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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐参
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「仁和」俺は仁和に顔を向ける。「ちょっと来い」
「わかりました」
仁和を物陰に先に行かせた。
「お前らはまだ拾っていてくれ。俺は用事がある」
俺がやるべき仕事を家臣に丸投げし、仁和の元へ向かった。仁和はニコニコしていた。
「何を隠しているんだ、仁和?」
「バレましたか」
「やっぱり、お前が俺の部屋の窓を開けたんだな?」
「はい」
「目的は、家臣どもの結束力を生むためか?」
「その通りでございます。さすがは政宗殿。私の作戦はご覧の通り、うまく成功しました」
「まあ......それはいいんじゃないか。ただ、俺の部屋に勝手に入るな」
「何でですか?」
おっと、これの返答は困るな。何と答えれば良いのだろうか。本当のことを言うのか? んー、いやでもなぁ。
「俺が部屋に入るなと言ったら入るな。わかったか?」
「仕方ありませんね。了解しました」
「ああ、それで良い」
さて。これから権次と兼三のところへ行こう。網戸を作らせないといけない。
「今日も料理をしますので、すぐに帰ってきてくださいね」
「わかっている。家臣をちゃんと統率してくれよ」
仁和は首を縦に振ったから、俺は権次がよく行く部屋に足を運んだ。すると権次が武器の設計図を書いていた。
「真面目だな、権次!」
「これは若様! どのような用でして?」
「作ってもらいたい道具がある。まだ見たことがないような道具かもしれんが、作ってくれるか?」
「見たことがないような道具ですか?」
網戸は1600年以降に作られたものだと記憶している。つまり、権次は網戸を見たことないはずだ。
「絵を描くから、それを元に設計図を書いてくれ」
「わかりやした」
「紙はあるか? 筆と墨も」
「これです」
俺は権次から紙と筆、墨を受け取った。数十年前に日常的に使用していた網戸の姿を思い出し、フレームを描いて網も描いて、特殊な機能を取り付けたりもした。
「これは網戸というものだ」
「網戸ですか。ほう、窓に取り付ける開閉式のものですね」
「どうだろうか、この網戸。作れるか?」
「頑張れば何とか......。ただ、ここまで精密な金属製品を今の技術で作るのは難しいでしょう。鍛造と溶接を併用して、他の技術も試してみましょうか。これくらい精密なものになると、手先が器用な兼三に作るのを一任することをおすすめします」
「設計図は権次が得意中の得意だろ?」
「ええ、まあ」
「設計図は権次、作るのは兼三に任せる。試作品が完成したら、まずは俺に見せてくれ。んで、その網戸なるものは開閉式だ。俺の部屋の窓の形に合うような網戸を作れよ」
「承知しました」
俺は権次と兼三に網戸の製作を任せた。そして仁和が待っている部屋に帰った。
仁和とのクリスマスパーティーの料理を終えると、輝宗を助ける術を考えた。輝宗を助けるにはホームズという存在が重要になってくる。さて、さっぱりだ。
「やあ」レイカーは優しい声で話し掛けてきた。「また来たね、名坂君」
「呼んだのはそっちの方だ」
またレイカーに呼び出されたようだ。俺は何にでも染まりそうな真っ白い床に腰を下ろす。
「ホームズは役に立っているかな?」
「今のところは役に立っていない。ただ、ホームズが鍵を握っているというのは確かなことだ」
「何で確かだとわかるんだい?」
「レイカーが嘘を言っているようには見えない。だから逆に困っているんだ。ホームズの言っていることを丁寧に聞いて、そこから状況を整理している最中だ」
「信じてもらえたなら良かった」
「それより、俺はこれからどうすれば良いんだ!?」
「君が言っていたことじゃないか。年が明けてから戦を開始するんだ」
「それはわかっているんだが」
ホームズの話していることは、本当に輝宗を助ける方法へ直結するのだろうか。その確証まではない。
「僕のような人間寄りの神様達は、君が希望なんだ。人間寄りの神も酷い行いをするが、それでもマシな方なんだ。神界から、人間寄りではない神を根絶やしにしないといけない。君には、それが出来る!」
「はぁ!?」
「君はいずれ神になれる! アーティネスに洗脳されてはいけない」
「な、何を言ってやがんだ。アーティネスは良い奴だぞ!」
「それが洗脳というんだよ。太陽神は代々、洗脳技術が高い。神は洗脳をするのが普通だけど、太陽神の器であるアーティネスは洗脳技術は異様に高い。彼女は危険なんだ」
「レイカー! いい加減にしろ!」
レイカーは急におかしなことを言いやがる。俺はレイカーの手を振りほどいて、後ずさりをする。
「君はアーティネスに洗脳されているんだ......」
「戻せ。伊達政宗の体に、この意識を戻せ!」
「やめるんだ! アーティネスを信じるな! アーティネスは輝宗を殺すように名坂君を操っている。君はアーティネスの思いのままに、輝宗を殺して良いと考えるのかい?」
「アーティネスがそんな奴のわけないだろ!」
俺は眉をひそめて、レイカーを睨みつけた。レイカーは少しひるんだが、前のめりになって俺の説得を始めた。
