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第三章『家督相続』
伊達政宗、脱出するのは伊達じゃない その陸
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焦った二人だったが、何とか小十郎と仁和は合流した。
「小十郎殿、大変です」
「仁和殿、まずいですよ」
二人は話し合って、二人とも話す内容が同じことに気付く。それから、今後の方針を決めた。俺を探す範囲をより広げるらしい。
それよりも、俺の推理が間違っていたこともあり得るな。小十郎一行は半径六十キロメートル以内を隈無く探しているが、俺の監禁場所には辿り着いていない。これは推理を再度やり直す必要があるか。
俺が誘拐されたのは申の刻。目覚めて誘拐されたことを自覚したのが酉の刻。申の刻と酉の刻の間は二時間。
それが間違っていたってことか!? この時代の時計は壊れやすいし狂いやすい。小十郎の日時計が狂っていたのか、米沢城の水時計が狂っていたのか。どっちだ。
いや、どっちが狂っていても関係ねぇ。探す範囲が拡張されない限り、俺は発見出来ない。やばいな。
早く完全防御の防御壁を完成させて、地下を抜け出そう。
ただ硬い物質と言ってもな......。全然候補がない。どうすれば良いんだ!?
「あっ!」
頭を掻きむしっていたら、目の前に水があることに気付いた。オランダの涙を作るときに使った水だ。この水、使えるんじゃね?
水って強く叩くと硬くなってんじゃん。うん、使える。この水、防御壁に応用してみよう。水を宙に浮かせて、一時停止。
「よし。さっき作った銃に火薬と銃弾を詰めて」
着火! 銃声を出来るだけ抑えるために、扉には防音を施した。
銃弾は宙の水を貫通し、壁にめり込んだ。
「水じゃ防御壁は難しいのか」
諦めるのはまだ早い。仁和に教わったことを思い出した。水は逃げ場を無くすと硬くなるらしい。どんな原理かってのは忘れたが、防御壁には利用可能だ。
逃げ場を無くす。神力で見えない壁を水の周りに作って、また宙で静止。再度銃で撃った。ただ、また貫通した。
「もっと硬くして、厚みも増してみよう」
少し手を加えて撃つ。少し手を加えて撃つ。これを繰り返すこと十数回。やっと銃弾を受け止める防御力を獲得した。
これを工夫して改良した上で、防御壁になるように大きくさせた。まあ、急ごしらえの完全防御壁にしてはかなりの性能を誇っていると思う。これなら、扉を開けて廊下の誘拐犯らを一掃出来る。
やってやるぜ。
「うおおぉー!」
扉を開けたら、すぐに廊下の大きさと同じ大きさの防御壁を展開。虫一匹すら通さない防御壁だ。
防御壁展開中はこちらも攻撃が出来ないため、防御壁を思い切りぶつけながら進んだ。ハハハ。こりゃ一掃だ。
地上に続いている、と思われる階段を見つけた俺は駆け上がった。そして、脱出完了。小十郎達の居場所を確認してから、誘拐犯達の馬を略奪して走った。
すると小十郎達も俺に近づいてきていて、予想より早く合流。大勢で、また俺の監禁場所まで戻った。仁和は地下を興味深く見てから、声を潜めて俺に話し掛けてきた。
「おめでとうございます。新技を自己流で獲得しましたね?」
「は!? 何で知ってんだよ」
「私が誘拐の計画を立てて、実行させたのです」
「え? お前......逆心か!」
「違います。政宗殿が、相馬氏の主力を潰したいと言っていたので、相馬氏に情報を流したのです。結果的に政宗殿は新技を獲得し、相馬氏の主力を倒すことに成功。しかも、主力を倒したのは政宗殿です。お屋形様の信頼も上がりますよ」
こうなることを全て見越した上で、俺を誘拐させたのか。さすが名軍配士。仁和もいずれは伊達家の重臣へとなりそうだ。
米沢城に無事帰還。輝宗は安心して胸を撫で下ろした。
「よくやった、政宗。監禁の最中に自力で脱出、相馬氏の主力も潰してくれた。褒美をくれてやろう」
褒美か。今は興味ないな。
「私は父上のお役に立てれば良いのです。褒美など、私は求めません」
褒美を断り、本丸御殿を退出。早速仁和の元へ行く。俺が急ごしらえで作り上げた防御壁では不完全だと悟った仁和は、今日中に完成体に近づけると言ってきた。まあ、俺には知識なんて歴史系のしか持ち合わせていない。化学は仁和に任せる。
「仁和、来たぞ」
「そこに座っていてください」
「おう」
床に腰を下ろして、仁和に言われた通り防御壁を展開させた。
「なるほど。水での防御壁ですか」
「改良は出来そうか?」
「まあ、やってみます」
「ってか、水が衝撃を受けると硬くなるのって化学的にはどんな名前があるんだ?」
「ないんじゃないですか? 少なくとも、私はその現象の名前を聞いたことはないです」
「そうなのか。んじゃ、呼びにくいから防御現象って呼ぶことにしようぜ」
「名前、付ける意味はありますか?」
「呼びにくいじゃん」
仁和は頭が堅いから、名前など要らないと言われた。けど、いちいち『水が硬くなるあれ』なんて言うのは面倒だ。俺達の間では防御現象と呼ぶことになった。
仁和がどんな改良をしたのかは知らない。けど、仁和によって改良が施された防御壁は使い勝手が良い。名軍配士は頼れるものだ。
「あ、そうだ。仁和達の行動を監禁中に観察してたけど、時計が狂ってなかったか?」
「私が水時計を狂わせました。もし政宗殿が自力で脱出する前に私達が政宗殿を発見してしまったら、私の計画は失敗なので」
名軍配士は嘘も得意な模様。
「小十郎殿、大変です」
「仁和殿、まずいですよ」
二人は話し合って、二人とも話す内容が同じことに気付く。それから、今後の方針を決めた。俺を探す範囲をより広げるらしい。
それよりも、俺の推理が間違っていたこともあり得るな。小十郎一行は半径六十キロメートル以内を隈無く探しているが、俺の監禁場所には辿り着いていない。これは推理を再度やり直す必要があるか。
俺が誘拐されたのは申の刻。目覚めて誘拐されたことを自覚したのが酉の刻。申の刻と酉の刻の間は二時間。
それが間違っていたってことか!? この時代の時計は壊れやすいし狂いやすい。小十郎の日時計が狂っていたのか、米沢城の水時計が狂っていたのか。どっちだ。
いや、どっちが狂っていても関係ねぇ。探す範囲が拡張されない限り、俺は発見出来ない。やばいな。
早く完全防御の防御壁を完成させて、地下を抜け出そう。
ただ硬い物質と言ってもな......。全然候補がない。どうすれば良いんだ!?
