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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐漆
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輝宗は腰を押さえていた。こっちの世界では父親である輝宗を殺すことは、俺には出来ない。......心が痛くなる。ちゃんと助けなければいけないな。
俺は虎哉と仁和、小十郎の元へ戻った。皆黙々と食べていた。仁和と小十郎に関しては、もうすぐ戦を始めるってのに呑気な奴だ。
「師匠。少々用事がありますので失礼します」
「ええ、わかりました」
「小十郎、着いてきてくれ」
小十郎は一度だけうなずき、俺のあとを着いてきた。俺はクリスマスパーティーに使っている会場を出て、廊下を進みながら口を開く。
「年明けから戦を開始する」
「らしいな」
「そのことについて、くわしく神辺に説明をする。部屋に入れ」
「わかった。久々の戦だけど、万人をなり振り構わず殺す、と聞いたけど本当か?」
「部屋で説明をしよう」
部屋に入ると、俺は神辺を見ながら扉を閉めた。
神辺は眼を鋭く光らせた。「万人をなり振り構わず殺すって本当なのか?」
「史実ではそういうことになっている」
「それを実際に実行するつもりか?」
「そんな酷いことはしないから安心してくれ。これからくわしく説明する」
「頼むよ」
俺は小十郎に、井原とレイカーと俺の三人で話し合った結果を丁寧に伝えた。それを真面目に聞いていた小十郎は、眉毛をハの字にさせた。
「年明けから戦をすることはわかった。ただ、輝宗をどうやって助けるかがまだ決まってないじゃないか。どのようにして輝宗を助け出すつもりなんだ?」
「三人で話し合ったものの、結論は出なかった......」
「まずいじゃないか。行き当たりばったりで戦を開始するっつのかよ」
「そういうことになる。ただ、レイカーいわく、何とかなるそうだ。もう時間もないし、行き当たりばったりでやってみないか?」
「それしか、もう時間はないな」
「やるしかないんだ」
小十郎はギリギリまで悩んだ。どうすればいいのか、自問自答した。頭を掻きむしって、うなった。それでも俺に従うのが最善と考えたのか、最後には『うん』とだけ口からもらした。
「よし、それで良いんだ。早速だが、もうすぐ年が明ける。今日中に隊を編成しろ。指揮権の一部を小十郎に渡す」
「わかった。今日中に編成すれば良いんだろ?」
「そうだ」
「よし! 行ってくる!」
小十郎は腕をまくり上げて、部屋を飛び出していった。
年が明けた。正月である。
俺は早朝に飛び起きて、事前に小十郎が編成した隊を見回す。
「仁和と小十郎に前方の隊の指揮を一任! 景頼と成実は前方警戒! 忠義と二階堂は仁和の隊から独立して後方を警戒! 仁和の目下の隊は、仁和の指揮に従って四方を警戒! 井原は中央部で隊とともに進行! 総員、前進だ!」
「「はっ!」」
馬にまたがった皆は、俺のあとに続いてきた。もっと加速させ、反伊達政宗派の近隣大名の領地まで向かった。俺は視野を広げ、警戒を怠らない。
それから、出会いざまに蘆名氏に繫がっていると思われる軍隊を攻撃した。そして、そいつらから逃げるように馬を走らせた。
──小浜城。
「ここは定綱の小浜城だ! 攻め入れ!」
俺の掛け声とともに、小浜城の門を破るために突進を始めた。何千人が束となってようやく門を破ると、定綱の配下の奴らが武装して待ち構えていた。
「忠義率いる遠距離射手部隊! 矢を矢を放てぇ!」
俺の後方から何千という矢が前へと繰り出された。その矢の一部は数百人に刺さり、落馬する者もいた。俺は絶好のチャンスと見た。
「仁和! 指揮をして突撃しろ!」
「人使いが荒いですね!」
仁和は馬を進めて、未来人衆を前進させた。速攻部隊は速攻で定綱の軍を斬っていった。さすがは未来人衆だ。仁和によって戦での戦い方が身に染みているじゃないか。俺も負けてはいられないな。
「成実と景頼は俺に着いてこい!」
俺は鞘から刀を抜いた。前に進むと、定綱の配下はニヤニヤと笑い出した。多分、俺が直々に進んできたから、首が取れるとでも思って喜んでいるんだろう。戦国時代は手柄を立てた奴が勝ちって世界だからな。
「テメェら、俺を舐めてんじゃねぇぞ!」
俺には奥の手があるんだ。仁和のお陰で取得して、それからたびたび助けてくれる秘技だ。
「防御壁展開!」
これで俺は死ぬことはない。成実は戦に強く、景頼も負けることはない。これで押し切る。
刀にも、いつも通り防御壁を展開。馬で走り回りながら人を斬っていく。そして敵の鎧を貫こうと刀を当てた時だった。防御壁の防御力が高すぎて、刀の耐久力が届かなかったようだ。刀は真ん中から折れた。
「あっ!? 折れた!? マジかよ!」
余分に刀を持ってきていればと後悔をした。ただ、これでも攻撃出来ないだけで防御壁はあるから死にはしない。
「成実! 刀、持ってるか!」
「すみません、この一本しか持ち合わせていません」
「ああ。──景頼は持ってるか?」
「いえ」
