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第三章『家督相続』
伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾捌
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俺はある国の王だった。数十世紀も昔、俺は一国を統一して主となった。
民は優しかった。俺を尊敬していた。尊敬されていたから、その期待に応えるために更なる力を求めて旅に出た。各地に残る言い伝えを元に、力の根源を探した。長い道のりだった。
それでも、諦めずに、根源を探した。ついに見つけた力の根源は、俺に試練を与えた。その試練を合格し、適正者と判断された俺は『不死の力』をこの身に宿した。
それが失敗だった。不死の力のせいで、仲間や大切な家族が朽ちていっても、自分だけは形を保ち続けた。
永遠の生を得た代償は、永遠の孤独だった。俺からしたら、百年なんてアッという間だ。仲良くなってもすぐにそいつは朽ちた。それでも、俺は仲間を作り続けた。そんなことをしていた自分が虚しかった。仲間が、永遠の仲間が欲しかった。それも、不死の力が拒んだ。
ならいっそのこと自殺しようと決意し、当時は一番硬く鋭いとされた刃で体を刺してみた。けれど、薄皮一枚も剥けない。俺は絶叫した。
何千年も生き続け、やがて邪悪な心に支配されていった。なれの果てに、悪魔へと墜ちた。俺はそこで、『皇帝・ヘルリャフカ』と名乗った。王だった時を懐かしんだからだ。
魔界では数世紀生き続けることも普通のことだった。それに、強ければ強いほど評価されて仲間も出来る。居心地は悪くない。そうこうしていたら上級悪魔に登り詰めていた。このままでは魔王になってしまう。魔王になれば、待っているのは孤独だ。魔王は魔王界で過ごす。魔王界には二人の魔王しかいないのだ。
もう孤独は嫌だった。俺は自由を求めて、殺されるために神界に乗りこんで襲撃をした。神ならば、俺を倒すことも出来ると思った。が、的外れだった。神の頂点に君臨するアマテラスも、我が身を封印するだけが限界だった。その封印も150年も経てば弱まり、容易く抜け出せた。それからは強者を求めて人間界を動き回った。
けれど、神を上回る人間に出会うこともなく、魔界に帰ることを決めた時だった。強力な力をその身に宿した少年を察知した。俺は苗床に憑依し、その少年に接触を図った。
「名乗れ。名乗れ、牛丸を討った者よ!」
牛丸。知らぬ名前だった。我が殺したわけではない。
「貴殿、強き者と見受ける」
あの少年なら我を殺せる力を秘めている。
「名乗れ! 俺は伊達政宗! 今し方、討たれた者の主である」
「面白い。我が名は無きに等しい。この体を拝借しているまでだ」
私は一筋の光りを見た。あの世で待っている家族や親友。今から、会いに行く。
「貴様、悪魔憑きか?」
「わかるのか。そう、悪魔憑きだ」
「なぜ、ここに来たんだ」
「強き者の気配がした。伊達政宗、貴殿こそが強き者のようだな」
「強き者を探して何になる?」
「我が望みなのだ」
「戦いを望むのか?」
「そうとも言える。少し違うがな」
それから戦いが始まったが、俺の本体は苗床から吹っ飛ばされた。おそらく、神達の仕業だ。勝手に死んだ牛丸とやらは、神達の生け贄となったんだな。
それからもたびたび、伊達政宗の元へ行った。そしてついに、彼は俺を殺すために本気となった! 我は、呪いから解放されるのだ!
さあ殺せ、すぐ殺せ。我に希望を見せてくれ。数十世紀も待ち望んだ。俺を───────生という鎖から解放させてくれ!
雷がヘルリャフカに直撃した。これでミッションコンプリートだな。急いで本能寺に行かない.......とぉ?
おいおいおいおい、嘘だろ!?
「何ダ、コノ程度ノ雷ナノカ。失望サセナイデクレ!」
「マジで化け物じゃねぇか、ヘルリャフカ!」
「超過熱ノヨウナ技ヲ使エ!」
さすがにここまで強いとは、仁和も読んでいなかったようだな。手の打ちようがまったくない。これでは小十郎も信長も救出が出来ない。そんな男にはなりなくない。
「ヘルリャフカ、一騎打ちをしよう。一対一で戦って、どちらかが勝つまで続けよう」
一騎打ちに命運を委ねよう。前世から、悪運だけはピカイチだったんだ。負ける気がしないぜ。
ヘルリャフカさえ攻略出来れば......くそっ! 一騎打ちで死んだら自分を恨むぜ。運も実力のうちだ。
「始めよう、一騎打ち!」
「良イダロウ!」
ヘルリャフカは最初、俺の刀による連撃を避けまくった。ここまで避けられると、武士としてのプライドが粉々になるが、俺にプライドなどあってないようなものだ。生きるためなら、地べた這いつくばってでも生き抜くぜ。必要とあらば、何度でも頭を下げよう。
「ヘルリャフカぁ!」
「ココマデカ。俺ヲ殺スノハ、君ニハ無理ダ」
「そんなことはない!」
「アル」
ヘルリャフカが、右手で近づいてきた虫を払うような動作をした。途端に強風が起こり、ヘルリャフカはそのすきに俺の体を天空へと飛ばした。爆風をまともに吸い込んだ俺は胃が焼き切れ、苦しい。俺はこのまま、死ぬのかもしれない。せめて、ヘルリャフカの数十世紀越しの望みを叶えてあげたかった。それも今は、不可能。そろそろ、俺の息が絶えるはずだ。
