方が向いているが、これくらいであの三人が引っ張る軍隊が劣勢になるはずがない。
他に原因になりそうなのは......。
「あっ!」景頼は自身が書いた配置図を見て、目を大きく開いた。「前方に戦に長けた隊が密集していますね!」
「言われてみればそうだな」
「それが原因ということはないですかね?」
「考えられなくはない可能性だが、他にも原因があるかもしれない。考えてみよう」
それから二人で、配置図のにらめっこをすること数時間。俺は眠くなった。
「若様、眠くなりましたか?」
「まあ、かなり頭を使っちまったからな」
その場の空気が、睡眠一択となりかけた時だった。小十郎が俺達の元へ駆け込んできた。
「名坂!」
「ムニャムニャ。ん~、神辺かぁ」
「ムニャムニャなんて擬音、現実で聞いたのは初めてだよ。そんなに眠いのか?」
「すまんな。それより体の方は?」
「無事だ。起きたら暗い部屋にいて、部屋を出て名坂を探していたら本丸御殿に着いた」
「座ってくれ」
「ありがとう」
小十郎は出陣して敵と戦っていた一人だ。良い情報を聞き出せるかもしれない。
「今、なぜ五万人の兵力差があるのに劣勢になったのか話し合っていたんだ。その理由を、神辺はわかるか?」
「劣勢だった理由、か? あの時は命がけだったから、戦場の記憶がないんだが」
「そうだよな。俺は本当に悪いことをした」
小十郎は戦に専念していたから、劣勢になった理由まではわからないし、戦場の記憶もないはずだ。
次にこのような失敗がないようにするためには、原因を突き止めるしかない。当主になってすぐでこんな難問を投げ掛けられるとは。しかも、目の上のたんこぶである蘆名氏や定綱と戦っている最中だというのに......。
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