「あっ!」
頭を掻きむしっていたら、目の前に水があることに気付いた。オランダの涙を作るときに使った水だ。この水、使えるんじゃね?
水って強く叩くと硬くなってんじゃん。うん、使える。この水、防御壁に応用してみよう。水を宙に浮かせて、一時停止。
「よし。さっき作った銃に火薬と銃弾を詰めて」
着火! 銃声を出来るだけ抑えるために、扉には防音を施した。
銃弾は宙の水を貫通し、壁にめり込んだ。
「水じゃ防御壁は難しいのか」
諦めるのはまだ早い。仁和に教わったことを思い出した。水は逃げ場を無くすと硬くなるらしい。どんな原理かってのは忘れたが、防御壁には利用可能だ。
逃げ場を無くす。神力で見えない壁を水の周りに作って、また宙で静止。再度銃で撃った。ただ、また貫通した。
「もっと硬くして、厚みも増してみよう」
少し手を加えて撃つ。少し手を加えて撃つ。これを繰り返すこと十数回。やっと銃弾を受け止める防御力を獲得した。
これを工夫して改良した上で、防御壁になるように大きくさせた。まあ、急ごしらえの完全防御壁にしてはかなりの性能を誇っていると思う。これなら、扉を開けて廊下の誘拐犯らを一掃出来る。
やってやるぜ。
「うおおぉー!」
扉を開けたら、すぐに廊下の大きさと同じ大きさの防御壁を展開。虫一匹すら通さない防御壁だ。
防御壁展開中はこちらも攻撃が出来ないため、防御壁を思い切りぶつけながら進んだ。ハハハ。こりゃ一掃だ。
地上に続いている、と思われる階段を見つけた俺は駆け上がった。そして、脱出完了。小十郎達の居場所を確認してから、誘拐犯達の馬を略奪して走った。
すると小十郎達も俺に近づいてきていて、予想より早く合流。大勢で、また俺の監禁場所まで戻った。仁和は地下を興味深く見てから、声を潜めて俺に話し掛けてきた。
「おめでとうございます。新技を自己流で獲得しましたね?」
「は!? 何で知ってんだよ」
「私が誘拐の計画を立てて、実行させたのです」
「え? お前......逆心か!」
「違います。政宗殿が、相馬氏の主力を潰したいと言っていたので、相馬氏に情報を流したのです。結果的に政宗殿は新技を獲得し、相馬氏の主力を倒すことに成功。しかも、主力を倒したのは政宗殿です。お屋形様の信頼も上がりますよ」
こうなることを全て見越した上で、俺を誘拐させたのか。さすが名軍配士。仁和もいずれは伊達家の重臣へとなりそうだ。
米沢城に無事帰還。輝宗は安心して胸を撫で下ろした。
「よくやった、政宗。監禁の最中に自力で脱出、相馬氏の主力も潰してくれた。褒美をくれてやろう」
褒美か。今は興味ないな。
「私は父上のお役に立てれば良いのです。褒美など、私は求めません」
褒美を断り、本丸御殿を退出。早速仁和の元へ行く。俺が急ごしらえで作り上げた防御壁では不完全だと悟った仁和は、今日中に完成体に近づけると言ってきた。まあ、俺には知識なんて歴史系のしか持ち合わせていない。化学は仁和に任せる。
「仁和、来たぞ」
「そこに座っていてください」
「おう」
床に腰を下ろして、仁和に言われた通り防御壁を展開させた。
「なるほど。水での防御壁ですか」
「改良は出来そうか?」
「まあ、やってみます」
「ってか、水が衝撃を受けると硬くなるのって化学的にはどんな名前があるんだ?」
「ないんじゃないですか? 少なくとも、私はその現象の名前を聞いたことはないです」
「そうなのか。んじゃ、呼びにくいから防御現象って呼ぶことにしようぜ」
「名前、付ける意味はありますか?」
「呼びにくいじゃん」
仁和は頭が堅いから、名前など要らないと言われた。けど、いちいち『水が硬くなるあれ』なんて言うのは面倒だ。俺達の間では防御現象と呼ぶことになった。
仁和がどんな改良をしたのかは知らない。けど、仁和によって改良が施された防御壁は使い勝手が良い。名軍配士は頼れるものだ。
「あ、そうだ。仁和達の行動を監禁中に観察してたけど、時計が狂ってなかったか?」
「私が水時計を狂わせました。もし政宗殿が自力で脱出する前に私達が政宗殿を発見してしまったら、私の計画は失敗なので」
名軍配士は嘘も得意な模様。
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