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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その壱
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アーティネスによって送られ、目の前には川があった。何だろうと川に近寄ると、二人の影が近づいてきていることに気付いた。
近づいてきた二人の内の片方のババアが、急に俺の服を剥ぎ取ろうとしてきた。
「何すんだ、ババア!」
暴れていると、上空から図体の大きい髭ジジイが降ってきた。「我は十王が一人、閻魔大王。奪衣婆、懸衣翁。これは重要な案件だ。下がれ」
「「ハハァ!」」
閻魔大王の出現で、追い剥ぎのようなジジババは去っていった。
閻魔大王ということは、ここは地獄? あの川は三途の川なのか?
「貴様が、アーティネス様の言っていた重岡十吉か?」
「アーティネスから聞いているのか。俺は重岡十吉だ。合っている」
「重岡十吉はアーティネス様より、地獄行きとなっている」
「地獄行き? 何かの手違いじゃないか? アーティネスは優しいぞ」
「貴様は勘違いしている。アーティネス様は、神の中でも群を抜いて外道な神だ。重岡十吉はおそらく、捨てられたのだろう」
頭が真っ白になった。地獄行き? アーティネスが裏切った!? いや、まさか......俺はまた裏切られたのか?
「哀れな人生を送ってきたようだな。アーティネス様の命令に背いてでも、貴様を助ける価値は少なからずある」
「こんな俺を助けてくれるのか?」
「我は理不尽な十王ではない。それに、アーティネス様にバレないようにしてやる。出来る限り裕福で幸せな日本の家庭の一人息子として転生させてやろう」
「良いのか?」
「ああ。それでは──」
その時、威圧感があって顔を上に向けると、アーティネスがいた。
「閻魔! 何をしている?」
「アーティネス様っ!」
「閻魔とは長い付き合いだったが、そろそろ代替えだな。重岡十吉もろとも、地獄行きとしよう」
「お許しください、アーティネス様!」
俺はまた、アーティネスにも裏切られたことを知る。またも絶望を味わう。
「閻魔の後継者は後々決めましょう。さようなら」
一瞬で辺りの景色は変わり、周囲から悲鳴が聞こえてくる。隣りには''元''閻魔大王がいた。
「ハッ! 我もここまでか」
「閻魔大王、どうしたんだ?」
「ここは地獄。延々と辛い目にあうだけの世界」
「ああ......俺達は終末を迎えたんだな」
「力になれず、無念だ」
「大丈夫。慣れている」
それからずっと、俺達二人は酷使され続けた。あの時、甲太郎が俺の金を盗んだ時。俺がゲームセンターで金を無駄遣いするから、それをやめさせるために甲太郎が金を盗んだのだと気付いていれば良かったのだ。
俺がなぜ輝宗を殺したのかという話しは遡ること数ヶ月前。伊達政宗が伊達家の家督相続をした翌日のことである。
家督を継いだ後、俺は小十郎、景頼、愛姫を集めた。
「俺、伊達家の当主になった」
「いよっ!」小十郎は拍手をした。「さすが名坂!」
「これからは、伊達家の戦力をアップさせる事業に取り組もうと思っている。それには、やはり武器の開発が必要になってくる。そこでそのことを仁和に話すと、うってつけの蔵書をいただいた」
そう言って、手に持っていた蔵書の表紙を三人に見えるように抱えた。
「タイトルは『銃火器・爆発物の作り方』。未来の本らしく、仁和は重宝していると言っていた。すぐに有害図書に認定されたとも聞く。この本を基にして、鍛治屋の権次と兼三に手伝わせて武器の開発をしようと思うのだが、どうだろう?」
愛姫は手を挙げた。「若様。失礼ながら、それでは未来技術をこの時代に定着させてしまい、江渡弥平とやっていることは変わらなくなってしまうのでは?」
「それはそうだな。ただ、そういう銃火器を扱う人物を限れば良いと考えている」
実際、銃火器の作り方がわからなくては未来技術が定着していることにはならない。つまり、権次と兼三が銃火器の作り方を外部に漏らさないならば未来技術が戦国時代に定着することはない......と思う。
景頼は顎を撫でた。「若様の考えはごもっともです。では、私がその本を基に鍛治屋に指南しましょう」
「そうか。ならば、景頼に銃火器・爆発物の作り方の指南役を任せる。仁和の方が適任だが、仁和は作戦を考えてもらうから指南役までは任せられない。景頼、期待しているぞ」
「はっ! 了解しました!」
これで武器の開発は十分可能になる。俺は『銃火器・爆発物の作り方』を景頼に渡すと、景頼はすぐに鍛治屋の元へ向かった。行動の早い奴だ。
「次に俺がやるべきは、城下町の住人からの信頼度を獲得することだが、そこんとこは難しいから仁和に一任しよう。まずは──」
ドタバタという足音とともに、景頼が部屋に戻ってきた。「若様! ご報告があります!」
「急用か?」
「はい。お屋形様が、以前若様がお作りになった火縄銃の強化版を量産させようとして権次に頼んでいました」
「マジか!」
輝宗は隠居後、俺の作ってやった火縄銃の強化版を量産させようとしていた。それは許せない。俺はそこで、輝宗を処分することを決意することになってしまったのだ。
が、堂々と殺すわけにはいかない。建前が必要になる。その建前を作り出すために、仁和に計画を考えてもらった。
近づいてきた二人の内の片方のババアが、急に俺の服を剥ぎ取ろうとしてきた。
「何すんだ、ババア!」
暴れていると、上空から図体の大きい髭ジジイが降ってきた。「我は十王が一人、閻魔大王。奪衣婆、懸衣翁。これは重要な案件だ。下がれ」
「「ハハァ!」」
閻魔大王の出現で、追い剥ぎのようなジジババは去っていった。
閻魔大王ということは、ここは地獄? あの川は三途の川なのか?
