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第一章『初陣へ』
伊達政宗、送り主を探すのは伊達じゃない その肆
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義姫と、俺の弟の小次郎が共犯かは定かではない。まあ、小次郎にバレても、すぐに俺に殺されるから心配することはない。
四人でぞろぞろと廊下を進み、義姫のいる部屋に入った。部屋には義姫一人だ。義姫の表情を見るに、全てを悟っているようだ。
面と向かって、気づいたことが一つある。義姫を何と呼べばいいのか?
「政宗。いや、未来人」
義姫が未来人呼ばわりをしたので、こちらも遠慮無く呼ぶことが出来る。
「よう、古人。早速本題に入ろう。手紙を返してもらおう」
「手紙?」
「とぼけるな。小十郎宛てに書いた手紙を二通、盗っただろ? それに、口外禁止だ」
「どうも政宗は私の息子っぽくないと思っていたら、血が繫がっていないと知った」
「ふむ。何か言うのはわかってたが、そのことを他人に言ったらぶっ殺す」
「血が繫がっていないのは確かなんでしょ?」
難しいことを尋ねられた。理論的には血は繫がっているが、人格は別人だ。どう答えたら良いのかわからないが、義姫が満足するように、血は繫がっていない、と答えた。
「やっぱりね」
「口外しないか?」
「口外するメリットもないし、しない」
「手紙は?」
「仕方ないし、返すよ」
「小次郎は知っているのか?」
「私一人の単独犯さ」
「そうか」
「一つ」義姫は右手の人差し指を立てた。「聞きたいことがあるが?」
「何だ?」
「何で私が犯人だと確信していた?」
まだそのことを種明かししていなかったか。
「簡単な話しだ。筆跡でバレバレだった。『辶』ってのは、ほとんどの奴が特徴的な癖がある書き方をする。左側の段々を書かなかったり、逆に段々を隆起させたり、とか。
脅迫みたいな手紙の筆跡は地味に変えていたようだが、同じ字を何度も書くと筆跡を変えていても本来の筆跡になってしまう。手紙では『伊達』という単語が多く使われていて、最後の方は本来の筆跡になっていた。脅迫文の『伊達』の『達』の『辶』と、お前の書いた『達筆』の『達』の『辶』は癖の特徴が酷似していた。それが、お前が犯人だとわかった決定打だ」
「......なるほど。今後は気をつけよう」
義姫から盗まれた手紙二通を返してもらい、これで一件落着した。四人が安堵すると、俺の意識は途絶えた。次に目覚めたら、目前にはアーティネスがいた。
「え? あ? ん?」
「神界会議が開かれ、あなたの処遇が決まりました」
「はい?」
「反対の意見はあったものの、あなたは日本政府が実行する『歴史改変計画』を潰すために『神の使者』と任命されました」
「使者?」
「江渡弥平を倒すのが、神界から命じられたあなたの使命です」
「へ?」
「ちなみに、江渡弥平を倒すという名目なら天下統一をしても神界は口出しをしません」
「マジ?」
「マジです」
「ってことは、俺は天下統一出来んの?」
「はい」
「よっしゃー!」
嬉しかった。この時は本当に嬉しかった。
「でも、何でそんなことになったの?」
「ここは人柱神界です。人の世より、はるかに時が経つのが遅いのです。あなたの歴史知識を剥奪した後、処遇を決める会議が始まりました。その会議で、私とバルスがあなたを使者にして江渡弥平を倒させてはどうかと提案し、それに賛成した神も多数いたので可決されたのです」
「バルスって、神辺を転生させた?」
「はい」
江渡弥平を倒す名目なら、天下統一が出来るのか。なら、すぐに江渡弥平は倒さずに残しておく方がいいというわけだ。
「んじゃ、歴史知識は返してくれるの?」
「すでに歴史知識は戻しました」
「神様直々に、江渡弥平を倒すことは出来ないの?」
「残念ながら、下々の者に力で裁くことが可能なのは悪魔だけなのです」
「悪魔っているんだ」
「存在します。数百年に一度しか目覚めることはありませんが......」
「今、転生して良かったと感じてるよ!」
「私自身は、伊達政宗が天下統一をしても良いと思っています。頑張って、歴史を変えてみてください」
「アマテラスはどうなんだ?」
「父は気にしないでください」
逆に気になるのだが?
「わかった」
「では、神界の使者の権利を与えます」
「その前に、聞きたいことがある」
「何ですか?」
「歴史知識が剥奪された時に、懐に短筒の火縄銃が入っていた。アーティネスの仕業か?」
「ええ。あなたには、歴史を変えるほどの知識量を感じたので死なせるわけにはいきませんでした」
「なるほど」
「気を取り直して、神界の使者の権利を与えましょう」
体に何かが入ってきた。体温が少し上がったような気分になった。
「おぉっ!」
使者の権利を与えられ、体は無重力のように浮き始めた。気づいた時には、義姫から手紙を取り返してすぐの時に戻っていた。
「大丈夫か、名坂?」
「ああ、すこぶる大丈夫だ」
三人には、使者の権利を与えられたことを話した。愛姫は天下統一に興味がなさそうに、少し嫌な表情をしていた。天下統一は男の永遠の夢であり、それは女に強要することではないことはよぅく理解はしている。けど、そこまで嫌な顔をされるのはちょっと悲しい。
愛姫に比べ、男である小十郎と景頼は大いに喜んでいた。それも当たり前だな。だって、戦国時代の人物に転生したのなら普通は天下統一を目指さない奴はいない。それと、天下統一をしないと、ストーリー的にも面白くはならない。信長とかの時代だったら、天下は京都周辺を指す言葉だったが、秀吉のせいで天下は全国を指すようになった。やるしかない。秀吉と家康を追い越し、伊達政宗を天下人とする歴史に塗り替える。それが、伊達政宗ではなく名坂横久に与えられた使命なのだ。
四人でぞろぞろと廊下を進み、義姫のいる部屋に入った。部屋には義姫一人だ。義姫の表情を見るに、全てを悟っているようだ。
面と向かって、気づいたことが一つある。義姫を何と呼べばいいのか?
