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第三章『家督相続』
伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾陸
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馬をものすごい勢いで走らせて、一日でかなりの距離を進めた。この調子なら、六月二日より結構前に到着しそうだ。
ただ、道中でヘルリャフカと出会したら本能寺まで向かうのは絶望的。ヘルリャフカを随時警戒していなくてはならないか......。
「政宗殿」仁和は目を凝らした。「前方より曲者の姿が見受けられます」
「確かに、誰かいるな。忠義、弓での攻撃態勢に入れ! 成実は鞘から刀を抜けっ!」
「「はっ!」」
俺も両手で刀を握り、前屈みの姿勢になる。曲者は少しずつ俺達との距離を詰めていき、次第に姿が明瞭に見えてきた。人間のような姿をしているが、邪気が半端ない。
「貴様ら、伊達政宗軍ではあるまいか?」
ヘルリャフカではない。だが、なぜ俺達の正体を知っているんだ。
「いかにも。我々は伊達政宗軍である! して、そなたは何者であるか?」
「俺は上位魔人・クロークだ。数百年前に堕落して魔人化した人間だ」
魔人!? もう何でも有りだな。
「クロークとやら。貴殿の目的は?」
「いや、同郷の上級悪魔・ヘルリャフカが人間界でまた暴れ回ってるって聞いたもんだからな。手助けに来たんだ」
「手助け? ヘルリャフカとは仲間なんじゃないのか?」
「ヘルリャフカは、死ぬのが望みなんだ」
「どういうことだ?」
「ヘルリャフカが強き者を求めて動き回っているのは知っているか?」
「それは知っているが......」
「ヘルリャフカが強き者を探し求めているのは、強き者に殺されるためなんだ」
「はぁ?」
「ヘルリャフカは、数十世紀くらい前に祝福と言うか呪いを体に刻み込まれた」
「呪い?」
「不死だ」
「不死。それは知っている。アーティネスから聞いた」
「ヘルリャフカは不死の力のせいで、死ぬことが出来ない。周りの友や家族が死んでいく中で、ヘルリャフカだけは生き続けた。その辛さは、想像を絶する。どんなに硬く鋭い刃でも、アマテラスの攻撃でさえもヘルリャフカを貫いてあの世に送れない。それでヘルリャフカは強き者を探すために暴れ回ってるんだ」
「それで、強者を求めていたのか......」
「お前が強いってのはオーラを見たらわかる。お前と行動すれば、ヘルリャフカと会えそうだし、俺様が協力すればヘルリャフカの望みを叶えてあげられるかもしれない。だから、俺がわざわざ人間界に来てあげたんだ」
これは良い提案だ。それに、ヘルリャフカの望みもわかった。クロークも魔人だし、即戦力だな。提案を受け入れるか。その方がメリットが大きい。
「クローク。伊達政宗の軍門に降る許可をしよう」
「ちょ、待てよ。軍門には降らねぇよ!」
「なら、共闘をしよう!」
「よし、一時的に共闘してやる。よろしくな、伊達政宗」
「こちらこそ、魔人との共闘は心強い。ヘルリャフカを倒すまで、頼むよ」
「ああ、ヘルリャフカを倒すまでだからな」
「馬の余りがないが......どうするか」
「俺は馬なんていらないぞ」
こうして、ヘルリャフカ討伐に心強い上位魔人・クロークが一時的に傘下に入った。目的地は本能寺だが、クロークいわく途中でヘルリャフカが現れる可能性は高いらしい。ヘルリャフカは魔界の中でも唯一、それぞれの生物の力を見抜く力が備わっている悪魔だそうだ。
「クローク」
「何だ?」
「悪魔、魔人、魔族。何が違うんだ?」
「ヘルリャフカが属する『悪魔』は、下から下級悪魔、中級悪魔、上級悪魔、魔王となっている。悪魔、魔人、魔族の『三魔種族』のなかで唯一魔王と化すことが出来る種族なんだ」
「じゃあ、ヘルリャフカはもう少しで魔王になれるのか」
「そういうことだ。魔王は、現在は二人しか存在していない」
「いるのか、魔王」
「俺が属する『魔人』という種族は、人間が堕落したり邪心を極めたりして魔化したものだ。種族全体を見ても、かなり少ない人数の種族。その代わり、知性が高い。クラス分けは下から下位魔人、中位魔人、上位魔人の三つ。んで、『魔族』ってのは、悪魔にも魔人にも属すことがないが魔化している生物を総称している種族名だ。三魔種族のなかでモラルを持たないから一番の脅威だ」
クロークは魔界についてくわしく話してくれた。魔界にいる三魔種族は、あまり人間界に来ることがないそうだ。だが、たまに物好きの三魔種族の誰かが人間界に行って妖怪の言い伝えを残していくとのこと。昔からあった妖怪の伝承は、どうやら魔界の三魔種族が原因らしい。
「クロークは、魔人になる前は人間だったんだろ?」
「当然だ。人間の時の名前は足利尊氏。死ぬ前に魔人化を果たした」
「え? 室町幕府初代の将軍様の?」
「いかにもそうだ」
「マジですかっ! 握手してください!」
「ああ、構わんが」
おお! 転生して良かった! 足利尊氏も尊敬しているんだよね。弟への処置は酷いが、それは伊達政宗と同じだから仕方が無い。うん。
「あの、よろしければ戦い方とかも私に伝授してくれませんか?」
「いいね。伝授してやる。あと、俺が尊氏だと知ったからって敬語じゃなくても良いぞ」