民は優しかった。俺を尊敬していた。尊敬されていたから、その期待に応えるために更なる力を求めて旅に出た。各地に残る言い伝えを元に、力の根源を探した。長い道のりだった。
それでも、諦めずに、根源を探した。ついに見つけた力の根源は、俺に試練を与えた。その試練を合格し、適正者と判断された俺は『不死の力』をこの身に宿した。
それが失敗だった。不死の力のせいで、仲間や大切な家族が朽ちていっても、自分だけは形を保ち続けた。
永遠の生を得た代償は、永遠の孤独だった。俺からしたら、百年なんてアッという間だ。仲良くなってもすぐにそいつは朽ちた。それでも、俺は仲間を作り続けた。そんなことをしていた自分が虚しかった。仲間が、永遠の仲間が欲しかった。それも、不死の力が拒んだ。
ならいっそのこと自殺しようと決意し、当時は一番硬く鋭いとされた刃で体を刺してみた。けれど、薄皮一枚も剥けない。俺は絶叫した。
何千年も生き続け、やがて邪悪な心に支配されていった。なれの果てに、悪魔へと墜ちた。俺はそこで、『皇帝・ヘルリャフカ』と名乗った。王だった時を懐かしんだからだ。
魔界では数世紀生き続けることも普通のことだった。それに、強ければ強いほど評価されて仲間も出来る。居心地は悪くない。そうこうしていたら上級悪魔に登り詰めていた。このままでは魔王になってしまう。魔王になれば、待っているのは孤独だ。魔王は魔王界で過ごす。魔王界には二人の魔王しかいないのだ。
もう孤独は嫌だった。俺は自由を求めて、殺されるために神界に乗りこんで襲撃をした。神ならば、俺を倒すことも出来ると思った。が、的外れだった。神の頂点に君臨するアマテラスも、我が身を封印するだけが限界だった。その封印も150年も経てば弱まり、容易く抜け出せた。それからは強者を求めて人間界を動き回った。
けれど、神を上回る人間に出会うこともなく、魔界に帰ることを決めた時だった。強力な力をその身に宿した少年を察知した。俺は苗床に憑依し、その少年に接触を図った。
「名乗れ。名乗れ、牛丸を討った者よ!」
牛丸。知らぬ名前だった。我が殺したわけではない。
「貴殿、強き者と見受ける」
あの少年なら我を殺せる力を秘めている。
「名乗れ! 俺は伊達政宗! 今し方、討たれた者の主である」
「面白い。我が名は無きに等しい。この体を拝借しているまでだ」
私は一筋の光りを見た。あの世で待っている家族や親友。今から、会いに行く。
「貴様、悪魔憑きか?」
「わかるのか。そう、悪魔憑きだ」
「なぜ、ここに来たんだ」
「強き者の気配がした。伊達政宗、貴殿こそが強き者のようだな」
「強き者を探して何になる?」
「我が望みなのだ」
「戦いを望むのか?」
「そうとも言える。少し違うがな」
それから戦いが始まったが、俺の本体は苗床から吹っ飛ばされた。おそらく、神達の仕業だ。勝手に死んだ牛丸とやらは、神達の生け贄となったんだな。
それからもたびたび、伊達政宗の元へ行った。そしてついに、彼は俺を殺すために本気となった! 我は、呪いから解放されるのだ!
さあ殺せ、すぐ殺せ。我に希望を見せてくれ。数十世紀も待ち望んだ。俺を───────生という鎖から解放させてくれ!
雷がヘルリャフカに直撃した。これでミッションコンプリートだな。急いで本能寺に行かない.......とぉ?
おいおいおいおい、嘘だろ!?
「何ダ、コノ程度ノ雷ナノカ。失望サセナイデクレ!」
「マジで化け物じゃねぇか、ヘルリャフカ!」
「超過熱ノヨウナ技ヲ使エ!」
さすがにここまで強いとは、仁和も読んでいなかったようだな。手の打ちようがまったくない。これでは小十郎も信長も救出が出来ない。そんな男にはなりなくない。
「ヘルリャフカ、一騎打ちをしよう。一対一で戦って、どちらかが勝つまで続けよう」
一騎打ちに命運を委ねよう。前世から、悪運だけはピカイチだったんだ。負ける気がしないぜ。
ヘルリャフカさえ攻略出来れば......くそっ! 一騎打ちで死んだら自分を恨むぜ。運も実力のうちだ。
「始めよう、一騎打ち!」
「良イダロウ!」
ヘルリャフカは最初、俺の刀による連撃を避けまくった。ここまで避けられると、武士としてのプライドが粉々になるが、俺にプライドなどあってないようなものだ。生きるためなら、地べた這いつくばってでも生き抜くぜ。必要とあらば、何度でも頭を下げよう。
「ヘルリャフカぁ!」
「ココマデカ。俺ヲ殺スノハ、君ニハ無理ダ」
「そんなことはない!」
「アル」
ヘルリャフカが、右手で近づいてきた虫を払うような動作をした。途端に強風が起こり、ヘルリャフカはそのすきに俺の体を天空へと飛ばした。爆風をまともに吸い込んだ俺は胃が焼き切れ、苦しい。俺はこのまま、死ぬのかもしれない。せめて、ヘルリャフカの数十世紀越しの望みを叶えてあげたかった。それも今は、不可能。そろそろ、俺の息が絶えるはずだ。
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