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第四章『輝宗の死』

伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐伍

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 俺は輝宗を助けるべく、レイカーを信じて作戦会議を開いた。会議には井原、俺、そしてレイカーの三人が出席した。
 レイカーは首を鳴らす。「やあ、名坂君に井原君。重岡君を助け出すために頑張ろうじゃないか!」
 俺はレイカーの右手を掴み、じっくりと観察する。「どうやって実体化したんだ? ちゃんと触れるし、体温もある。外見は神界の時より人間寄りになっているし、声も大差ない」
「これは人間保守派の神だからこそ出来る技なんだ。実体化して、造形ぞうけいを人間に近づける。僕がこの技の案を出して、人間保守派の神一同で技を具現ぐげんして生み出したんだ。人間保守派の神には必要不可欠な技だろう?」
「確かにそうだな。メカニズムをくわしく聞きたいところだ」
「そのメカニズムを教えるのは、君がになってからだよ」
「『人間保守派の神』だって!?」
「君は素晴らしい才能がある。いずれ戦国時代の日本を統治とうちして、列強れっきょうの国にまでこまを進めるはずだ。そうしたら君は神の一柱いっちゅうと化す。そして人間保守派になれば、君は僕達の仲間となる。その時にでもメカニズムを教えるよ」
 俺が日本を統治。のちに列強にまで駒を進める、か。褒めすぎだな。
針小しんしょう棒大ぼうだい極論きょくろんだが、そうなると俺も嬉しい。神になったらよろしくな」
「ハハハ。仲間が増えるのは大歓迎かんげいだ」
 俺はレイカーと握手をして、それから三人で床に腰を下ろす。井原も真剣な顔付きに変化した。
「井原とホームズが今回の作戦の鍵となる。まずはレイカー! どういう作戦にすれば井原とホームズをかせると思う?」
「そうだねぇ......。ホームズの住む世界に重岡君を移住させるのが、ホームズを活かす作戦だと考えている。ただ、それだと井原君を活かすことは出来なくなる。それに、ホームズの世界は危険だとホームズ自身が言っていた」
「その通り。現状は俺もどんな作戦が良いのかまったくわからない。それでも、必ず輝宗を助ける方法があるはずなんだ」
 井原は一度うなずく。「お屋形様を必ず助けましょう!」
「そう言えば」レイカーは実体化した体の着ている服を探り、長方形の機械を取り出した。「この録音機に、アーティネスと僕の会話が録音されている。これを名坂君に聞いてほしい」
「お、おう」
 レイカーが長方形の録音機のボタンを押して、雑音混じりのアーティネスとレイカーの声が聞こえてきた。

『レイカー、どうしたのですか?』
『ああ、アーティネスに用事があるから来たんだ』
『用事があるなら、済ませてください』
『輝宗を殺すように名坂君を動かしているんじゃないかい?』
『......それがどうかしましたか?』
『僕は人間保守派だ。君達の行為を見逃すなんて無理だ。いずれ革命を引き起こす。君達は虚勢を張るのはもう辞めんだ』
見栄みえを張る人間保守派の神には言われたくないですね。太陽神とは、人間を洗脳して操ってこそですよ』
『人間を操り人形にしたのは、始祖しその考えにそむいていることになる』
『始祖なんて何百世紀の太陽神に過ぎません。その間に考えが変化するのは当然のことです』
『始祖の時代は人間を尊重する神界だった。古き良き神界を、僕達保守派は守る!』
『構わないですよ。革命を引き起こすなんて、夢のまた夢。頑張ってください』
『そうやって高みの見物をしているといいさ』
『高みの見物? 随分ずいぶんと人間の使う言葉を使うのですね。おや、失礼しました。レイカーは人間保守派という変な意識を持つ神の一柱でした。すみませんね』
『構わないよ。いずれ人間保守派の神がこの世界を蹂躙じゅうりんするんだ』
『あなた方人間保守派の神が使う言葉を使って言わせてもらうと、「人間保守派がこの世界を蹂躙する」というのは曲論きょくろんです』
『一応は人間の使う言葉を知っているんだね。もしかして、人間や人間保守派の神を恐れているのかな?』
『まさか、そんなことがあるのでも思いますか?』
『疑問を疑問で返さないでもらいたい』
『そうですか。私はこれから死んだ人間をさばくので、お引き取りください』
『善人までも裁く気かい?』
『そうとも言えます』

 俺は二人の会話を聞き終えて、震え上がった。まさかアーティネスがこんなに怖い奴だとは思ってもみなかったし、神様というのは総じてこんな奴らしかいないのかと絶望した。
 俺が体をきざみに震わせていると、レイカーは録音機をポケットに入れた。「アーティネスは神の中でもかなり危険な人物だ。だから、これ以後はアーティネスに騙されないでくれ。柳沢氏丸の遺体をヘルリャフカに渡して苗床にさせたのも、アーティネス本人だ」
「はぁ!?」俺は怒りをあらわにした。「何でそんなことをアーティネスはしたんだよ!」
「君の精神に異常を来させて、アーティネスが心の支えとなるような作戦だったようだ。あれは僕も予想外の行動だった。僕は、柳沢氏丸の遺体を玩具がんぐにするものかとかんがえていたからね」
「そうなのか」
 すまないことをしたな、牛丸。許してくれ。もし俺が神にでもなったら、必ず助け出してやるから待っていろよ!
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