まいった。どうやって攻撃をしようものか。この中でチート級能力を持っているのは俺だけだし、俺が攻撃した方が一番手っ取り早く敵を殲滅出来る。
俺は鞘を掴んで、何とか防御力を高めて攻撃出来るくらいにこしらえた。
俺は虎哉と仁和、小十郎の元へ戻った。皆黙々と食べていた。仁和と小十郎に関しては、もうすぐ戦を始めるってのに呑気な奴だ。
「師匠。少々用事がありますので失礼します」
「ええ、わかりました」
「小十郎、着いてきてくれ」
小十郎は一度だけうなずき、俺のあとを着いてきた。俺はクリスマスパーティーに使っている会場を出て、廊下を進みながら口を開く。
「年明けから戦を開始する」
「らしいな」
「そのことについて、くわしく神辺に説明をする。部屋に入れ」
「わかった。久々の戦だけど、万人をなり振り構わず殺す、と聞いたけど本当か?」
「部屋で説明をしよう」
部屋に入ると、俺は神辺を見ながら扉を閉めた。
神辺は眼を鋭く光らせた。「万人をなり振り構わず殺すって本当なのか?」
「史実ではそういうことになっている」
「それを実際に実行するつもりか?」
「そんな酷いことはしないから安心してくれ。これからくわしく説明する」
「頼むよ」
俺は小十郎に、井原とレイカーと俺の三人で話し合った結果を丁寧に伝えた。それを真面目に聞いていた小十郎は、眉毛をハの字にさせた。
「年明けから戦をすることはわかった。ただ、輝宗をどうやって助けるかがまだ決まってないじゃないか。どのようにして輝宗を助け出すつもりなんだ?」
「三人で話し合ったものの、結論は出なかった......」
「まずいじゃないか。行き当たりばったりで戦を開始するっつのかよ」
「そういうことになる。ただ、レイカーいわく、何とかなるそうだ。もう時間もないし、行き当たりばったりでやってみないか?」
「それしか、もう時間はないな」
「やるしかないんだ」
小十郎はギリギリまで悩んだ。どうすればいいのか、自問自答した。頭を掻きむしって、うなった。それでも俺に従うのが最善と考えたのか、最後には『うん』とだけ口からもらした。
「よし、それで良いんだ。早速だが、もうすぐ年が明ける。今日中に隊を編成しろ。指揮権の一部を小十郎に渡す」
「わかった。今日中に編成すれば良いんだろ?」
「そうだ」
「よし! 行ってくる!」
小十郎は腕をまくり上げて、部屋を飛び出していった。
年が明けた。正月である。
俺は早朝に飛び起きて、事前に小十郎が編成した隊を見回す。
「仁和と小十郎に前方の隊の指揮を一任! 景頼と成実は前方警戒! 忠義と二階堂は仁和の隊から独立して後方を警戒! 仁和の目下の隊は、仁和の指揮に従って四方を警戒! 井原は中央部で隊とともに進行! 総員、前進だ!」
「「はっ!」」
馬にまたがった皆は、俺のあとに続いてきた。もっと加速させ、反伊達政宗派の近隣大名の領地まで向かった。俺は視野を広げ、警戒を怠らない。
それから、出会いざまに蘆名氏に繫がっていると思われる軍隊を攻撃した。そして、そいつらから逃げるように馬を走らせた。
──小浜城。
「ここは定綱の小浜城だ! 攻め入れ!」
俺の掛け声とともに、小浜城の門を破るために突進を始めた。何千人が束となってようやく門を破ると、定綱の配下の奴らが武装して待ち構えていた。
「忠義率いる遠距離射手部隊! 矢を矢を放てぇ!」
俺の後方から何千という矢が前へと繰り出された。その矢の一部は数百人に刺さり、落馬する者もいた。俺は絶好のチャンスと見た。
「仁和! 指揮をして突撃しろ!」
「人使いが荒いですね!」
仁和は馬を進めて、未来人衆を前進させた。速攻部隊は速攻で定綱の軍を斬っていった。さすがは未来人衆だ。仁和によって戦での戦い方が身に染みているじゃないか。俺も負けてはいられないな。
「成実と景頼は俺に着いてこい!」
俺は鞘から刀を抜いた。前に進むと、定綱の配下はニヤニヤと笑い出した。多分、俺が直々に進んできたから、首が取れるとでも思って喜んでいるんだろう。戦国時代は手柄を立てた奴が勝ちって世界だからな。
「テメェら、俺を舐めてんじゃねぇぞ!」
俺には奥の手があるんだ。仁和のお陰で取得して、それからたびたび助けてくれる秘技だ。
「防御壁展開!」
これで俺は死ぬことはない。成実は戦に強く、景頼も負けることはない。これで押し切る。
刀にも、いつも通り防御壁を展開。馬で走り回りながら人を斬っていく。そして敵の鎧を貫こうと刀を当てた時だった。防御壁の防御力が高すぎて、刀の耐久力が届かなかったようだ。刀は真ん中から折れた。
「あっ!? 折れた!? マジかよ!」
余分に刀を持ってきていればと後悔をした。ただ、これでも攻撃出来ないだけで防御壁はあるから死にはしない。
「成実! 刀、持ってるか!」
「すみません、この一本しか持ち合わせていません」
「ああ。──景頼は持ってるか?」
「いえ」
まいった。どうやって攻撃をしようものか。この中でチート級能力を持っているのは俺だけだし、俺が攻撃した方が一番手っ取り早く敵を殲滅出来る。
俺は鞘を掴んで、何とか防御力を高めて攻撃出来るくらいにこしらえた。
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