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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その拾漆
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肩を落とした横田氏を目の端に捉え、ルパンは本棚にあるルビーを回収した。「なんて美しいルビーなんだ」
「ルパン。さっさと隠し事を聞き出さないのかい?」
「ああ、ではそうしよう」ルビーを大切に鞄に入れて、ルパンは横田氏の前に立った。「何を隠しているんだ?」
「言うもんか」
「銀行の宝石もいただくが、君の隠している秘密もいただく。だが、命はいらんよ」
「話すもんか!」
「そうかい」
ホームズは横田氏をじっと観察し、ルビーの隠されていた本棚を探した。ルパンが何をしているんだと言うと、ホームズは本棚から書類を引っ張り出した。
「やはり、僕の思った通りだ。彼は何度か本棚を気にしていたし、ルビーが見つかった本棚からは普通なら泥棒は興味が失せる。それを利用して、ルビーをおとりにしてこの書類を隠していたんだよ」
「見事な推理だ。その書類の中身は?」
「ふむ。これはとある美術館の警備員の配置図だね。宝石の細かい展示場所まで記してある」
「君。これをなぜ持っているんだ」
ルパンに質問された横田氏は、素直に口を開いた。「俺も泥棒まがいのことをしているんだよ」
「そうか。ではこの美術館を怪人二十面相を倒す舞台にしよう。あ、それと、安心したまえ。君が泥棒だという事実も盗ませてもらうよ」
ルパンはホームズとともに横田氏の家を飛び出していった。そして銀行に行ったが、外国人二人組ということで怪しまれてしまい、結局逃げ出した。
ここはとある美術館。ルパンがこの美術館を泥棒の舞台にすると新聞社に手紙を送り、その文面を見た怪人二十面相は日付を指定してから泥棒対決を承諾した。今日はこの美術館で、アルセーヌ・ルパンと怪人二十面相が直接対決をするのだ。
明智は警察と一緒に美術館に集結し、二人の泥棒を待ち構えていた。するとどういうわけか、階下が騒がしい。何だ何だと思っていると、どうやらルパンとその配下の者が捕まったらしい。明智は喜んで自分の手を叩いた。
やがて警官数百人に囲まれて、腕に手錠を掛けられたルパン一味の二人は明智の目の前まで運ばれてきた。
ルパンは歯ぎしりをした。「明智君。今回は君の勝ちのようだね」
「おお、以前会った時はフランス語を話していたが、日本語がうまくなったようだね」
「確かにあの時はフランス語を話していた。だがね、世界的大怪盗である私は成長するんだ」
「そんなことを言いながら、捕まっているのはあなたです。──警部! 彼らを早々に牢屋にぶち込みましょう」
ルパンとホームズは目線で合図を取り、手錠を外して明智に投げた。「「さらばだ!」」
二人は警官の間をかき分けて階段を下りていった。明智は頭を掻きむしって、ルパンらを追いかけた。
ホームズとルパンは二手に分かれ、美術館の宝石を回収していった。一度警官に捕まったのは、階下の警官を上の階に移動させたかったからである。これはホームズの案なのだ。
どうやって手錠を外したのか。この方法はルパンが考えた。山羊の盲腸を手の形に合わせ上手に彩色したものを、ルパンとホームズは手袋のようにはめていたのだ。これを脱げば手錠はうまく外れるという寸法で、二人はまんまとがら空きの美術館を走り回って宝石を盗んだ。
そんな時だった。コツコツという足音をさせて、指を鳴らしながら二人に近づいている輩がいた。もちろん、その人物は日本を代表する怪人二十面相だ。ルパンはホームズを呼び寄せる。
「対決だ、怪人二十面相!」
「久しく、ルパン殿。しかし私は、『怪人二十面相』という名前を気に入っているわけではないのです。私としては、その倍である四十面相は出来るでしょう」
「それならば改名をすれば良いだろう」
「まあそうですね。それよりも、面白い泥棒術! 見習いたいくらいです」
「貴様みたいな卑怯なやり方はしないさ。警察から逃げるために、毎回身代わりに死んでもらっているんだろう? そんな逃走方法は怪盗の使う奇術ではない」
「ハハハ。私はルパン殿のような奇術は使えないので、そういう単純な逃走方法しか出来ないのです」
「君は私の真似事をしているが、二番煎じに過ぎない。真似するのは君には向いていないんだ」
「先達だからと言って、偉そうにしないことだ。私は絶対に警察に捕まらない術があるのだ」
「警察に捕まらない方法、それの見当は大体付いている」
「バレていましたか。ですが、あなた方はもう袋のネズミ。諦めた方が身のためですよ......M. Holmes?」
ホームズはギクリとした。怪人二十面相はルパンと行動をともにしていたホームズの正体に気付いている。ルパンすらも少々焦った。
会話をしている最中に、警察は気を遣わずに踏み込んできた。怪人二十面相は天井にへばりつき、ルパンとホームズはホームズを片手に美術館の窓を破壊して外に飛び出た。警察は窓から顔を出して二人を探す。上下左右、どこにも人の姿はない。振り返って天井を見るが、怪人二十面相も跡形もなく消え去った。警察はポカンと口を開けて、その場に立ち尽くすしかなかった。