「いえ、尊敬している相手には当然のことです」
いやぁ、戦国時代最高! あとでクロークさんに友達申請でもしておくか。握手しちゃったよ。もう手を洗えないじゃないか。
俺は握手をした手を撫でた。
ただ、道中でヘルリャフカと出会したら本能寺まで向かうのは絶望的。ヘルリャフカを随時警戒していなくてはならないか......。
「政宗殿」仁和は目を凝らした。「前方より曲者の姿が見受けられます」
「確かに、誰かいるな。忠義、弓での攻撃態勢に入れ! 成実は鞘から刀を抜けっ!」
「「はっ!」」
俺も両手で刀を握り、前屈みの姿勢になる。曲者は少しずつ俺達との距離を詰めていき、次第に姿が明瞭に見えてきた。人間のような姿をしているが、邪気が半端ない。
「貴様ら、伊達政宗軍ではあるまいか?」
ヘルリャフカではない。だが、なぜ俺達の正体を知っているんだ。
「いかにも。我々は伊達政宗軍である! して、そなたは何者であるか?」
「俺は上位魔人・クロークだ。数百年前に堕落して魔人化した人間だ」
魔人!? もう何でも有りだな。
「クロークとやら。貴殿の目的は?」
「いや、同郷の上級悪魔・ヘルリャフカが人間界でまた暴れ回ってるって聞いたもんだからな。手助けに来たんだ」
「手助け? ヘルリャフカとは仲間なんじゃないのか?」
「ヘルリャフカは、死ぬのが望みなんだ」
「どういうことだ?」
「ヘルリャフカが強き者を求めて動き回っているのは知っているか?」
「それは知っているが......」
「ヘルリャフカが強き者を探し求めているのは、強き者に殺されるためなんだ」
「はぁ?」
「ヘルリャフカは、数十世紀くらい前に祝福と言うか呪いを体に刻み込まれた」
「呪い?」
「不死だ」
「不死。それは知っている。アーティネスから聞いた」
「ヘルリャフカは不死の力のせいで、死ぬことが出来ない。周りの友や家族が死んでいく中で、ヘルリャフカだけは生き続けた。その辛さは、想像を絶する。どんなに硬く鋭い刃でも、アマテラスの攻撃でさえもヘルリャフカを貫いてあの世に送れない。それでヘルリャフカは強き者を探すために暴れ回ってるんだ」
「それで、強者を求めていたのか......」
「お前が強いってのはオーラを見たらわかる。お前と行動すれば、ヘルリャフカと会えそうだし、俺様が協力すればヘルリャフカの望みを叶えてあげられるかもしれない。だから、俺がわざわざ人間界に来てあげたんだ」
これは良い提案だ。それに、ヘルリャフカの望みもわかった。クロークも魔人だし、即戦力だな。提案を受け入れるか。その方がメリットが大きい。
「クローク。伊達政宗の軍門に降る許可をしよう」
「ちょ、待てよ。軍門には降らねぇよ!」
「なら、共闘をしよう!」
「よし、一時的に共闘してやる。よろしくな、伊達政宗」
「こちらこそ、魔人との共闘は心強い。ヘルリャフカを倒すまで、頼むよ」
「ああ、ヘルリャフカを倒すまでだからな」
「馬の余りがないが......どうするか」
「俺は馬なんていらないぞ」
こうして、ヘルリャフカ討伐に心強い上位魔人・クロークが一時的に傘下に入った。目的地は本能寺だが、クロークいわく途中でヘルリャフカが現れる可能性は高いらしい。ヘルリャフカは魔界の中でも唯一、それぞれの生物の力を見抜く力が備わっている悪魔だそうだ。
「クローク」
「何だ?」
「悪魔、魔人、魔族。何が違うんだ?」
「ヘルリャフカが属する『悪魔』は、下から下級悪魔、中級悪魔、上級悪魔、魔王となっている。悪魔、魔人、魔族の『三魔種族』のなかで唯一魔王と化すことが出来る種族なんだ」
「じゃあ、ヘルリャフカはもう少しで魔王になれるのか」
「そういうことだ。魔王は、現在は二人しか存在していない」
「いるのか、魔王」
「俺が属する『魔人』という種族は、人間が堕落したり邪心を極めたりして魔化したものだ。種族全体を見ても、かなり少ない人数の種族。その代わり、知性が高い。クラス分けは下から下位魔人、中位魔人、上位魔人の三つ。んで、『魔族』ってのは、悪魔にも魔人にも属すことがないが魔化している生物を総称している種族名だ。三魔種族のなかでモラルを持たないから一番の脅威だ」
クロークは魔界についてくわしく話してくれた。魔界にいる三魔種族は、あまり人間界に来ることがないそうだ。だが、たまに物好きの三魔種族の誰かが人間界に行って妖怪の言い伝えを残していくとのこと。昔からあった妖怪の伝承は、どうやら魔界の三魔種族が原因らしい。
「クロークは、魔人になる前は人間だったんだろ?」
「当然だ。人間の時の名前は足利尊氏。死ぬ前に魔人化を果たした」
「え? 室町幕府初代の将軍様の?」
「いかにもそうだ」
「マジですかっ! 握手してください!」
「ああ、構わんが」
おお! 転生して良かった! 足利尊氏も尊敬しているんだよね。弟への処置は酷いが、それは伊達政宗と同じだから仕方が無い。うん。
「あの、よろしければ戦い方とかも私に伝授してくれませんか?」
「いいね。伝授してやる。あと、俺が尊氏だと知ったからって敬語じゃなくても良いぞ」
「いえ、尊敬している相手には当然のことです」
いやぁ、戦国時代最高! あとでクロークさんに友達申請でもしておくか。握手しちゃったよ。もう手を洗えないじゃないか。
俺は握手をした手を撫でた。
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