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第三章『家督相続』
伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾玖
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ここはどこだ? 俺は誰だ?
「ふざけないでください。ここは神界です」
「俺、死んだのか?」
「確かに名坂横久はヘルリャフカに吹き飛ばされましたが、死ぬほどの傷は負ってませんよ」
「爆風を吸い込んだけど?」
「爆風は吸い込んでましたが、胃は焼き切れていませんでした。空気を吸い込みすぎて水分が飛んで乾いたことが原因でしょう」
「マジかよ!」
やっぱり、俺は強運の持ち主だったか。
「危険だと私が判断したので、あなたの意識を神界に引き込みました」
「ヘルリャフカを倒す方法を教えてくれるのか?」
「倒す方法がわからないのに、教えられるとでも思いましたか?」
「神ですら倒す方法を知らないとなると......俺達、詰んだな」
「現状では倒せないでしょう」
「だよなー」
せっかくクロークも共闘してくれたのに、倒せませんでした、じゃまずいよなぁ。どうにかならないもんかね。
「ですが、王水やらのお陰でヘルリャフカの鎧が一部溶けてもろくなっています。勝機はまだあるのではないですか?」
「鎧がもろくなっているのか。そこを突けば、いけるのか?」
「確証はありませんが、やらないよりはマシなのでは?」
「アーティネスの言うとおりだな。ヘルリャフカを倒す方法がわからない以上、いろいろな策を試しておいて損はない」
「緊急事態なので魔人との協力も容認します。必ず、勝ってください」
「任せろ」
もし伊達政宗の体に意識が戻ったとしても、空高く吹き飛ばされているのだから落下して死ぬかもな。それに、ヘルリャフカに直撃した雷もダメージを通すことは出来なかった。俺達に勝ち目はあるのだろうか。
勝つしか道はないが、ヘルリャフカを倒す方法はわからない。クロークとの連携でも勝率は低い。
「名坂横久がヘルリャフカに勝つことを、神界でお祈りしています」
「ああ、期待に応えてやる」
アーティネスによって意識は伊達政宗の体に戻された。そして、天空に体があることを再確認する。
俺はヘルリャフカを倒す前に、このままだと地面に体が叩きつけられて死んじまう。こうなりゃ、一か八か勝負に出るしかない!
地面に叩きつけられる? 面白い! 自重操作で、限界まで自分の体重を上げてやる! この天空から一気に、ヘルリャフカを仕留める。そのためには、天空からの落下で加速して、自重を上げてその威力を増させる。
最後の一撃。俺の体で貫いてやる! 俺自身をも死ぬ危険性のある、文字通り諸刃の剣。加速度+重さ=破壊力だぁ!!!!!!
「貫けっ!」
「強キ者ヨ! 良イ攻撃ダ」
ヘルリャフカは両手を拡げ、俺に正面を向けた。
ヘルリャフカ。貴様の望みを叶える!
体内に何者かが侵入してきた。奴は俺の最後の希望、伊達政宗。
「ヘルリャフカ。お前を助けにきた」
「俺を、助けに?」
「そうだ。延々と続いた呪縛から、俺が解放させる」
「そんなことが......可能なのか?」
「可能だ。うちには優秀な仁和という軍配士がいるんだ」
「我は鎖から解き放たれるのか?」
「安心しろ。お前の罪は、俺が帳消しにする。仲間の元へ帰れ。それがお前の歩む道なんだ」
「歩む、道」
「生まれ変わったら、俺の元へ来い。ヘルリャフカの罪は、消え去っている」
嬉しかった。数十世紀の間、願い続けた夢だ。その夢が、現実となる。俺は久方振りに、泣いた。今まで泣かなかった分を出し切った。
「我を許すのか?」
「許す。さあ、お別れだ」
「光りが、差し込んできた」
「お迎えだ。行ってこい!」
「感謝する、伊達政宗殿」
俺は伊達政宗に見送られながら、迎えにきた者とともに三途の川を目指した。
「ハァハァ......倒した、のか?」
ヘルリャフカが酷使していた牛丸の体が床に伏している。倒したんだ。いや、喜ぶのはまだ早い。アーティネスがヘルリャフカの心臓と小十郎の心臓を入れ替えているはずだ。成功するか否か。
『名坂横久!』
お、頭の中に声が......アーティネスか?
『はい』
神辺はどうなった?
『神辺勉。蘇生完了』
よし!
