隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

文字の大きさ
上 下
76 / 245
第三章『家督相続』

伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾弐

しおりを挟む
 俺の命令で、景頼は去った。さあ、どうやって死ねばいいか。いっそのこと、小十郎と同じ死に方をしよう。俺は近くにあった槍をつかんだ。するとその時、また意識が神界に連れて行かれた。
「あーてぃねす......」
「名坂横久。随分と酷い精神状態ですね」
 アーティネスがいた。
「おれをしんかいによんで、どうするきだ?」
「あなたは死のうとした」
「いままでらくなみちしか、あるいてこなかったんだ。だから──」
「だから死ぬ? ふざけているんですか? 死ぬなんて、ただ逃げるだけの意味しか持ちませんよ。あなたはまた、楽な道を進もうとしています。死んで何になるんですか? そんなの、現実逃避でしかありません」
「げ......ん......じ......つ......と......う......ひ......」
「あなたが茨の道を進みたいのであれば、神辺勉を生き返らせなさい」
「どうやって......?」
「ヘルリャフカの体は不死の力を持っている。ヘルリャフカの心臓と、神辺勉の心臓を取り替えるのです。取り替える方法は、ヘルリャフカの弱体化が絶対条件」
「こじゅうろうは、ふっかつするのか?」
「復活は出来ます。ヘルリャフカの心臓を剥き出しにしてから、神の使者の力で、神辺勉の心臓と取り替えてください。必ず、復活することでしょう」
「なら、へるりゃふかをたおす」
「良いでしょう。まずはその精神状態を治します」
 アーティネスが神の力で俺の精神状態を治した。
「ありがとう、アーティネス」
「ええ、私は元は人間なのである程度は融通ゆうずうが利きますからね」
「今度こそ、ヘルリャフカを倒してくる」
「頑張ってください。神界から、応援しています」
「わかった」
 アーティネスは俺の意識を伊達政宗の体に戻した。
 ヘルリャフカを攻略することが出来れば、小十郎は生き返る。ヘルリャフカが牛丸を苗床にしているから、そこは腹をくくるしかない。牛丸には悪いが、倒させてもらうぞ。

 アーティネスが俺の意識を伊達政宗本体に返した後に、レイカーがアーティネスの部屋に入ってきた。
「やあ、アーティネス。牛丸の遺体を有効活用したようだね」
「何の話しですか?」
「フフフ。アーティネスは牛丸の遺体をヘルリャフカの苗床とし、名坂君の精神に異常をきたさせた。それから、神辺君をも殺し、精神異常を最高潮にさせる。そして、死のうとした名坂君を、アーティネスが助けて正しい道へと誘導する。
 実際はアーティネスが名坂君を間違った道へと誘導してから、優しく正規の道に誘導したってわけさ。まさに、マッチポンプだね」
「そんなことをして、私に何かメリットでもあるの?」
「アーティネスが名坂君の心の支えになったんだ。以後、名坂君はアーティネスの言うことを素直に受け入れるようになる。名坂君は今日を境に、アーティネスの手駒になったんだよ。いやぁ、素晴らしい手口だ。えげつないね」
「昔から言うでしょう? 神と悪魔は、紙一重なんですよ」
「ハハハ。これからが見物だ。面白くなってきたな」
 アーティネスとレイカーは、笑った。外道極まる笑い方をした。アーティネスの思い描く通りに、俺は動いていた。手駒になった。そんなことにも気付かなかった俺は、尚もアーティネスの駒として使われ続けることとなる。

 はてさて。ヘルリャフカを倒して小十郎を復活させることを決意した俺は、元気を取り戻して景頼と成実に合流した。
「若様!」景頼は涙目になって、俺の顔をじっくりと見た。「顔色が良くなりましたね」
「ああ、元気が戻ったんだ」
「それは何よりで」
「それより、ヘルリャフカを倒すために会議をするぞ。愛姫も呼ぶんだ」
「わ、わかりました」
 小十郎がいないから、今回の会議では成実も参加することとなった。愛姫も合流し、いつもの部屋で話し合いが繰り広げられた。
 成実は、初めての会議で緊張しながらも挙手をした。「若様、発言よろしいでしょうか?」
「かまわない」
「小十郎殿を生き返らせるためにヘルリャフカを倒すことはわかりましたし、仁和殿の作戦を応用すれば勝算もありましょう。ですが、ヘルリャフカの弱体化が一番の問題ですよね?」
「そうだ。弱体化は難しいぞ」
「悪魔は実体がないとも耳にします」
「その通りだ」
「それならば、苗床の手足を切り落とせば弱体化に繫がるのではないですか?」
「ん、まあそうだけど、切り落とすのも困難なんだよね。そもそも、苗床は鎧で覆われているから」
「あ、鎧のことが頭から抜け落ちていました。申し訳ございません」
「ああ、それは良いんだけど......」
 ヘルリャフカって不死の力があるんだろ? それなら、倒しようがないよなぁ。けど、アーティネスによると不死の力は心臓に宿っているらしい。不死の力ごと小十郎の心臓に替えるから、それなら不死のヘルリャフカでも死ぬか? くわしくはわからないが、心臓を取り替えるのがヘルリャフカを倒す唯一の手だということか。
 そうしたら、小十郎も不死になるんじゃないか? ん? そこのところは、また後日にでもアーティネスに尋ねてみるか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

戦国記 因幡に転移した男

山根丸
SF
今作は、歴史上の人物が登場したりしなかったり、あるいは登場年数がはやかったりおそかったり、食文化が違ったり、言語が違ったりします。つまりは全然史実にのっとっていません。歴史に詳しい方は歯がゆく思われることも多いかと存じます。そんなときは「異世界の話だからしょうがないな。」と受け止めていただけると幸いです。 カクヨムにも載せていますが、内容は同じものになります。

生きてこそ-悲願の萩-

夢酔藤山
歴史・時代
 遅れて生まれたがために天下を取れなかった伊達政宗。その猛々しい武将としての一面は表向きだ。長く心にあった、母親との確執。それゆえ隠してきた秘密。老い先短い母親のために政宗の出来ることはひとつだった。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...