隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
110 / 245
第四章『輝宗の死』

伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その捌

しおりを挟む
 クリスマスパーティーの準備。この準備を全員で協力して行った。準備、と言っても戦国時代だからかなり質素なものだ。まあ、やらんよりマシだ。
 俺は久々に、料理をすることにした。伊達政宗は料理が趣味しゅみだったって知ってたか?
 これから作るのは、『伊達巻き』。伊達政宗が好んで食ったことから伊達巻きという名前になったらしいが諸説ある。くわしい説明は後回しにして、伊達巻きは菓子みたいだからパーティーにはうってつけだ。
 用意するのはヒラメと鶏卵けいらん、あと砂糖......etc。その全てを輝宗に用意させた。
「さて」
 料理の道具もそろったから料理を始めようとしたら、仁和が様子を見に来ていた。
「政宗殿。何をしていらっしゃるのですか?」
「クリパ......クリスマスパーティーの準備で料理を作るんだ。伊達巻きだ」
「料理出来たのですか?」
「出来たんだぜ」
 前世では奥さんいなかったし、平日は給食を食えたけど休日はたまに料理した。そのお陰で料理はうまくなった。好んでは料理しないが、やれと言われたらやれなくはないのだ。
 それに伊達政宗は料理が趣味。歴史を変えてはいけない。
「料理、まずくしないでくださいね」
「そんな失敗はしない」
 まずはすり身を作る。ヒラメの身を切り出して刺し身みたいにする。で、包丁で細かくしていく。これが時間掛かるんだ。手も疲れるし、腰にもキツい。そしてようやく、すり身が完成したから休憩きゅうけいはさむ。
 料理を再開し、鶏卵を割る。
「うわっ!」
 白身が手にドロドロと付いた。鶏卵を割るのが失敗した。前世でも良くやったことだが、まさかこの人生でもやっちまうとは。手を洗いに行き、戻ってきてからすり身と卵を混ぜた。かき混ぜた。
「あちゃー」
 また手が汚れた。うん、俺は料理向いてないな。ただ、料理が得意だと周囲に誤認させないといけないから、料理を続けた。
 すり身と鶏卵を混ぜたら、砂糖を少々。次は焼く! フライパン的なのに混ぜた奴をぶち込んで焼いた。両面に焼き色を付けて、前世のおせちで見たように巻いた。
「伊達巻き、完成!」
 少し食べてみた。何と、まずかった! 味があまりしないんだ。作り直しということで、作り方を少し変えて作り続けた。それでも失敗は繰り返されていった。
「どこを間違えたのだろうか?」
 首を傾げていると、仁和が部屋に入ってきた。
「少し見ていてください。ちゃんとした伊達巻きの作り方を見せます」
「お、おう?」
 仁和はヒラメを細かくして、持ってきたすり鉢ですっていった。
「すり身を作るなら、もっと細かくすってください」
「わかった」
 鶏卵を割って、丁寧に黄身と白身を混ぜる。
「卵を混ぜるなら、もっときめ細かく!」
 仁和は卵とすり身を混ぜて、砂糖を振る。再度混ぜてから、フライパンで両面を焼いていった。
「完成です。食べてみてください」
「わ、わかった」
 俺は仁和の作った伊達巻きを口に運んだ。
「うまいっ!!」
「伊達巻きとはこういうものを言うのです」
「ああ、勉強になるな」
 俺は仁和にお礼を言って、伊達巻きをたいらげた。
「この時代の道具だけだと、この程度にしか作れませんね」
「クリスマスパーティーにはこれくらいうまいんだから、大丈夫だと思うが?」
「どうでしょうか......」
 料理道具を整理し、伊達巻きを人数分作るために努力してみた。結果、人数分のある程度美味しい伊達巻きが完成した。
「出来たぞ」
「では、他の料理を作りましょう」
「へ?」
「当たり前です。クリスマスパーティーで食べ物が伊達巻き一品だけというのは少しさびしいとは思いませんか?」
「寂しいとは思うが、今日は疲れたから......」
「駄目です」
 俺は頭をかかえた。

 その後も何品か食べ物を作り、今日のクッキングは終了した。俺は首をポキポキ鳴らして、疲れたようにあくびをした。
「これくらいの料理で疲れないでください。明日も料理をしますから」
「え!?」
「何が『え!?』なんですか」
 クリスマスパーティーをやる、なんて言わなければ良かったと後悔してももう遅かった。明日も料理をすることは確定のようだった。
 んじゃ、ちょっくら伊達巻きの説明をする。伊達政宗は、ヒラメのすり身に卵を混ぜて焼いた料理である『平玉子焼き』を好んで食べた。この平玉子焼きは前世では厚焼きと呼ばれ、戦国時代ではいつしか『』と言われるようになった。それは、伊達政宗が食べてたからって言われている。
 その伊達焼きを巻くようになって、『』となったらしい。もちろん、諸説あり。
 今日作ったのは伊達巻きに近いものだ。戦国時代の平玉子焼きとは微妙に異なるが、うまければ良いんだ。
 俺は景頼の元に行って、煙草を一本貰った。最近はまたヘビースモーカーになり、煙草を頻繁ひんぱんに吸うようになった。酒もよく飲むし、最近は体に悪いことしかしていない。けど、許して欲しい。他国との交流と経営や政治で疲れているんだ。読者諸君も急に政治家になったら疲れるはずだ。俺は今、そんな状態なのである。政治・外交・経営・料理に不向きなことが、伊達政宗になってわかったことだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

生きてこそ-悲願の萩-

夢酔藤山
歴史・時代
 遅れて生まれたがために天下を取れなかった伊達政宗。その猛々しい武将としての一面は表向きだ。長く心にあった、母親との確執。それゆえ隠してきた秘密。老い先短い母親のために政宗の出来ることはひとつだった。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

戦艦タナガーin太平洋

みにみ
歴史・時代
コンベース港でメビウス1率いる ISAF部隊に撃破され沈んだタナガー だがクルーたちが目を覚ますと そこは1942年の柱島泊地!?!?

処理中です...