隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也

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第三章『家督相続』

伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その陸

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 仁和は頭の回転が早い。尋常ではないほどに早かった。そのお陰で、俺が何をしなくても話しが進んでいった。
 絶縁体のもので俺が自分の体を覆ってヘルリャフカに近づく。そこで天候を操って雷を落とし、ヘルリャフカにだけダメージを与える。こんな作戦はぶっちゃけけだ。失敗したら俺は死ぬかもしれないのだ。それでも、そういうことをしないとヘルリャフカを倒せないのは事実。
「賭けに出る前に、他にもヘルリャフカにダメージを与えたいんだがどうすればいい?」
「政宗殿の言っていた通り、金属攻略が必須ですね」仁和は金属片を持ってきた。「政宗殿のお力があれば、金属片ほどは破壊することが出来るでしょう」
「いやいやいや、出来ない!」
「ご冗談を」
 仁和の顔は大真面目だ。ここで金属片を破壊出来なかったら、仲間からの信頼が落ちてしまう。それだけは避けたい。だが、金属片を容易たやすく破壊することは非常に難しい。頑張ってみても出来るかどうか......。
 どうやったら金属片を破壊出来る!? 俺は咄嗟とっさに右手の拳を握って金属片を叩いた。すると、大きい音とともに金属片は潰れた。何で?
 俺が右手で金属片を潰したところを見ていた家臣どもは歓声を上げた。
 俺は仁和に顔を向ける。「仁和、これが狙いか?」
「はい。政宗殿の家臣からの信頼は上がりました」
 どうやら、仁和は気を利かせてもろい金属片を持ってきたようだ。やはり、トップには向いた人材だったか。
 それからも仁和との話し合いは続き、ある程度の攻撃方法は決定した。これからはその攻撃方法の練習に移る。
「よしっ!」
 まず、仁和に言われた通りに神力を使って水を生成して、二時間から三時間の間に少しずつ温度を下げていく。その過程を省くために、倍速にさせる。少しずつ温度を下げて三時間ぶん経過した水を、前方に発射する。ここまでに3秒程度を要した。しかも、神様への申請の項目は五個か六個もある。
 さて。俺の目の前に発射された水は、空中で氷となった。仁和いわく、少しずつ水の温度を下げることによって過冷却かれいきゃくすいというものになるらしい。水が凍る0度を下回っても凍らない状態のことで、衝撃を受けると凍り始めるのだそうだ。
「おお! 仁和の言った通り、ヘルリャフカのあしめくらいなら使えるな!」
「ええ、少しは役に立つことでしょう」
「いやぁ、仁和はすごいな! 未来人衆を統率する力を感じるな」
「ありがたき幸せ。......他にも、いろいろと作戦などを準備していますが」
「良いね。次いってみよー!」
 仁和の次のアイディアは『ヘルリャフカの金属攻略』に至る。どうすればいいのか尋ねると、簡単ですよ、と返事が来た。
「金属攻略が簡単なわけはないだろ?」
「いえ、400年後の未来には科学というものが存在しています」科学があることは知っているが、転生者とは言えまい。「科学については後ほど説明するとして、その科学を利用すれば金属など余裕で攻略出来ますよ」
「ふむ。どうやるのだ?」
「『王水おうすい』はご存知ですか?」
 まずいな。一応、前世は未来人なんだが......。知らない名前が出てきた。王水? 知るか。
「何だ、王水とは?」
「科学薬品というものです。この王水を使えば金属攻略は可能になります」
「その『王水』とやらの性質は?」
「各種金属を溶かします」
 なるほど、そういうことか。ヘルリャフカを守る金属さえ溶かせれば、心臓部を攻撃し放題だ。逆に、俺が何で思いつかなかったのか不思議でならない。
 だが待てよ、溶かすと言ったら誰もが想像するのは『硫酸りゅうさん』だ。王水じゃなくて、硫酸でも良いんじゃないか?
 でも、転生者とバレるからそれを聞くことは出来ない。どうしようか......。困ったら、まずは小十郎だな。
「仁和。俺は席を外すが、すぐに戻ってくる」
「承知しました、政宗殿」
「うむ」
 金属攻略に闘魂燃やす家臣団の中から小十郎を見つけ出して、誰もいない場所まで連れてきた。
「神辺。話しがある」
「うん。それはわかるんだけど、無理矢理引っ張るのはやめてくれ」
「おっと、すまん。つい、急いでしまった」
「で、僕に話しって?」
「仁和が科学薬品について持ち出してきたけど、神辺ってくわしい?」
 小十郎はものすごい勢いで、何回も首を横に振っていた。「いやいやいや! 僕が知るわけないじゃん!」
「だよなぁ」
「何? 仁和はなんて言ったんだ?」
 俺は、仁和が言ったことをまんで伝えた。
「くわしくは知らないけど、確かに金属溶かすなら硫酸しか考えられないな......」
「俺達、馬鹿だしな」
「そうなんだよ」
 その後、二人で話した結果は、景頼なら何かわかるんじゃないか、というものだ。早速、景頼を呼び出した。
 景頼は焦ったように走ってきた。
「どうしました、若様?」
「科学は得意か?」
「科学、でしょうか? まあ、ぼちぼちです......。ある程度なら出来るとは思います」
「さすが景頼だ!」
 その後、景頼から説明を受けた俺は、仁和の元へ戻った。
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