『ヘルリャフカ殲滅、おめでとうございます』
ああ。これから、織田信長の救出に向かう。
『健闘を祈ります』
わかってる。
ここから本能寺までの近道は、あそこだ。ヘルリャフカの後始末は部下に任せて、急いで信長救出に行かなくては。
本能寺を目指して、脚を交互に動かしていった。やがて本能寺に着いた時には、全焼していた。
その後合流した皆とともに米沢城に転移し、小十郎が出迎えてくれた。
「神辺!」
「名坂......」
小十郎の心臓は不死の力を宿した心臓と入れ替えられ、復活することが出来た。
ヘルリャフカは倒せたが、信長を救出するには至らなかった。本能寺は焼かれ、信長は死した。歴史は変わることはなく、首謀者の明智光秀は豊臣秀吉に敗れる。明智の天下は数日で終わりを迎えることとなる。
他方、俺達伊達家は相馬氏との戦いに本格的に取り組んでいくこととなる。仁和は作戦を立てて、二階堂と忠義ら未来人衆が別動隊として対相馬氏戦で相馬氏の部隊の力を削いでもらった。別動隊の指揮は、成実に一任。小十郎と景頼は、俺とともに本隊の主力として戦いに駒を進めた。
「ふざけないでください。ここは神界です」
「俺、死んだのか?」
「確かに名坂横久はヘルリャフカに吹き飛ばされましたが、死ぬほどの傷は負ってませんよ」
「爆風を吸い込んだけど?」
「爆風は吸い込んでましたが、胃は焼き切れていませんでした。空気を吸い込みすぎて水分が飛んで乾いたことが原因でしょう」
「マジかよ!」
やっぱり、俺は強運の持ち主だったか。
「危険だと私が判断したので、あなたの意識を神界に引き込みました」
「ヘルリャフカを倒す方法を教えてくれるのか?」
「倒す方法がわからないのに、教えられるとでも思いましたか?」
「神ですら倒す方法を知らないとなると......俺達、詰んだな」
「現状では倒せないでしょう」
「だよなー」
せっかくクロークも共闘してくれたのに、倒せませんでした、じゃまずいよなぁ。どうにかならないもんかね。
「ですが、王水やらのお陰でヘルリャフカの鎧が一部溶けてもろくなっています。勝機はまだあるのではないですか?」
「鎧がもろくなっているのか。そこを突けば、いけるのか?」
「確証はありませんが、やらないよりはマシなのでは?」
「アーティネスの言うとおりだな。ヘルリャフカを倒す方法がわからない以上、いろいろな策を試しておいて損はない」
「緊急事態なので魔人との協力も容認します。必ず、勝ってください」
「任せろ」
もし伊達政宗の体に意識が戻ったとしても、空高く吹き飛ばされているのだから落下して死ぬかもな。それに、ヘルリャフカに直撃した雷もダメージを通すことは出来なかった。俺達に勝ち目はあるのだろうか。
勝つしか道はないが、ヘルリャフカを倒す方法はわからない。クロークとの連携でも勝率は低い。
「名坂横久がヘルリャフカに勝つことを、神界でお祈りしています」
「ああ、期待に応えてやる」
アーティネスによって意識は伊達政宗の体に戻された。そして、天空に体があることを再確認する。
俺はヘルリャフカを倒す前に、このままだと地面に体が叩きつけられて死んじまう。こうなりゃ、一か八か勝負に出るしかない!
地面に叩きつけられる? 面白い! 自重操作で、限界まで自分の体重を上げてやる! この天空から一気に、ヘルリャフカを仕留める。そのためには、天空からの落下で加速して、自重を上げてその威力を増させる。
最後の一撃。俺の体で貫いてやる! 俺自身をも死ぬ危険性のある、文字通り諸刃の剣。加速度+重さ=破壊力だぁ!!!!!!
「貫けっ!」
「強キ者ヨ! 良イ攻撃ダ」
ヘルリャフカは両手を拡げ、俺に正面を向けた。
ヘルリャフカ。貴様の望みを叶える!
体内に何者かが侵入してきた。奴は俺の最後の希望、伊達政宗。
「ヘルリャフカ。お前を助けにきた」
「俺を、助けに?」
「そうだ。延々と続いた呪縛から、俺が解放させる」
「そんなことが......可能なのか?」
「可能だ。うちには優秀な仁和という軍配士がいるんだ」
「我は鎖から解き放たれるのか?」
「安心しろ。お前の罪は、俺が帳消しにする。仲間の元へ帰れ。それがお前の歩む道なんだ」
「歩む、道」
「生まれ変わったら、俺の元へ来い。ヘルリャフカの罪は、消え去っている」
嬉しかった。数十世紀の間、願い続けた夢だ。その夢が、現実となる。俺は久方振りに、泣いた。今まで泣かなかった分を出し切った。
「我を許すのか?」
「許す。さあ、お別れだ」
「光りが、差し込んできた」
「お迎えだ。行ってこい!」
「感謝する、伊達政宗殿」
俺は伊達政宗に見送られながら、迎えにきた者とともに三途の川を目指した。
「ハァハァ......倒した、のか?」
ヘルリャフカが酷使していた牛丸の体が床に伏している。倒したんだ。いや、喜ぶのはまだ早い。アーティネスがヘルリャフカの心臓と小十郎の心臓を入れ替えているはずだ。成功するか否か。
『名坂横久!』
お、頭の中に声が......アーティネスか?
『はい』
神辺はどうなった?
『神辺勉。蘇生完了』
よし!
『ヘルリャフカ殲滅、おめでとうございます』
ああ。これから、織田信長の救出に向かう。
『健闘を祈ります』
わかってる。
ここから本能寺までの近道は、あそこだ。ヘルリャフカの後始末は部下に任せて、急いで信長救出に行かなくては。
本能寺を目指して、脚を交互に動かしていった。やがて本能寺に着いた時には、全焼していた。
その後合流した皆とともに米沢城に転移し、小十郎が出迎えてくれた。
「神辺!」
「名坂......」
小十郎の心臓は不死の力を宿した心臓と入れ替えられ、復活することが出来た。
ヘルリャフカは倒せたが、信長を救出するには至らなかった。本能寺は焼かれ、信長は死した。歴史は変わることはなく、首謀者の明智光秀は豊臣秀吉に敗れる。明智の天下は数日で終わりを迎えることとなる。
他方、俺達伊達家は相馬氏との戦いに本格的に取り組んでいくこととなる。仁和は作戦を立てて、二階堂と忠義ら未来人衆が別動隊として対相馬氏戦で相馬氏の部隊の力を削いでもらった。別動隊の指揮は、成実に一任。小十郎と景頼は、俺とともに本隊の主力として戦いに駒を進めた。
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