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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐捌
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防御力の上がった鞘を掴み、鞘の先を烏合の衆に向けた。そして上に振り上げて、勢いよく振り下ろした。すると、鞘は鞘である。真っ二つになったのだ、もちろん俺の鞘が。
「あ、ちょっ! ちょ、待てよ! お、おぉ!? どうなってんだ、こりゃ!」
二つに分かれた鞘を目の前に、冷や汗を掻いた。攻撃方法がなくなっちまった。
一応、折れた刀を握ってみたが、何も起こらない。俺は折れた刀と鞘を放り投げた。
「小刀とかを持ってくりゃ良かったなぁ。どうしようかなぁ」
いったん落ち着いた俺は、辺りを見回した。防御壁がなかったら、もうすでに俺は死んでいた。安堵のため息をもらしてから、胸を撫で下ろした。
「小十郎ぉー! 拳銃か刀とか寄越せ!」
「若様、刀です!」
小十郎が投げてきた刀を受け止めると、鞘から引き抜いて刀を握った。
「良くやった、小十郎!」
「ええ!」
剣先を敵方に向けて身をかがめ、馬を操りながらなぎ倒していった。ある者は俺のまたがる馬に踏み潰され、ある者は俺の振り回す刀に斬られていく。その程度なら、致命傷にはなるまい。小十郎の意志を尊重したい。
「成実と景頼は本隊と合流しておけ! 俺も直に戻る!」
「「わかりました」」
あとは残党数人を行動不能にするのみ。刀に防御壁を展開してから、振り下ろしてみた。すると、どうしたことか! また折れてしまった......。
「あああぁぁぁぁー! アウチッ!」
また刀を投げ出すと、馬を後退させた。数人くらいは行動不能にさせなくても良いだろう。伊達政宗軍の力を知らしめるにはこれくらいで良いのだ。少しは力の誇示は出来たかな?
「総員、城へ戻ろう! 初戦は我々の大勝利を収めたのだ!」
「おおぉぉぉ!」
家臣達は狂ったように喜びの奇声を張り上げた。俺は来た道を引き返し、米沢城へ向かって馬を走らせた。
「小十郎」俺は小十郎を見つけると、振り返った。「もう一つくらい刀を持ってるか?」
「また折ったのですか!?」
「ああ、その通りだ」
「あいにく、今は持っていません。城に戻ってから、また新たに刀を作らせましょう」
「すまんな」
俺は小十郎に頭を下げた。
米沢城に戻った俺は、家臣達に一日程度の休憩を与えた。そして、仁和を呼んだ。
「私に何か用ですか?」
「用があるから呼んだんだ。仁和の時代にあるGPSを作れるかな?」
「GPSはこの時代には無理ですよ。宇宙へ機械を飛ばさなくてはなりません」
「ふーん、なるほど」
二十一世紀を生きていたが、GPSって宇宙に機械を飛ばしていたのか。それなら、確かに戦国時代で作るのは無理だな。
「そもそも、政宗殿はGPSを使って何をしようと考えているのですか?」
「敵方の一人にGPSを取り付ければ、うまくいったら敵方の本隊の居場所がわかる! 完璧じゃないか!」
「そのような使い方をするのですね」
「そうだ。もし仁和ですらGPSを作れないのなら、GPSに変わる画期的な道具をこしらえてくれ」
「画期的な道具......。 アナログな方法なら至急、その画期的な道具を作るために動けますがどうしますか?」
「そんなことが出来るのか?」
「はい。まずはオナモミなどを数百個ほど用意してください。話しはそれからです」
オナモミ、前世でガキが遊びに使うひっつき虫のことか。懐かしいな。
「わかった。家臣に、大大急ぎでオナモミを探し出させる」
「頼みますよ」
「ええ」
以前植物ついて勉強したから、ひっつき虫についてある程度らわかる。
「小十郎! 小十郎はいるか!?」
その声に反応して、小十郎はやって来た。
「どうしましたか、若様」
「そこにいる仁和からの願いで、オナモミなどのひっつき虫を数百個ほど用意してくれ」
「オナモミ、ですか?」
「ああ。仁和がすぐにでも用意してくれと言っている。だから、出来るだけ急いで集めてくれ」
「承知しました。数人ほどを呼んでオナモミを集めることも可能ですよね?」
「数人程度にならかまわない」
「では、失礼いたします。今夜中に良いご報告をさせていただきます」
「吉報を待っている」
小十郎は廊下を駆けていった。あの様子なら、オナモミ集めにも期待できそうだ。
「ところで」俺は仁和に視線を向けて、首を傾げた。「オナモミをどのように利用するつもりなんだ?」
「オナモミは衣服や馬の毛並み、他の各種動物の毛並みに絡まってくっ付きます。これが重要です。何をしなくてもオナモミは相手の服にくっ付いてくれますし、これは何かに役立ちそうな感じがしませんか?」
「オナモミが何かに役立ちそうな雰囲気を醸し出しているが、何に役立つのかはまったく要領を得ないよ」
「それは後ほど──取り分け、小十郎殿達がオナモミなどを数百個集め終えてからにしましょう──お話しいたします」
「そうだな。今は待つのみだ」