「貴様が、アーティネス様の言っていた重岡十吉か?」
「アーティネスから聞いているのか。俺は重岡十吉だ。合っている」
「重岡十吉はアーティネス様より、地獄行きとなっている」
「地獄行き? 何かの手違いじゃないか? アーティネスは優しいぞ」
「貴様は勘違いしている。アーティネス様は、神の中でも群を抜いて外道な神だ。重岡十吉はおそらく、捨てられたのだろう」
頭が真っ白になった。地獄行き? アーティネスが裏切った!? いや、まさか......俺はまた裏切られたのか?
「哀れな人生を送ってきたようだな。アーティネス様の命令に背いてでも、貴様を助ける価値は少なからずある」
「こんな俺を助けてくれるのか?」
「我は理不尽な十王ではない。それに、アーティネス様にバレないようにしてやる。出来る限り裕福で幸せな日本の家庭の一人息子として転生させてやろう」
「良いのか?」
「ああ。それでは──」
その時、威圧感があって顔を上に向けると、アーティネスがいた。
「閻魔! 何をしている?」
「アーティネス様っ!」
「閻魔とは長い付き合いだったが、そろそろ代替えだな。重岡十吉もろとも、地獄行きとしよう」
「お許しください、アーティネス様!」
俺はまた、アーティネスにも裏切られたことを知る。またも絶望を味わう。
「閻魔の後継者は後々決めましょう。さようなら」
一瞬で辺りの景色は変わり、周囲から悲鳴が聞こえてくる。隣りには''元''閻魔大王がいた。
「ハッ! 我もここまでか」
「閻魔大王、どうしたんだ?」
「ここは地獄。延々と辛い目にあうだけの世界」
「ああ......俺達は終末を迎えたんだな」
「力になれず、無念だ」
「大丈夫。慣れている」
それからずっと、俺達二人は酷使され続けた。あの時、甲太郎が俺の金を盗んだ時。俺がゲームセンターで金を無駄遣いするから、それをやめさせるために甲太郎が金を盗んだのだと気付いていれば良かったのだ。
俺がなぜ輝宗を殺したのかという話しは遡ること数ヶ月前。伊達政宗が伊達家の家督相続をした翌日のことである。
家督を継いだ後、俺は小十郎、景頼、愛姫を集めた。
「俺、伊達家の当主になった」
「いよっ!」小十郎は拍手をした。「さすが名坂!」
「これからは、伊達家の戦力をアップさせる事業に取り組もうと思っている。それには、やはり武器の開発が必要になってくる。そこでそのことを仁和に話すと、うってつけの蔵書をいただいた」
そう言って、手に持っていた蔵書の表紙を三人に見えるように抱えた。
「タイトルは『銃火器・爆発物の作り方』。未来の本らしく、仁和は重宝していると言っていた。すぐに有害図書に認定されたとも聞く。この本を基にして、鍛治屋の権次と兼三に手伝わせて武器の開発をしようと思うのだが、どうだろう?」
愛姫は手を挙げた。「若様。失礼ながら、それでは未来技術をこの時代に定着させてしまい、江渡弥平とやっていることは変わらなくなってしまうのでは?」
「それはそうだな。ただ、そういう銃火器を扱う人物を限れば良いと考えている」
実際、銃火器の作り方がわからなくては未来技術が定着していることにはならない。つまり、権次と兼三が銃火器の作り方を外部に漏らさないならば未来技術が戦国時代に定着することはない......と思う。
景頼は顎を撫でた。「若様の考えはごもっともです。では、私がその本を基に鍛治屋に指南しましょう」
「そうか。ならば、景頼に銃火器・爆発物の作り方の指南役を任せる。仁和の方が適任だが、仁和は作戦を考えてもらうから指南役までは任せられない。景頼、期待しているぞ」
「はっ! 了解しました!」
これで武器の開発は十分可能になる。俺は『銃火器・爆発物の作り方』を景頼に渡すと、景頼はすぐに鍛治屋の元へ向かった。行動の早い奴だ。
「次に俺がやるべきは、城下町の住人からの信頼度を獲得することだが、そこんとこは難しいから仁和に一任しよう。まずは──」
ドタバタという足音とともに、景頼が部屋に戻ってきた。「若様! ご報告があります!」
「急用か?」
「はい。お屋形様が、以前若様がお作りになった火縄銃の強化版を量産させようとして権次に頼んでいました」
「マジか!」
輝宗は隠居後、俺の作ってやった火縄銃の強化版を量産させようとしていた。それは許せない。俺はそこで、輝宗を処分することを決意することになってしまったのだ。
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