アーティネスがそんな悪い奴の可能性はない。俺のために様々なことを助けてくれている。
「俺はアーティネスを信じるぜ」
「わかりました」
仁和を物陰に先に行かせた。
「お前らはまだ拾っていてくれ。俺は用事がある」
俺がやるべき仕事を家臣に丸投げし、仁和の元へ向かった。仁和はニコニコしていた。
「何を隠しているんだ、仁和?」
「バレましたか」
「やっぱり、お前が俺の部屋の窓を開けたんだな?」
「はい」
「目的は、家臣どもの結束力を生むためか?」
「その通りでございます。さすがは政宗殿。私の作戦はご覧の通り、うまく成功しました」
「まあ......それはいいんじゃないか。ただ、俺の部屋に勝手に入るな」
「何でですか?」
おっと、これの返答は困るな。何と答えれば良いのだろうか。本当のことを言うのか? んー、いやでもなぁ。
「俺が部屋に入るなと言ったら入るな。わかったか?」
「仕方ありませんね。了解しました」
「ああ、それで良い」
さて。これから権次と兼三のところへ行こう。網戸を作らせないといけない。
「今日も料理をしますので、すぐに帰ってきてくださいね」
「わかっている。家臣をちゃんと統率してくれよ」
仁和は首を縦に振ったから、俺は権次がよく行く部屋に足を運んだ。すると権次が武器の設計図を書いていた。
「真面目だな、権次!」
「これは若様! どのような用でして?」
「作ってもらいたい道具がある。まだ見たことがないような道具かもしれんが、作ってくれるか?」
「見たことがないような道具ですか?」
網戸は1600年以降に作られたものだと記憶している。つまり、権次は網戸を見たことないはずだ。
「絵を描くから、それを元に設計図を書いてくれ」
「わかりやした」
「紙はあるか? 筆と墨も」
「これです」
俺は権次から紙と筆、墨を受け取った。数十年前に日常的に使用していた網戸の姿を思い出し、フレームを描いて網も描いて、特殊な機能を取り付けたりもした。
「これは網戸というものだ」
「網戸ですか。ほう、窓に取り付ける開閉式のものですね」
「どうだろうか、この網戸。作れるか?」
「頑張れば何とか......。ただ、ここまで精密な金属製品を今の技術で作るのは難しいでしょう。鍛造と溶接を併用して、他の技術も試してみましょうか。これくらい精密なものになると、手先が器用な兼三に作るのを一任することをおすすめします」
「設計図は権次が得意中の得意だろ?」
「ええ、まあ」
「設計図は権次、作るのは兼三に任せる。試作品が完成したら、まずは俺に見せてくれ。んで、その網戸なるものは開閉式だ。俺の部屋の窓の形に合うような網戸を作れよ」
「承知しました」
俺は権次と兼三に網戸の製作を任せた。そして仁和が待っている部屋に帰った。
仁和とのクリスマスパーティーの料理を終えると、輝宗を助ける術を考えた。輝宗を助けるにはホームズという存在が重要になってくる。さて、さっぱりだ。
「やあ」レイカーは優しい声で話し掛けてきた。「また来たね、名坂君」
「呼んだのはそっちの方だ」
またレイカーに呼び出されたようだ。俺は何にでも染まりそうな真っ白い床に腰を下ろす。
「ホームズは役に立っているかな?」
「今のところは役に立っていない。ただ、ホームズが鍵を握っているというのは確かなことだ」
「何で確かだとわかるんだい?」
「レイカーが嘘を言っているようには見えない。だから逆に困っているんだ。ホームズの言っていることを丁寧に聞いて、そこから状況を整理している最中だ」
「信じてもらえたなら良かった」
「それより、俺はこれからどうすれば良いんだ!?」
「君が言っていたことじゃないか。年が明けてから戦を開始するんだ」
「それはわかっているんだが」
ホームズの話していることは、本当に輝宗を助ける方法へ直結するのだろうか。その確証まではない。
「僕のような人間寄りの神様達は、君が希望なんだ。人間寄りの神も酷い行いをするが、それでもマシな方なんだ。神界から、人間寄りではない神を根絶やしにしないといけない。君には、それが出来る!」
「はぁ!?」
「君はいずれ神になれる! アーティネスに洗脳されてはいけない」
「な、何を言ってやがんだ。アーティネスは良い奴だぞ!」
「それが洗脳というんだよ。太陽神は代々、洗脳技術が高い。神は洗脳をするのが普通だけど、太陽神の器であるアーティネスは洗脳技術は異様に高い。彼女は危険なんだ」
「レイカー! いい加減にしろ!」
レイカーは急におかしなことを言いやがる。俺はレイカーの手を振りほどいて、後ずさりをする。
「君はアーティネスに洗脳されているんだ......」
「戻せ。伊達政宗の体に、この意識を戻せ!」
「やめるんだ! アーティネスを信じるな! アーティネスは輝宗を殺すように名坂君を操っている。君はアーティネスの思いのままに、輝宗を殺して良いと考えるのかい?」
「アーティネスがそんな奴のわけないだろ!」
俺は眉をひそめて、レイカーを睨みつけた。レイカーは少しひるんだが、前のめりになって俺の説得を始めた。
アーティネスがそんな悪い奴の可能性はない。俺のために様々なことを助けてくれている。
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