俺はあぐらを掻いた。そして、オナモミの利用方法について考えを巡らせた。
自分にはオナモミの利用方法は思いつかないと諦めたのは、考え出してから十分も経たない時だったのである。俺の脳内のデータ容量は、もう増えそうにない。
「あ、ちょっ! ちょ、待てよ! お、おぉ!? どうなってんだ、こりゃ!」
二つに分かれた鞘を目の前に、冷や汗を掻いた。攻撃方法がなくなっちまった。
一応、折れた刀を握ってみたが、何も起こらない。俺は折れた刀と鞘を放り投げた。
「小刀とかを持ってくりゃ良かったなぁ。どうしようかなぁ」
いったん落ち着いた俺は、辺りを見回した。防御壁がなかったら、もうすでに俺は死んでいた。安堵のため息をもらしてから、胸を撫で下ろした。
「小十郎ぉー! 拳銃か刀とか寄越せ!」
「若様、刀です!」
小十郎が投げてきた刀を受け止めると、鞘から引き抜いて刀を握った。
「良くやった、小十郎!」
「ええ!」
剣先を敵方に向けて身をかがめ、馬を操りながらなぎ倒していった。ある者は俺のまたがる馬に踏み潰され、ある者は俺の振り回す刀に斬られていく。その程度なら、致命傷にはなるまい。小十郎の意志を尊重したい。
「成実と景頼は本隊と合流しておけ! 俺も直に戻る!」
「「わかりました」」
あとは残党数人を行動不能にするのみ。刀に防御壁を展開してから、振り下ろしてみた。すると、どうしたことか! また折れてしまった......。
「あああぁぁぁぁー! アウチッ!」
また刀を投げ出すと、馬を後退させた。数人くらいは行動不能にさせなくても良いだろう。伊達政宗軍の力を知らしめるにはこれくらいで良いのだ。少しは力の誇示は出来たかな?
「総員、城へ戻ろう! 初戦は我々の大勝利を収めたのだ!」
「おおぉぉぉ!」
家臣達は狂ったように喜びの奇声を張り上げた。俺は来た道を引き返し、米沢城へ向かって馬を走らせた。
「小十郎」俺は小十郎を見つけると、振り返った。「もう一つくらい刀を持ってるか?」
「また折ったのですか!?」
「ああ、その通りだ」
「あいにく、今は持っていません。城に戻ってから、また新たに刀を作らせましょう」
「すまんな」
俺は小十郎に頭を下げた。
米沢城に戻った俺は、家臣達に一日程度の休憩を与えた。そして、仁和を呼んだ。
「私に何か用ですか?」
「用があるから呼んだんだ。仁和の時代にあるGPSを作れるかな?」
「GPSはこの時代には無理ですよ。宇宙へ機械を飛ばさなくてはなりません」
「ふーん、なるほど」
二十一世紀を生きていたが、GPSって宇宙に機械を飛ばしていたのか。それなら、確かに戦国時代で作るのは無理だな。
「そもそも、政宗殿はGPSを使って何をしようと考えているのですか?」
「敵方の一人にGPSを取り付ければ、うまくいったら敵方の本隊の居場所がわかる! 完璧じゃないか!」
「そのような使い方をするのですね」
「そうだ。もし仁和ですらGPSを作れないのなら、GPSに変わる画期的な道具をこしらえてくれ」
「画期的な道具......。 アナログな方法なら至急、その画期的な道具を作るために動けますがどうしますか?」
「そんなことが出来るのか?」
「はい。まずはオナモミなどを数百個ほど用意してください。話しはそれからです」
オナモミ、前世でガキが遊びに使うひっつき虫のことか。懐かしいな。
「わかった。家臣に、大大急ぎでオナモミを探し出させる」
「頼みますよ」
「ええ」
以前植物ついて勉強したから、ひっつき虫についてある程度らわかる。
「小十郎! 小十郎はいるか!?」
その声に反応して、小十郎はやって来た。
「どうしましたか、若様」
「そこにいる仁和からの願いで、オナモミなどのひっつき虫を数百個ほど用意してくれ」
「オナモミ、ですか?」
「ああ。仁和がすぐにでも用意してくれと言っている。だから、出来るだけ急いで集めてくれ」
「承知しました。数人ほどを呼んでオナモミを集めることも可能ですよね?」
「数人程度にならかまわない」
「では、失礼いたします。今夜中に良いご報告をさせていただきます」
「吉報を待っている」
小十郎は廊下を駆けていった。あの様子なら、オナモミ集めにも期待できそうだ。
「ところで」俺は仁和に視線を向けて、首を傾げた。「オナモミをどのように利用するつもりなんだ?」
「オナモミは衣服や馬の毛並み、他の各種動物の毛並みに絡まってくっ付きます。これが重要です。何をしなくてもオナモミは相手の服にくっ付いてくれますし、これは何かに役立ちそうな感じがしませんか?」
「オナモミが何かに役立ちそうな雰囲気を醸し出しているが、何に役立つのかはまったく要領を得ないよ」
「それは後ほど──取り分け、小十郎殿達がオナモミなどを数百個集め終えてからにしましょう──お話しいたします」
「そうだな。今は待つのみだ」
俺はあぐらを掻いた。そして、オナモミの利用方法について考えを巡らせた。
自分にはオナモミの利用方法は思いつかないと諦めたのは、考え出してから十分も経たない時だったのである。俺の脳内のデータ容量は、もう増えそうにない。
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