「ルパン。さっさと隠し事を聞き出さないのかい?」
「ああ、ではそうしよう」ルビーを大切に鞄に入れて、ルパンは横田氏の前に立った。「何を隠しているんだ?」
「言うもんか」
「銀行の宝石もいただくが、君の隠している秘密もいただく。だが、命はいらんよ」
「話すもんか!」
「そうかい」
ホームズは横田氏をじっと観察し、ルビーの隠されていた本棚を探した。ルパンが何をしているんだと言うと、ホームズは本棚から書類を引っ張り出した。
「やはり、僕の思った通りだ。彼は何度か本棚を気にしていたし、ルビーが見つかった本棚からは普通なら泥棒は興味が失せる。それを利用して、ルビーをおとりにしてこの書類を隠していたんだよ」
「見事な推理だ。その書類の中身は?」
「ふむ。これはとある美術館の警備員の配置図だね。宝石の細かい展示場所まで記してある」
「君。これをなぜ持っているんだ」
ルパンに質問された横田氏は、素直に口を開いた。「俺も泥棒まがいのことをしているんだよ」
「そうか。ではこの美術館を怪人二十面相を倒す舞台にしよう。あ、それと、安心したまえ。君が泥棒だという事実も盗ませてもらうよ」
ルパンはホームズとともに横田氏の家を飛び出していった。そして銀行に行ったが、外国人二人組ということで怪しまれてしまい、結局逃げ出した。
ここはとある美術館。ルパンがこの美術館を泥棒の舞台にすると新聞社に手紙を送り、その文面を見た怪人二十面相は日付を指定してから泥棒対決を承諾した。今日はこの美術館で、アルセーヌ・ルパンと怪人二十面相が直接対決をするのだ。
明智は警察と一緒に美術館に集結し、二人の泥棒を待ち構えていた。するとどういうわけか、階下が騒がしい。何だ何だと思っていると、どうやらルパンとその配下の者が捕まったらしい。明智は喜んで自分の手を叩いた。
やがて警官数百人に囲まれて、腕に手錠を掛けられたルパン一味の二人は明智の目の前まで運ばれてきた。
ルパンは歯ぎしりをした。「明智君。今回は君の勝ちのようだね」
「おお、以前会った時はフランス語を話していたが、日本語がうまくなったようだね」
「確かにあの時はフランス語を話していた。だがね、世界的大怪盗である私は成長するんだ」
「そんなことを言いながら、捕まっているのはあなたです。──警部! 彼らを早々に牢屋にぶち込みましょう」
ルパンとホームズは目線で合図を取り、手錠を外して明智に投げた。「「さらばだ!」」
二人は警官の間をかき分けて階段を下りていった。明智は頭を掻きむしって、ルパンらを追いかけた。
ホームズとルパンは二手に分かれ、美術館の宝石を回収していった。一度警官に捕まったのは、階下の警官を上の階に移動させたかったからである。これはホームズの案なのだ。
どうやって手錠を外したのか。この方法はルパンが考えた。山羊の盲腸を手の形に合わせ上手に彩色したものを、ルパンとホームズは手袋のようにはめていたのだ。これを脱げば手錠はうまく外れるという寸法で、二人はまんまとがら空きの美術館を走り回って宝石を盗んだ。
そんな時だった。コツコツという足音をさせて、指を鳴らしながら二人に近づいている輩がいた。もちろん、その人物は日本を代表する怪人二十面相だ。ルパンはホームズを呼び寄せる。
「対決だ、怪人二十面相!」
「久しく、ルパン殿。しかし私は、『怪人二十面相』という名前を気に入っているわけではないのです。私としては、その倍である四十面相は出来るでしょう」
「それならば改名をすれば良いだろう」
「まあそうですね。それよりも、面白い泥棒術! 見習いたいくらいです」
「貴様みたいな卑怯なやり方はしないさ。警察から逃げるために、毎回身代わりに死んでもらっているんだろう? そんな逃走方法は怪盗の使う奇術ではない」
「ハハハ。私はルパン殿のような奇術は使えないので、そういう単純な逃走方法しか出来ないのです」
「君は私の真似事をしているが、二番煎じに過ぎない。真似するのは君には向いていないんだ」
「先達だからと言って、偉そうにしないことだ。私は絶対に警察に捕まらない術があるのだ」
「警察に捕まらない方法、それの見当は大体付いている」
「バレていましたか。ですが、あなた方はもう袋のネズミ。諦めた方が身のためですよ......M. Holmes?」
ホームズはギクリとした。怪人二十面相はルパンと行動をともにしていたホームズの正体に気付いている。ルパンすらも少々焦った。
会話をしている最中に、警察は気を遣わずに踏み込んできた。怪人二十面相は天井にへばりつき、ルパンとホームズはホームズを片手に美術館の窓を破壊して外に飛び出た。警察は窓から顔を出して二人を探す。上下左右、どこにも人の姿はない。振り返って天井を見るが、怪人二十面相も跡形もなく消え去った。警察はポカンと口を開けて、その場に立ち尽くすしかなかった。
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