「政宗。いや、未来人」
義姫が未来人呼ばわりをしたので、こちらも遠慮無く呼ぶことが出来る。
「よう、古人。早速本題に入ろう。手紙を返してもらおう」
「手紙?」
「とぼけるな。小十郎宛てに書いた手紙を二通、盗っただろ? それに、口外禁止だ」
「どうも政宗は私の息子っぽくないと思っていたら、血が繫がっていないと知った」
「ふむ。何か言うのはわかってたが、そのことを他人に言ったらぶっ殺す」
「血が繫がっていないのは確かなんでしょ?」
難しいことを尋ねられた。理論的には血は繫がっているが、人格は別人だ。どう答えたら良いのかわからないが、義姫が満足するように、血は繫がっていない、と答えた。
「やっぱりね」
「口外しないか?」
「口外するメリットもないし、しない」
「手紙は?」
「仕方ないし、返すよ」
「小次郎は知っているのか?」
「私一人の単独犯さ」
「そうか」
「一つ」義姫は右手の人差し指を立てた。「聞きたいことがあるが?」
「何だ?」
「何で私が犯人だと確信していた?」
まだそのことを種明かししていなかったか。
「簡単な話しだ。筆跡でバレバレだった。『辶』ってのは、ほとんどの奴が特徴的な癖がある書き方をする。左側の段々を書かなかったり、逆に段々を隆起させたり、とか。
脅迫みたいな手紙の筆跡は地味に変えていたようだが、同じ字を何度も書くと筆跡を変えていても本来の筆跡になってしまう。手紙では『伊達』という単語が多く使われていて、最後の方は本来の筆跡になっていた。脅迫文の『伊達』の『達』の『辶』と、お前の書いた『達筆』の『達』の『辶』は癖の特徴が酷似していた。それが、お前が犯人だとわかった決定打だ」
「......なるほど。今後は気をつけよう」
義姫から盗まれた手紙二通を返してもらい、これで一件落着した。四人が安堵すると、俺の意識は途絶えた。次に目覚めたら、目前にはアーティネスがいた。
「え? あ? ん?」
「神界会議が開かれ、あなたの処遇が決まりました」
「はい?」
「反対の意見はあったものの、あなたは日本政府が実行する『歴史改変計画』を潰すために『神の使者』と任命されました」
「使者?」
「江渡弥平を倒すのが、神界から命じられたあなたの使命です」
「へ?」
「ちなみに、江渡弥平を倒すという名目なら天下統一をしても神界は口出しをしません」
「マジ?」
「マジです」
「ってことは、俺は天下統一出来んの?」
「はい」
「よっしゃー!」
嬉しかった。この時は本当に嬉しかった。
「でも、何でそんなことになったの?」
「ここは人柱神界です。人の世より、はるかに時が経つのが遅いのです。あなたの歴史知識を剥奪した後、処遇を決める会議が始まりました。その会議で、私とバルスがあなたを使者にして江渡弥平を倒させてはどうかと提案し、それに賛成した神も多数いたので可決されたのです」
「バルスって、神辺を転生させた?」
「はい」
江渡弥平を倒す名目なら、天下統一が出来るのか。なら、すぐに江渡弥平は倒さずに残しておく方がいいというわけだ。
「んじゃ、歴史知識は返してくれるの?」
「すでに歴史知識は戻しました」
「神様直々に、江渡弥平を倒すことは出来ないの?」
「残念ながら、下々の者に力で裁くことが可能なのは悪魔だけなのです」
「悪魔っているんだ」
「存在します。数百年に一度しか目覚めることはありませんが......」
「今、転生して良かったと感じてるよ!」
「私自身は、伊達政宗が天下統一をしても良いと思っています。頑張って、歴史を変えてみてください」
「アマテラスはどうなんだ?」
「父は気にしないでください」
逆に気になるのだが?
「わかった」
「では、神界の使者の権利を与えます」
「その前に、聞きたいことがある」
「何ですか?」
「歴史知識が剥奪された時に、懐に短筒の火縄銃が入っていた。アーティネスの仕業か?」
「ええ。あなたには、歴史を変えるほどの知識量を感じたので死なせるわけにはいきませんでした」
「なるほど」
「気を取り直して、神界の使者の権利を与えましょう」
体に何かが入ってきた。体温が少し上がったような気分になった。
「おぉっ!」
使者の権利を与えられ、体は無重力のように浮き始めた。気づいた時には、義姫から手紙を取り返してすぐの時に戻っていた。
「大丈夫か、名坂?」
「ああ、すこぶる大丈夫だ」
三人には、使者の権利を与えられたことを話した。愛姫は天下統一に興味がなさそうに、少し嫌な表情をしていた。天下統一は男の永遠の夢であり、それは女に強要することではないことはよぅく理解はしている。けど、そこまで嫌な顔をされるのはちょっと悲しい。
愛姫に比べ、男である小十郎と景頼は大いに喜んでいた。それも当たり前だな。だって、戦国時代の人物に転生したのなら普通は天下統一を目指さない奴はいない。それと、天下統一をしないと、ストーリー的にも面白くはならない。信長とかの時代だったら、天下は京都周辺を指す言葉だったが、秀吉のせいで天下は全国を指すようになった。やるしかない。秀吉と家康を追い越し、伊達政宗を天下人とする歴史に塗り替える。それが、伊達政宗ではなく名坂横久に与えられた使命なのだ。
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