隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

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第三章『家督相続』

伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾参

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 俺と景頼、成実と愛姫が会議をしていたがいっこうに進まなかった。小十郎がいかに大切な役割を担っていたか、思い知った。
 会議がなかなか進まないので、仁和、二階堂、忠義も混ぜることにした。
 忠義は会議を進めようとして、積極的に挙手をして意見を述べていった。仁和は会議に参加はしていたが、実際は参加しながら一人で勝手にヘルリャフカを弱体化する方法を模索もさくしていた。それに気付いた二階堂は、仁和を無理矢理挙手させて、仁和はため息交じりに作戦を発表。
 会議は想像以上にはかどった。
「よし。今日の会議はここまでにしようか」
 疲れてきたので、俺は会議を終わりにした。会議に使っていた部屋は、会議が終わるとほとんど皆が退室していった。ただ、愛姫はまだ部屋に残っている。
「どうしたんだ、愛姫。部屋から出ないのか?」
「政宗様」
「ん? 何だ?」
「私を心配させないでください!」
 愛姫の目は真剣に見えた。
「心配させる? どういうこと?」
「ヘルリャフカを倒しに出掛けて......私は胸が張り裂けるくらい心配していました。米沢城に帰還してからも、最初は魂が抜けたようになっているという報告があって、政宗様の身に危険がおよんだのかもしれないと......」
「安心してよ。俺は無事。愛姫、心配してくれてありがとう。俺も、心配してたよ」
「本当ですか?」
 愛姫は背が低いから、自然と上目遣いになる。今のセリフと合わせて見ると、滅茶苦茶ドキドキする。
「本当だ。俺はお前の前からいなくはならない」
「約束、ですからね」
「ああ、同然だ」
 愛姫は小さく笑みを浮かべてから、嬉しそうに部屋を飛び出していった。愛姫のためにも、自殺するわけにはいかなくなった。俺が歩むべき道を教えてくれたアーティネスには感謝しかない。
「過去にとらわれるんじゃないぞ、俺。未来を見るんだ!」
 自分の顔をビンタしてから、ヘルリャフカとの戦い方を練習するために仁和を探した。
 会議が終わったら引き留めようと思ってたら、真っ先に消えていったから驚いた。仁和はどこに行ったんだ?
 未来人衆に聞いたらすぐに見つかりそうだから、未来人衆の待機する部屋まで走って向かった。
「おーい、皆!」
 未来人衆がいる部屋に顔を出すと、皆が嬉しそうにこっちを見る。
「旦那!」「若旦那!」「若様!」
 それぞれ呼び方は違うが、俺に敬意を表しているのは確かだ。普通なら、敵の未来人なんて殺処分だからだ。なのに、俺は配下に加えた。俺は未来人でもあるから抵抗はなかったけど、彼らからしたらありがたいことなんだろう。が、したわれるのは嫌いではない。
「皆、久しぶり! 元気してるか?」
「「もちろん!」」
「それは良かった。それで、仁和を見なかったか?」
 すると、未来人の一人が自分を指差した。「俺、見たよ。統率官殿なら、さっき外で刀を抜いてたよ」
「外か。わかった、ありがとう!」
 刀を抜いていたってことは、仁和も刀を扱えるように練習していたってことか。良い心懸けだ。
 外に出ると、確かに仁和が刀を振るっていた。
「仁和!」
「政宗殿!! どうなされました?」
「仁和が考えた戦い方の練習がしたかったから、探してたんだよ。間違った動きとか余分な動きは、指導してみてくれ」
「承知しました」
「それじゃあ、始めよう」
 俺は仁王立ちをした。周囲の空気から水を取り出して、一瞬で過冷却水に変えた。それを前方に向けて発射し、空中で氷と化す。
「どうだ、仁和?」
「水をもっと早く過冷却に出来ますか?」
「もっと早く!? 今以上に早くするのか!?」
「ええ。でないと、その間にヘルリャフカによって攻撃を受けますよ」
「確かにそうなんだけど......」
 仁和の無茶ぶりに付き合い、俺は過冷却水にするスピードを早めた。かなり時間も短縮されたと思うが、仁和はそれでも『もっと早く』と言った。マジかよ、とは思ったがやるしかない。
「あとどれだけ早くすればいい?」
「二秒程度は早めてください」
「二秒か。やってみる」
 俺は空気から水を取り出すのではなく、体内から水を取り出すことにしてタイムロスを減らした。結果、二秒くらいは時間を縮められた。
「これでどうだ?」
「二秒より少し短い時間しか短縮出来ていませんが、誤差の範疇はんちゅうなので良いでしょう」
「よっしゃ!」
 今日の練習のお陰で、神力の扱い方がうまくなった気がする。これなら、ヘルリャフカともうまく戦えそうだ。
「助かった。これで上達出来た」
「それは良かったんですが、見返りを頂戴ちょうだいします」
「見返り? 何だ?」
「刀の扱い方を教えてください。どうも刀を持つとブレたり、うまく振れないんです」
「刀か。うむ、まずは刀を握っていろ」
「はい」
「あーまずは握り方が違うんだよ。片手で握ればブレるに決まっている」
「両手で握るんですね?」
「そうだ。あと、親指はつばに当たらないようにしろ」
「つ、鍔?」
「円盤みたいに飛び出てる部分があるだろ? それが鍔だ」
 俺も転生してから数年は、刀の握り方で輝宗に怒られたな。なつかしい。指南される立場から指南する立場になると、こうも考え方とか見方が変わるもんなんだな。輝宗も、昔を懐かしみながら俺に刀の指導をしていたのかもしれない。
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